男女の仲を引き裂くことを専門とした裏世界のお店、
”お別れ屋”
今日もそのお別れ屋に依頼人がやってきた。
しかし、その依頼は…。
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「…誰と、誰の仲を裂いて欲しいのですか?」
”お別れ屋”がそう言った。
可愛らしい女子高生のような容姿の
お別れ屋。
しかし、この体は数年前に”彼”が憑依して乗っ取った体だ。
当時、女子中学生だった彼女は、
何も分からないまま体を乗っ取られ、
大事な家族も友人も、人生も全てを奪われてしまったー。
あれから3年。
お別れ屋は時々思う。
この少女の本来の意識は今、どこに居るのだろうと。
ピクッ…
「・・・・・」
最近、お別れ屋は自分の体が時々痙攣するのを感じていた。
”前の体”もそうだった。
前は2年で、ダメになった。
”別の精神”が入り込んだ体は時として拒絶反応を起こす。
それがひどくなってきた場合は、体を乗り換えなくてはいけない。
臓器移植後に問題が起きるのと同じような原理なのかもしれない。
「--そろそろ、乗り換えか」
お別れ屋がつぶやくと、依頼人が「え?」と声を出した。
気を取り直して、お別れ屋は依頼を聞いた。
”父と娘”をお別れさせてほしいー。
つまり親子の仲を引き裂いてほしいとのことだった。
依頼人によれば父と娘は二人暮らし。
母親については、この依頼人は語らなかった。
「お願いしますーー」
お別れ屋は本来、カップルの仲を引き裂くのが専門だが、
お金になるのであれば、とこれを引き受けた。
「---」
お別れ屋にはなんとなくわかった。
依頼人の女性が、別れた母親なのだろう、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お別れ屋は父と娘の絆をズタズタに引き裂くために
あれこれ考えた。
そして、準備は完了したー。
「ふふふ…」
一人の女子高生が不気味な笑みを浮かべている。
一人で何かをしていたのだろうか。
服をはだけさせただらしのない恰好でスマホをいじっている。
「ーーーーこれ・・・買っちゃお!」
女子高生はくすくすと笑いながら、ネットショップで商品を注文したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---おはよう お父さん!」
女子高生の矢口 絵恋(やぐち えれん)が笑顔で父親に声をかけた。
「おう、今日は部活で遅いんだったよな?
父さん、今日は仕事午後からだから、
鍵あけて適当に入っててくれ」
父親の矢口 清治(やぐち きよはる)が言う。
「うん。わかった!」
絵恋がそう言うと、美味しそうに朝食のパンを食べ始めた
母はーーー
浮気して、絵恋が中学生の頃に出て行った。
親権を巡り、争いが起きたが、
母親側が、勝手に浮気をし、さらには家庭のお金を持ちだすなど、
悪事を働いたこともあって
母親側の親族からも、父側に親権を譲るべきだという意見が
噴出し、絵恋の親権は父親側に託されたのだった。
「---じゃあ、行ってきます!」
絵恋が、高校に出かけていくー。
しかし、矢口親子はまだ知らない。
既に”お別れ屋”による舞台が整っていることを…。
「お届け物です」
父が会社に行く準備をしていると、
宅急便が届いた。
父宛だったため、父はそれを開封した。
しかし、中にはーー
女性用のアダルトグッズが大量に入っていた。
「な…なんだこれは?」
父・清治は伝票を確認する。
すると…
娘の絵恋が購入したものだと言うことが分かった。
バイブやら何やら…
色々イヤらしいものが入っている。
「…絵恋…お前・・・何やってるんだ?」
父の清治は絵恋に疑問を抱くとともに、
そのいかがわしいグッズを押入れに仕舞い込んだ。
今夜、絵恋に事情を聞かなくてはならない。
だがーー、
これは昨夜、絵恋に憑依した”お別れ屋”が注文したものだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「職員室に、レポート提出しにいかなきゃ!」
絵恋の同級生、
泉川 利奈子(いずみがわ りなこ)が
職員室へ向かう。
その時だった
「うっーー……えっ・・?」
突然、自分の体の自由が利かなくなる。
「な、、なに…いやっ!
な、、何か入ってくる!
ひっ…や、、やめて!」
利奈子が叫ぼうとしたその瞬間
「ぐきっ」と何とも言えない感触がして
利奈子は意識を失ったー。
だがーーー
利奈子はそのまま立っていた。
不気味な笑みを浮かべて。
「ふふっ・・・可哀想に。
ちょっとだけ、体借りるよ。 いいかな?」
お別れ屋に憑依された利奈子が笑う。
「うんー!」
利奈子はお別れ屋の憑依を”受け入れた”
もちろんー
お別れ屋が一人芝居しているだけなのだが。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「絵恋!そういえばさ…」
教室で、絵恋が次の授業の準備をしていると、
友人の利奈子が話しかけてきた。
「---最近さ、蘭(らん)ちゃん、
付き合い悪くない?」
利奈子が言う。
天野 蘭(あまの らん)
クラスメイトの一人。
大人しく真面目なメガネ少女だが、
確かに最近は付き合いが悪く、
颯爽と家に帰っているー。
「そうね…
どうかしたの?」
絵恋がほほ笑みながら訪ねると、
利奈子は、ほほ笑んでいった。
机に座りながら話しているため、
絵恋は気づかなかったが、左手で、
利奈子は自分の体を弄びながら絵恋と話していた。
喘ぎ声をあげそうになるのを我慢しながら。
「--あのさ…
最近、実は、アンタの家に行ってるみたいだよ。
アンタが部活やってる間にさ」
利奈子の言葉に、絵恋が首をかしげる。
「え?私の家に蘭ちゃんが?
どうして?」
「---なんか、
あんたのお父さんとヤッちゃってるみたいよ」
利奈子が不気味にほほ笑んだ。
「え~~~
まさか~~~!?」
絵恋が声を上げると、
利奈子が絵恋のサラサラした髪の毛を突然触りながら
不気味に微笑んだ。
「---わたし、嘘つかないよ…
絵恋ちゃんのこと、大好きだから…」
妖艶にほほ笑む利奈子に、
その趣味はない絵恋も、少しドキッとしてしまった。
「--調べた方がいいよ! じゃ!」
利奈子はそう言うと、教室から立ち去って行った。
「お父さんが…蘭ちゃんと自宅で…?
・・・って、ゼッタイありえないし!」
絵恋はそう言ってほほ笑んだが、、
”不安”が心の中に過っていた。
ーーー一方、女子トイレの個室では
憑依されていた利奈子が泡を吹いて気を失っていた。
トイレの個室でだらしなく、倒れている利奈子が目覚めるのは
30分後のことだった…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「今日は、もう帰りなさい」
会社の女上司が、父・清治に告げた
「へー?
まだ来たばっかりですけど?」
清治が言うと、
女上司がほほ笑んだ。
「だいじょうぶ。特別に出勤扱いにして
おいてあげるから…」
40前半ながら、美貌の持ち主の女上司がささやく。
理由もよく分からないまま、清治はうなずいた。
清治が首をかしげながら
会社から立ち去るのを見て女上司は微笑んだ。
「バーカ!」
と汚い言葉を口にしながら…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
絵恋の友人の一人、天野 蘭は
今日も足早に高校を立ち去っていた。
何故なら―。
蘭は、バイトを始めたからだった。
しかし、校則でバイトは禁止。
だが、真面目な蘭がバイトをするのには理由があった。
”父”が倒れたのだー。
だからこそ、蘭は家庭を少しでも楽にしようと
バイトを始めたのだった。
「---急がなきゃ」
しかし・・蘭は異変を感じた。
「え…からだが…動かない?」
怯えた表情で焦る蘭… しかし・・・
「ひぅっ!?」
変な声を上げて、体をビクンとさせた蘭は不気味にほほ笑んだ
「ふふふ…
バイト?そんなもの知らない!
蘭はこれから…エッチしにいくの!」
蘭は嬉しそうに微笑むと、そのまま絵恋の家に向かった。
「・・・・・・・」
絵恋が背後から蘭をつけていた。
昼休みに友人の利奈子から聞いた
”蘭が最近、父の清治と密会している”という話が気になったのだ。
そして、蘭を尾行すると…
蘭はーーー
絵恋の家の前に立った。
「---ーーー」
口をだらしなく開いて、玄関前に立ち尽くす蘭。
ーーーお別れ屋が、一時的に自らの意識を半分だけ、
絵恋の父親・清治に憑依させたのだ。
清治が笑顔で扉をあけ、蘭を中に招き入れた。
「ちょ、、、お父さん…もしかして本当に」
絵恋が不安な表情を浮かべて、家に急いだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あれっ…?」
清治が不思議そうに声を出す。
今、一瞬意識が飛んでいたような…
「うふふ・・・♡」
ふと振り向くと、制服を脱ぎ捨てて妖艶にほほ笑んでいる
女子高生ー、蘭が居た
「な、、何だ君は…!?」
清治が驚いて目を見開く。
だが、蘭はそんなことお構いなしに
清治を押し倒した。
そして、欲情した獣のような表情で清治に襲い掛かった。。
「あっ・・・あっ、、ホラ、、もっと、、もっと私を
性におぼれさせてみなさい!ホラ!もっとぉ♡」
普段おとなしい蘭が喘ぎながら
女王様口調でしゃべっている。
家に入った絵恋はただごとではないと感じ、
こっそりと中へと入っていく
「あっ、、あっ、、ほらぁ、、もっと!
私をもっと、滅茶苦茶にしてぇ♡」
蘭があまりの興奮に眼鏡にヒビを入れながら、
激しく清治の体を求めている
「や…やめっ!」
唇で口をふさがれて絶句する清治。
そして清治は蘭の体を前にー
それを放出してしまった。
「うふふ・・・もっと!もっとぉ♡」
蘭が口元をゆがめて、液体を口からこぼしながら笑う。
「---お父さん!蘭ちゃん!
何やってるの!?」
絵恋が背後から叫んだ。
「え、、、絵恋ちゃん…たすけて…」
蘭は突然、気弱な”演技”をして振り向いた。
その表情はーー
いつも学校で見る大人しい蘭の姿とは別人だった。
「な…何やってるのお父さん!」
絵恋が叫ぶ。
「こ、、これは違う!これは!」
父の清治が叫んだが、
「うっ」と低いうめき声を出して、言葉を止めた。
「---いやああああああっ!」
蘭が悲鳴を上げる。
”お別れ屋”はあえて、体がすぐに意識を取り戻す様に
脳を刺激して蘭から離脱した。
そのため、蘭はすぐに目を覚ましたのだ。
「な、、なに、、、なに…
ひっ…わたし、、どうして…」
蘭がパニックを起こして、自分で脱ぎ捨てた制服をかき集める。
「ら、、蘭ちゃん!落ち着いて!」
絵恋が叫ぶが、蘭は錯乱状態で服を着ると、
そのまま泣いて走り去ってしまった。
「お、、お父さん!蘭ちゃんに何をしたの!?」
絵恋が怒りっぽく言うと、
お別れ屋に憑依された父・清治は笑った。
「ははは!お前の友達、可愛いからさ、
一度さらってやろうと思ってたんだよ!」
清治が言う。
「う、、、うそ…」
絵恋が唖然とする。
父が、、本当に…
「父さんだって男なんだよ。
JKを欲して何が悪い!」
父・清治の悪びれない様子に絵恋は叫んだ。
「ふざけないで!犯罪だよ!お父さん!」
そう言うと、父・清治は、うつろな目になって、
「ふふふふ・・・」と笑い出した。
お別れ屋の意識が半分、父から離脱したーー。
「ひっーー!?」
絵恋が体をビクンとさせて、
不気味に笑みを浮かべた。
そしてーー
父に残っていたお別れ屋の半分も離脱しー、
父は意識を取り戻した。
「---え、、絵恋?もう帰ってたのか?」
もうろうとした意識で父が言う。
絵恋は笑う
「おかえり おとうさん♡」
甘い声で囁く娘に違和感を感じる父。
そしてー
「私が注文しておいた、大人のおもちゃ、
受け取っておいてくれた?」
絵恋がほほ笑む。
父は、朝届いた荷物のことを思い出す。
「お、、おい絵恋!やっぱりお前が…
ど、どうしてあんなもの頼んだんだ!?」
父が問い詰めるーーー。
するとーー
「こうするためよ!輝也(てるや)くん!入ってきて!」
絵恋が呼ぶと、
玄関から、輝也と呼ばれた金髪の男が入ってきた。
”お別れ屋”の半分がそこらへんで憑依した
見知らぬ男だ。
正直、名前も知らないが
適当に輝也と呼んだ。
「--輝也とエッチするために決まってるでしょ!」
笑う絵恋。
輝也と呼ばれた男はニヤニヤしている。
「---お前・・・」
絵恋は突然、乱暴に押入れを開けて、
大人のおもちゃの数々を取り出した。
注文してあったものの一つ、
メイド服を見つめると、絵恋はその場に服を脱ぎ捨てて
メイド服に着替えた。
「---うふふ、おとうさん!
わたしと輝也君のエッチ、見ててね!」
絵恋がそう言うと、
輝也と呼ばれた男がズボンをおろし、
絵恋が、輝也のそれをなで始めた。
「ご主人様…絵恋、ご奉仕しますね♡」
輝也のそれは巨大化している。
「--絵恋!やめなさい!
お父さんの言うことが聞けないのか!」
父は叫んだ。
だが、絵恋は父の顔に唾を噴きかけた。
「黙ってろよ、ジジイ!」
そういうと、
絵恋は顔を赤らめて嬉しそうに、輝也のそれを咥えて、
絵恋も輝也も喘ぐような声をあげている。
「え、、、絵恋ーーー」
唖然として膝をつく父の清治。
そしてー、
絵恋は輝也のそれを美味しそうに頂いてしまったーー。
口元をゆがめた絵恋が、輝也に帰るように促すと、
輝也はそのまま帰って行った。
ーーメイド服姿の絵恋が笑う。
”お別れ屋”はこのタイミングで絵恋を解放したー。
「え、、わ、、私・・えっ…いやっ!?」
絵恋が自分の姿を見て悲鳴をあげる
「絵恋!お前、、、」
父に気付き、絵恋は悲鳴をあげる
「いやあああああっ!
わ、、、私にこんな格好させてどうするつもりなの!?」
絵恋が言うと、清治が叫んだ
「今度はとぼけるのか!?
絵恋、あんな男とどういうつもりだ?」
清治の言葉に絵恋も反論する
「---い、、いや!寄らないで!
わ、、私に近寄らないで!」
泣き叫ぶ絵恋。
父は、娘のあまりの情けない行為に
手を挙げてしまったー。
「--絵恋!いい加減にしろ!」
絵恋は叩かれた場所を抑えながら叫んだ
「お父さんなんか、、大っキライ!」
ーーーそして、その親子喧嘩は…
夜まで続いた…
お別れ屋が、
離脱の瞬間に二人が、今の状況に疑念を抱かないように
ある調整をしておいた。
それゆえ、二人とも相手の言い分を聞かず、
相手に不信感をぶつけ続けた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1週間後も、
二人の溝は埋まることがなく、
絵恋は、母親の方に移り住むことになった。
「・・・・・・絵恋を頼む」
悲しそうに言う父・清治。
母は不気味に微笑んで、絵恋の身柄を引き受けた。
「お母さん…」
絵恋が悲しそうに母の名を呼んだ。
母は”娘を取り戻した”
空を見上げて母は呟いた
「ありがとうー”お別れ屋さんー” と」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
振り込まれた金額を見て微笑んでいる
お別れ屋。
そんな中、また新たな客がやってきた。
監視カメラで映像を確認する。
女子大生かー。
お別れ屋はそう思った。
「あのーーお願いがあります」
女子大生は依頼を説明した。
彼氏を略奪されたから取り戻したいー。
彼女との仲を引き裂いてくれ、というものだった。
「---分かりました」
お別れ屋はいつものように依頼を引き受けた。
礼をして、
お別れ屋の建物から出た女子大生風の女は
スマホを手に呟いた。
「”捜査対象”に接触…
とりあえず、依頼をしておきましたー」
彼女は、女子大生などではなかったー。
警察内部の特殊捜査を行う部署の人間だった・・・
お別れ屋に、捜査の手が迫っていたー。
③へ続く
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コメント
明日でお別れ屋とはお別れかもしれませんね~(?)
憑依能力があれば、確かにビジネスにはできそうですよね。
コメント
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父親への不信感を煽るためというのは分かりますが、アダルトグッズを男とやるために買うってのはおかしいかなーって思います。
主にひとり用ですからねアレ。
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> 父親への不信感を煽るためというのは分かりますが、アダルトグッズを男とやるために買うってのはおかしいかなーって思います。
> 主にひとり用ですからねアレ。
作中での意図は一応、男の目の前で使って、自分の姿を見せつけるためでしたが
確かに読み返すと、二人で使うような感じになってますね(笑)
今後の参考にします!ありがとうございます!
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捜査機関の魔の手が( ˘ω˘ )
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> 捜査機関の魔の手が( ˘ω˘ )
お別れ屋、なんてやってたら調査が入りますよね^^