<憑依>くノ一② ~暗殺~ (完)

ブラック企業の社長、加賀は、
会社のあり方に意見をつきつけた
高校生バイトを始末するため、
高校生の彼女、愛衣に代々伝わる女忍者の魂を憑依させた。

女忍者に完全に支配され、任務を忠実にこなそうとする愛衣。

果たしてその結末はー?

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圭吾は驚きの表情で幼馴染の愛衣を見た。

愛衣は冷たい視線で、圭吾を見つめていて、
そこにいつものような優しい笑顔はない。

そして、忍装束のコスプレ衣装のようなモノを身に着けており、
手には短刀が握られている。

「----は、、、あはは、ははははは!」
圭吾は突然笑い出した。

愛衣は腕を組んだまま、
不審者を見る様な目で圭吾を見つめた

「め、愛衣ちゃん!ドッキリにしちゃ、やりすぎだって!」

圭吾はドッキリだと勘違いして笑った

「-愛衣ちゃんにはそんな顔似合わないし、
 そんな格好も似合わないよ」

笑いながら圭吾が愛衣の肩に触れる。

すると愛衣が突然大声を出した

「---触るな!」

乱暴に圭吾を振り払って突き飛ばす。

突き飛ばされた圭吾は驚いて、
愛衣の方を見た

「め、、、愛衣ちゃん…?」

愛衣は不快そうな様子で圭吾を見つめた

「はっ、何だこのナヨナヨした男は!
 こんな男が現代には居るのか!」

呆れた様子で愛衣が背後に居る
加賀に問いかける。

「ーーまぁ、、時代は変わったからな」
加賀が目を逸らしながら言う。

「-はっ、笑わせる」
愛衣が愛想ない様子で言うと、
圭吾の顎を持ち上げた

「---なんだそのおびえた目は。
 男なら男らしく死のうとは思わないのか?」

愛衣が言う。

いつものようなおしとやかな様子はそこにはない

「め、、愛衣ちゃん!
 どうしたんだよ!しっかりしてよ!」

圭吾が叫ぶと、愛衣は圭吾の頬をビンタした

「愛衣ちゃん、愛衣ちゃん、うるさいヤツだ!」

愛衣が、乱暴に圭吾をビンタし続ける。

「め…めい…ちゃん…」
圭吾はあまりの痛さに涙を流してその場にうずくまる。

愛衣が圭吾に顔を近づけて言う。

「--死ぬ前に言い残すことはあるか?」

愛衣の顔がとても至近距離にある。
こんな近い距離で話した事はない。

圭吾はこんな状況なのに、ドキドキしてしまった。

少しだけ頬と頬が触れ、
圭吾はよりドキっとする

「--ぼ、、僕は」

愛衣が横目で圭吾を睨む。

「--僕は死にたくない!」
圭吾は叫んだ!ありったけの力を込めて

「プっ…はは、あはははははは!
 こんなに情けない男がこの世界に居るなんてな!」

愛衣がさぞおかしそうに笑い始めた。

「お前には誇りも、何もないようだな」

愛衣がバカにしたような、
人を蔑む目で、圭吾を見つめる。

「--お、、お前!愛衣ちゃんに何をしたんだ!」

圭吾は背後に居る加賀に叫んだ。

「---フフ。
 我が家には代々伝わる”女忍者”の魂があってね。

 それを、君の幼馴染の愛衣に憑依させてやったんだよ」

加賀が言うと、
愛衣が「お前は黙ってろ」と愛想なく言った。

加賀は苦笑いをしながら首を振り、口を閉ざした。

「--ー悪く思うな。
 お命頂戴する」

愛衣がそう言い、圭吾の方を見て歩き出した。

「--ちょ、ちょ、、待ってタイム!」

圭吾が慌てた仕草で言うと、
愛衣は不快そうな表情を浮かべた

「あ、アイツさ…、
 この時代の悪党なんだよ愛衣ちゃん!

 僕は何も悪い事をしていない!
 アイツに騙されていただけなんだ!

 ホラ、、、忍者って言ったっけ?
 その時代で言うと、、、盗賊とか山賊とか
 そんな感じの悪党なんだよアイツは!」

圭吾が言うと、
愛衣が失笑した

「善悪など関係ないー。
 わたしは主の命に従うだけだ」

そう言い、再び短刀を構える。

「ちょ、、、ね、、ねぇ!愛衣ちゃん!
 目を覚まして!」

説得が出来ないと悟った圭吾は
慌てふためいて愛衣に呼びかける。

背後で加賀が笑う

「大人しくしろ、ガキが!
 往生際が悪いぞ!
 私の会社の邪魔はさせない!」

加賀が愉快そうに言う。
圭吾は加賀の顔を睨んだ。

愛衣ちゃんをこんな目に遭わせてー。
そして僕をーー。

「……なら一つだけお願いがある」
圭吾が言うと、加賀は笑った

「What?」
ふざけた仕草で加賀が返事をする

「---僕は死んでもいい。
 どうか、愛衣ちゃんの命だけはー。
 僕を殺したら、愛衣ちゃんはもとに戻してあげてー」

圭吾は涙ぐんだ目で土下座した。
頭を床に擦り付けながら…

「・・・・・・・・」
愛衣が冷たい目で腕を組みながらその様子を見つめている。

加賀は机に置いてあったお茶を手にすると笑いながら言った。

「You have my word」
”約束するよ”

と。

「---良かった」
圭吾は安心したような笑みを浮かべた。

「愛衣ちゃんーー。
 ごめんー。
 
 でも、これも愛衣ちゃんを助けるためなんだー」

自分の命を犠牲にすれば、愛衣が正気に戻るのならばー。
この命なんて…

幼稚園の時から一緒だった愛衣ちゃん。
その愛衣ちゃんを救えるのならばー。

優しかった愛衣の笑顔とー
今、自分を見つめている冷たい表情の愛衣の顔が
重なって見える。

加賀は拍手をした

「美しい。感動の物語だ。
 幼馴染を救うため、自らの命を犠牲にする」

すると、愛衣が突然、歩きだし、
加賀の目の前で立ち止まった。

「--どうした?」
加賀が笑みを浮かべる。

「・・・一つ思い出した」
愛衣が愛想ない様子で言う。

「何を?」
加賀がそう言った直後、自分の喉元に激しい痛みが走り、
そこから赤い液体が飛び散った

「・・・!?!?!?!?!かはっ!」
加賀が驚いて目を見開く。

愛衣が、
短刀で、加賀の喉元を掻き切ったのだ。

「な、、、なぜーーー?」
加賀が倒れる。

倒れた加賀に馬乗りになって、
何度も何度も愛衣は短刀を突き刺した

「殿が言っていたー
 ”もしも私の子孫が、悪の道に染まっていたならば、
  お前の手で、引導を渡せー” と」

愛衣は遠い過去の人間である”殿”の
命令に従って、加賀を何度も何度も突き刺した。

殿の子孫がこんな外道だったなんて。

そう思いながらー。

どちらが悪かは圭吾の様子を見ていて
伝わってきたー

この男は、悪だ。

愛衣は返り血を意に反すことなく、
何度も加賀を突き刺した。

既に加賀は息絶えている。

「--め、愛衣ちゃん!もうやめてよ!」
圭吾が愛衣の腕をつかむが、
愛衣は「邪魔するな!」と大声で怒鳴って
さらに加賀を突き刺した

「殿の子孫でありながらっ!このっ!
 恥さらしめっ!」

愛衣の中に憑依している女忍者は
”殿”に好意を抱いていた。
しかし、それは決して叶わぬ恋。

その子孫が外道であることがどうしても
許せなかった。

愛衣は、何度も、何度も
加賀の肉体をその小さな短刀で突き刺し続けた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

半月後。

加賀コンツェルンは社長の病死を発表。

今までの社長の不正発覚を恐れ、
会社へのダメージを抑える方向で重役連中が、
社長の死を”病死”と発表したのだった。

とある高校の昼休み。

男女が、正門近くの木の下で話していた。

「---もっと笑顔で話さないと」
圭吾が言う。

「---笑顔…、、
 ふ、、ふざけるな…私は…!」

愛衣が顔を真っ赤にして言う。

あれから半月。
女忍者の魂は愛衣に憑依したまま。

どうすればもとに戻るか分からない。

だが、圭吾はなんとなく女忍者の事が
気に入っていた。

圭吾はそのまま愛衣の彼氏として、
愛衣に、”現代”の生活を日々教えていた。

「ホラ、クラスのみんな、最近愛衣ちゃんが
 笑わないし、愛想がないって心配してたよ?」

圭吾が言うと、
愛衣が圭吾から目を逸らした

「な、、なぜ わたしが笑わなければならないのだ!」
愛衣が必死に言う。

「--ホラ、笑顔の方が可愛いでしょ?」
圭吾がかつての愛衣の笑顔の写真を見せる。

その写真を見て、”今の愛衣”が顔を赤くする

「--わ、、、私にはこんな顔はできない!

 そ、、それに、この服だって、
 何なんだこのヒラヒラは?」

制服のスカートを持ちながら愛衣が言う。

「今はそういう時代だからしょうがないよ」
圭吾は笑った。

面白くて仕方がないー。

女忍者と化した愛衣の反応が面白くて
仕方が無かった。

「ホラ、笑ってみて」
圭吾が言うと、愛衣は無理やり笑顔を作った。
その笑顔はぎこちない

「こ…こう…か?」
愛衣の笑顔を見て、圭吾が笑う

「なんだよそれ、全然ダメじゃん!」
圭吾にダメだしされた愛衣はさらに顔を赤らめた

「--よ、、よく分からんな…」

そう言う愛衣に、圭吾はもう一つ付け加える。

「あとね、
 その言葉遣い、忍びだからかもだけど、
 もうちょっと女の子なんだから柔らかくしなきゃ

 ホラ、クラスのみんなの様子見てれば分かるよね?」

圭吾が言うと、
愛衣は顔を赤らめた

「わ、、私は、この話し方が慣れているんだ!」

必死になる愛衣を見て
圭吾は笑う。

「ダメだよそれじゃあ。
 ホラ、練習。」

圭吾がスマホに映った
ケーキの写真を愛衣に見せる

「---ケーキか」
愛衣が言う。

すると、圭吾は続けた

「ホラ、これ見て
 ”わぁ~美味しそう~!”って言ってみて」

その言葉を聞き、
愛衣が首を振る

「そんなの私には似合わないし、
 私には無理だ…」

しかし、圭吾は続けた

「ホラ、一回だけ」
圭吾が言うと、
愛衣が「い、、、一回だけだぞ…?」
と顔を赤らめる。

「わ、、、わぁ~お、、美味しそう」

言い終えると愛衣は顔を真っ赤にして
「わ、、、私には恥をかかせたな!覚えておけ!」と
捨て台詞を残し、走り去っていった。

「あはは…面白いな~」
一人残された圭吾は笑う。

「--こんな面白いなら、
 愛衣ちゃん戻ってこなくてもいいかなー」

圭吾はそんなことを呟いた。

そしてふと思いつく。

現代の常識を知らない愛衣に、
”間違った情報を教えたらー?”

圭吾は思う。

そして、ニヤッと笑った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後。

「愛衣ちゃん、今日家に来れる?」

今日は両親が仕事で遅い。

「お前の家に・・・?
 わ、分かった」

愛衣の返事を聞いて、
圭吾は笑う。

「今日は愛衣ちゃんに現代の男女の
 おつきあいを教えてあげるね」

「そ、、、そうか…よろしく頼む」

そう言うと、愛衣は足早に前を歩き始めた。

そしてー
圭吾は愛衣の後姿を見ながら笑った。

”今日がー愛衣ちゃんとの初体験の日になりそうだなー”

と。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

くノ一、完結です。
愛衣が正気を取り戻せる日は来るのでしょうか?(汗

圭吾君は調子に乗ってしまったようです。
彼女とヤリタイ年頃なのでしょうね!(笑)

調子に乗り過ぎていつか彼女に
刺されそうな気もしますけど…

お読み下さりありがとうございました^^

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憑依<くノ一>

コメント

  1. 柊菜緒 より:

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    ある意味圭吾君の将来が楽しみw
    愛衣ちゃん本人がどうなるのかも

  2. 匿名 より:

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    素晴らしい。くノ一の反応が非常に可愛かった!

  3. 無名 より:

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    > ある意味圭吾君の将来が楽しみw
    > 愛衣ちゃん本人がどうなるのかも

    どうなってしまうのでしょう!?
    機会があれば後日談を書くかもしれません!

  4. 無名 より:

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    > 素晴らしい。くノ一の反応が非常に可愛かった!

    ありがとうございます^^
    楽しんでいただけて何よりです!

  5. toshi9 より:

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    面白くてつい最後まで読んでしまいました。女忍者、良い娘ですね。

  6. 無名 より:

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    > 面白くてつい最後まで読んでしまいました。女忍者、良い娘ですね。

    ありがとうございます^^
    憑依された本人からすれば災難だと思いますが(笑)

    彼が調子に乗りすぎて女忍者に刺されないことを
    祈るばかりです

  7. む〜やん より:

    愛衣ちゃんが行為中途中からすごくなっちゃったのは、快楽追求しちゃったのか求めちゃったのかなー