<憑依>くノ一① ~復活~

ブラック企業の社長、加賀 幸之助(かが こうのすけ)

系列店でとある高校生バイトが、
会社に対して訴えを起こした。

大事になる前に排除したい。
そう考えた彼は、先祖代々伝わる”女忍者の魂”を
使うことにしたー。

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加賀幸之助。

彼はブラック企業の社長だった。

社員の事など、どうでも良い。
勿論、バイトもだ。

系列店の飲食店では、社員・バイト共に
酷使した。

時には倒れるものも居た。

だが、そんなことはどうでも良かった。

”私”が作り出した会社なのだ。
どうしようと私の勝手ではないか。

加賀社長はそんな風に思っていた。

だが、ある日、
系列の飲食店で働く高校生バイトが
過酷な長期労働、そして、残業代未払いに腹を立て、
本社にクレームをつけてきたのだ。

”改善されなければ労基にかけ込む”と。

加賀は激怒した。

だが、騒ぎ立てられてはまずい。

明日、この本社で、面談をすることになった。
そこで、口封じをしてしまいたい。

追い詰められた加賀は、
先祖代々伝わる”禁忌”の前に立っていた。

加賀の先祖にはとある大名が居たという。
そしてその大名は秘術により、仕えていた優秀な
”女忍者”の魂を箱の中に封印したというのだ。

そして、その女忍者の封印されているという箱が、
今、加賀の目の前にあった。

祖父は言っていたー。
箱を開き、その前に女性の肉体をささげれば
女忍者が現世に復活し、
復活させた者の命を聞くのだと。

加賀は笑みを浮かべた。

”今こそ、女忍者の魂を、そこら辺の女に憑依させ、
 くノ一を復活させるときである”

そう考えたー。

そして復活したくノ一にクレームをつける高校生バイトを
暗殺させる。

「--完ぺきではないか」

加賀は笑みを浮かべた。

そしてー
女忍者の魂を憑依させる人間は既に決まっていた。

モニターを見つめる加賀。

そこには、可愛らしいロングヘアーの
女子高生が映し出されていた。

この女は、
会社をブラック企業呼ばわりした
男子高校生の幼馴染であり、彼女の
妹尾 愛衣(せのお めい)

この女に女忍者の魂を憑依させ、
くノ一となったこの女に、
幼馴染を殺害させる。

何とも楽しいシチュエーションではないか。

加賀は微笑んだ。

既に、部下に愛衣をつれてくるように命じてある。

ワイングラスを手に、加賀社長は呟いた。

「It is the beginning of the show」

”ショーのはじまりだ” と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「いやっ!話してください!」

部下たちが愛衣を連れてきた。

愛衣は、目の大きめな
ロングヘアーの可愛らしい美少女だった。

部下たちを退出させ、
加賀は愛衣を見つめた。

「---怖がることはない」
加賀は笑みを浮かべて言う。

「-、、、な、、、私に何をするつもりなんですか!」
愛衣がおびえた様子で言う。

だが、その目は敵意に満ちている。
なかなか気の強い子のようだ。

「君は、私に仕えてもらう」
加賀が言うと、愛衣が、不思議そうなカオをする。

「仕えるー?
 な、、、何言ってるの…?」

そして怯えた様子を見せる。

「---言葉の通りだ。
 そして、君の大切な幼馴染でもあり、彼氏でもある
 同級生を、暗殺してもらう」

ーーー!?

愛衣は顔をしかめた。

この男は何を言ってるのだろうか?

人殺しをしろとー?
しかも大切な圭吾(けいご)を殺せとー?

頭がおかしいんじゃないだろうかー。

愛衣はそう思った。

「ホラー。
 君は今日から私専属のくノ一だ!」

加賀が黒い箱を愛衣の前に差し出した

「えーーっ!」
愛衣が声をあげると同時に
加賀は黒い箱を開く。

すると、金色の光が箱から飛び出し、
すぐに愛衣の体を包み込んだ

「えっ…いやっ、、な、、なにこれ!
 離して!お願い!いやっ、、いやあああ!」

愛衣が悲鳴を上げる

そして…

「あっ…あぁ・・・・・あっ」

そのまま愛衣は倒れてしまった。

「-----」
加賀は黙って倒れた愛衣を見つめる。

ーーただの言い伝えなのだろうか。
くノ一の魂が封印されているなんて、
現実には考えられない。

まぁ、もしもガセネタだったのであれば、
この子は別の方法で処理すれば良い。

大企業である
加賀コンツェルンの力をもってすれば
事実を隠し通すことなど、たやすいことだ。

「うっーーー…」
愛衣が声を上げた。

「・・・・・・大丈夫か?」
加賀が声をかけ、
愛衣の体を起こそうとつかんだ。

その時だった。

「---触るな」

先ほどまでとは違う、
鋭く冷たい声で愛衣は言った。

その目つきは鋭い。

「----!」
加賀は目を見開いた。
まさか本当に…。

「---お前が、殿の子孫か」

立ち上がった愛衣は冷たい目つきで加賀を見つめ、
腕を組みながらそう問いかけてきた。

「--そ、そうだ。。
 お前の魂を復活させれば、私に仕えてくれると聞いて
 お前を解き放ったのだ」

加賀が言うと、
愛衣は笑った。

「……今は何年だ?」
愛衣は不思議そうに周囲を見る

「--2017年…と言えばわかるか」
加賀が言うと、愛衣はあたりを見回し、
続けて自分の制服とスカートを見つめた

「…なんだ、このヒラヒラしたふざけた服は」
愛衣が不機嫌そうに言いながら
スカートを触ってフリフリと振っている。

「それが…
 現代の服装でな」

加賀が言うと、愛衣は笑った

「ふざけるな。話にならん。
 今すぐ私にふさわしい服装を用意しろ。
 こんなふざけた格好で、忍が務まると思うのか?」

愛衣は強気な様子で加賀を見た。

完全に見下されている感じがする。
加賀はそれだけで屈辱を覚えたがここは
従うことにした。

愛衣が近くの椅子に腰かけて足を組む。

スカートを知らない愛衣は、
組んだ足から中が見えてしまっていることも
気にしていない。

部屋の隅にあった鏡を見つめながら
愛衣は笑った。

「ふんーー。
 なんだこの女は。。。
 弱弱しい」

可愛らしい顔立ちを見て愛衣は自分を鼻で笑った。

「---…文句を言うな。
 今の時代では、美少女に分類される子だぞ。
 我慢しろ」

加賀が言うと、愛衣は不愉快そうに
呟く。

「--殿が私のこんな姿を見たら
 失望するだろうな…」

愛衣がさびしそうにつぶやいた。

その夜、加賀は、
くノ一のコスプレ衣装を用意して、
愛衣に差し出した。

乱暴に制服を脱ぎ捨てる愛衣。

「なんだ、この服は。
 忌々しい」

そう呟くと、忍の服装に着替えて愛衣は微笑んだ。

コスプレ用だからか、少し露出度が高いが、
愛衣は気にしていない様子だ

「やはりこの格好な落ち着くな」

愛衣が笑う。

加賀は、
拍手をしながらこうつぶやいた。

「it’s beautifulー」
”美しい”と。

「くだらぬ戯言は結構だ」

愛衣は忍姿でそう呟くと、愛想なく立ち上がった。

加賀は笑いをこらえるのに必死だった。

さっきまで普通の女子高生だった愛衣が、
忍のコスプレ衣装を着て、歩き回っている。

普通に見たら異常な光景だ。

だが、今の愛衣は真剣だ。

何故なら彼女は、
数百年前に封印された、本当のくノ一なのだから。

「---任務を説明する」
加賀は、真剣な表情で、明日決行する”バイト”の暗殺に
ついて話しはじめた

「---そうか。理解した」
腕を組んで壁に寄りかかっていた愛衣はそう呟いた。
さっきまで普通の女子高生だった人間とは思えないぐらい、
オーラが出ている。

「---戸惑いはないのか?」
加賀は尋ねた。

憑依されているとは言え、
自分の彼氏を殺害するのだ。

彼氏を失うだけでなく、
人殺しまですることになるー。

「戸惑い?私はただ、仕事をするだけだー」

愛衣の表情に戸惑いは一切無かった。

完全にくノ一の魂に乗っ取られている。

彼女は長い髪を見て不快そうに顔をゆがめた。

「ふん…やりづらい体だ」

そう呟くと、彼女は不機嫌そうに、彼女の為に
用意した寝室へと入っていこうとする。

「--お前、名は?」
加賀社長が訪ねると、彼女は愛想なく答えた。

「--松…」

彼女の返事を聞いて加賀は微笑んだ。

「そうかー、お松かー。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

城ケ崎 圭吾(じょうがさき けいご)は、
加賀コンツェルンの本社を訪ねた。

ここの経営する飲食店でバイトしていた彼は
散々な目にあった。

サービス残業はさせられるわ、パワハラされるわ…
もう我慢ならない。

だから、会社に訴え出たのだった。

意外にもコンツェルンのCEO、加賀幸之助は快く
対談を承諾した。

意外と話が分かる人なのかもしれない。

圭吾はそう考えていた。

受付係に用件を告げ、案内された部屋に
圭吾は入る。

すると、CEOの加賀幸之助が机に座り、
笑みを浮かべていた。

「失礼します」
圭吾は緊張した面持ちで会議室へと入る。

ブラック企業とはいえ、大企業のCEO。
そのCEOと1対1で話すということは
やはりなかなかの緊張感がある。

「Welcome」

加賀社長がそう呟いた。

圭吾が緊張した状態で席につくと、
加賀社長は笑う。

「さて、私の会社の勤務実態が
 おかしいと言う話だったが…」

加賀が早速本題を切りだした。

「はい」
圭吾はそういうと、資料を取り出して
自分が勤務するバイト先の過酷な実態を
加賀に向けて説明した。

「--つまり、それの改善を要求すると?」
加賀が言うと、圭吾はうなずいた。

「------」

沈黙。

そして、加賀が笑い出した

「あっはははははははは!
 はははははははははははは~~~~」

高い笑い声が室内に響く。

「な、、、何がおかしいんですか!」
圭吾が叫ぶと加賀は笑みを浮かべながら言う

「いや、失礼。
 とんだガキだな!
 お前は黙って働いてればいいんだよ!」

加賀が本性を現す。
圭吾はすかさず言い返す。

「---そちらがその気なら労基にー」

圭吾が言いかけると
加賀は叫んだ

「お松!出番だ!」

そう言うと、隣の部屋から忍び装束を身に着けた
女性が姿を現した。

圭吾はその姿を見て目を見開く

「めーーーー、、、愛衣ちゃん?」

だが、圭吾の言葉に愛衣は反応しない

「--お命、頂戴します」
愛衣が、愛想なくそう言う。

「め、、、めいちゃん…?
 ど、、どうしたの、、?
 何でここに!
 それにその格好は…?」

戸惑う圭吾を気に止めもせず、
愛衣は圭吾を蹴り飛ばした。

「主の命よ。
 大人しく死になさい」

愛衣の冷たい視線がー
圭吾に向けられた…

②へ続く

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コメント

くノ一第1話掲載しました!

明日で完結です。
果たしてどうなってしまうのでしょうか??

今日はこれとは別に5万アクセス記念の短編も
載せましたので、そちらもぜひ!

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憑依<くノ一>

コメント

  1. 柊菜緒 より:

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    愛衣の意識が戻ったり融合したりする展開が微レ存( ˘ω˘ )

  2. 無名 より:

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    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 愛衣の意識が戻ったり融合したりする展開が微レ存( ˘ω˘ )

    今回の結末も捻くれているかもしれません(笑)

  3. 匿名 より:

    SECRET: 0
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    「---お前が、殿の先祖か」

    ここ子孫の間違いではないでしょうか

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
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    > 「---お前が、殿の先祖か」
    >
    > ここ子孫の間違いではないでしょうか

    ありがとうございます!
    その通りです!修正しておきました!!