<憑依>リアルデュエリストVol6 俺は患者を助けたい

カードが現実化する謎の力。

それを用いて、外科医、成宮 龍は患者の命を
カードで救っていた。

しかしー
それを良く思わない人物も居た。

病院内の陰謀に巻き込まれた成宮の運命はー。

※リアルデュエリストVol5の続きです。

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九十九医師が、成宮の自宅で、カードをスリーブで
抜いた翌日ー。

カードの効力は失われ、
病院は大混乱に陥っていた。

成宮の研究で”スリーブに入れていればカードの効果は持続する”ことが
分っていた。
だからこそ成宮は、患者の治療に使ったカードをスリーブに入れ、
それを大切に保管していた。

しかしー。
鬼柳外科部長の指示を受けたDr・九十九が、
そのスリーブを全て外してしまったのだ。

「---責任は、全て俺にあります」
成宮が頭を下げる。

成宮は、全ての罪を被るつもりだった。
“カードを医療に”それが、間違えだったのかもしれない。

”人間の超えてはならない領域”に
足を踏み入れてしまったのかもしれない。

お注射天使リリーの姿になっていた看護師の孔雀 淳子も、
元の姿へと戻ってしまい、今日はヒステリックだ。

成宮は確認していないが、性別の問題で苦しんでいた
あの男子高校生も、恐らく、調律の魔術師の姿から、
元の男子の姿に戻っているのだろう…

「---その必要はないよ」
志島院長が呟いた。

「はーー?」
成宮が顔を上げると、志島院長は不気味に微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

スタッフが集められ、緊急の集会が開かれた。

成宮が治療した患者が、
一夜にして大量死したことについて。

もちろん、リビングデッドの呼び声の効力が切れたことによる死だ。

「---どう説明するのかな?
 ”満足”のいく説明を私にしてみろ!」

鬼柳外科部長が怒鳴り声を上げる。

「-----」
成宮のライバル外科医・九十九がその様子を見つめている。

「---これをご覧下さい」
成宮が一枚のカードを発動した。

”真実の眼”というカード。

リアル化の能力はー、
本来のテキストとは違う、思わぬ効果を発揮することがある。

”真実の眼”もそのうちの一つ。
物事の裏側ー。
つまり真実をその場に投影する力を”リアル”では発揮してくれる。

真実の眼を発動すると、
昨夜、九十九医師が、成宮の自宅のカードのスリーブを
破り捨てている場面が映し出された。

「こ、、、これは・・・」

会場が騒然とする。

「---私のリアル化は、スリーブにカードを入れた状態であれば
 永続的にカード効果が保たれます。
 ですが、昨日、九十九医師によって、ご覧の通りーー」

成宮がそう説明すると、
九十九が叫んだ

「で、、でたらめだ!」

だがーーー
会場内は、、、
病院内のスタッフ達は、ほぼ全員が九十九医師を白い目で
見つめていたー。

「ち…違う…違う違う!」
Dr九十九は、成宮のほうを見つめた。

「---くそっ…」

集会は終わった。

成宮の医術を妬んだ九十九による問題行為、という
結論でー。

もちろん、死んでしまった患者には相応の説明が必要だ。

だが、志島院長はそれすらも”リアル”の力でもみ消そうとしていた。

「-----」
イマイチ釈然としない様子の成宮を見て
志島院長は笑う。

「君のリアルの力は、我が病院にとって必要だ。
 失うわけにはいかない。

 それに、君だって、患者を助けたい、という気持ちがあるだろう?
 ならば、ここは九十九君を犠牲にするしかない」

志島院長の言葉に戸惑いながらも
成宮はうなずくしかなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

Dr九十九は、鬼柳外科部長から呼び出されていた。

「---くそっ…私はまだ終わらんぞ…
 かっとびんぐだ私…」

意味の分らないことを口走りながら、Dr九十九が
鬼柳外科部長の部屋を訪れた。

「---お呼びでしょうか?」
九十九が言うと、鬼柳は笑みを浮かべた。

「--君に”後任”を紹介しておこうと思ってね」
鬼柳がそういうと、
“入ってきたまえ”とトビラの外に叫んだ。

するとーーー、
若い美人医師が入ってきた。

「うふふ…よろしく。あなたが九十九先生?」
妖艶に微笑む女性医師。

「Dr,真崎…君の後任だ」

鬼柳外科部長が言う。

その言葉に九十九が反応した。

「後任?では、私は!?」
九十九医師が叫ぶと鬼柳が首を振った。

「--君じゃ、私を満足させられないー」

そういうと、鬼柳は真崎を見て、不気味にうなずいた。

そしてーー
「ごめんなさいね…九十九先生」

Dr・真崎がーーー
カードをかざしたーーー。

”墓場からの呼び声”

「------!!」
九十九が驚いて目を見開いた直後…
地面から這い出た謎の手に九十九医師は引きずりこまれて、
悲鳴とともに九十九医師は”この世から消滅”した。

「---Dr真崎…
 君は、私を満足させてくれるな?」

鬼柳外科部長が言うと、
真崎は微笑んだ…。

「もちろんです…鬼柳外科部長…」
真崎は妖艶に微笑んだ…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

廊下で成宮と真崎がすれ違う。

見慣れない女に、成宮が足を止めた。

「---見ない顔ですね」
成宮が尋ねると、真崎は振り返った。

「ふふ…始めまして。
 私は真崎 瑠璃(まざき るり)
 よろしくね♪」

色気を振りまく真崎。

だが、その顔立ちは幼く見える。

「その歳で良く外科のーーー」
成宮が言いかけると、
彼女はカードをかざした。

”ブラックマジシャンガール”

そのカードはスリーブに入っている。

そしてーー
Dr真崎の顔は、、ブラックマジシャンガールそっくりだった。

黒髪にしていて、白衣だからイマイチ分りにくいが…

「まさかーー」
成宮が言うと、真崎は笑った。

「そ、私もあなたと同じ、リアルの力を持ってるの。
 これから、よろしくね」

真崎は微笑みながら立ち去っていくー。

そもそもーー
彼女は”女性”ではない。
元々はーーー。

だが、彼女は過去を全て捨てて、隠し、
真崎 瑠璃として新しい人生を送っているのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから、2人は
鬼柳外科部長、志島院長の二人によって
競い合わされた。

鬼柳外科部長は、Dr真崎を、
志島院長は、Dr成宮を利用し、
医学会の更なる上を目指そうとしていた。

「--薄幸の美少女!」
成宮がカードをかざすと、中年男が美少女の姿に変わる。

「すっ…すげぇや…!」
薄幸の美少女が叫ぶ。
自分の体をいやらしくべたべた触りながら。

「---」
成宮がしたかったのはこんなことではない。

患者を、カードで助けたいだけだ。

だがー。
志島院長からの指示で
“人の姿を変えてあげる診療”も始めることになってしまった。

「---コレは、、俺の求めた答えじゃない」
成宮はつぶやく。
少し、悔しそうに。

一方で、Dr真崎も、リアルの力を使い、オペをこなしていた。

「”死者蘇生”」
Dr真崎がかざすと、患者がたちまち息を吹き返した。

「---ふぅ…」
真崎がオペ室の上を見る。

そこには鬼柳外科部長が座っていた。

「サティスファクションー」
鬼柳外科部長が
Dr真崎のオペに賞賛の手術を送った。

彼女は女の体を駆使して
死者蘇生のカードをかき集めた。

元は男ー。
誰もそんなことはしらなくていい…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それからも、二人はリアルの力を使い、
オペをこなしていった。

志島院長はDr成宮を利用して、

そして鬼柳外科部長はDr真崎を利用して、

自分の立場を磐石のものにしようとしていたのだ。

そしてある日。

「Dr真崎…」
鬼柳外科部長が言う。

「--今日、成宮くんには失脚してもらう。
 これからは君、一人の時代だ」

鬼柳外科部長の言葉に
Dr真崎は、可愛らしい顔に笑みを浮かべた。

「---と、いいますと?」

その言葉に鬼柳がうなずく。

「まぁ、君が気にすることではない。
 とにかく、君にはこれまで以上にリアルの力を
 使ってもらうことになる。

 よろしくたのむよ」

鬼柳外科部長はDr真崎の肩を叩いた。

それにしても、見事な体だ。。
本当は男だとはな…

鬼柳は、内心で少しだけリアルの力を羨ましく思った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「これより、オペを開始する」
Dr成宮が、オペを開始した。

今回の患者は、とある大企業の一人娘。
とある病気で、もう助からないといわれていた子だ。

しかしー。
成宮はリアルの力でこれを治療すべく、
この病院に彼女を迎え入れた。

「レッド・ポーション」
そのカードを使えば、彼女を助けることができる。

志島院長と鬼柳外科部長が上からその様子を見つめている。

「--レッドポーション」
成宮が言うと、助手が成宮にカードを手渡した。

そのカードを手にして、
成宮は目を見開いた。

「死のデッキ破壊ウイルス」

ーーー!?

成宮がハッとして、患者の娘を見つめる。
すると、彼女に異様な斑点が現れ始めていた。

「こ、、これは!・・・」
成宮が焦る。

「---おい、貴様!」
成宮が助手の胸倉を掴む。

しかし助手は怯えた様子で
「だ、、だって…頼まれたから…」と
苦しそうに呟く。

そう、鬼柳外科部長の罠だったー。
大企業の娘を完全に死なせ、
成宮を失脚させる罠ーー

成宮は助手を怒鳴りつけ、
オペ室に用意したカードを広げるように指示したー。

カードはどれも、オペに使えないものだったーー。

「---くっ」
成宮は思う。

これは鬼柳外科部長の罠だと。

「--貴様!それでも医者か!?」
成宮が叫ぶ。

すると鬼柳外科部長はニヤッとして答えた

「私はリアリストだー」

リアリスト、、
現実的に障害を排除しようとしているのだろう。

そのときだったー

オペ室に美しい女性ーー
Dr真崎が入ってきた。

「神の宣告ー」
真崎がカードをかざすと、
死のデッキ破壊ウイルスが無効となり、消失したー。

「--な!」
鬼柳外科部長が驚いて立ち上がる。

「ーーお前」
Dr成宮が言うと、Dr真崎は微笑んだ

「リアルの力を持つもの同士、
 支えあっていかないとね?
 
 ふふっ…じゃ、続き、やりましょ?」

真崎の言葉に成宮はうなずくー。

そしてーーー
オペは成功したーー。

「----すまない、助かった」
成宮が言うと、
真崎は静かに微笑んだーー。

その様子を見ていた志島院長は満足げに笑う。

”あの2人さえ居れば、
 私は大金を手にすることができるー”  と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

成宮が休憩スペースに居ると、
Dr真崎がやってきた。

「お疲れ様」
真崎が可愛らしくウインクするー。

元は男だったとは信じられない。

「---何か用か?」
成宮が言うと、真崎は微笑んだ。

「私たち…このままだとさ…
 鬼柳と志島の”駒”として使われるだけだよね…?」

Dr真崎が言う。

成宮にもそれは分っていた。
自分は志島院長に利用されている・・・と。

「ねぇ…私たち2人で、病院を変えない?」
Dr真崎は言う。

鬼柳と志島を葬り去って、
この病院を手に入れないか? と。

そしてカードを使い、
患者のための医療を実現しよう、と。

「--私が今夜、鬼柳外科部長を葬るわ。
 あなたは、志島院長を…」

Dr真崎が、”妖刀竹光”という魔法カードを手に笑う。

「---・・・」
黙る成宮。

だが、真崎は言う。

「ねぇ…アナタも患者を救いたいでしょ?
 お願い…あの2人がいる限り、
 そんな理想は実現しない…

 あの2人を消す必要があるのよ…」

成宮は考えた末にうなずいた。

「わかったー」

その言葉に真崎は微笑む。

しかし、成宮は「だがー」と言葉を付け足した。

「俺は…医者だ。
 たとえカードでも、人は殺さない」

そういうと、真崎は微笑んだ。

「甘いのねー。
 でも、嫌いじゃないわ…」   と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。

鬼柳外科部長の部屋を
Dr真崎が訪れた。

相変わらずの美貌だ。

「---何かね?」
鬼柳は、書類に目を通しながら言った。

「鬼柳外科部長…」
Dr真崎が一枚のカードをかざした。

”遺言状”

「---何のつもりだ?」
鬼柳外科部長が驚いて言う。

「---まさか君…死ぬつもりなのか?」
リアル化した遺言状を手に笑うDr真崎を見て、
真崎が自殺でもするのかと思い、焦る鬼柳外科部長。

「------ふふっ…バカね」
真崎はバカにするように笑った。

そしてー
リアル化した”妖刀竹光”で鬼柳外科部長を突き刺した。

「く・・・おっ・・・」
驚いて目を見開く鬼柳。

真崎はクスクスと笑いながら言う。

「遺言状はーー、
 あなたの遺言状ですーー」

そういうと、鬼柳がうめき声を上げながら呟いた。

「こ…こんなんじゃ……満足でき・・・な・・・」
そのまま崩れ落ちる鬼柳。

Dr真崎は遺言状を机に放り投げ、
何枚かのカードを使って、証拠を完全に隠滅、
鬼柳外科部長の自殺に見せかけてその場を立ち去った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

志島院長が、外人と電話で話している

「Oh、その通りです。
 うちの成宮は、優秀な”金の成る木”だ。

 彼を使って、私はまだまだ上り詰めますよ」

ちょうど、院長室にやってきていた成宮はその声を
聞いてしまった。

「---やはり俺は…
 利用されていただけか…」

ため息をつく成宮。

そして、ノックもせずに部屋に入った。

「----成宮君?」
志島院長が驚く。

「---俺は…金が欲しいんじゃない」
成宮が言うと、志島院長が、首を傾げる。

「俺は、、、俺はただ、、
 患者を助けたいんだ!」

そう言って、成宮は
モンスターカード”ワイト”をかざした。

するとーーー
志島院長の姿がワイトに変わったー。

カチカチカチカチと骨の音を立てて
パニックになる志島院長・・・ いや、ワイト。

「--俺はアンタを殺さない…
 でもな…
 アンタは患者じゃなくて金を見ている。
 いや、金しか見ていない。

 そんなアンタにここに居てもらっては困る。。
 出て行ってくれ!」

成宮が叫ぶ。

ワイトはカチカチと音を立てることしかできない。

そしてーー

翌日、ワイトはいずこかへと姿を消したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1週間後。

病院では
真崎新院長、
そして成宮副院長が就任していた。

もちろん、色々なカードの力を使った上で…だが。

「俺達は、カードで患者を救う」

「そうねー。頑張りましょう」

2人はお互いに握手をし、微笑んだ。

2人はーーーー
“理想の医療”を実現するために歩み始めたー。

院長室に戻ったDr真崎は微笑む。

机に、中年のみすぼらしい男の写真が入っているー。
Dr真崎の”元々”の姿だ。

「ふふっ・・・リアル化の力・・・
 これさえあれば、、患者を助けることだけではなくて・・・」

真崎は不気味に微笑む。

彼女は、患者を助けることだけでなく、
様々なカードをリアル化することに”好奇心”を覚えていた。

そしてーーーー

その好奇心は

”歪む”

「…こういうカード、発動したら、どうなるか気になるよね・・・
 うふふ…」

Dr真崎の手には
”終焉のカウントダウン”のカードが握られていた…。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

Vol5、Vol6と続いた医療モノは終了です!
リアル化の力は確かに医療に使えそうですよね(笑)

終焉のカウントダウン…
発動しちゃったら、、、どうなっちゃうのでしょう?

コメント

  1. 柊菜緒 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    また世界が一つ滅ぶのか( ˘ω˘ )

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > また世界が一つ滅ぶのか( ˘ω˘ )

    カードで世界が滅ぶことは遊戯○ではよくあることです!