ノートの新たなる所有者に選ばれてしまった夏葉。
彼女はノートの意のままに、
自らの人生を転落させていくー。
果たして彼女の運命は…?
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登校前。
夏葉は戸惑っていた。
ノートに文字が浮かび上がる。
”もっとスカートを短くしろ。
お前の美脚をさらけ出せ”
「で…でも…」
夏葉が顔を赤らめる。
夏葉は、色気を振りまいたりだとか、
男を誘惑したりだとか、
そういうことが嫌いなタイプだ。
品性を大事にするタイプ。
だがー。
ノートの意に従い、彼女はスカートの丈を
ギリギリのラインまで短くした。
そして鏡で自分の足を見る。
「……」
顔を赤らめる夏葉。
だが、”恥ずかしい”という感情は
次第に”喜び”へと変わっていた…
ノートの意のままに。
「うふふ…」
微笑む夏葉。
ノートはさらに、呪いの文字を発現させた。
”今日は、超不機嫌モードで学校に行け” と。
「不機嫌…」
夏葉がつぶやく。
その表情から可愛らしい笑みが消えてゆく。
「………」
むすっとした顔で、家の玄関から外に出る夏葉。
本人にはよく分からなかったが、
とにかくムカついて仕方がなかった。
玄関の扉を乱暴に閉めた夏葉は、
そのまま不機嫌そうな様子で
学校向けて歩き出した。。
ノートは笑う。
”ノートによる支配”は完全ではない。
それゆえ、本人が疑問を感じたり、
戸惑いを覚えることもある。
だが、最終的にはノートの意思に従ってしまう。
だが、それがたまらないー。
可愛い子が戸惑いながらも、自分の人生を自らの手で
壊していく様子がー。
自ら、長い年月をかけて積み上げてきた積木を、
自らが破壊するその様子がー。
自分が事故で死亡したとき、
自分の残留思念はこのノートに宿った。
思わぬ幸運だった。
こんなに楽しい人生…
いや、ノート生が待っているなんて…
自分はあの転落死で
十数年かけて積み上げてきた人生が
一瞬にして失われた。
しかし、こうして新しい命を得た今、
ノートは思う。
積み上げてきたものが、崩れていく瞬間はーーー
”美しいー” と。
ノートの意のままに、自分の机に鞄を叩きつけるように
着席する夏葉。
ノートからの指令。
普通は違和感を感じるものだが、
支配されている夏葉にはそのあたりの認識が上手くできない。
何でこんなに私は不機嫌になっているんだろうー?
そう思いながらも、それを受け入れてしまっていた。
「だ、、大丈夫、夏葉?」
後ろの座席の女子生徒が不安そうに尋ねてきた。
鞄を叩きつけた夏葉に違和感を感じたのだろう。
「--別に。」
不愛想にそう答えて乱暴に椅子に座る夏葉。
頬杖をついてつまらなそうにスマホをいじっている。
いつもの明るく、可愛らしい夏葉ではなく、
不機嫌さを隠そうともしない夏葉の姿がそこにはあった。
スマホをいじりながら舌打ちする夏葉。
時々「はぁ」と言う不機嫌そうなため息を
しながら乱暴にスマホをいじっている。
どうして…?
何にイライラしているの???
そう思いながらも夏葉のイライラは収まることが
なかった。
「あはははは!昨日のさ~」
「え~超ウケるんだけど!」
クラスの女子二人が大声で笑っている。
夏葉は机を勢いよく叩いた。
「ねぇ!うっさいんだけど!
ちょっと黙ってくれる!」
激しい形相で二人の方を見て
怒鳴りつける夏葉。
「えーーー、
ご、、、ごめん夏葉ちゃん」
普段優しい夏葉の怒りに
委縮してしまう二人。
「っ…なんで私が生徒会書記なんか…」
メガネを乱暴に直しながら座る夏葉。
クラスメイトたちは皆、
何が起こったのか分からず唖然としていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昼休み。
隣のクラスにいる夏葉の彼氏、勉が
”夏葉が凄い不機嫌みたいだけど何かしたのか?”と
友人から聞き、
慌てた様子で教室へとやってきた。
「よ、夏葉!」
何事も無いように話しかける勉。
自分に悪いことをした覚えはない。
堂々としていれば良い。
だがー
「---はぁ…
今、アンタの顔見たくないんだけど」
いつもは”勉くん”と呼んでくる
夏葉の言葉に違和感を感じる。
「--な、夏葉…
どうしたんだよ?
クラスのヤツも騒いでたぞ…?
夏葉の様子がおかしいって?
何かあったのか?
勉が訪ねる。
しかし夏葉はそっぽを向いて答える。
「別にー」
だが、
明らかにその様子は不機嫌だ。
「--夏葉!」
勉が夏葉の肩をつかんで言う。
「何か悩みがあるなら言ってくれよ!
黙ってたんじゃ俺、わかんないよ…
もし俺が何か夏葉を怒らせたなら謝る!
どうしたんだよ!」
懸命に呼びかける勉。
しかし夏葉はその言葉にも塩対応だった。
「あのさ、離してよ…
滅茶苦茶ウゼェんだけど…」
低い声で、敵意むき出しの視線を向ける夏葉。
その表情に勉は
恐怖すら覚えた。
「--な、、夏葉…
お、、、お前!絶対何かあっただろ!
どうしたんだよ!なぁ…」
なおも食い下がる勉。
舌打ちしてうざったそうにしている夏葉。
周囲の夏葉のクラスメイトたちは
不安そうにその様子を見守っていた。
その時ー
ノートに新たな文字が”発現”した。
”全てを憎め!全てを壊せ”ぶっ壊せ” と。
「おい夏葉!夏葉!」
なおも呼びかける勉。
その時、夏葉が突然、机を蹴り飛ばした。
「うっぜぇんだよ!」
怒声をあげる夏葉。
クラスメイト達が驚きの表情を浮かべる。
もちろん、目の前に居る勉もーー。
「何なの?
さっきから、ちょろちょろチョロチョロ!
鬱陶しいんだけど!」
そう言うと、夏葉は倒した机の椅子を
手に持ち、躊躇なく勉にそれを振りつけた。
「--お、おい!」
慌てて手でその椅子を抑える勉。
夏葉のクラスメイトたちが悲鳴をあげて
二人から離れる。
「うざい!うざい!うざい!うざい!!
うっぜぇんだよ!」
夏葉がヒステリックに騒ぎ立て、
勉にビンタを喰らわせる。
そのまま胸倉をつかんで、
勉を押し倒す夏葉。
容赦なく、今まで一度も人を殴ったことのないであろう
拳で、勉の顔面を殴りつけた
「ほんとなんなのアンタ!
すっごいむかつくんだけど!!!
ぶっ壊してやる!ぶっ壊してやる!」
気がふれたヒステリックな様子で
勉を殴る夏葉。
髪を振り乱し、
あまりの怒りに「はぁ、はぁ」と荒い息を
吐き出している。
勉は殴られながら懸命に我慢した。
反撃しようと思えばできる。
けれどーー
女の子を殴るわけにはーー
「やめろ!」
他のクラスメイトが止めに入る。
「は…離して!離して!」
他の生徒に抑えられた夏葉がわめき出す。
メガネが床に落ちてもなお、狂ったように
わめきたてる夏葉。
そしてーー
”平静さを取り戻せー”
夏葉の机の中に眠るノートに、そう文字が浮かび上がった。
1度”所有者”になってしまえば、
少しの距離なら、ノートは、その人間に遠隔で指令を
出すことができるのだ。
「……あ・・・」
突然、怒りや憎悪の感情が消えうせた夏葉は唖然とする。
勉が、顔面に痣を作り倒れている。
「つ…勉君…」
涙ぐむ夏葉。
「--おい!何でこんなことするんだよ!
酷過ぎだろ!」
他の生徒が騒ぐ。
「…な、、なんでって…」
夏葉がわけもわからず涙ぐむ。
「--そうよ!内川さん今日、どうしたの?」
夏葉に他の女子生徒も言葉を投げかける。
「えっ…わ、、、私・・・
違う…違う…私・・・」
自分のしたことの重さに気付く夏葉。
しかしーー
「ねぇ!どうしてこんなことするの!?」
責める様な口調で言う女子生徒。
夏葉は涙を浮かべながら呟いた…
「だ…だって、、ノートに書いてあったから…」
言葉の意味が分からず唖然とするクラスメイトたち。
「な、、何言ってるの…?
ねぇ、真面目に答えてよ!」
クラスメイトが叫ぶ。
殴られた勉は他の生徒に介抱されながら
「先生には言わなくていいから」と周囲に懸命に
訴えている。
夏葉が生徒指導の対象にならないようにー。
それが勉の優しさだった。
「ノートに書いてあったの!!!」
泣き叫び、そのまま走り去ってしまう夏葉。
「ーーーーー…」
廊下で夏葉とすれ違った
別のクラスの女子生徒ー
元々ノートの”所有者”だった留美子は悲しそうにその様子を見つめた
「ごめんねーー。
でも…ノートが次はあんた…って言うから…」
ノートから解放されていた留美子は謝罪の言葉を口にした
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜。
自宅では
下着姿の夏葉が、
ひざを床につけてセクシーポーズをとりながら微笑んでいた。
「うふふ・・・♡」
楽しそうにしている夏葉。
次々とAVかのようなポーズをとり、
妖艶にほほ笑む。
時に自分の体に感じて喘ぐような声も出している。
舌で唇を舐めながら微笑む…
「ホラ…もっと撮って…
わたしの美貌を…」
ノートからの指令により、夏葉は
自分の体を、撮影して、
ネットに流そうとしていた。
”見ず知らずの男の喜びは、自分の喜び”
ノートにはそう記されていた。
妹の英玲奈は、手を震わせながら
姉の写真を撮影していた。
”わたしを撮影しないと、
英玲奈の人生、滅茶苦茶にするよ”
姉にそう言われた。
姉の目には狂気が宿っていた。
逆らえなかった。
目の前で姉の夏葉が
ボディラインを強調するセクシーポーズをとり、
微笑んでいる。
「ね…ねぇ…お姉ちゃん…
どうしちゃったの…?」
恐る恐る尋ねる英玲奈。
姉の夏葉ためらうことなく微笑んで言った。
「だって、ノートに書いてあったんだもん♪」
それ以上、夏葉は何も答えなかった。
そして、写真撮影が終わると、
夏葉は服を着ることもせず、そのまま英玲奈の
スマホを取り上げて、自分のツイッター上に
自分の下着写真・セクシーポーズの写真を
ツイートしてしまった。
「うふふふふふ…
嬉しい!」
ツイートを見た男たちの喜びが夏葉にも
伝わってきた。
あまりの嬉しさに夏葉は飛び上がった
「えへへへへへ!
夏葉!うれしい!うれしい!うれしぃぃぃぃぃ!」
凄く幸せそうな表情。
英玲奈は唖然として呟いた。
「お姉ちゃんーー
おかしいよ…」と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
夏葉は、笑みを浮かべながら登校した。
昨日のことなんか嘘のようだ。
「おはよっ!」
元気にクラスメイトに挨拶する夏葉。
だが、他のクラスメイトは
委縮した様子で夏葉を見ている
「どうしたのみんな?」
夏葉は笑みを振りまく。
クラスメイトたちは夏葉が自分のエロ画像を
ツイッターにUPしたのを知っていた。
だからこそ、”変なヤツ”を見る目で夏葉を見ていたのだ。
ノートに文字が浮かび上がる。
”仕上げだー” と。
「……」
夏葉が不気味にほほ笑んだまま、虚空を見つめている。
”昼休みー
とことん大暴れしろ!
自分が積んできたものを全部ぶっ壊せ”
夏葉はそのノートの言葉を見つめると、
口元を三日月に歪めた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昼休み。
同級生の留美子に呼び出された勉は
空き教室にやってきていた。
「ねぇ…夏葉ちゃんの異変…
私、理由知ってるの…」
留美子は申し訳なさそうに言った。
今まで、素行不良という印象だった
留美子は、今日は穏やかだった。
勉は違和感を感じる。
そしてーー
「--あのノートには悪魔が宿ってるの…」
留美子は勉に全てを打ち明けた。
勉は驚く
”そんなことが、あるのか”と…。
だが、最近の夏葉の異変はオカシイ…。
「--ねぇ…夏葉ちゃんを助けてあげて…。
ノートが言ってた…
次の所有者は短期間で滅茶苦茶にしてやるって!」
留美子が嘆願するように言う。
「な、、何だって…
でも、どうすれば」
勉が言うと、留美子が呟いた
「あのノート…破り捨てればきっと…」
その時だった。
近くの教室から悲鳴が上がった。
夏葉のクラスの教室だー。
「---ちょ、、ご、ごめん!続きはあとで!」
勉は走り出した。
大切な彼女の夏葉を守るために―
夏葉の優しい笑顔を取り戻すために…
「ノ、、、ノートに、、そう書いてあるから…
うん、、そう。。そう書いてあるの」
夏葉の言葉を思い出す勉。
もっと早く、気づいてあげていれば…。。
勉が、夏葉のいるクラス、2-Cの教室に辿り着くと…
夏葉が一人の女子生徒を足で踏みつけていた。
教室の机は倒され、
窓ガラスは割れ…
全てが滅茶苦茶だった。
「夏葉!!!」
勉が叫ぶと、邪悪な笑みを浮かべた夏葉が振り向いた
「うふぅぅふふ…
わたし、、ぜぇ~~~んぶ、
ぶっこわすの!
この学校も、友達も、大切なものもみぃ~んな!
わたしの人生もね!
えへへへへへへへっ♡」
ヒビ割れたメガネの位置を調整しながら、
夏葉はー、そう宣言した・・・
全てはノートの意のままに・・・
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
次回で最終回です!
ノートの悪意に打ち勝てるのでしょうか?
これ憑依もの??と思った皆様!
悪霊がノートに「憑依」しているので憑依ものです!笑
コメント
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この後どうなるのか……w
予想としてはノートから夏葉本人に乗り移る可能性が微レ存
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> この後どうなるのか……w
> 予想としてはノートから夏葉本人に乗り移る可能性が微レ存
ありがとうございます^^
ノートさんは…恐ろしいことを…