<憑依>ノートの意のままに③ ~悪意喪失~(完)

全てはノートの意のままに。

”自分が積んできたものを全てぶっ壊せ”

ノートに書かれたその言葉に
忠実に従い、
夏葉は自分の母校を、
そして自分の人生を滅茶苦茶に壊すため、
暴れはじめるー。

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滅茶苦茶な教室でたたずむ夏葉。

一人の女子生徒を足で踏みつけ、
力を入れて踏みにじっている。

ガラスは割れ、
教室は滅茶苦茶。
何人か怪我をしている生徒もいる。

そして、夏葉自身も、服は乱れ、
普段は整えられた髪も乱れ、
ひび割れたメガネをかけて微笑んでいる。

「な、、、夏葉…やめろ!何してるんだ!」
彼氏の勉が叫ぶ。

だが、夏葉は笑うだけだった

「えへへへへへ!
 わたし、自分の積み上げてきたもの
 めっちゃくちゃにするの♡」

床に倒れた女子生徒を蹴り飛ばして
勉の方を見る。

「夏葉……
 今、大事な時期だろ!進学して、一生懸命勉強して…
 
 そう言ってたじゃないか!
 どうして!」

勉が言う。

答えは聞くまでも無い。
夏葉は左手に黒と白のツートンカラーの不気味な
ノートを持っていた

「何故ってー?」
夏葉がほほ笑む。

「だって!ノートに書いてあるんだもん!えへっ!」
悪戯っぽく舌を出して笑う夏葉。

もう、夏葉の理性など残されていない。
今の夏葉は、ただ忠実に、ノートからの言葉を
実行するのみ。

「どいて」
夏葉が勉を睨む。

「どかない。
 そのノートを渡せ」
勉が手を差し出すと、
夏葉が突然その手をつかんで、
無理やり手を変な方向へと捻じ曲げた

「ぐっ…がぁあああっ!」
咄嗟のことに勉は対応できず、
腕を捻じ曲げられてしまう。

「うっ…うう」
あまりの痛さにその場にうずくまる勉。

「あっはははは!
 私、もっともっと、壊さなきゃ!
 学校を滅茶苦茶にして、
 わたしの人生も滅茶苦茶にするの!

 ノートがそう言ってるから!」

そう言うと、夏葉は教室から出ていき、
すぐに廊下からガラスが割れる音が響いてきた。

「お、、おい!」
他の生徒が勉の方に駆け寄る。

勉はねじれた手を抑えながら呟く。

「だ…大丈夫だ…
 は、、早く夏葉を止めないとー!」

暴れているのは夏葉の意思じゃない。
早く止めないと取り返しのつかないことになる。

勉はそう思い、焦った。

”このままでは、夏葉の学校での居場所がなくなるー”と。

教室から飛び出した勉は、夏葉の後を追って走り出した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”いいぞぉ~
 いいぞぉ~
 ゾクゾクするぞぉ~”

ノートは心の中で叫んだ。

大人しそうで可愛い優等生が、
自らの人生を、母校を、積み上げてきたものを
全て壊している。

はぁ、はぁ と息を荒げながら、
窓ガラスをたたき割り、他の教室に乱入しては
同級生を殴る・蹴るの暴行を加える。

椅子を教室のガラスに叩きつけ、ガラスを割る。

”もっとだ!”

”もっと”

ノートは更なる指令を”発現”させた。

”もっとやれ!もっとだ!
 自分がどうなるかなんて考えるな!
 全てを壊せ!さらけ出せ!”

ノートの中の悪意が興奮しているからだろうか。

真っ赤な太字の殴り書きの文字がノートに
表示された。

その文字を見た夏葉が白目を剥き、
体を震えさせる

「あ、、あっ、、、がぁあ、、、あ、、ヴヴヴヴ…
 あぁああっ」

夏葉にノートを通じて
”黒い意思”が流れ込む。

あまりの邪悪さに夏葉の体はもう限界だった。

震えて、涙を流しながら奇声を上げる。

しばらくすると夏葉、そのまま目の輝きを取り戻して
微笑んだ

「うっふふふふふっぅ
 全部ぅぅ、壊しちゃう!
 わたし、どうなっても関係ない
 あははははあ♡」

近くにあった窓ガラスを素手で殴りつける夏葉。

ノートの悪意により異常な力を発揮した夏葉は
そのまま窓ガラスをたたき割った。

ガラスがその綺麗な手に刺さり、
血がボタボタと流れる。

「あはははは!壊れた!壊れたよぉ♡」

背後には、騒ぎを聞きつけた生徒数名が立っていた。

その生徒たちに
自分のガラスが刺さって血が流れている手を
差し出して微笑む。

「ちょ、、、な、、夏葉ちゃん!
 もうやめなよ!!!どうしちゃったの???
 酷いけがだよ!やめなよ!!!」

生徒が叫ぶ。
その目は恐怖で涙ぐんでいる。

「うっふふふ!
 壊さなきゃ!
 ノートに書いてあるんだもん!」

”そいつも壊せ”

ノートから残酷な指令が下される。

夏葉は突然冷たい目つきになって、
その女子生徒の頭をわしづかみにして、
さっき割ったガラスのところに叩きつけた

「きゃあああっ!」
そしてその女子生徒を床に投げ捨てる。

周囲の生徒たちは怪我をした女子生徒に駆け寄り
必死に介抱している。

その様子を見て微笑んだ夏葉は、
そのまま階段を登り、校舎の4階へと向かった…。

階段をのぼりながら、夏葉は不気味な笑い声を浮かべる。

”自分の全てを解き放て!
 邪魔なものは全てぶっ壊せ”

ノートが指令を送る。

夏葉はうつろな目でメガネを投げ捨てて
そのまま足で踏みつぶした。

髪をぐしゃぐしゃにかき乱し、
自分の制服もグシャグシャにしながら、
階段を上る。

「ノートに書いてあるからっ、
 ノートに、、、書いてあるから!」

涙を流しながら、狂ったように笑い、
呪文のように言葉を呟きながら
夏葉は屋上に向かって歩き続けた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---夏葉!夏葉!どこ行ったんだ!?
 夏葉!」

勉が叫びながら校舎内を歩いている。

割れている窓ガラス。
怪我をして泣いている生徒。

夏葉の行っている方向は何となく分かる。

”上へと向かっている”

「いやああああっ!」
その時、屋上へ向かう階段から声が聞こえた。

社会科担当の
若手の先生が夏葉に頭をわしづかみにされていた。

「夏葉!」
勉が叫ぶ。

だが夏葉は微笑んだ。

「せんせぇ~~
 先生も、壊れちゃえ!えへっ♡」

そう言うと、階段のうえから先生を押し飛ばし、
先生はそのまま階段を転がり落ちた。

下で勉が先生をなんとか押さえる

「だ、、、大丈夫ですか!」
勉が言うと、まだ若いその先生は目に
涙を浮かべながら頷いた。

「---夏葉!」

挑発的な笑みを浮かべて屋上へと出て行った夏葉を追い、
勉も屋上へと出ていく。

屋上に出ると、
夏葉が血をボタボタと垂らしながら微笑んだ。

「夏葉!!!!もうやめろ!
 正気を取り戻せ!」

勉が叫ぶ。

強風が吹き荒れる屋上で
夏葉は微笑みながら言った

「ねぇ、何でそんなに怒ってるの?」

きょとんとした顔で言う夏葉。

そして続けた

「わたしは、ノートに書いてある事を
 しているだけだよ?
 何がいけないの?」

勉はその言葉にすぐに反論した。

「ダメだ!そのノートを捨てろ!
 そのノートの言うことなんか、聞くな!」

勉が言う。

その言葉に”ノート”が反応した。

”もう十分に楽しんだ。
 最後に夏葉をここから飛び降りさせて
 壊して終わりにするつもりだった。

 自分があの時、屋上から足を滑らせたように…

 だが…”

「夏葉!」
夏葉に近寄り、肩をつかむ勉。

「しっかりしろ!正気を取り戻せ!なぁ!!
 しっかりしろよ!」

肩を揺さぶる勉。

指令待ちなのか、夏葉が力なく
首をガクンガクンさせている。

しかしーー
突然夏葉は笑った

「えへへへへ…はぁ~い!」

そう言うと、夏葉は突然勉を押し倒した。

「ノートに書いてある!見てみて!」
夏葉が嬉しそうにノートを広げた。

”その男とヤリまくれ!
 二人が狂うまで!何があってもヤリまくれ!
 男と自分を快感でぶっ壊せ”

と。

夏葉は躊躇せずに、全ての衣類を脱ぎ捨て、
屋上から下に放り投げた。

「あっははははははぁ~♡」

ノートにより興奮状態の夏葉は既に
体中が愛液まみれだった。

今もボタボタと液が垂れ流れている。

「おい!やめろ!夏葉!夏葉!」
懸命に叫ぶ勉。

しかしその言葉は夏葉には届かない

勉に勢いよく唇を押し付けると、
無理やり口をこじ開け、舌を絡ませた。

そして、
勉の衣類を無理やり破り去っていく

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
苦しそうな息を繰り返す夏葉。

見れば顔色も悪い。

出血と、あまりに体を酷使されたことにより
夏葉は弱っていた。

「や、、、やめろ!夏葉…
 このままじゃ…」

だがそれを無視して、夏葉は
勉のズボンを無理やり脱がせると、
躊躇なく勉のモノに思いっきり食らいついた。

「んんん…や、、、やめ、、やめろ、やめろ!」
勉が否定の言葉を口にする。

けれども夏葉は全身を使って
勉の興奮を刺激した。

ーー数分と持たなかった。

勉は夏葉に液体をぶちまけてしまった。

「ひゅう…ひゅう…ひゅう…」
夏葉の呼吸がおかしくなっている。

しかし、それでも夏葉は、勉に
覆いかぶさり、激しく腰を振った

「あっ、、、あっ、、、あぁぁああん♡
 な、、、なつ、、、なつは、、、こわれちゃう、、

 あ、、、あ、、、」

イヤらしい液体や血液、、涙…
色々なモノを流しながらボロボロの夏葉が
喘ぎ声と泣き声とーーうめき声、そして笑い声をあげた。

「---や、、、やめてくれ…夏葉!」

このままじゃ夏葉が死んでしまう。。
勉はそう思った。

「----!?」
ふと勉が屋上の隅を見ると、
”あのノート”が無作為に置かれているのが目に入った。

「うふふふふふふ
 つとむぅ…はぁ…はっ…わたし……
 こわれちゃう……」

微笑むながら夏葉が言う。

既に数回絶頂を迎えた夏葉の表情からは
生気も失われている。

「た……すけて…わたし、、こわれちゃう…

 あ、、、あ、、、
 ノートに書いてあるから、、、
 こわれちゃう…」

うつろな目で言う夏葉。

勉は最後の賭けに出た。

「悪いーーー
 夏葉!」

そう言うと、夏葉を思い切り蹴り飛ばし、
自分に覆いかぶさっていた夏葉をどかした。

勉は走った。

懸命にー

ノートに向かって。

それに気づいた夏葉がノートに全ての意思を支配され
大声をあげた。

「テッ…テメェ~~~~!
 やめろぉ~~!」

夏葉がノートの意思で叫ぶ。

だが、勉の方が早かった。

夏葉もノートに向かって走り出したが、
既に体はフラフラで、途中で倒れてしまう。

ノートをつかんだ勉は叫ぶ

「俺の彼女をこんな目にあわせやがって!
 絶対にゆるさねぇ!」

ノートを睨みつける勉。

そして、

「消え去れ このクソ野郎が!!!!」

そう叫ぶと、ノートを1回、2回、3回、4回と
びりびりに破き捨て、そのまま屋上からばらまいた。

強風に飛ばされて、”悪魔のノート”はいずこかへと
飛ばされていった。

「ああああああああああああああっ」
夏葉が悲鳴に似た絶叫をあげ、その場に倒れた。

「夏葉!夏葉!---」
叫びながら駆け寄る勉ーーー

駆け寄ると、朦朧とした意識で夏葉は目を開いた

「---勉…
 わたし……ご、、、ごめんなさい・・・」

大粒の涙を流す夏葉。

勉はそんな彼女の手をしっかりと握っていた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昇降口前。

男子生徒の御室(おむろ)が校舎から出ると、
上から女子高生の制服とスカートが降ってきた。

「へーー?」

ノートに支配された夏葉が屋上から放り投げた制服だ。

「えっ…まじかよ」
何も知らない御室は、満面の笑みを浮かべた。

御室は、エロ野郎だった。

スカートと制服を拾い、顔にこすりつけると、
誰にも見られないように、そのまま自分のカバンへと
制服を詰め込んだ

「カミサマ、ありがとう!」
御室はそう叫ぶと、そのまま校舎から走り去った。

今日の夜は楽しくなりそうだー

と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1週間後。

とある病院の病室。

夏葉の体の傷も大分癒えて、
明日には退院できることになった。

学校での騒ぎは大きかった。

けれど、勉や、元々ノートの所有者だった留美子、そして
他のクラスメイトたちの協力もあり、
なんとか夏葉の退学は防ぐことができた。

夏葉は心に大きな傷を負っただろう。

けれども…
それは皆で支えていけばいい。

勉はそう思っていた。

「じゃあ、俺そろそろ行くよ。
 また明日な」

勉が言うと、
夏葉がほほ笑んだ。

「本当にありがとう。
 色々迷惑かけてごめんね」

夏葉が言うと、
お見舞いに来ていた妹の英玲奈も微笑んだ。

「いや、いいさ!
 こういうときの為の彼氏だろ!
 気にすんな!」

勉が言うと、
妹の英玲奈が姉に向かって言う。

「お姉ちゃん、こんな優しい彼氏さんいて
 うらやましいなぁ~!」

その言葉に夏葉も勉も微笑んだ。

「じゃ、後は二人でゆっくりと」

勉は笑顔で病室を後にした。

「---英玲奈も、、ごめんね…」
夏葉が微笑みながら謝る。

妹にも迷惑をかけた。
写真撮影をさせたり…
色々と。。。

”ノート”の意のままにされている間の記憶も、
ちゃんと夏葉には残っていた。

だからこそ、余計につらい。

「うん。大丈夫。気にしてないよ!」
妹の英玲奈が笑う

そして、英玲奈が言った

「ねぇねぇ、お姉ちゃん!これ見て!」
英玲奈が持っていたピンクのスマホの
画面を姉の夏葉に見せた。

「なぁに?」
夏葉が笑いながらスマホの画面に目をやった。

そこにはーーー

”使い終わったおもちゃはもういらない。
 壊せ!二度と動かないようにぶっ壊せ” と
表示されていた。

「えーーーっ!」

直後、花瓶が割れる音が病室から響き渡った。

英玲奈は笑うーー

「お姉ちゃん、ごめんね…
 だってーーーーー

 ”スマホに書いてあったから…”」

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ノートの悪意は…
ノートから飛び出て、スマホに移動したようです…。

スマホの意のままに…(汗)

ちなみに御室君は
何の関係もありません。
ただ、夏葉が投げ捨てた制服をGETして
ムフフしてるだけの変態です(笑)

コメント

  1. 柊菜緒 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    まさかのw

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > まさかのw

    スマホの意のままに

    衝撃の誕生!?

  3. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    怖い
    一気に暑さが吹き飛んだ

    その後のことは想像したくないなあ・・・スマホだともう作者かミスト様でしか手に負えない気がする。
    後は・・・いやアレは危険か

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 怖い
    > 一気に暑さが吹き飛んだ
    >
    > その後のことは想像したくないなあ・・・スマホだともう作者かミスト様でしか手に負えない気がする。
    > 後は・・・いやアレは危険か

    これは地味に怖いですよね…
    書いていて私も思いました…
    憑依空間の中でもコワイ終わり方…