魔王・ダークネスが姫に憑依していた。
その事実を知った騎士・ジョナスは、魔王との戦いに
再び身を投じる。
魔王ダークネスを滅し、
パールホワイト王国に光を取り戻すために…。
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剣と剣がぶつかりあう音が響き渡る。
そしてー。
1本の剣が弾き飛ばされた。
「うぅっ…」
魔王の魔力で操られている後輩の女性騎士・アリシアの
剣がはじき飛ばされた。
「アリシア…目を覚ませ!」
ジョナスがアリシアの方に剣を向けながら言う。
パチ パチ パチ パチ
姫が拍手をジョナスに送った。
「流石ねジョナス…
私が見込んだだけのことはあるわ」
表情をゆがめて笑う姫に、
ジョナスは剣を向けた。
「姫から出ていけ!魔王・ダークネス!」
すると、姫が再び目を赤く光らせた。
「くっ・・・あぁ、、、いやっ…」
騎士アリシアが、飛ばされた剣の方に
頭を押さえながら向かって行く。
「アリシア!」
ジョナスが振り返ると、アリシアは拾った剣を
自分の方に向けた。
「--私を守れない無能な騎士なんて
いらないの…
消えなさい…」
姫が無情に、冷たい声で言い放つと、
アリシアは自分の腹部に剣を深く突き刺した。
「う……ひめ・・・さま」
アリシアがその場に崩れ落ちる。
「貴様ーーーーー!」
ジョナスが剣で姫に襲い掛かった。
姫は口元をゆがめて、ジョナスを迎え撃つ。
「貴様!姫を汚すだけでなく、
アリシア、ケビン、ユリシーズ団長…
どこまで人を傷つければ気が済むんだ!」
剣と剣がぶつかり合う。
パール姫は、魔王に憑依されている影響からか、
卓越した剣技で、ジョナスを追いつめていく。
「うふふ、ジョナス!
あなたそんなに弱かったかしら?」
次第に押されていくジョナス
「くっ…」
ジョナスも必死に応戦する。
しかし…
「ほら!ほら!所詮、あなたの剣技では私は倒せない!
くふふふふ、ふふふふふふ!
我の力を前に、ひれ伏せ!」
姫が叫ぶと、
姫の口から紫色の煙が飛び出し、
ジョナスの体の自由を奪った。
「ーーーくっ・・・こ、、これは」
魔王・ダークネスの魔力。
ジョナスは体の自由を奪われ、
冷徹な笑みを浮かべる姫の方を見る。
「--終わりだ。これからは我が…いえ、私が
この王国を”暗黒世界”に変えていってあげる・・・
私のお父様が作り上げた
慈悲と愛と純白に満ちた王国。
それをーーー、
この手で壊してあげる」
姫は自分の手を舌で不気味になめ始めた。
「貴様ぁ!
姫を解放しろ!
卑怯者が!卑怯者がぁ!」
ジョナスは、必死にもがき、
心の底から叫んだ。
だがー
その言葉はむなしく、空気を引き裂いた。
「ーーー終わりよ…
ゆっくり眠りなさい。ジョナス」
姫が剣を構えた。
その時だったーーー
白い光が、姫を直撃して、
姫が悲鳴をあげた。
「ぎっ…な、、何なの?」
姫が振り向くと、そこには、女性騎士のアリシアの姿があった。
「アリシア!」
ジョナスが叫ぶと、
アリシアは苦しそうにうなずいた。
「---ーーーー!」
アリシアが呪文を唱えて、白い光を再び姫の方に放つ。
そして続けて呪文を唱えると、
ジョナスの拘束が解放された。
「先輩…大丈夫ですか?」
顔色が悪いアリシアが駆け寄ってくる。
「--あぁ、、、お前は?」
ジョナスが訪ねると、アリシアは笑って頷いた。
ジョナスは思う。
彼女…アリシアは、魔導師としての実力も高い。
回復魔法を駆使して、致命傷を免れたのだ
「き…きさ…ま」
姫が頭を抱えてもがいている。
「--私たちは、貴方になんか屈しません!」
アリシアが言うと、
呪文を唱え、剣と姫の体を光が包んだ。
「ぐおおおおおおおおおおっ!」
姫が苦しみの声をあげる。
そしてーー
姫は頭を抱えてその場にうずくまり、
姫の持っていた剣が、音を立てて床に転がった。
「--魔王の魂は剣に封印しました!
先輩!剣を砕いてください!」
自分の剣が使い物にならなくなっていたアリシアは
ジョナスに向かって叫んだ。
「分かった!うおおおおおおおおお!」
ジョナスは渾身の力を込めてーーー
姫の持っていた剣を砕いた。
「いっ・・・ぎぃあああああああああああっ!」
剣から魔王の断末魔が聞こえて…
剣は粉々に砕け散った。
「はぁ…はぁ…」
ジョナスが姫のもとに駆け寄る。
「---姫! 姫!」
ジョナスが呼びかけると、姫はゆっくりと目を開いた
「----じょ、、、ジョナス…?」
わけが分からないという様子の姫に
ジョナスは優しく微笑んだ。
「--安心して下さい。全部終わりましたよ、姫ー」
そう言うと、姫は安心したように微笑み、
再び眠りについた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あれから1か月。
パールホワイト王国はすっかり元の平和を取り戻した。
あれから、ジョナスとパール姫の仲は急速に深まった。
人は”一度失いかけたもの”の大切さを再認識する。
ついに、ジョナスは姫の正式な夫として、迎え入れられたのだった。
姫が、焼き払われたエルフの村の跡地で手を合わせる。
「---私は…大変な罪を犯しました…」
悲しそうに言う姫。
ジョナスも悲しそうにその様子を見つめる。
「---私は、、なんてことを…」
姫は、自分が憑依されている間に犠牲になったエルフたちや
家臣たちに対して、言いようのない後悔と懺悔の念に
苛まれていた。
「---姫が悪いんじゃありません」
ジョナスが言う。
「---悪いのは、魔王です」
ジョナスの言葉に姫は悲しそうに、ジョナスの方を見た。
「--ですが…」
姫の言葉にジョナスは優しく微笑んだ。
「---…残された我々に、できることを
少しずつやっていきましょう。
大丈夫ですよ。エルフたちも、ユリシーズ団長もケビンも、
姫のことを恨んでなんかいません」
ジョナスは夫となった現在でも、
今まで通り”家臣”としての務めを忠実に果たしていた。
「そう…ですか」
姫がエルフの村の跡地を見つめて呟く。
「みなさん…本当にごめんなさい。。
ユリシーズ…ケビン…」
姫の頬を涙が伝う。
「---姫…」
そんな様子を護衛の為に同行していた後輩騎士のアリシアが
不快そうな表情で見つめていたーーー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからほどなくして、
姫とジョナスの間に”子供”が出来た。
姫が子を授かったということで
王国はお祭りムードになっていた。
そんな中、
隣国のライトピース王国を一人の人物が訪れた。
「あなたはーー」
隣国の姫・メリウス姫が不思議そうに来訪者を見る。
「----パール姫のところの騎士の…」
メリウス姫が記憶をたどり、その女性騎士を見ると、
彼女は微笑んだーーー
「----いよいよ始まりです」
女性騎士・アリシアが笑う。
「----本当の”暗黒世界”のーーー」
アリシアが口元を不気味に歪めると同時に、
彼女から黒い魔力が解き放たれ、
メリウス姫の護衛は一瞬にして灰になり、
メリウス姫は黒い霧のようなものに捕えられた
「ひっ…、、あ、、あなたは一体?」
メリウス姫がおびえた様子で言うと、
アリシアは笑った
「私はーーー
小さいころ、親に捨てられたんです。
”女では騎士になれない”とーー」
アリシアが語り出す。
「魔物の居る森に捨てられた私は。当時4歳でした。
でも、私は死にたくなかった。
だから、必死に、手段を選ばず戦った。
そんな時、ある人が助けてくれたんです。
---誰だと思います?」
アリシアがほほ笑んで、メリウス姫を見る。
メリウス姫は怯えきった表情で、わけがわからない、という
言いたげに首を振った。
「--魔王様…
魔王ダークネス様ですよ」
アリシアの言葉に、メリウス姫の背筋が凍る…。
「魔王様は、人間である私を助け、指導し、育ててくれました。
人間を内部から支配する来たるべき日のために。。
そして、16になった私は流浪の民のフリをして、
パールホワイト王国に潜り込んで
”優秀な女騎士”として、姫を護衛する立場にまで上り詰めた」
アリシアの語りに、メリウス姫が口を挟む。
「あ、、あなたの目的は一体…」
その言葉にアリシアは笑った。
「私の目的?
幼い私を捨てた、人間ーー
そして、パールホワイト王国への復讐よーー」
そう言うと、メリウス姫は叫んだ
「で、、、でも!魔王はあなたと騎士のジョナスが倒したって聞いたわ!」
メリウスが叫ぶと、
アリシアは狂ったように笑い始めた。
「あはははははは!ばっかじゃないの!?
あれは、私と魔王様の”演技”
あの時、”剣”に封印したのは魔王様じゃない!
姫様の魂なのよ!
先輩はそれを砕いたの!あっははははは!」
笑うアリシア。
その言葉の意味することを知り、メリウス姫は青ざめる。。
「--ま、、まさかパール姫は…」
その言葉に、
アリシアが細剣を手で遊びながら微笑んだ。
「そうですよ。もうこの世に居ません。
今の姫はーーー”魔王様”が演技しているだけですよ。
記憶も読み取れるんだから、
姫になりきることなんてたやすいの」
そしてーアリシアは笑った。
「ーーー魔王様の目的は、人間との間に子供をつくること。
今の姫様には魔族の血が流れている。
その血と人の血が合わさって生まれる子がーー
新時代ー”暗黒世界”の神になるのよ」
”一度失いかけたものを取り戻したときー
ヒトは急速にそのモノを愛おしく感じるー”
アリシアと魔王は、そのために一芝居打った。
ジョナスと姫を、手早く結びつけるためにー。
「---話は終わり」
アリシアが笑う
そして、黒い霧を大量に吹き出しながら、メリウス姫を見た。
「この邪気をこれからあなたに吹きこむ…。
メリウス姫、あなたは憎悪と憎しみに支配され、
パールホワイト国に戦争を挑むの!ふふふふ、あはははははは!」
「いや…やめて!」
メリウス姫は叫んだがーー
時、既に遅く、アリシアから放たれた邪気が、メリウス姫の口から体内に侵入していく。
「ぐっ・・・ぶっがっばばば、、ぶ」
口を無理やりこじ開けて侵入していく邪気ーーー。
メリウス姫の目から、涙がこぼれたーーー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
「大変です 姫様!
隣国のライトピース国が攻め入ってきました!」
アリシアが膝を折りながら伝える。
宮殿内にどよめきが起きる。
温厚な事で知られるメリウス姫が何故ー?
宮殿の外に爆音が響き、
笑い声が聞こえた。
「---あははははははははっ!
壊せ!全て焼き尽くせ!ひはははははははっ!」
邪気に支配され、狂気に染まった
メリウス姫が狂ったように笑っているーー
「メリウス姫…なぜ…」
騎士ジョナスがつぶやき、パール姫の方を振り向く。
「・・・・・・」
パール姫は目を涙ぐませながら言った。
「---攻められた以上、民を守らなくてはなりません。。
ジョナス…お願いします」
姫が悲しそうに言うのを見て、
ジョナスは、ライトピース王国の軍勢を迎え撃つべく、
宮殿の外に向かう。
「先輩!私も行きます!」
アリシアがジョナスについて宮殿から出ていく。
ーーージョナスの後姿を見ながら、姫は表情をゆがめた。
「---くくく…自分の手で
姫の魂を葬っているとは知らずに…」
最初に姫に憑依した時、
わざと横暴な態度をとっていたのは、
ジョナスたちに”姫が憑依されていること”を知ってもらうため。
そして、その上で倒された演技をし、
ジョナスが、姫に急速に惹かれるきっかけを作った。
そして、その上で姫の魂も葬ることができた。
姫は自分の、少しだけ膨れてきたお腹を見て笑う
「ふふふ…もうすぐ、、、もうすぐだ…
我が魔族の子が誕生するーーーー
ククク…
繰り返される戦争…憎悪に満ちた世界…
そこに私の息子が”君臨”するーー
くくくくくく…
あはははははははははははははっ!」
パール姫は狂ったように、一人笑い続けた…。
このことを知るアリシアも、魔族の子が生まれれば用済みー。
この時のためだけに、育ててやったのだ。
たかが、人間の子をーーー。
姫は不気味に笑い、
迫りくる”暗黒世界”を思い浮かべて口元をゆがめた…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「メリウス姫!どういうことです!」
ジョナスが叫ぶ。
だが、メリウス姫は笑いながら言った
「お前たちを全員皆殺しにするの!
くっひひひひひ、あははははははははっ!」
アリシアの邪気に支配されたメリウス姫に、もう言葉は
届かなかった。
後衛でその様子を見ながら、女性騎士アリシアは
宮殿の方を振り向いた。
そして、呟いた。
「バカな人間ーーーー
そしてーーーー
”バカな魔王ーーーーー”」
と。
アリシアは、不気味な含み笑いを浮かべて、
再び、先輩騎士であるジョナスの方に向かって歩いて行った…
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
血に染まって…しまいそうな王国に
なってしまいました(笑)
魔王様も消されるフラグが建設された気もしますが
果たして…
この後のことはご想像にお任せします!
ありがとうございました!
コメント
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一瞬ハッピーエンドかと思ったらとんでもないバッドエンドだった
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> 一瞬ハッピーエンドかと思ったらとんでもないバッドエンドだった
一瞬ハッピーに見せかけて地獄に落してみました(笑)
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凄まじいBADEND( ˘ω˘ )
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魔王による姫憑依と暴虐、大好物なこともあり愉しませていただきました!
やはり魔王は簡単に封じられたりせず、こうやって完全に人間の国を支配してほしいものです。
後輩女騎士も憑依される展開を予想してましたが、もっと手の込んだやり口でしたね。いい仕事です!
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> 凄まじいBADEND( ˘ω˘ )
一瞬、平和に見えたのですけどね…(笑)
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> 魔王による姫憑依と暴虐、大好物なこともあり愉しませていただきました!
> やはり魔王は簡単に封じられたりせず、こうやって完全に人間の国を支配してほしいものです。
>
> 後輩女騎士も憑依される展開を予想してましたが、もっと手の込んだやり口でしたね。いい仕事です!
ありがとうございます!
愉しんでいただけて嬉しいです^^
魔王様には、もっともっと愉しんで頂ければと思います(笑)
機会があれば続きも書くかもしれません!