コンビニでバイトをしている俺はこう思っていた。
「強盗?そんなの余裕だよ」 ーと。
強盗なんて入ってきたら、適当にあしらいつつ、通報
してやれば良い。
いざとなればスポーツ万能な俺がその場で取り押さえてもいい。
そう思ってたー。
あの日まではー。
———————————-
俺は張本 斗真(はりもと とうま)。
自分で言うのも何だが、ごく普通の大学生だ。
大学進学後、地方から出てきて、現在は一人暮らしをしている。
学費うんぬんを稼ぐために、深夜はコンビニでバイトをする毎日。
決して楽な生活ではないが、日々、充実している。
今日もこれからコンビニでのバイトだ。
俺は落花生をぼりぼりをかじりながら
ニュースを見つめた。
美人アナウンサーが、事件を伝える。
”昨夜、深夜2時ごろ、都内のコンビニで
強盗事件がありました。
犯行に及んだのは、被害のあったコンビニで働く
長野 愛子(ちょうの あいこ)容疑者(22)”
落花生の殻をビニール袋に入れながら俺は、
テレビに映し出されたコンビニ強盗の容疑者、愛子の
写真を見る。
「へぇ~こんなかわいい子がコンビニ強盗か。
よほどストレスがたまってたんだろうな」
俺は呟く。
テレビ、その子の友人が取材を受けている。
涙ながらに「長野さんは、そんなことする子じゃないんです」と
そう訴えていた。
「はっ、、その子の本性を知らないだけだろ」
俺は呟いた。
女の子には裏があるー。
それが俺の持論だ。
この愛子とか言う子もそうだったのだろう。
「--にしても…」
俺は、服を着替え、身支度を整えた。
「最近、コンビニ強盗多いよな」
近頃、俺のバイト先のコンビニの周辺でも強盗が起きている。
犯人は不明のものもあれば、既に逮捕されているものもある。
だが、俺は思う。
コンビニ強盗なんて、その場で取り押さえてやればよい。
強盗なんて、所詮小さなことのやることだ。
テレビを見ながら俺は思う。
昨夜のコンビニ強盗は身内による犯行だ。
だが、俺は身内であっても容赦はしない。
俺は一人微笑んだ(変人ではない)
「--強盗なんて、よゆーだろ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コンビニに入ると、
綺麗な黒い髪がトレードマークの女子大生、
根岸 香苗(ねぎし かなえ)さんが笑顔で俺に挨拶した
「今日も頑張ろうね!」
根岸さんが俺に、笑みを振りまく。
俺は笑顔を返すと、そのまま事務所へと入っていった。
今日は根岸さんと二人でシフトだ。
俺は事務所で一人ニヤニヤしながら
コンビニの制服へと着替えていた。
ーーーーそう!
俺の最近の楽しみはこの時間だ。
ここだけの話、俺は根岸さんが好きだー。
明るい笑顔、誰にでも優しい性格ー
そして仕事にも熱心なところー。
まさに、絵に描いたような女性だ。
さっき俺は「女性には裏がある」と言ったが、
彼女にはそれは当てはまらない。
俺には分かる―。
彼女は正真正銘の天使のような子だ。
「むふふ・・・」
俺は一人笑みを浮かべる。
俺は、根岸さんと二人の時間を
自分の中で”ネギタイム”と呼んでいる。
「ふっふっふっふ…」
しかし俺は、恋愛に関してはチキンだった。
コンビニで売っているホットスナック並みのチキン野郎だ。
「イケメン」と言われることもあるのだが、
俺自身がチキンナゲット野郎なおかげで
彼女が出来たことはない。
俺は自称・超草食系。
シマウマもびっくりだ。
今日も、根岸さんから告白されないかどうか、
わくわくしながら店に向かう俺。
頑張れ、俺。
「---お待たせ」
俺が言うと、根岸さんが笑顔で会釈した。
「--今日も、あまり人は来ないなぁ…」
根岸さんが言う。
時間は深夜1時。
そうそう人が来るものではない。
「--ま、いつも通り、無難にやろうぜ」
俺が言うと、根岸さんが
「うん、そうだね」とほほ笑んだ。
俺と根岸さんの大学は違う。
だが、同じ学年の俺と根岸さんは
自然と気が合い、意気投合したのだった。
「そういえば、最近強盗多いよねー」
根岸さんが不安そうに言う。
「--確かにな」
俺はそう言いながら、不安そうな表情の根岸さんを見つめた。
んっ…?
これはアピールチャンスだぞ。
俺は咄嗟に声を出した。
「大丈夫!強盗なんか俺がぶん殴ってやるから!
根岸さんには指一本触れさせない!
強盗なんて余裕だぜ!」
俺が大げさな身振りでそう言うと、
根岸さんは「うふふ、頼りにしてるね!」とほほ笑んだ。
か、、可愛い…
俺はホットスナックのフランクフルトを作りながら
自分の体のフランクフルトみてぇな奴が暴走しないように
必死に耐えた。
俺のフランクを見たら
根岸さんは幻滅するだろう。
「--あ、張本くん、私、一旦休憩に入ってもいいかな?」
根岸さんが言う。
「あ、うんうん、大丈夫。任せとけ」
俺がそういうと、根岸さんは「ありがと」と言って
奥へと入っていった。
フランクフルトは完成した。
根岸さんが事務所に入っていった気の緩みからか、
俺のフランクも完成してしまった。
ーーたまたま自動ドアが開いておじさんが入ってきた。
おじさんが…俺の下半身の方を見つめて目を逸らした。
…すまない。俺は変態ではないんだ。
心の中で俺はそう呟いた。
アダルト雑誌をキョロキョロしながら購入して出て行ったおじさんを
見送る俺。
エロおやじだったのか。
ま、俺も人のこと言えないけどな。
「ひっ…うっ…」
ーーー!?
根岸さんが居る事務所からうめき声のような声が
聞こえた。
「なんだ…?」
俺は事務所を覗くかどうか考えた。
だがー。
「ダメだ」
俺は呟いた。
こういうときに”何があった”と駆け込んだ人間がどうなるか、
俺は良く知っている。
どうなると思う?
女の子が着替え中だったりするのだ。
だから、俺は覗かない。
俺は、据え膳を食べない。箸も持たない。
俺は安全主義だ。
俺はライオンや虎ではない。
シマウマやキリンのような、優しくおおらかな
人間でありたいのだ。
肉食系男子なんかクソ喰らえだ。
そんなくだらないことを考えていると、
事務所から根岸さんが出てきた。
「あー、休憩おわり?」
俺が訪ねるーーー。
が、俺は違和感に気付いた。
彼女が制服ではなく
黒いブラウスと膝上のミニスカート、
ブーツ姿で店内に出てきたのだ
「ん?お出かけ?」
俺が笑いながら聞く。
私服姿の彼女も可愛い!
元々俺は夜のシフトだったのだが、
交代の時に、根岸さんに一目ぼれして、
寝不足で学生生活に支障が出るけれど、
無理やり、深夜シフトに変えてもらったのだ。
そして、この俺、張本 斗真のドリームタイムが生まれた。
そう、ネギタイムである。
根岸さんと二人のシフト。
いつか、告白されるその日を夢見て。
結婚したらどうしよう?
働く俺に、優しい家庭を作る根岸さん。
子供は二人、いや、3人欲しいな。
待てよ…家は?
俺の思考が暴走している合間に、
根岸さんが俺に近づいてきた
ま、、まさか!
いきなりのキス??
根岸さん、それはまず……・
「へーーー?」
俺は間抜けな声を出した。
根岸さんが俺の首筋にカッターを突き付けている。
「---な、、、なに…?」
俺はーーービビりだった。
根岸さんの表情を見る―。
その顔は笑っていないー。
むしろ、殺気すらこもっている。
そして、根岸さんは低い声で言った。
「---金を出しなさい」
ーーーと。
「は…はは…!
ド、、ドッキリにしちゃあ、性質が悪いな根岸さん!
俺を試しているのかな~?」
俺はふざけながらそう言った。
すると根岸さんがカウンターを力強くたたいた。
「いいから、早く金を出しなさいってんのよ!」
普段声を荒げない根岸さんの
怒鳴り声。
俺はブルった。
もうダメだ。
「---な、、、なんで…??
どうして急に??」
俺が訪ねると、根岸さんがバカにしたように
俺を鼻で笑った。
そして、カッターを離すと、
カウンターの上に飛び乗って、
そのまま足を組んだ。
俺はーーー
鼻血が出そうになった。
根岸さんがーー
足を組んで挑発的な表情で俺を見ている。
「---ねぇ…
最近のコンビニ強盗、知ってる?」
根岸さんが笑いながら言った。
長い髪の毛が邪魔なのか、イライラした様子で
後ろに髪をどかそうとしている。
「--強盗?さっき話してたじゃんか!
強盗が来たら、俺が追い払ってやるって!」
俺が強がっていうと、
根岸さんは笑った
「私がその強盗なのー。」
はー?
なんだって?
俺の耳はおかしくなったのか?
「へー?」
俺が間抜けな声を出すと、
根岸さんがカウンターの向こう側に飛び降りて笑った。
「--最近多発しているコンビニ強盗事件。
---そう、私が強盗なのー。」
根岸さんは強気な表情でそう言った。
「----は…???
いやいや、他の強盗事件、逮捕者も出てるし…
冗談きついぜ!」
俺がそういうと、
根岸さんはさらに笑う。
「--ねぇ、、、
この世に”人の体を乗っ取って、自由に操ることが
できる力があったら、
こうやって、強盗するのに便利だと思わないー?」
根岸さんが言う。
「あぁっ!邪魔くさい!」
視界に入った黒髪をイライラした様子でどかす根岸さん。
そしてー続けた。
「---私ね、今、別の人に”憑依”されて
体を乗っ取られちゃったの!
ふふふ…
私はこんなことしたくないのに、強盗させられちゃうの!
ねぇ?凄いでしょ?興奮するでしょっ!?
この可愛い子に無理やり強盗させる!!!
この子が絶対にしないこと、
この子が絶対に言わないこと、しない表情!
そんなことをさせるのも俺の思いのまま!
あははははっ!」
ーーーー根岸さんが汚らしい言葉を吐き捨てる。
「---ちょ、、もういいから、
ウソはやめよう。ホラ、そろそろ休憩終わりだし」
俺がカウンターの外に出て、根岸さんの方によると、
根岸さんは笑った
「アンタもーー興奮してるじゃないの」
根岸さんが指さした先ーー
俺のズボンは不自然に盛り上がっていたーー。
突然、雰囲気の変わった根岸さんを見て
興奮してしまったのだーー。
「バッカじゃないの!」
根岸さんがブーツで乱暴に俺のその部分を蹴り飛ばす。
「がぁっ…!」
俺は激痛に耐えながら床に転がった。
「ほぅら、私がこんなことする?」
根岸さんの声が聞こえる。
ハッとしてみると、店内にあった
売りモノのビールの缶を開け、
そのまま一気に根岸さんが飲み干してしまった
「ちょ…」
俺は声を失ったー
根岸さんがこんなことするはずがーー
な、、、ならまさか本当に…???
「っはぁ~~女の子の体でもビールは上手い!
ふふふっ」
そう言うと、缶を乱暴に投げ捨てた。
そして俺の方を見て笑う。
「ねぇ…張本くんだっけ?
早く…金出しなさい!
それとも、強盗をぶん殴るんだったっけー?
うふふふふっ!
ちょっと前からアンタの会話、聞いてたよォ?
わたしを殴れるの?
強盗なんて余裕なんでしょ?」
俺に根岸さんが顔を近づけて笑う。
「それともーーー
わたしとここでエッチでもする???」
ーーーその甘い囁きに
俺の心臓が爆発しそうになった。
俺は根岸さんの方を見た。
「---------」
妖艶にほほ笑んでいる根岸さん。
「----------」
彼女は、、本当に”憑依”されているのだろう。
で、無ければこんなことはしないはずーー
だが、これは逆にチャンスだぞ?
俺はそう考えた。
そして、俺のプライドはカンタンに失われた。
俺は欲望に負けた。
「-----します」
俺はそう答えた。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
久々に登場人物の一人称視点(?)で書いています
に、しても張本君は色々とダメなやつですね…。
コメント
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しますなのかww
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よしやれ( ˘ω˘ )b
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> しますなのかww
しちゃうみたいですw
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> よしやれ( ˘ω˘ )b
ヒント*
しかし俺は、恋愛に関してはチキンだった。
コンビニで売っているホットスナック並みのチキン野郎だ。
「イケメン」と言われることもあるのだが、
俺自身がチキンナゲット野郎なおかげで
彼女が出来たことはない。
と、、いうことは…!?
続きは明日です…。
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>-----します
そらそうよ
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> >-----します
>
> そらそうよ
笑…
まぁ…そうなりますよね!