魔王ダークネスに憑依され、
圧政を始める姫。
そんな異変に気付いた騎士たちの決断はー?
王国は血に染まるのか、
それとも平和を取り戻せるのか?
------------------------------
「一部のエルフが、東の村に匿われているみたいですね」
姫が家臣や騎士を集めて、冷たい声でささやいた。
「---」
騎士ジョナスは、背筋の凍る思いでその言葉を聞く。
あの日ー、
姫がエルフの村を焼き払うと宣言した日、
ジョナスは使者を走らせて、村の外に居たエルフたちに
絶対に村には戻らず、東に存在する、のどかな村に逃げるように
指示して、数名のエルフたちを助けたのだった。
東に存在する、ロード村は、
のどかな村で、農業を中心に栄えている村だ。
あそこの宿屋には、ジョナスも何度か世話になったことがある。
ロード村の村長に、ジョナスが事情を話すと、
村長はエルフを匿うことを約束してくれた。
だが…
何故?
姫に何故その情報が入ったのだ?
「---誰か、、エルフを助けた者が居ますね?」
パール姫は冷たい声で玉座から立ち上がり、
騎士たちを見渡した。
「---名乗り出なさい」
高圧的に言い放つ姫。
だが、誰も名乗りでない。
ジョナスは冷や汗を垂らした。
姫とは幼馴染だ。
だがーー
最近の彼女の様子はどうにもおかしい。
ここ1週間で、姫に逆らった家臣が
3人、処断されている。
人が変わってしまったかのようだ。
民衆からも重い税を搾り取るようになっており、
民たちからの信望も落ち始めている。
「・・・・・」
冷や汗を書き、黙り込むジョナス。
後輩の女性騎士・アリシアがジョナスの方を
心配そうに見つめている。
「---ジョナス」
姫が、ジョナスの事を冷たく見下ろしながら囁く。
「--あなたじゃ、ないわよね?」
姫がジョナスを睨むようにして見る。
「---ーーー」
ジョナスは意を決した。
「姫…。私は、、、エルフの虐殺は
間違えだと考えています」
ジョナスが言うと、
姫は明らかに不快そうな表情を浮かべた。
「---なんですって?」
激しい口調でジョナスに怒りを向ける。
だが、ジョナスは臆することなく姫を見た。
「---罪もないエルフたちを村ごと焼き払うなんて
間違ってます!
姫!あなたはいつも慈悲と愛、慈愛を持って
民衆に接していたじゃないですか!
お忘れですか!」
ジョナスは真剣なまなざしで姫を見据える。
だが、姫はジョナスを力強くビンタした。
「--騎士風情が!思い上がるな!」
姫が2回、3回とジョナスをビンタする。
だが、ジョナスも引かなかった。
「姫!どうか、清きお心を取り戻してください!
我がパールホワイト王国の誇り高き魂を!」
ジョナスが言うと、
姫が笑った。
「あっははははは、そんなもの一銭にもなりはしない!
ジョナス。いい?
王国を守るためには犠牲が必要なの!
私は民とこの国を守りたいの!
余計な口を挟まないで頂戴!」
姫はそういうと、怒り狂った様子で壇上に戻った。
そしてーーー
「-ーー生き残りのエルフが潜伏する村を焼き払います。
反逆者には死、あるのみ。
ロード村のものたちもまとめて焼き払いなさい!」
姫が怒り狂って叫ぶ。
「---姫様!もうおやめください!」
騎士のアリシアが叫ぶ。
「---姫!お気を確かに!」
騎士団長のユリシーズも、姫をたしなめようとする。
だがーー
「ええい!うるさいわ!私の命令が聞けないの?
これは命令よ!
徹底的にエルフたちを焼き払いなさい!!
村の人間もろとも!」
姫の、狂気に染まった言葉に…
反対できる人間はもういなかった・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ロード村に火がつけられている。
「---ジョナスよ…」
騎士団長のユリシーズが、村人や、
エルフたちの悲鳴を聞きながら悲しそうな声で言う。
「は…」
ジョナスも悲しそうに返事をすると、
ユリシーズが言う。
「どうも最近、パール姫の様子がおかしいように
思うのだが、お前はどう思う?」
ユリシーズの言葉にジョナスも頷く。
「はい。。。どう考えても普通じゃありません。。」
ジョナスが言うと、ユリシーズが険しい表情で言う。
「--姫が豹変したのは、魔王討伐の翌日からだ」
ユリシーズの言葉にジョナスはハッとする。
「---魔王は、本当に滅んだと思うか?」
ユリシーズの言葉に、ジョナスは険しい表情を浮かべた。
「まさか…」
ジョナスの言葉にユリシーズが頷く。
「あぁ…俺は内密に調査を進めてみる。
直属の部下にも話は通してある。
魔王ダークネスは…まだ滅んでいないのかもしれん」
ユリシーズの言葉に
ジョナスは目を細める。
「あはははははっ!燃えろ!燃えろ!
燃えてしまえ!この私に逆らったバツよ!」
パール姫が村の方で笑い声をあげている。
エルフたちの悲鳴ー
村人たちの悲鳴ー。
「--た、、たすけ…」
村長が、姫に踏みつぶされて悲鳴をあげている。
「---お待ちくだ…!」
ジョナスが姫の方に走って行こうとしたが、
ユリシーズがそれを制した。
「------」
険しい表情でユリシーズが首を振る。
”命を無駄にするな” と。
「----くそっ」
ジョナスがつぶやく。
確かに、今、止めに入っても
パール姫は話を聞き入れないだろう。
「--私を謀った罰だ!
うふふふふふふ、ははははははははは!」
姫が何度も、何度も村長を剣で刺している。
返り血を浴び、炎のそばで不気味にほほ笑む姫はーー
まるで魔王かのように見えた。。
ロード村は、村人やエルフもろとも焼き払われた。
命乞いをする、子供のエルフも、全てー。
「酷すぎる…これじゃあ魔王とやってることが同じだ…」
ジョナスは、そう呟いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからも姫の暴走は続いた。
人が変わったかのように、隣国の村を突然攻撃し始めた。
隣国の女王・メリウスとは、”親友同士のようだ”と呼ばれるほど
仲が良かったパール姫。
しかし、今のパール姫には、そんなことすら関係が無い事のようだった。
重税を課し、払わない民を容赦なく粛清していく。
その姫の姿はもはや、暴君と称するべき姿だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジョナスは隣国の女王、メリウスと極秘で会談していた。
「--我々も、困惑しています。
パール姫がどうして、豹変したのか」
ジョナスがそう言うと、
おしとやかな雰囲気の姫・メリウスが悲しそうにつぶやいた。
「そう…」
メリウス姫とパール姫は幼馴染。
小さいころはよくジョナス、パール、メリウスの3人で遊んでいた。
「---今、私と騎士団長のユリシーズを中心に、
調査を進めています。
メリウス姫もお辛いでしょうが、もう少し、時間を頂けないでしょうか」
ジョナスは、
戦争に発展しそうな状態を打破するため、
隣国・ライトピース王国を訪れていた。
「・・・わかりました。 家臣たちは何とか説得します。
ですが…」
メリウス姫が、悲しい目でジョナスを見た。
「家臣たちは”反撃すべき”だと言っています。
パール姫が、これ以上、私たちに危害を加えるならば…
私も…悲しい決断をしなければなりません」
メリウスの言葉を聞き、ジョナスは険しい表情でうなずいた。
早くーー
早く、姫の乱心を止めなくてはならない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
パールホワイト王国に戻ると、王宮前に人だかりができていた。
”罪人”が連行されている。
その罪人の姿を見て、ジョナスは目を疑った。。
「--ユリシーズ騎士団長!」
ジョナスが叫ぶと、列が足を止める。
パール姫の近辺を探っていたユリシーズ団長が何故?
「--な、、何があったんですか?」
ジョナスが訪ねると、ユリシーズは悔しそうにつぶやいた。
「---はめられた…
姫に…無実の罪状を押し付けられた…」
すっかりやつれたユリシーズが言う。
「--そんな…」
ジョナスが悲しそうにつぶやくと、
ユリシーズはまっすぐジョナスを見て言った。
「--ジョナス…
後はお前に託す。
必ず、姫をお救いしてくれ」
ユリシーズの言葉にジョナスは
「何か分かったのですか!?」と叫ぶ。
ユリシーズは小声でジョナスに告げた。
”姫の背後に黒い影が見えた” とーー。
そして、ユリシーズは兵士に連行されていき、
即日、斬首となった。
「--団長…俺は必ず…
必ず姫をお救いします」
ジョナスは改めて、姫の異変の謎を突き止めることを
誓ったのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その夜。
ジョナスは姫の元を訪れる決意をしていた。
「姫に…真意をお尋ねしなければ」
姫は最近、毎週のこの時間、
宮殿の離れにある、宴会用の会場で、
何かを一人でしていると言うのだ。
「----」
1対1で話をするにはちょうど良い機会。
ジョナスは剣を見つめ、
意を決し、自分の部屋から出た。
「---先輩!」
背後から後輩の女性騎士・アリシアの声がした。
「--アリシア?」
ジョナスが驚いて振り返る。
「--、ひ、、姫様の元を訪れるんですよね」
走ってきたのか、息を切らしているアリシア。
「--……ああ」
ジョナスが言うと、アリシアが意を決して言う。
「--私も、私も連れて行ってください」
アリシアの言葉に、ジョナスは顔をしかめた。
”これは、自分の戦い”
殺されるかもしれない。
そんな戦いに、将来有望なアリシアを巻き込むわけには…。
後輩騎士のアリシアは、
19歳にして、現役の女性騎士として活躍している。
その実力は、騎士隊長クラスも顔負けのほどだった。
それでいて、容姿も愛嬌があり、可愛らしいことから、
狙っている騎士も多いのだとか。
「---お願いです!私だって騎士の一員です。
姫の異変について、私も知りたいんです!」
アリシアが真剣な表情で言う。
「------」
ジョナスは考えた末に呟いた。
「分かった…
だが、、、姫と戦いに行くわけじゃない。
あくまでもお話をお聞きするだけだ」
ジョナスが言うと、
アリシアはうなずいた。
「はい!ありがとうございます」
ジョナスとアリシアは宮殿の離れを目指した…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ククク…適度に私の国と、
ライトピース国を攻撃してもらえるかしら?」
パール姫が冷たい声で言うと、
背後に立っていた魔物ーゴブリンが、頷いた。
「イインデスカイ?」
ゴブリンの言葉に姫はうなずく。
「”戦争”の口実をつくる為よ…
ククククッ…
この世界を”暗黒世界”にしてやるの…」
姫が表情を邪悪に歪めて笑う。
その時だったーーー
「---姫……」
ジョナスが柱の影から姿を現した。
「--酷い…暗黒世界って…」
騎士アリシアが目に涙を浮かべながら言う。
姫は驚いた表情をしていたが、すぐに笑った。
そしてーー
ゴブリンを斬り捨てると、
ジョナスの方を見た。
「--なにかしら?」
証拠隠滅の為、切り捨てられたゴブリンが断末魔の叫びをあげる。
「---姫…どういうことなのです?」
ジョナスが言うと、姫は笑った
「あはははははははははっ…
どういうことも何もないわよ!
王国を守る為でしょう?ジョナスー」
笑いながら言う姫。
しかしーー。
ジョナスは目をつぶり、、、
そして、決意して叫んだ。
「--姫、、、いやーーー
魔王ダークネス!
お前の好きにはさせない!」
そう叫ぶと、姫の表情が歪んだーーー
そしてーーー
「くひひひ、、、ひははははははははは!
やっと、、やっと気づいたのかぁ!!!
あっははははははは!」
姫が狂気に染まった表情で笑う。
そして、自分の胸を両手でわしづかみにして叫んだ。
「今やこの女は我のものだ!ぐはははははは!」
汚しく笑う姫に剣を向けるジョナス。
「---ダークネス…
今すぐ、姫から出ていけ!」
「・・・断ると言ったら…?」
姫が不気味に体を震わせながらジョナスを睨む。
「----お前を、斬る!」
ジョナスが叫ぶ。
「---私も援護します!」
アリシアが細剣を取り出して構える。
彼女はフェンシングのような剣技を使いこなす。
「--くくく・・・やってごらんなさい!」
姫が叫び、、、そして…
目を赤く光らせた。
「---!?」
ジョナスが目を逸らす。
そして、次の瞬間ーーー
「えい!」
アリシアが突然ジョナスを攻撃した。
「ア…アリシア!?」
ジョナスが驚いてアリシアの方を見る。
アリシアはうつろな目で剣をジョナスの方に向けている。
「--ー貴様!」
ジョナスが姫の方を見ると、姫は椅子に座り、
足を組んで、見下した様子で笑った。
”あの赤い光かー”
ジョナスはそう思い、アリシアの方を見た。
「--姫様に逆らうものは、私が斬る…」
アリシアが感情のない声で言う。
「---くっ・・・目を覚ませアリシア!」
ジョナスは叫ぶ。
しかしーー
その声はアリシアには届かない。
「---反逆者!許さない!」
アリシアがリーチを詰めて、ジョナスに剣を振りかざした。
咄嗟に避けたジョナスは、アリシアの方を見て呟いた。
「くそっ…やるしかないのか!」
不気味に笑う姫ーー
敵意をむき出しにするアリシア―。
ジョナスの身に”死”が迫っていた…
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
②で終わる予定だったのですが
考えていた内容が予想以上に長く、
③までになりました(汗)
続きは明日です!
コメント