結婚式当日。暴走車によって命を落としたとある女性の
残留思念はー姿を変えて
”赤いドレス”として現世に蘇えった。
あの時、自分の体から流れた血の色に染まったドレス。
彼女の目的はー
”結婚式をやり直すこと”
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「ド…ドッキリですよね?これ…?」
幸也が、赤いドレスを身にまとい妖艶にほほ笑む美沙から
目を逸らして、美沙の両親の方を向いて言った。
だが、両親は美沙が口から放った赤い触手のようなもので
拘束されている
「ゆ、、幸也君!にげろ!」
美沙の父親が叫んだ
「---え…ちょ、、ど・・・ドッキリにしちゃ、性質が悪すぎですよ…」
出席者たちも戸惑っている。
幸也の両親も困惑している。
「冗談?へぇ…」
美沙がバカにしたように笑う
「私の結婚式が冗談?
10年前…私は彼との結婚式に向かう途中、事故にあって死んだの。
私があの日、どれだけ結婚式に行きたかったか分かる?
あなたになんか分からないよね!?」
美沙が怒りと、、くやしさを滲み出して叫ぶ。
「-ちょ、、ちょっと待ってくれよ。
もう終わりだ 終わり。
ホラ、美沙、見ろよ…
みんなも戸惑ってる」
現実主義の幸也は、あくまでも
これは”ドッキリ”だと思っていた。
「ドレスに乗っ取られるなんて、
無理がありすぎだぜ 美沙!
もうちょっと設定を」
そこまで言うと、美沙が恐ろしい形相で叫んだ
「わだしを、、ばがにするのか!」
喉の奥で粘着性の何かが絡んでいて、
声を聞き取りにくい。
「--み、、美沙」
幸也が戸惑う。
そしてーー
「信じられないのなら、じんじさぜてやる!」
そう言うと、美沙は再び大口を開いた。
口が裂けてしまいそうなぐらいに。
そして美沙の口から、美沙の口の大きさを超えるほどの
太い触手のようなものが出てきた。
「ぐぼ、、、ご、、、が、、、、あ、、、、あ」
美沙が苦しそうにうめき声をあげている。
唇が少し裂けて血が流れ出す。
「おい!美沙!もうやめてくれ!美沙!」
「ど・・・どげ!」
美沙の腕に思いっきり突き飛ばされて幸也がよろめく。
「きゃあああああ!」
幸也が叫び声の下方向を向く。
美沙の口から伸びている触手がーーー
出席していた幸也の妹ー
現役女子大生の聖奈(せいな)に突き刺さっていた。
「お、おい!聖奈!」
幸也が慌てて駆け寄るがー。
聖奈はーーー
美沙の触手に”生命力”を吸い取られて、
一気に老化し、その場にボロ雑巾のようになって倒れた。
ヨボヨボで骨と皮だけの状態になっている。
「--セ、、、聖奈!聖奈!しっかりしろ!聖奈!」
聖奈はうつろな目で虚空を見つめている
「ひーーー、ひーーーー」
弱弱しい息をする聖奈。
「--これで、信じてくれた?」
触手は消え、元の笑みを浮かべている美沙。
「ーーま、、まさか本当に…!」
幸也が叫ぶと同時に、幸也の父と母、
そして他の出席者たちが悲鳴をあげて会場から逃げ出そうとした。
「逃がさないー
”私”は結婚式をするのー。」
美沙が言う。
そしてーー
会場の入り口に赤いイバラのようなものが現れて
扉が封鎖された。
「---くっ」
幸也が妹の聖奈をさすりながら、美沙の方を見る。
赤いドレスはーーー
本当の意味でのドレスではないー。
かって結婚式当日に死んだ女性の残留思念が、
具現化しているに過ぎない。
だからこそー触手やイバラ…、あらゆるモノに
姿を変えることができるー。
この式場では、数年前にも一度、猟奇事件が起きている。
その時はー
”赤い指輪”が事件を起こしたー、と、そういう噂になっていた。
ーーー10年前、結婚式当日に死亡した彼女はーー
”この式場で結婚式”を挙げるはずだった。
だからこそー
この場所に残留思念として、彼女の怨念が残っているのだった。
「--私と、、結婚式しよ?幸也♡」
甘い声で誘惑する美沙。
違うーー
これは美沙じゃない
「俺はーーー
俺は・・・・」
戸惑う幸也に美沙は色っぽいポーズをとった。
「---うふふふふ…
照れなくていいのよ…?」
幸也は顔をそむけた。
美沙はこんなことする子じゃないー。
「--俺は、俺が好きなのは!
美沙だ!
お前じゃない!
とっとと、美沙の体から出ていきやがれ!」
そう叫ぶと、美沙の表情が豹変した。
そしてーー
今度は耳から赤い塊が出てきた。
「---うわあああああ!」
招待客たちが悲鳴をあげる。
美沙の耳から出てきた赤い物体は
”女性の顔”を模した形になっていた
「いいから、黙って結婚しなさい」
美沙と赤い顔が同時に同じ言葉を言う。
美沙の体が時々、痙攣している。
憑依されていることで、何か悪影響を及ぼしているのかもしれない。
赤い塊が耳の外に出ているせいだろうか。
美沙の体は上手くバランスがとれていない。
うつろな目をし、口元からだらしなく涎をこぼしながら
体をガクガクと震わせている
「お、おい!美沙!美沙!目を覚ませ!おい!」
幸也は叫ぶ。
だが、美沙はうつろな目をするだけで、
意識を取り戻さない。
「---私と…結婚しよ♡」
赤い顔と美沙が同時に微笑む。
意識のない表情の美沙の微笑みはーー
不気味だった。
「---ふざけるな!
10年前の事故?んなこと知るか!」
幸也が叫ぶ。
「---アンタが誰だか知らないけど
さっさと消えろ!クソババア!」
幸也は妹を干物のようにされ、
最愛の彼女を好き勝手操られている現状に
怒り心頭だった。
このドレスに形を変えた女性がいくつだったかは知らないが、
侮蔑の意味を込めて、そう叫んだ。
「----許さない!
許さない!許さない!」
赤い塊が美沙の耳の中に戻ると、美沙が突然、怒り狂ったように歩き出した。
そしてーー。
幸也の母親の前に行くと、美沙は母親の首を絞めた。
「お、、、おい!」
幸也が駆け寄り、美沙の手を引きはがそうとする。
「----やめろ!やめろ!」
だがーーー
”なんて馬鹿力だー”
とても、美沙の力ではない。
そしてーー美沙の顔は”狂気”に染まっていたー
赤いドレスを着た美しい美沙がー
幸也には悪魔に見えた。
幸也の母親の顔色が青ざめていく。
「わ、、、わかった、、わかった!もうやめてくれ!
結婚するから!」
そう言うと、美沙が手を離した。
「うふふ…嬉しい♡」
機嫌を取り戻した美沙は再び前へと戻る。
「--・・・・」
幸也は出席者たちの怯えきった顔を見て、
”美沙”を取り戻せるならー
とそう決心したのだった。
「---わたしのこと、愛してる?」
美沙が訪ねる。
「---あ、あぁ…美沙」
幸也が言うと、美沙は舌打ちをした。
「私は美沙じゃない。
私は晴海(はるみ)…
晴海って呼んで!」
美沙が自分の名では無い名前を名乗る。
「は、、、晴海…」
幸也が言うと、
美沙は微笑んだ
妖艶の幸也の方に歩いてきた美沙は
幸也に熱いキスをした。
「---くっ・・・」
幸也は押し返そうとしたが、、、
従うほかなかった。
美沙が興奮したような声をあげながら、
舌を幸也の舌にからめさせた
「んっ…んん…」
声を出す美沙の表情は、幸せそうに頬を赤らめていた。
「----くそっ」
美沙の意思ではなく、美沙にそんなことをさせている
晴海とやらが許せなかった。
だがー
どうすることもできない。
「---うふ…っ…幸也くん♡」
唇を離した美沙が幸せそうにつぶやいた。
「----み…い、いや…晴海…」
幸也の中に不安がよぎる。
美沙は解放してもらえるのだろうかー?
と。
「---な、、なぁ…美沙は、、、
美沙は返してくれるんだよな?」
幸也が問いかけたー。
「…ふふっ、服のことなんか心配しなくていいの」
美沙が言う。
”服”とは美沙の体のことだー。
「--ふざけるな!美沙は服なんかじゃない!
美沙はちゃんとした人間でーーー」
「これは、服なんだよ!」
美沙が自分の顔をつねくりながら笑う。
「いい?幸也!
服よりわたしを見て、わたしを!」
美沙がドレスを指さす。
「服がどうなろうと関係ないでしょ!?
アンタは私を見るの!
ホラ!見ろよ!もっと、私を見ろ!」
美沙が怒り狂った様子で叫び、幸也の頭を
わしづかみにして、自分の赤いドレスに押し付けた
「や、、やめろ!離せ!」
幸也が叫ぶ。
「--これが私よ!
どう、可愛いでしょ?可愛いっていってごらんなさいよ!
ホラ!ホラ!」
幸也の頭をグリグリと胸のあたりに押し付ける。
「---や、、、やめ!」
「美沙は私の洋服になったの!
だから、あんたと結婚するのはわたし!」
ーーーその言葉はー
ドレスがーーー、美沙を解放する気がないということを意味していた。
「ふっざけるなぁ!」
幸也はぶち切れた。
美沙を突き飛ばし、
美沙に襲い掛かる。
赤いドレスを美沙から引きはがそうとした。
「ううううううううううううう」
ふと、美沙がうめき声をあげた。
「----み、、、美沙?」
幸也が言うと、
美沙が笑った。
目が真っ赤に染まっているーーー
「お前も、、私と結婚しないのか!」
美沙が震えながら言う。
「結婚してもらえない”服”に用は無いわ!」
美沙はそう言うと立ち上がった。
「や、、やめろ!何する気だ!」
幸也が叫ぶと、美沙は笑った
「--決まってるじゃない
使い終わった服は”捨てるでしょ?”」
美沙が不気味にほほ笑んだ
服を捨てる―
それは、つまりーー
「やめろぉぉぉぉ!」
幸也が叫んだ。
そしてーー
美沙が一瞬涙をこぼした
「たすけて・・・ゆきや・・・」
幸也にはそう聞こえた。
次の瞬間…
美沙の目から、鼻から、口から、耳から…
ありとあらゆる場所から大量の赤いドロドロした物体が噴き出した。
「ぐぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぉ」
美沙の体が膨張する。
「---やめろ!やめろ!」
幸也が叫ぶ。
しかし、美沙の腹部や頭部は
ありえないほどに膨張していた。
そしてーーー
パァン!!!
美沙の体が”破裂”したーーーーー
美沙から飛び出した”赤いスライム”のような大量の物体は、
会場の出席者たちを襲う。
「美沙ぁあああー」
美沙の両親が叫びながら赤い物体に取り込まれる。
幸也の両親がー
そして干物になった妹がーーー
次々と取り込まれていく…
そしてーー
「や、、やめろ・・離せ!離せ!」
幸也もーーーーー。
新郎の姿をした幸也もーー
赤い物体に取り込まれた・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数時間後。
警察官や救急隊員が、
式場を訪れた。
赤い物体に取り込まれる直前、
出席していた幸也の女友達が、
スマホで110したのだった…。
「---これは…酷いな」
警官隊が目をそむける。
そこにはーーーーー
”干物”のような姿になった人間たちがーーー
横たわっていた。
「--全員、死んでます」
救急隊員が首を振る。
「--なんてこった…」
幸せの絶頂だったはずの結婚式は
一瞬にして壊されたーー
一人の女性の怨念と化した残留思念によってーー。
警官隊が突入した時には、
既に赤いドレスは無くなっていた…。
結婚式を一つ台無しにしたことで、
一時的に”残留思念”が晴れたのだ。
けれどもー
この式場にいつかまた”彼女”は戻ってくるだろうー。
車に飛ばされた10年前。
自分の体から流れ出た血の色をした”何か”となってーーー
指輪かー
ドレスかー。
また何年かの後に
彼女は必ず姿を現すに違いないー。
”何かの姿”となってー。
もしもあなたが結婚式に出るのであれば
”不自然に赤い色”をしたものには気をつけなければならない。
それは、”彼女”かもしれないのだからー。
おわり
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コメント
なんかオカルトっぽい作品に(汗)
ずいぶん前に1回、延期したきり書いてなかった作品ですが
こうして無事にかけてよかったです!
ありがとうございました!
コメント
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これはヤバい
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> これはヤバい
恐怖ですねコレは…(笑)