憑依薬を手に入れ、
好き放題を続ける凶悪犯罪者の室井。
多くの女性の幸せを壊し、
多くの人間を女性の手で殺めた室井。
その行く末はー
”正義”の弾丸が放たれるその瞬間ー。
”彼”は何を思うのかー。
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「……」
警察官、大室順二は家を見回した。
荒れ果てている自宅。
そして、同居していたはずの寧音の姿はない。
順二は唇を噛みしめた。
この状況が意味することは
一つ。
大切な彼女のーー
寧音が室井に憑依されたということ…。
テーブルに置いてあるブルーレイを
再生する。
そこには寧音の姿があった。
「順二~
この映像を見てるってことは…
もう分かってるよね~」
寧音がカメラに顔を近づけて
唇をなめまわす。
「わ・た・し、
貴方の捕まえようとしている
凶悪犯に
乗っ取られちゃったぁ~♡」
楽しそうに言う寧音。
順二は、手を怒りで震わせた。
許さないー。
絶対、何があっても許さないー。
必ずこの手でーー
お前を叩き潰す。
「見て~」
テレビの中の寧音が楽しそうに言う。
「私たちが大事にしている
ハムちゃん!」
ハムスターを尻尾から掴んで笑っている寧音。
寧音が欲しがって
毎日大切にしていたハムスター。
ーー彼女は笑いながらそれを引き裂いた。
「-----っ!!」
順二は目を逸らした。
「あははっ!
どう~?
今の寧音は何でもしちゃうよ~♪
体も心も言いなりなんだもん!」
寧音が嬉しそうに言う。
そしてーー
「ーー東地区の第2ビルの屋上で
待ってるからー。
私の事が本当に好きなら…
迎えに来てね!」
寧音は笑ったー。
いつもの”笑顔”でー。
さらに寧音は続けたー。
「順二が来るまでヒマだから~
いっぱい私の体で遊んでるね!」
そう言うと、寧音は乱暴にカメラを蹴り飛ばし、
そこで映像が途切れた。
ふざけるな!
ふざけるな!!
ふざけるな!!!
順二の怒りが爆発した。
無残な姿になったハムスターを横目で見つめた順二は
そのまま家を飛び出した。
30分後。
彼は指定されたビルへやってきた。
仲間にも連絡を入れた。
同期の警官、山田と後輩の星恵が到着する。
「---大室…お前の彼女さんが?」
山田は青ざめた表情で言う
「--そんな…酷過ぎますよ」
後輩の女性警官、星恵が悲しそうにつぶやく。
「---俺、一人で行く。
何かあったらすぐに無線で連絡する。
そしたら屋上に来てくれー」
順二が言うと、二人の警官は頷いた。
順二も頷き返す。
「--お気をつけて」
後輩の星恵の言葉に、順二が笑みを浮かべると、
非常階段から屋上へと向かった。
”死の屋上へとー”
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あっ…あっ・・・ あぁぁん・・・♡」
屋上へ向かう途中、上から喘ぎ声が
聞こえてきた。
いつも、優しい笑みを浮かべていた寧音ー。
最愛の彼女がこんなーーー
「室井ーーーーー!」
屋上に辿り着いた順二は叫んだ。
そこには、乱れきった格好で、
顔を赤く染めた寧音が自分の胸を触り
喘いでいた
「あっ…♡
おっそいよぉ…
もう、、寧音3回もいっちゃった… あは♡」
順二は挑発に乗らず、
冷静な表情で寧音に銃を向けた。
「--はは…撃てるの?あんたに私が!
寧音、死んじゃうよ…?」
寧音が挑発的に言う。
だが、順二は銃を降ろさなかった。
「---寧音を解放しろ」
順二が冷たい声で言い放つ。
「-----…」
寧音がバカにしたような目で順二を見つめた。
その間も寧音は自分の愛液を指につけて
ペロペロと舐めている。
「私はむろ…」
寧音が口を開いたその時だった。
バン!
銃声が響き、寧音の足もとに着弾し、
寧音は顔色を変えた。
「--しゃべるな。
寧音の”思考の書き換え”なんて絶対にさせない。
何か余計な事を口走ってみろ?
お前の頭、ぶちぬいてやる」
順二が怒りを込めて言い放つ。
「---ウフ…
そんなに私のコトが好きなんだぁ~♡
寧音、嬉しい♪」
寧音が無邪気にジャンプしながら
喜ぶ。
「---黙れって言ってんだろうが!」
順二は冷静さを失っていた。
対する、室井が憑依する寧音は笑っていた。
「なぁーーもう一度言うぜ?
アンタ、”ルールに縛られて生きていて”楽しいのかい?」
寧音が突然男言葉で話し出す。
そして、”憑依薬”を手に持ち、笑う。
「--どうだよ?
お前も俺と… いえ、寧音と一緒に…
好き放題しない?
あなたも、私のような楽しい人生を送ってみない?」
寧音が妖艶に笑った。
ーーー順二は揺らがなかった。
”お前のようなケダモノとは違う”
「---黙れ!」
バン!
順二の銃が火を噴いた。
そして、銃弾は寧音の肩を貫いた
「ひっ!?」
寧音が悲鳴を上げる。
「---俺は本気だぞ。室井。
今すぐ彼女を解放しろ」
順二が銃を寧音に向けた。
寧音は蔑むような視線を順二に向けた。
優しい彼女から蔑まれる順二。
順二は今にも泣き叫びたい気分だった。
だがーーー
”優位”なのはこちらだ。
室井は死にたくはないはず。
必ず、寧音を解放するーー。
「----えへへ…」
寧音が笑う。自分の血を舐めながら。
室井には分かっていた。
どんなに威勢が良くても、
この男には”恋人を射殺することはできない”
追い詰めることはできても、
”殺すことはできない” とー。
「ばっかじゃないの」
寧音は笑いながら立ち上がった。
「動くな!」
順二が叫ぶ。
だが、寧音はお構いなしに順二に近づいた。
そして、順二に熱いキスをした。
「なっ…」
順二から唇を離すと寧音は笑った。
「順二♡」
寧音が近くで甘い声を出す
「貴方に私は殺せないでしょ?
だって、私は貴方の大切な大切な
彼女だもの」
寧音は耳元で色っぽくささやく。
「---ほ、本当に撃つぞ!」
順二が叫ぶ。
だがー
寧音は順二の頬を優しく包み込んだ。
「---あなたには無理。
寧音は順二のコト、信じてるよーー」
「-----!!」
優しい寧音の顔ーー。
順二の心は揺らいだ。。。
そしてーーーー
「無能な警察官だな!」
突然、寧音が大声をあげて順二の銃を蹴り飛ばした。
そして、
順二を殴り倒すと、その手をハイヒールで踏みつけた
「ぐっ…」
順二が悔しそうに寧音を見上げる。
寧音は見下すような目で順二を見ていた。
ハイヒールで手をグリグリと地面に押し付ける
「---寧音だって本当はこんなことしたくないの!
助けて!助けて順二!
ねぇ、助けてよォ!」
寧音がハイヒールで手を踏みつけながら叫ぶ。
もちろんーー室井の演技なのはわかっている。
「---き…さまぁ!」
順二は叫ぶ。
だが、寧音は続けた
「ハムちゃん…
私、大好きだったのに…
自分の手で”殺させられちゃった”
ひどい…本当に酷い…」
寧音が涙を流す
「--順二をこんなに傷つけたくない…
こんなことしたくない…
どうして、、私がこんな目に遭わなきゃいけないの…
夜中のビルの屋上で、一人でエロいことさせられたり、
家を無茶苦茶にさせられたり…
私、こんなことしたくない!」
寧音が泣き叫ぶ。
順二は思わず叫んだ
「寧音!!俺は必ずお前をーー」
その言葉を聞いて、寧音は言う
「順二!助けて!お願い…」
そこまで言うと、寧音が爆笑し始めた
「っ…ぷぷ…あははははははははっ!
この女だったら、
今みたく言うんじゃないかなぁ~
ぷはははははっ!
馬鹿らしくて笑えるぜ!」
寧音が笑うー
さっきのも”全て室井の演技”そんなことは分かっている。
寧音は、順二の手を散々踏み終えると、
自分の服を乱暴にいじくりまわしながら言った
「寧音のーーご主人様はーー
室井様です」
”思考”の書き換えーーー。
寧音が順二を見つめながら”思考を変えられていくー”
「私のご主人様はーーー」
「うああああああああ!ふざけるなぁ!」
順二が叫び、腰に持っていた”もう1丁の銃”で、
寧音に向けて発砲した。
銃弾は、寧音の腹部を貫いた。
「かっーーー!」
寧音は驚きの表情を浮かべてその場に倒れた。
「寧音!--」
順二が近付く。
だが、寧音は笑っていた
「助けて…
お願い…順二……
わたし、、、死にたくない」
寧音が涙を流すーーー
”室井”はほくそ笑んだ。
この女はもうダメだー。
だが、まだすぐには死なない。
もう少しだけ、からかってやるー。
”死の直前”に抜け出せばそれで良い。
そしてー、
この男は、寧音にトドメを刺すことなんて出来ない。
絶対に!
「…寧音」
順二が戸惑う。
「--私・・・順二と結婚して
幸せな過程を作りたいの……
お願い…助けて……
順二、、、私、、あなたと結婚したい……」
寧音の頬を涙が伝う。
「---…」
順二は目をつぶり、涙を流した。
分かっているーー。
これも室井のおふざけだーーー。
寧音の優しい顔が浮かぶー。
だが同時に、犠牲になった人々の顔が浮かぶ。
女子高生の梨音ー。
先輩警官の大和田ー。
そして牧警視正ー。
”これ以上、犠牲を増やしてはならない”
牧警視正の言葉が脳裏に浮かんだ。
そして、順二は目を開いた
「ごめんーー。
寧音ーーー。
本当に、、ごめん」
そう言うと、順二は引き金に手をかけた
「-----!!!」
まさかコイツーーー!
寧音の中の室井が初めて”恐怖”を感じた。
そしてーーー
抜け出す前にーーー。
バン!
順二の銃弾は寧音の頭部を貫いた。
順二は銃を投げ捨て、寧音の前で
うずくまった。
「寧音ー。寧音…
本当に……すまない…俺は」
順二はいつまでも、
いつまでも涙を流し続けた。
「--ーー寧音…」
順二は寧音に黙とうを捧げた。
彼女はもう、戻らない。
だがーー、
これで良かったんだ。
順二は自分にそう言い聞かせた。
あのままじゃ、寧音は変えられてしまい、
室井にも逃げられてしまうところだった。
「俺だ…
今すぐ来てくれ」
順二が下で待つ仲間を呼ぶ。
5分後、後輩の星恵が上がってきた。
「---先輩?」
順二の悲しそうな背中を見て
星恵が心配そうに声を出した。
「----室井は、死んだ…」
順二が疲れ切った表情で、
彼女の寧音の死体を示した
「……大室さん…」
順二の名前を読んだ、星恵は順二の心中を察した。
室井をころすためとは言え、
本当につらかっただろう…。
「---彼女さんのご遺体…
丁重に弔いましょう…」
星恵が悲しそうに言う。
順二は悲しそうにうなずいた。
とりあえず、応援を呼ぶことにし、
順二と星恵は非常階段から下に降りていく。
同僚の山田が待機している車で応援を呼ぶのだ。
……寧音、ごめんな。
順二は心の中で何度も、
そう呟いた。
そして、車の扉を開き、
中にいる山田に「応援を」と言葉をかけた
「-----!?」
順二は目を見開いた。
運転席のハンドルにうつ伏せになっている山田の
様子を見て”異変”を感じる。
順二が、慌てて確認すると、
山田の額に穴が開いており、
山田は既に息絶えていたーーー
「こ、、、これはーー」
順二が驚きの声をあげる
「----先輩!」
背後から星恵の声がしたー
順二が振り返るー。
そしてーーー
一発の銃声と共に、彼の意識は永遠の眠りについた。
ーーーー。
「バカな先輩♪」
星恵が笑う。
警察官の持つ”正義”の銃が、
警官を射殺ー。
なんとも、皮肉なことだ、と星恵は笑う。
「---誰が、体が死んだら中に居る人間も
死ぬって言いましたぁ~?
えへへ!それって、
牧警視正の勝手な推理ですよねぇ~♪」
星恵が笑う。
そして、順二の死体を踏みつけて言った
「わたし~
これからもいっぱい、
可愛い女性で遊ばせてもらいますから。」
そう言うと、星恵は順二の死体に唾を
吐き捨てて、そのままパトカーを放置して夜の闇に姿を消したーーー。
その後の
凶悪犯罪者・室井の足取りを知るものは居ない。
だがー、
世の中では、
定期的に女性による残虐な事件や異様な事件が、
起きるようになっていたーー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
凶悪犯罪者・室井 完結です!
室井を逮捕してエンド…なんて誰も言ってませんよ?(鬼)
いつか続きがあるかもしれませんけれど…
それにしても、
凶悪犯罪者が憑依能力を手に入れたら、
それこそ世の終わりですね・・・。
お読みくださりありがとうございました~
コメント
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ダークで面白かったです
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そんな気はしてた( ˘ω˘ )
悪霊には塩投げつけないと
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まさか打ち殺せるとは…
でもまあ死なないですよね
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> ダークで面白かったです
ありがとうございます^^
何の救いも無いダークなお話しになってしまいました(笑)
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> そんな気はしてた( ˘ω˘ )
> 悪霊には塩投げつけないと
恐ろしい悪霊…
塩で彼を退治できれば良いですが…(汗)
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> まさか打ち殺せるとは…
> でもまあ死なないですよね
彼なりに(先も考えた末の)苦渋の決断だったようですが、
無駄になってしまいました…
”体を殺せば中身もー”と発言した
警視正無能…?(汗)
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こういう悪霊は陰陽師に魂を滅却させましょう、
なお洗脳の所為で自分が悪霊だと思い込んでる人をスケープゴートにされ逃げられる模様
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> こういう悪霊は陰陽師に魂を滅却させましょう、
> なお洗脳の所為で自分が悪霊だと思い込んでる人をスケープゴートにされ逃げられる模様
凶悪犯罪者の手の届くところに憑依薬を置いてはならない!
と、いうことですね^^
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恋人と後輩女刑事は活用してくれると信じてました! 心優しい女性ばかりが凶悪犯に乗っ取られていく容赦のない展開、最高に美味しかったです。
ところで、思考を書き換えられるということは「快楽殺人鬼そのものに変えてしまう」こともできたりするんでしょうか。
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> 恋人と後輩女刑事は活用してくれると信じてました! 心優しい女性ばかりが凶悪犯に乗っ取られていく容赦のない展開、最高に美味しかったです。
>
> ところで、思考を書き換えられるということは「快楽殺人鬼そのものに変えてしまう」こともできたりするんでしょうか。
楽しんでいただけて何よりです!
憑依している間に快楽殺人鬼だと念じれば、
思考が塗り代わり、目を覚ます頃には憑依されていた女性は
第2の室井になっています。。
(実は、そういう描写も書こうとしていたのですが
今回はナシになりました)