娘がー
”歯”を通して憑依されているー。
そのことに気付いた父の洋介は、
娘・彩友美の歯を抜歯しようと決意するー。
————————————
抜歯作業を始めようと、器具を手にもった洋介。
あれは親知らずの抜歯だったー。
洋介は思う。
妻が感染症を発症して、帰らぬ人となってしまった
あの治療はー、親知らずのー。
今、娘の彩友美を乗っ取っている歯は
ただの仮の歯に過ぎない。
虫歯治療の途中に一時的に被せるアレだ。
すぐに抜けるー。
だが、洋介の手は小刻みに震え、
額からは汗が流れ出た。
「---無理しなくていいよ、おとうさん」
彩友美が笑う。
ハッとして見ると、麻酔をかけたはずの
彩友美が起き上がり、こちらを見ていた。
「ふふふ…
私は憑依しているだけだから、
麻酔の感覚なんて遮断して、
こうして自由に動くこともできるんだよ」
立ち上がる彩友美。
彩友美は、甘い声で囁いた。
「ねぇ、おとうさん…
このまま、見逃してくれない?」
男を誘うような声で言う彩友美。
「---ふざけるな!娘のふりをするな!
娘から出ていけ!」
洋介が叫ぶ。
だが、言葉とは裏腹に、
洋介は”いつもと違う”
色っぽい雰囲気を隠そうともしない彩友美に
ドキドキしてしまっていた。
彩友美が隣の治療台の上に座って、
足を組み、洋介の方を見た。
「うふふっ…
1回やってみたかったんだ♡
こうやって、女の子になって
足を組むの…!
あぁ…すっごくいい!
興奮する…♡」
彩友美が組んだ足を組み替えたりしながら
微笑んでいる。
高校の制服姿で足を色っぽく組んでいる
彩友美の姿に
父・洋介は興奮を覚えた。
ーーいけない。
娘に興奮するなんて変態か俺は!
そう思い、洋介は再び表情を引き締めた。
「ふざけるなー。
彩友美を解放しろ!」
その言葉を聞き、彩友美は再び立ち上がって、
今度は洋介の方に近づいてきた。
1歩、1歩、
女らしさを強調する歩き方で父に近づく。
考えてみれば、
娘の彩友美を”女”として見たことはなかった。
ー当然と言えば当然だ。
娘なのだからー。
だが、今、目の前に居る彩友美からは
女の魅力を感じてしまっていた。
近くにやってきた彩友美は
父に顔を近づけると囁いた
「ホラーー。
”わたし”ならお父さんに
”気持ちいいこと”してあげられるよ?」
邪悪に微笑みながら父の方を見る
彩友美ー。
「---ふ、、ふざけるな…
娘に対して…どんな感情を…」
そう言いかけると彩友美が父の手をつかんで、
自分の胸に押し当てた。
「なっーー」
洋介の手に、彩友美の胸の感触が伝わる。
「どう?わたしの胸…
こんなに成長したんだよ??」
汗を流しながら言葉を失う洋介。
「---うふふっ…
この体を犯してみたいって思わないの?」
彩友美はさらに続けた。
父の手を引っぱり、自分のスカートの中の
太ももに手を押し付けた。
「ほら…わたしの
太もも…
気持ちいいでしょ?
興奮するでしょ?」
彩友美が甘い声でささやき続ける。
娘がー
こんな声を出せるなんてー
こんな表情をするなんてー。
そして、娘の体はこんなにも成長していたなんてーー
「わたしのからだ…
好きにしていいんだよ?
わたしは嬉しいし、お父さんもうれしい。
最高じゃない」
そして、彩友美は耳元でささやいた。
「--おとうさん よ~くかんがえて ね?
うふふ・・・♡」
洋介は唾をゴクリと飲み込んだ。
彩友美が目の前でポニーテールにしていた髪の毛を
わざとほどいて、
いつものような髪型に戻す。
フサッと髪が音を立てて、
彩友美の良い香りが周囲に香るー。
「……や…やめろ・・・
彩友美を弄ぶな」
父・洋介はやっとの思いで言葉をしぼり出した。
「うふふ・・・
体は正直♡」
彩友美が父の膨れ上がったズボンを指さし、
その部分を優しくなで始めた。
「どう?おとうさん?気持ちイイ?」
彩友美が挑発的に父の方を見る。
父のそれは限界だった。
今にもそれを放ってしまいそうだった。
そんな我慢している父の様子を見て、
彩友美は笑う。
「ほ~ら!
おとうさん!正直になるの!」
そう言って、さらにそれを優しくなでて
刺激する。
「くっ・・・うぅ…」
父が苦悶の声をもらしながら、
我慢の限界を通り越し、ズボンを濡らしてしまう。
「うふふっ…♡
決まりね!
今日から彩友美、
おとうさんのためにエッチな子になるね!
おとうさんのこと
い~っぱい気持ちよくしてあげる!」
彩友美の中に憑依している”東医師”は
あざ笑う。
タイミングを見て家出してやればよい…と。
「--じゃあ、お礼におとうさんに
いいことしてあげる…」
そう言うと、彩友美が色っぽく体をくねらせながら
ブレザーのボタンをはずし始めた。
「---」
洋介が黙ってその様子を見つめる。
娘の妖艶な姿に
父は圧倒されていたー
彩友美はーーー
こんなにも美しかったのかーーー。
ブレザーを脱ぎ終えた彩友美が父に向かってほほ笑む。
そして、シャツも脱ぎ捨て、下着姿になると、
スカートにも手をかけた。
”彩友美のことーーお願いーーーー”
「-----!!」
理性を失いかけていた父・洋介に
死んだ妻が最後に涙を流しながら言った言葉を思い出したー。
急変した妻の元に駆け付けた洋介ーー。
意識はもう戻らないだろうと医師は言った。
けれどー。
奇跡は起きたー。
息を引き取るその瞬間、
妻は目を覚ました。
「俺だ、分かるか!」
洋介はそう言った。
そして、妻は弱弱しくうなずくと
「彩友美のこと、お願いーーー」
とつぶやいた。
そして最後に微笑んで―
「あなたのことーーー忘れないーー
本当にありがとうーーー」
そう小さく、弱弱しい声で呟いて
息を引き取ったのだったーーー。
”さゆみのことーーおねがいーーー”
「ふざけるなぁぁぁ!」
正気に戻った父はスカートを自らの意思で脱ごうとしている
彩友美の顎をつかみ、壁に押し付けた。
彩友美が驚いた表情を浮かべる。
「な、、、なに?襲う気にでもなった?」
バカにして笑う彩友美。
だが、父は左手で彩友美を押さえつけながら
抜歯のための器具を右手に持った。
「はー?
この状態で抜歯する気なの?
いくら仮の歯だからと言って―」
「黙れ!」
父が叫んだ。
”おとうさんは、世界一のはいしゃさんだね”
小さいころ、彩友美は口癖のようにそう言っていた。
「俺はーーー
俺はーーーー
世界一の歯医者なんだ!」
そう叫ぶと、彩友美の口に器具を突っ込み、
一思いに仮の歯を引っこ抜いた。
「あ・・・っ、、、あ・・・ば・・・ばかな・・・」
信じられない、という表情で彩友美がその場に倒れる。
不気味に光る歯を
洋介は力強く踏みつけ、その歯は粉々に砕け散った。
「---彩友美!彩友美―!」
父が叫ぶと、
彩友美は目を覚ました
「---おとうさんーーー」
涙を流しながら呟く彩友美ーー
「もう大丈夫だからー」
父が言うと、彩友美はうなずいた。
「--やっぱり、、おとうさんは
世界一のはいしゃさんだったね……」
心の奥底に幽閉されながらも、出来事を見ていた
彩友美は涙を流しながらそう呟いた…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日。
彩友美はすっかり元気を取り戻し、
憑依されている間に塗り替えられた記憶の方も
無事にその影響化から抜け出したようだった。
治療台に寝転ぶ彩友美。
「お父さんの治療なんて、
何年振りかなぁ…」
彩友美が言う。
例の虫歯の部分に、今日は銀歯を取り付ける日だった。
父はあれから、自身を取り戻し、
中森歯科を再開した。
少しずつではあるが、利用患者も増えてきている。
「---さて…始めるぞ、彩友美」
父が優しくつぶやくと、
彩友美は「うん」とほほ笑んだ――。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東歯科。
院長の東 公之は、
壁を叩きながら悔しがっていた。
あれから1週間。
彩友美から追い出された東は、
歯科医院を再開する気もおきず、
あの時味わった快感をもう一度味わいたい、
そんな風に思っていた。
「ぬふふふふ・・・」
東は「例の歯」を手に持ち、ほほ笑む。
”近所の可愛い女の子にこの歯を差し込んで
自分の体にするか・・・”
そんな風に妄想していた時のことだったー。
歯科の中に誰かが入ってきた。
入ってきた鋭い目つきの二人組は
警察手帳を東に向けた。
「東 公之―。
署までご同行願おうか」
刑事はそう言った。
非現実的なことではあるが、
彩友美や、他の患者たちの異変から、
彩友美以外の患者から例の歯の解析が進められて
結果、東医師のしていたことが明るみになったのだった。
「----わ、、、私は…
虫歯をなくそうと思って」
「---話は署で聞く」
言い訳に聞く耳を持たん!という様子の刑事に
東医師はついに観念して、そのまま連行されていった。
若手刑事が東医師をパトカーに乗せる。
年配の刑事が歯科クリニック内を見渡す
「しっかし…特殊な歯を通して人に憑依するとはな…」
そう呟いた年配刑事は床に落ちている
光り輝く歯を見つけた。
逮捕直前、東医師が持っていたものだ。
「・・・・・・・・」
年配の刑事は無言でそれをポケットにしまった。
彼の瞳にはーー
欲望の色が浮かび上がっていたーー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
”ヤリそうでヤラない”
そんなコンセプトで書きました(笑)
余談ですが、歯を通して
憑依されていた彩友美は
憑依空間小説の中では(?)珍しく
平和的な結末を迎えました^^
これからも、父娘で仲良く暮らしていくことでしょう。
まぁ…やっぱり最後はちょっと含みがありますけど(笑)
ご覧いただきありがとうございました。
コメント
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こういったハッピーエンドもいいですねえ。割と好きな終わり方(ダークはダークで大好きですけど)
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> こういったハッピーエンドもいいですねえ。割と好きな終わり方(ダークはダークで大好きですけど)
ありがとうございます^^
珍しく綺麗に終わりました!!
(最後は別として…)
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歯を抜いたら東医師の魂が完全に娘に固定されるのかなと思って展開期待してましたが、まさかのハッピーエンドでした!
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> 歯を抜いたら東医師の魂が完全に娘に固定されるのかなと思って展開期待してましたが、まさかのハッピーエンドでした!
またダークなのだろう…と思わせておいての
ハッピーエンドです!笑
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ナナナナ、ナンダッテー(驚愕)
さては貴様!偽物だな!(違
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> ナナナナ、ナンダッテー(驚愕)
> さては貴様!偽物だな!(違
じゅんぱくの無名さん・・・
治療代に寝転ぶ彩友美とありますが意味不明です。治療代つまりお金の上に寝転んだのでしょうか?
コメントありがとうございます!
「治療台」ですネ…!
誤字がそのままになっていました!
早速修正しておきます!ありがとうございます!