最後に笑うのは、
憑依暗殺部隊かー。
それとも極悪非道のホテル支配人
名倉俊之かー。
憑依された女性二人がーー
対決の時を迎えようとしていた。。
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「あははっ!冗談よしてよ」
姫香(名倉)が高飛車に笑う。
そして、挑戦するような目つきで言う。
「ーー私の人生を終わらせることなんて
誰にもできやしない!」
姫香はさぞ愉快そうに笑った。
可愛らしい笑い声が部屋に響き渡る。
その様子を、
直子(アルファ)は鋭い目つきで無言で見つめていた
「そうだ…続きしなきゃ!
姫香を作り変える続き♪
今のままだと、私、目を覚ました時、
何日も経っていてすっごく驚いちゃうから、
姫香の思考を塗りつぶしておくの!
名倉カラーにね!
あひひひひひひ!」
姫香が汚しく笑うと、
乱暴に胸をわしづかみにして喘ぎ始めた。
「------…」
直子(アルファ)にとって不愉快極まりない光景。
何故ならーー
「あっ…姫香…・、
塗りつぶされちゃう…
あっ、、、あああっ、、あっ♡」
姫香の体が快感で震える。
脳内に、絶対的な快感が流れ込む。
姫香本人の意思は眠った状態。
ゆえに、今の姫香の脳に”理性”は存在しない。
それ故、流れ込んできた快感、
そして意識を全て、無防備な状態で受け入れてしまう
「んあああああああっ♡」
姫香が体を震わせる
「私はっ、あっ…
名倉様の♡
しもべぇっ♡
んっんっ、、あああっ♡」
姫香の目から涙がこぼれるのを
直子は見たーー。
あまりの気持ちよさに涙をーー
それともーーー
「あああああああああああああっ♡
名倉様ぁああああっ♡」
姫香が妖艶な声をあげると、
潮を噴きだし、その場にピクピクと倒れたーー。
絶頂の快感と、
名倉への忠誠心ーー。
それらが一気に流れ込んだ姫香の意識はーー
塗り替えられた。
「---うっふふぅ…
改造完了~~♡」
姫香が笑いながら、直子の方を見た。
「これで目を覚ました時、
姫香は、名倉様の忠実なしもべになるの・・
ふふふ」
依然、名倉に憑依されたままの姫香が笑う
「----どうしたの?
まだそこに居たの?
何回来ても無駄よ…
私を暗殺することはできない!」
姫香が笑いながら言うと、
沈黙していた直子が口を開いた
「---御託はそれだけか?」
直子は殺気だった様子で言う
「--もう、うるさいなぁ!」
姫香が指をはじき、
憑依して作り出した忠実なしもべ
”名倉親衛隊”を呼び出した。
しかしーー。
誰も支配人室に来なかった
「---もう、彼らは解放した」
直子が手に持った毒カプセルを見せながら言う。
「えっ…」
姫香が驚きの表情を浮かべた。
あの警備員たちが簡単に”始末”されてしまったというのか。
「--なっ、なら、アンタに憑依して
お前の仲間と同じように消してやるーー!」
姫香は、
”女のマネ”をするのも忘れて声を荒げたー
だが、直子は冷たい目で言った。
「--果たして本当に私を抑え込めるのか?」
!?
姫香の中に居る名倉は言葉の意味を考えた。
今、姫香から抜けて、暗殺者の憑依している直子に
憑依するのはたやすい。
だがーー。
”本当に自分が支配できるのか?”
名倉は不安にさいなまれた。
姫香に憑依した時は、何も考えずに憑依した。
結果として、姫香に憑依していた暗殺者ごと、
憑依して支配することが出来た。
だがーーー。
名倉は考える。
”後から憑依した人間が支配権を得る”
名倉はそう思っていたが、
もしも
”我が強い方が支配権を得る”なのだとしたらーー。
憑依現象は人間には計り知れない。
名倉も、その全容は把握していなかった。
直子に憑依して、
もしも逆に”自分”が抑え込まれてしまったらーー?
姫香は、直子の方を睨んだ。
直子が冷たい目で殺気を放ちながら言った
「---試してみるか?」
と。。。
姫香はその氷のような目を見て恐怖した。
下着がグショグショにぬれているのも
忘れるほどにーー
その目はーーー”悪魔”のような目だった。
「ひっ…」
姫香は思わず悲鳴を漏らして後ずさった。
「----」
直子が無言で毒カプセルを持って近づく。
「ハハッ、
馬鹿なヤツ!」
姫香が笑う
「--私を殺しても、
私は姫香じゃない!
こんな女の体、捨ててしまえば、またいくらでもやり直せる!
お前に憑依してやったっていい!
他の人間に憑依して、お前を殺したっていい!
無駄なんだよ!」
姫香が汚らしい言葉でわめいた。
だがーー
直子(アルファ)は姫香の方に歩いてきていたわけでは
なかった
「へーーー?」
姫香が目を見開いた。
直子が向かった先にはーー
倒れた男の体があったー
そうーーー
名倉俊之の体が…。
バキッ!
直子が無言で名倉の体を蹴り飛ばした。
「--な、何をする!」
姫香が男言葉でわめく。
焦りからか、髪の毛をかきむしり、
リボンがほどけ、乱れた髪型になった姫香は
そのかわいらしい顔に、恐怖を浮かべていた。
「---お前の元の体が死んだら、
どうなると思う?」
直子が言う。
「----!」
姫香は目を見開いた。
どうなるのだーー?
名倉は考えた。
「---私はお前よりはるかに憑依の事を知っている。
お前の肉体を殺せば、お前は消える」
直子(アルファ)は可愛い声で淡々と説明した。
アルファは思うー。
前に隊員の一人が、憑依中に肉体を襲撃され、
死んだことがある。
だから、名倉の体を殺してしまえばーー。
だが、
姫香は一瞬笑みを浮かべた…。
”まだ奥の手はあるー”
肉体に戻った後にーー。
「わ、、分かった!
今すぐこの女を解放する!
だから待て!」
姫香が焦った様子で言う。
直子はその言葉を聞き、静かにうなずいた。
そして、
「うっ……」
姫香の体が力なくその場に倒れる。
その様子を見て直子(アルファ)は
即座に動いた。
”生かして返すつもりはないー”
アルファは知っていた。
”肉体の移動”には近距離でも数秒はかかるーー。
直子は無表情で
名倉の体に毒を打ち込んだ
”キ キ キ キ キィィィ ---”
音にならない断末魔のような音が部屋から聞こえる。
名倉の体が痙攣を起こし、
即座に心肺機能を停止したーー。
「---終了したのは、お前の人生だ」
直子が言う。
”気配”が消えた。
名倉は死んだ。
直子は、倒れている姫香のところに向かう。
長い間憑依されていたから、意識が戻るまでは
時間がかかるだろう。
ガンマが”消えていなかった”としてもーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2時間後。
姫香が声を上げた
「うっ……」
焦点の合わない雰囲気で周囲を見る
「----」
直子は無言でその様子を見つめた
「---た、、隊長?」
姫香の口から出たのはガンマの言葉だったーー。
「---全て終わった。
”撤退”しろ」
直子はガンマの無事を喜んだ。
だが、それを表に出さず、冷静に指示を出した。
姫香(ガンマ)が笑うと、
再び姫香はその場に崩れ落ちた。
ーーガンマは無事だったか。
直子は安心したかのように目をつぶった。
「---良かったな」
部屋の入口から声がした。
ホテル受付の瑠佳だった。
「---デルタか」
直子(アルファ)はすぐに誰だかを理解した。
心配で、様子を見に来たのだろう。
「---なぐらさま…」
眠っている姫香が寝言を言う。
穏やかな表情。
だがーー
その”脳”は名倉によって書き換えられていた。
目を覚ませば、
この子はー
名倉俊之のしもべとして、全てを名倉にささげるだろう。
もう存在しない名倉の為に、
人生全てを賭けるだろう。
ーー直子(アルファ)は、その様子を
じっと見つめていた。
「---殺すか?」
瑠佳(デルタ)が言う。
直子は首を振った。
「我々は人殺しだが、殺戮者ではない。。
依頼を受けていない人間は、放っておけ」
直子がそう言うと、離脱の準備を始めた。
そして一言付け加えた
「その姫香という女の記憶を全て
消去しておけーー」
直子(アルファ)の言葉に瑠佳(デルタ)が
不思議そうな顔をすると、直子は続けた
「--その女はまだ若いー。
記憶が全部無くなっても立ち直れるだろう。
名倉のしもべとして生きるよりましなはずだー。」
そう言うと、直子は姫香の顔を見て、
神妙な表情を浮かべると、ふっと力が抜けたように
その場に倒れた。
”アルファ”が離脱したのだ。
「---了解了解」
瑠佳が一人呟くと、姫香の記憶を消去すべく、
デルタが瑠佳から抜けて姫香に移動した。
「さすが隊長」
帰還したアルファをベータが出迎えた。
ガンマも無事に起き上がり、
いつものように穏やかそうな表情を浮かべていた。
「----」
アルファは複雑な表情を浮かべた。
”娘”によく似ていた。
アルファは、姫香に自分の娘の面影を重ねていた。
「-----」
”生きていれば”ちょうどあのぐらいの年齢だったか…?
アルファは自分の初憑依任務のことを思い出した。
暗殺対象はアルファ自身の妻。
アルファは知らなかったが、妻は
裏で多額の詐欺を働いていており、それで暗殺対象に選ばれた。
そして、上からの指示で憑依対象は、アルファの”娘”が選ばれた。
アルファはーー
心を鬼にして
自分の”娘”に憑依して”妻”を暗殺したーー。
そして、後日、正気を取り戻した”娘”は母親の死を知りーー
自分で殺したことを知りーー”自殺”したーー。
「-----」
アルファはその日以降、全ての情を殴り捨てた。
ーー姫香という女の記憶を消去させたのは
私情ではない…
あの女が”名倉”のしもべとして、厄介なことを始めたら
面倒だからだー。
そう、これはいつもの”合理的な判断”だー。
アルファは過去を振り払い、そう自分に言い聞かせた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ホテル。
検死官たちが、支配人の死体を調べていた。
姫香という女が錯乱状態で発見され、
支配人は変死していた。
支配人を殺害したのは、直子というホテル受付嬢で、
毒を使って殺害したらしい…。
検死官たちが死体の調査を進める。
しかし、後日、驚きの事実が判明したー
そこに倒れていた支配人の男のDNAは
”名倉 俊之”とは一致しなかった。
そしてその男のDNAは、
”辛島 信吾(からしま しんご)”という別の男と一致した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1か月後。
東北地方でとあるホテルの
新支配人就任式が行われていた。
23歳の若い女性。
ホテルの先代支配人の長女で、
まだ見習いの身だったが、
先代支配人である父が、
4週間前に急死し、
急きょ、彼女が支配人に就任したのだった。
天真爛漫な彼女を不安視する人間も多かったが、
彼女は父が死ぬ少し前から、突然立派な振る舞いを
するようになっていた。
父も、そんな娘に安堵していた矢先、
食中毒で死亡したのだった。
ガチャーー
支配人の部屋から、
着物を身に着けた美しい若き女性が出てきた。
彼女はー
赤渕のメガネをして、
赤いリボンで髪を留めていた。
「----」
彼女は満足そうに周囲をみわたし、
呟いた
「---フフフ」
笑みを浮かべる彼女は”1か月前”のことを思い浮かべた。
あのホテルで
支配人として働いていたのは
”名倉 俊之”だ。
だが、あの体はーーー
”私 本人”のものではない。
辛島 信吾という男に8年前、憑依して、
それから”名倉 俊之”と名乗り、
ホテルに勤務し始めて、支配人にまで上り詰め、
ホテルを支配していたに過ぎない。
本当の自分の体はー
”誰にも手の届かない安全な場所に隠してある”
正直、暗殺者に狙われるのは面倒だった。
だからー
”死んだふり”をして、こうして離れたホテルへやってきたのだ。
ちょうど良いホテルを見つけた名倉は、
ホテル支配人の長女に憑依した。
なかなか良い体だ。
そして名倉は、別の人間に暗示をかけ、
支配人に毒を盛らせて殺害した。
この長女がーー
ホテルを支配するためにーー。
美しい女性に憑依した名倉は微笑んだ…
そして、集まった人達に礼儀正しく挨拶をした
「新しく当”ホテルノシハイニン”になりました、
波川 亜衣 ですーーーーー」 と。
”さぁ、、
今度は”お前たちの人生を終了させてやるぞー”
亜衣の中に潜む名倉は、
会場に集まった夫婦やカップルの姿を見て、
邪悪にほほ笑んだー。
おわり
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コメント
憑依暗殺部隊VSホテルノシハイニン名倉 完結です。
あのホテルの支配人は、
名倉本人の体ではなく、
名倉が8年前に憑依してずっと使っている別人の体だったようです。
名倉本人の体は、どこか安全な場所にあるらしく(笑)
それにしても、新しく憑依された
別のホテル経営者の娘、亜衣は災難ですね…。
これから長い間、名倉俊之として利用されていくのでしょう。。
ご覧いただきありがとうございました!
機会があれば両作品とも続きがあるかもしれません^^
コメント
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体は衰弱死しないんだろうか……( ˘ω˘ )
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> 体は衰弱死しないんだろうか……( ˘ω˘ )
テンポ悪くなるので書きませんでしたが、
名倉本体を世話するための人間を2,3人
用意しているので、名倉本体はいつもピカピカのようです(笑)
(憑依して思考を書き換えて…)
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ガンマは名倉の思考操作の影響を受けてないのだろうか。気になるなー
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> ガンマは名倉の思考操作の影響を受けてないのだろうか。気になるなー
今後明らかになるかもしれませんね!(意味深…
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面白い作品。
哀れなアルファ。
永遠の惨めな宿命。
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> 面白い作品。
> 哀れなアルファ。
> 永遠の惨めな宿命。
ありがとうございます^^
暗殺部隊の出番もまたそのうちありますよ!