魔法を中心に栄えていたとある王国、
パールホワイト王国。
平和なその国に、魔王・ダークネスが魔物を放ち、
侵略を開始した。
しかしー
王国騎士のジョナスは、果敢にもこれに立ち向かい、
ついに魔王を追いつめたのだった…。
--------------------—-
パールホワイト王国に魔王ダークネスが姿を現して2年。
戦争は続いた。
王国には人間と、ゴーレムやエルフ、アンデッドなどが共存していた。
大半の種族は王国側の味方についた。
しかし、エルフは違った。
人質をとられたエルフは、魔王ダークネスにやむを得ず従い、
王国への戦争に加担した。
パールホワイト王国の姫、
パール姫は、そんなエルフの事情を察し、
極力エルフを傷つけないように騎士たちに指示。
それを知った魔王ダークネスは、
エルフを盾にするような戦術をとり、戦争は長期化していた。
ーーが、転機は訪れた。
エルフの一人が、命がけで王国騎士のジョナスに連絡を取り、
そのエルフの手引きで、ジョナスは魔王の城へと潜入した。
邪魔をするスライムや亜人をたたき伏せ、
ジョナスはついに魔王ダークネスのもとに辿り着き、
剣を交えるのだった。
剣と剣がぶつかりあう。
「--長期化する戦争。
人間とは愚かなモノだ。
さっさと我に身をゆだねれば良いモノをー」
典型的な”魔王”という感じの姿をした
ダークネスは笑う。
しかし…
「---お前は、ここで終わりだ!」
騎士ジョナスが、王国に伝わる魔術を発動した。
王国に満ちる”純白”のエネルギーが剣に注がれる
「なっ・・・その力は!?」
魔王・ダークネスが叫ぶ。
「滅び去れー魔王ダークネス!」
ジョナスが叫び、剣を振りかざし、
魔王ダークネスを真っ二つに引き裂いた。
「うぎゃあああああああ!」
ダークネスの断末魔が響きーーー
”戦争は終わった”
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ジョナス…本当にありがとう」
パール姫が、騎士ジョナスの功績をたたえる
心優しい姫は、
民にさえも慈悲の心を持って接し、
民衆からの信望も厚かった。
父が早くに死んだ彼女は、
20過ぎという若さで王国を背負うという
過酷な立場に居た。
そんな姫をジョナスは心配していた。
幼馴染でもあるジョナスは、姫の剣となり、
常にその傍らで、騎士としての任務をこなしてきた。
「---姫様、お時間です」
腹心の一人が姫につげると、
姫は微笑んだ。
「--ジョナス、本当にありがとう」
そう言ってほほ笑むと、姫は腹心と共に、
公務のために、ジョナスの前から姿を消した。
「--なに赤くなってるんだ!」
先輩騎士のケビンが言う。
「--いえ、別に…」
ジョナスは姫に好意を抱いていた。
だが、騎士としての立場上、それを押し殺しているのだ。
「--ま、いいけどよ…。
魔王も倒れたことだし、これからは俺たち騎士も、
少しは楽になるってもんよ」
先輩騎士のケビンが笑いながら言った…。
ジョナスは、これから訪れるであろう平和を思い浮かべて、
微笑んだ。
別室で、姫と腹心の男が、話をしている。
「魔王に組みしたエルフの者たちはどうなさいますか?」
腹心が言うと、
姫は優しく微笑んだ。
「彼らはやむを得ず魔王に手を貸したのです。
それを責めることなど私にはできません。」
姫が言うと、腹心が頷いた。
「エルフの皆様にも、伝えておきましょう。
咎めは一切ないということを…
彼らも心配しているかもしれませんし…」
パール姫が言うと、
腹心が突然笑い出した
「むはははははははっ!」
突然笑い出した腹心を前に、姫が驚き、顔をしかめた。
「--甘い!甘いですぞ!姫!
あなたは権力をお持ちだ!
なのに何故それを使わない?
あなたほどの権力があれば、王国を支配することなど―」
腹心が言うと、
姫は言った。
「--上に立つものは慈悲と愛を持てーー。
お父様の教えです。
私はこの国のみんなをーーー」
その言葉を遮り、腹心が笑う
「ひぃーはははははは!
慈悲ィ?愛?そんなバカげたことはやめにしましょう」
姫が怯えた表情を一瞬浮かべると、
腹心の口から黒い煙が吐き出された。
そしてーー
その煙はーー
倒したはずの”魔王ダークネス”の姿に変わっていく。
「--ひっ…、、だ、、ダークネス…」
姫が悲鳴をあげる。
ダークネスは、姫を見つめた。
「--愚かな人間よ。
我は”あえて”倒されたのだ。
この2年、我は力で貴様らをねじふせようとした。
だが、それはできなかった。
ならばーー
”内”から我が王国を支配すれば良い」
ダークネスの言葉に
姫は剣を手に取り、ダークネスに向けた。
「--あ、、あなたの好きにはさせません!」
純白のドレス姿の姫は、気丈にも叫んだ。
「くふふっ…そういう目、いいねぇ。
だが、パール姫。お前には協力してもらうぞ」
ダークネスが言う。
その言葉に姫は叫んだ
「誰があなたになんか!
あなたに協力するぐらいなら、私は命だって惜しくありません!」
そう叫ぶと、
ダークネスはニヤリと笑みを浮かべた。
「--クク…いやでもお前は我に協力する」
そう言うと、ダークネスが煙状に変化し、
姫の体を襲った
「ひっ…?」
怯えた様子の姫の鼻や耳、口から煙が入り込んでいく
「ひっ…ぐ…あっ…あああああ、、、は、、入ってこないで!」
姫が苦しそうにもがく
”壊せ”
”壊せ”
”我と一体となり、全てを壊せ”
ダークネスの声が頭に響く。
「あ、、、やめて…やめて…私は…」
頭を抱えながら姫が叫ぶ。
だがーーー
姫の思考は次第に黒い感情に塗りつぶされていく。
慈悲が消え―
愛が消え―。
「---くっ・・・あっ・・・あ」
信念をも失い、姫の目から輝きが消える。
”くははははは!
これから我の体として、、
我が姫として、、この王国を恐怖に染めてやるわ”
姫の動きが止まる。。
そしてーーー
姫は邪悪な笑みを浮かべた
「くくくく…我は、、、ダークネス…いや…」
姫が歪んだ表情で、自分の体を見つめる
「わたしが
自分自身の手でこの王国を血に染めていく…
うふふふふふ…」
姫の目には狂気が宿っていたーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
姫は黒いドレス姿で家臣や騎士たちの前に姿を現した。
ダークネスの邪気が、彼女の純白のドレスの色をも
漆黒に染めてしまったのだ。
「---」
姫は騎士や家臣たちを見つめて
表情をゆがませた。
”これからはーー
お前たちを恐怖と戦争の世界に陥れてやるー。
暗黒の時代の到来だー”
パール姫は集まった家臣たちの方を向いて言った。
「魔王は倒されました。
みなさんのお力あってのこそです。
本当にありがとうございます。
ですがーー
まだ戦争は終わっていません」
いつもよりも、自信に満ち溢れた様子の姫を見て、
騎士ジョナスは違和感を覚える。
「---戦争が終わっていない?どういうことです?」
騎士団長ユリシーズが言うと、姫は微笑んだ。
「ユリシーズ…
まだやるべきことが残っているでしょう?」
諭すようにー、
いや、見下すように姫は呟いた。
「---やること・・・ですか?」
騎士団長ユリシーズがつぶやくと、
姫は高らかに宣言した。
「魔王に組みした反逆者、エルフたちを
一網打尽にします。
私の王国に刃を向けたあのものたちを
許しておくわけにはいきません」
笑みを浮かべながら言うパール姫。
家臣たちは騒然となった。
「--お待ちください」
先輩騎士のケビンが膝をついて前に出た。
「--あら?何かしら?」
姫が高飛車な様子で耳を傾ける。
「エルフ族は姫様もご存じのとおり、
長老たちを魔王に人質に取られ、
我々に刃を向けるように強要されていました。
決して、戦争は彼らの本意ではないと存じます。
なにとぞ、姫様のご慈悲をもってお許しお願いいたします」
ケビンが頭を下げる。
すると姫は言った
「慈悲…?
うふふ・・・笑わせないで。
これからは魔王やエルフのような、私に刃を向けるものが
2度と現れないように、しっかりと懲らしめるモノは懲らしめなきゃ」
姫とは思えないような言葉に、ケビンをはじめとする騎士は動揺する。
「いい?ケビン?
エルフは一人残らず、この世から消し去るの。
私に反逆した罪よ」
姫が冷たく言い放つ。
長い髪が不気味になびく。
”魔王”は、激怒していた。
エルフが騎士ジョナスに連絡をとり、裏口から城に侵入させたのは
魔王の指示ではない。
まだ、秘術が不完全だったのだ。
結果的に姫に憑依できたが、危ないところだった。
”裏切り者”はけしてしまわねばー。
「姫!お願いします!お考えをお改めください」
ケビンが今一度頭を下げる。
「--お黙り!私の言うことが聞けないの?」
姫が声を荒げた。
「---しかし姫!それではエルフたちが」
次の瞬間、信じられないことが起きた。
「-----------!!」
騎士・ジョナスは目を疑った。
姫が乱暴に剣を引き抜き・・・
ケビンの首を剣で弾き飛ばした。
「ひぃいいいいい!?」
家臣や騎士たちが唖然とする。
返り血を浴びた姫が、剣についた血を
その舌で妖艶に舐めている。
「---これも王国を守る為よ。
私に反逆するものには、死、よ」
ケビンの亡骸と首を見て、
姫は高圧的に名を呼んだ。
「ユリシーズ…」
呼ばれた騎士団長のユリシーズが「はっ」と声を出す。
「その反逆者を片付けなさい」
そう言うと、姫は檀上へと戻り、
ユリシーズは恐怖しながら、そそくさとケビンの残骸を片づけ始めた
そしてーー姫は高らかに宣言した。
「裏切り者は死あるのみよ…くふふ・・・」
そして、不気味な笑みを浮かべた姫は叫んだ。
「これより、エルフの村を焼き払いますー!」
王宮が騒然としたーーーー
「一人残らずエルフたちを皆殺しになさい!」
姫の指示でーーー
ただちに戦争の準備がはじめられた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
たまらず、騎士ジョナスは姫の元を訪れた。
「姫!どういうことです!」
ジョナスが姫を呼ぶと、パール姫は笑った。
「---ジョナス…」
姫の目に”復讐の色”が浮かぶ。
魔王にとって、ジョナスは憎き存在だ。
剣に手をかけようとしたが、姫は思いとどまった。
「--これも、、民のためなのです」
悲しそうに言う姫。
「---姫…」
ジョナスは戸惑い、言葉に迷う。
「---私だって辛い…
でも、、エルフの中には、魔王に操られているものも
いると聞きました…
みんなの平和のため…
お父様の作ってくれたこの国を守る為…
わたしは心を鬼にしないといけないの…」
姫が目から涙をこぼす。
「姫ーーー」
ジョナスは”姫もつらいのだろう”と思い、
姫の涙にすっかり騙されて、頭を下げた。
「---わかりました。。
今は何も聞きません。
姫の仰せのままに、剣をふるいます」
ジョナスの言葉に、姫はジョナスに見えないように
邪悪な笑みを浮かべた。
今この場で、頭を下げているジョナスを
踏んづけてやりたい。
だがーー姫は思いとどまる。
”この国を恐怖と憎悪が支配する暗黒世界”にするためにー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
炎と悲鳴が上がっているーーー。
”エルフの村”は王国軍により、
火矢で攻撃され、炎上、
逃げ惑うエルフたちを騎士たちが惨殺していく。
「うふふ・・・ふふふふふっ!
あはははははははははっ!」
前線付近で戦況を見ていた姫が
狂ったように笑う。
「さぁ…もっとだ…もっと!
我に反逆したエルフどもを皆殺しにしろ!」
目を見開き、
低い声で狂気の言葉を口にする姫。
その様子に、優しかった姫のオモカゲは無い。
「---たすけて!」
ふと姫のそばに、少女と言ってもよいぐらいの年齢のエルフが
かけこんできた。
「--お願い!たすけて!たすけて!
おとうさんもおかあさんも殺されちゃった」
姫の本性も知らず、
エルフの少女は姫にすがりつく。
「--うふふ・・・可愛いエルフさん」
姫が剣に手をかけるーー
しかしーー
「ひっ・・・」
エルフの少女が、人間とは違う感覚で、
姫の背後に潜む、魔王の影を見つけた。
「---ひっ…あ、、、あくま!あくま!」
エルフの少女が逃げ出そうとする。
しかし…
「あははははあははは!死ねぇ!」
姫が叫び、剣を振りおろし、
その場に血しぶきが飛んだ。
「あ・・・・・・・」
涙を流してその場に倒れる少女のエルフ。
姫は冷たい目でエルフを見つめ、
足で踏みつけた。
何度も、、何度も…。
「私に逆らうとどうなるか!お前たちに思い知らせてやる!
全ては、私の前にひれ伏すのよ!
うふふふっ、ははははははははは!」
ーーー姫が笑い終えたころには、
少女は動かなくなっていた。
そしてーー
エルフの村は完全に焼き払われたー。
村に居たエルフは、一人残らず惨殺された。
「---ひどい・・・」
後輩の女性騎士・アリシアが言う。
「---」
騎士ジョナスもその惨状から目を逸らした。
姫は言う。
「ご苦労様。
ひとおもいで楽にしてあげたのだから、
エルフたちも、私の慈悲に感謝しているでしょう」
姫が冷たくそう言い放つと、
一同は王国に帰還した。
その日からーーー
王国は恐怖と憎悪が支配する
”暗黒世界”へと突入していくのだったーー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
反逆者としてエルフたちが皆殺しになってしまいました…
果たして、これからどうなるのでしょうか?
続きは明日です!
コメント
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
ここでもエルフの村が焼かれてる( ˘ω˘ )
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> ここでもエルフの村が焼かれてる( ˘ω˘ )
反逆者の村は焼かれる運命にあります!
ひひひ…(?)