理科室で自殺した男子高生。
その怨念を巡る物語ー。
憑依された女子高生は彼の意のままに
”復讐”を完結させようとするー。
果たして彼らの運命はー。
-------------------------—-
「あれぇ・・・堀江君じゃない~~~
どうしたの???ふふふふふ…」
夜の校舎でランタンを持って
一人歩いていた異様な雰囲気の春歌は振り向くと
不気味に笑みを浮かべた。
清志は冷や汗をかく。
ま、、まさか彼女が…?
「す…杉山さん…
どうしてこんなところに?」
清志が戸惑いながら言うと、
春歌は笑った
「・・・決まってるだろ」
不気味に体をだらん とさせながら呟く。
「おまえたちに復讐するために
この世に帰ってきたんだよ~~!」
春歌が叫ぶ。
その目には狂気が浮かんでいる
「ひっ…ひぃぃぃ!」
清志が恐怖におびえてしりもちをつくー。
するとーー
「プッ…ふふふ、あはははははははは!
あっははははは!」
春歌が突然大声で笑い出した
「バカね~!相変わらずビビり!
自殺した竜二くんの怨念なんてあるわけないでしょ?」
春歌がいつものようなクールな様子に戻って言う。
「へ…」
清志が涙ぐんだまま尋ねると、
春歌は呆れた様子で手を差し出した。
「私、広報部部長だから。
”夜の理科室の真実”って記事を書くために
わざわざここに来たってわけ~」
不気味に笑う春歌
「スクープを前にすると、ゾクゾクするよねぇ~
ふふふっ!」
清志は汗をふきながら思う。
やっぱり春歌の考えていることはよく分からない。 と…
彼女は頭はいいけど、天然なのか、
人とずれているところが多い。
「ーー私が、夜の理科室の真実を暴いちゃおう!ってことよ」
そう言うと、春歌がニヤニヤしながら
ランタンを理科室の方に向けた。
「な、、何でそんなランタンを…」
清志が言うと春歌は笑う
「こ~いうのはね!雰囲気が大事なのよ、雰囲気が」
春歌がウインクをしたその時だったー。
ガタ ガタ
音が理科室から聞こえた。
清志の顔から笑顔が消える。
春歌はニヤっとして振り返る
「ほーら、清志君、さっそく始まった!」
春歌が笑う。
清志は春歌の腕をつかんだ。
「や…やめようよ…
小久保くんたちも死んでるんだし、、
もしかしたら本当に…!」
そう言うと、春歌は得意げに指を立てて言った。
「いい?世の中の怪奇現象の正体は
3つに絞られるの。
”勘違い”
”妄想”
”作り話”
幽霊なんて存在しない」
春歌が得意げに言うと、
「さ~竜二くんのオバケの正体、暴いちゃうぞー!」
とふざけた様子で理科室に向かって行く。
夜のテンションなのか
いつもクールな印象の彼女はとてもハイテンションだ。
「竜二く~ん!」
ふざけた様子で春歌が扉を開けたその時だった。
パァン!
何かが破裂する音が聞こえた。
清志が目を見開く。
春歌の姿が見えない。
「す…杉山さん?」
清志がおびえながら理科室に足を踏み入れる。
「ま…またドッキリ…??勘弁してよ…」
そう言う清志の前に春歌が姿を現した。
しかしーーー
「す、、、ぎや…」
そう言いかけたその時、清志は異変に気付いた。
春歌のーーーーー
首から上がーーー
無くなっていた。
「ひっ…ひぃぃぃあああああああ~~~~~!!」
清志がこの世とは思えないほどの絶叫をあげた。
音を立てて、頭を失った春歌の体が床に崩れ落ちる。
「ーーーーうふふっ…驚いた?」
理科室の反対側から声がした。
聞き覚えのある声―。
清志が振り返ると
そこにはーーー
彼女の萌美が居た。
いつものように優しく微笑む萌美。
「もーーー、萌美…??
な、、、何でこんなところに?」
清志が足を震わせながら訪ねる。
「えへへ…知りたい?」
萌美が可愛らしく笑う
「・・・・・・・・ど、、、、どうして…」
清志はもう一度訪ねた。
するとーー
萌美が目を赤く光らせて笑った
「こういうことだよ!」
乱暴な口調で叫んだ萌美の耳から、
煙のようなモノが噴き出す。
耳から飛び出したそれはーーー
”自殺した鴛海 竜二の姿をしていた”
白目の竜二が清志を睨む
「ひっ…ひっ…、、、な、、、なんだこれ・・・
ゆ、、、夢…?」
清志があまりの事にパニックを起こす。
煙は萌美の耳と繋がっている。
萌美は力ない様子で体を手前に折り曲げてうつろな目で立っている。
「ふふふ……
久しぶりぃ…堀江君」
萌美の体が心のこもらない言葉を発する。
「--も・・・萌美…?
萌美!おい!しっかりして!」
清志は萌美が何かされているーと
感じ、萌美に近づいて、彼女の体を振った。
だがー
萌美はうつろな目で笑みを浮かべて、
清志を振り払った。
「ぼくだよーー
鴛海 竜二ー。
復讐のために帰ってきたんだ」
竜二の意思で、体を手前に折り曲げながら萌美がしゃべる。
「小久保と本松…僕を苛めたアイツらに復讐するためにねー」
その言葉に清志は、死んだ春歌の体を指さしながら言った。
「す、、杉山さんは鴛海君をいじめたりしてないよ!
僕も!それに萌美も!ど、、どうして!」
清志が叫ぶと、
萌美が叫んだ
「見て見ぬふりしたよな お前ら…。
同じ学校出身なのに…助けてくれなかった。
いつもいつも、僕だけが仲間外れだ」
そう言うと、煙が萌美の体に戻っていく。
萌美の体が白目を剥いてビクン ビクンと痙攣するーー
そしてーー目に輝きを取り戻すと
大声で叫んだ
「見て見ぬフリも同罪なんだよ!」
物静かな感じで話す萌美とは思えない
憎しみのこもった声に、清志は足を震わせた。
「復讐のためにさ~
僕が準備してたらぁ、
萌美ちゃんがたまたま夜遅くまで残ってたんだ!
僕も萌美ちゃんのこと好きだったし、
復讐のためには体が必要だから、
こうして体を奪っちゃったってわけ!
あはははははは」
笑う萌美。
「ま…まさか…昼間も…」
清志が言うと、萌美は微笑んだ
「そうよ♡ 亜季紗を殺した日からずっと…
どう?萌美本人みたいだったでしょ?」
萌美の口調で話す竜二。
清志は目に涙を浮かべた。
「ひ…ひどいよ!萌美はいつも
鴛海君がいじめられてることに心を痛めてた!
それなのに……
萌美だけは解放してあげてくれ!」
清志が叫んだ。
しかし、萌美は笑った
「だーめ♡
わたしも、鴛海君のこと、見て見ぬふりしちゃったから、
今日、ここで呪い殺されちゃうの!えへっ」
楽しそうに笑う萌美。
表情とは裏腹に物騒な言葉を口走る。
「女の子の体って凄いよねぇ。
わたしの体も本当にエロいし!こんな体の
意識を乗っ取って、自分の好きに動かしてるなんて
ほんと~に興奮する!」
萌美の体が快感を感じているのか、
スカートの隙間からいやらしい液が少しだけ
あふれ出ている。
「そんな私が、
小久保とか亜季紗をこの手で、、
この可愛い手で殺しちゃったんだから…
うふふふふふふふ♡
こ、、、興奮する…たまらない」
甘い息を吐きながらうっとりとした表情を
浮かべる萌美。
清志が唖然としていると
萌美が突然刃物を手に持った。
「ひっ…や、、やめて!」
清志が叫ぶ。
「萌美!!萌美!!目を覚まして!お願いだよ!」
清志がさらに叫ぶ。
だがーー
萌美はーー刃物を自分の腹部に思いっきり突き刺した
「えへへ♡」
舌を出しながら悪戯っぽく笑う萌美。
その制服はあっという間に赤く染まり、
血がポタポタと床に垂れはじめる。
「--な、、、何やってんだ!!萌美!」
清志が悲痛な叫びをあげる。
だが萌美は笑った
「わたし…鴛海君が苛められてるのを見て見ぬふりした…
だからね…
わたし、こうやって、自分の罪を償うの!」
竜二の意思のままに、
自分の体を傷つける萌美。
清志は涙を流しながら叫んだ。
「---やめて!萌美が死んじゃう!」
「----いいの!わたし、死にたいの!
あはははは!」
萌美はそう叫ぶと 今度は自分の足に刃物を突き立てて
文字を書くかのように、切りつけ始めた。
血がさらに垂れていく。
「うふふふぅ…
わたしの綺麗な足がけがれていくよォ!
清志ぃ!私の足 こんなに白くて綺麗なのに、
滅茶苦茶にされちゃう!」
楽しそうに笑う萌美。
萌美は自分の足に「呪」という文字を刃物で刻み付けた。
「----お願い!やめてよ…
鴛海君!僕たちが悪かったよ!!!
でも、、僕と萌美は本当に君のこと・・・!!」
萌美が青白い顔色で、清志の方を見る。
「そういう綺麗ごとはもういいよ!
お前らのせいで僕は自殺したんだ!
だからお前らも同じ目に遭わせてやる!」
萌美はそう言うと、
自分の制服を刃物でびりびりに破き始めた。
破かれた制服が教室に落ちる。
「うふふ・・・わたしのからだ…♡」
微笑む萌美。
しかし、既に腹部と足からかなりの血が
流れている。
「や…やめろ!きゅ、、救急車!」
「救急車なんていらなーい!
もうわたし、死んじゃうから!えへへ!」
そう言うと萌美は自分の下着の上から胸部を切りつけて
1回、2回、3回と自分のあらゆる場所に刃物を突き立てた。
「や…やめろーーーー!」
清志が叫ぶ。
「あははははは!
あははは!
あはは!
萌美、超興奮する!!
じ、自分で自分を傷つけて興奮してる…
あは、わたしったら、、、ヘンタイ!!!
あははは…あ…?」
体が”限界”に達し、萌美はその場に崩れ落ちた
「はぁっ…ぁっ…
さいこう…さいこぉぉっ」
弱り切った目で倒れた萌美が
嬉しそうに言う。
絶頂に達して快感の余韻に浸っている少女のようだ。
「も、、、萌美!」
清志が涙を流しながら駆け寄る
「うふふっ…
わたし…死にたくないのに…
意識を奪われたまま・・・・・・こーやって
死んじゃうの…
わたし本人は、どう思ってるかな…
うふふっ…気になるぅ…♡」
萌美の呼吸がおかしくなる。
既に顔は真っ青だ。
「--はぁ…っ…はぁっ…
はぁっ…」
清志はその場に伏せて涙を流すことしかできなかった。
怨霊に支配され、自らを傷つけていく萌美を前に
どうすることもできなかった。
「きよし…」
うつろな目で萌美が手を伸ばす。
目には涙が浮かんでいるー
ーーー萌美!
清志はそう叫んだ。
彼女の意識…。
清志は安心させようと萌美を抱きかかえた。
その時だった。
ズブリ…
首に嫌な感覚と痛みが走った。
「------あっ…」
信じられないというような表情で清志が首に手を
やると、そこにはーーー
刃物が突き立てられていた・・・
「--えへへ・・・いっしょに・・・
無理心中~~~♡」
既に瞳孔が開きかけている萌美が
そう言うと、そのまま満面の笑みを浮かべてこと切れた。
「あっ…あ、、、、あ・・・あぁあ…」
清志は、笑みを浮かべたまま目を見開き、
動かなくなった萌美を見つめて―――
その場に倒れたーーー
夜遅いのに、不気味にチャイムの音が鳴るーーーー
そして、その音が清志がこの世で聞いた
”最後の音”だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
理科室で、
堀江 清志
間宮 萌美
杉山 春歌 の3人の惨死体が見つかった。
学校では大騒ぎになったー。
しかし、その日黒板にはこう刻まれていた
”フ ク シュウ は おわ っ た。
あん しん して 生 カツ でき る よ”
と。
竜二の怨念が萌美の死体を操り、最後に書かせた文字だったー。
そしてその言葉通り、
その高校では”怪奇現象”は起きなくなった。
次第に生徒たちはこの恐怖の出来事を忘れて、
穏やかな日常に戻っていったのだった。
ただ、一つー。
クラスの美化委員の女子生徒が、
”人が変わった”ことを除けばーーーー。
大人しく、優しい性格だった彼女はー、
あの最後の事件の日以降、
少しだけ変わったー。
以前と変わらず優しく、大人しい性格なのだがー
”例の理科室の事件”の話になると
目を輝かせ、死んだ5人の生徒は
自業自得だと蔑むように笑うのだーーー
ある日の夜。
彼女は理科室を訪れたーーー
”清志”が最後に息を引き取った場所を見つめるーーー
「ふふふ…
復讐は終わったよ」
彼女は呟いたーーー
目が赤く光る―。
「---うふふ・・・
これから僕は、この子として生きていくからー」
美化委員の女子生徒はー
清志や萌美が死んだ日ーたまたま遅くまで
校内に残っていたー
あの日、復讐を終えた竜二は成仏しようと思っていた。
だがーこの世への強い未練がそれをさせなかった。
そしてーーー
たまたま校内に居た美化委員の女子に憑依して
その体を完全に乗っ取ってしまったのだーー
「僕はもう鴛海竜二じゃない…
うふふ・・・
僕、、、いや…私はもう生まれ変わったの!
この子にね…」
そう言うと、彼女は、夜の理科室を笑いながらあとにした…
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ちょっと残酷描写がありましたが、
無事に完結しました。。
怨念の竜二君は、
無関係の女子の体を奪って生きていくことに
決めたようです。。
美化委員の子にとっては悲劇以外の何でもないですね…(汗)
ご覧くださりありがとうございました!
ちなみに今日は午前中に14万アクセス記念小説も投稿しましたので
良ければそちらもご覧ください!
コメント
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
やっぱり恨み晴らしたからそのまま成仏とはいかないんですねw
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
あーやっぱりw
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> やっぱり恨み晴らしたからそのまま成仏とはいかないんですねw
まぁ…自分がもしもこの立場だったらと考えると・・・
こうなるかなぁ・・・とw
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> あーやっぱりw
死亡フラグを立てまくって死亡する
春歌さんはホラー作品の登場人物の鏡・・・w
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
結局こうなってしまったか。
が、名無しの美化委員の子は流石に哀れ。
再登場だと名前が判明するだろうが、恨みも晴らしたし、逆に弄ばれそうだな。
さてと、そろそろ俺も動くか・・・フフフ
おっといけない。今はアタシだった。つい素が出ちゃうわ
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> 結局こうなってしまったか。
> が、名無しの美化委員の子は流石に哀れ。
>
> 再登場だと名前が判明するだろうが、恨みも晴らしたし、逆に弄ばれそうだな。
>
>
> さてと、そろそろ俺も動くか・・・フフフ
> おっといけない。今はアタシだった。つい素が出ちゃうわ
美化委員の子は
何も悪くないのに…(笑)