<憑依>悪の魂Inject ~102ニンメ~

人の死体から、悪の部分”悪の魂”を引き出せる男、
検死官のジョー。

彼は今日も、悪の魂を人に放り込むー。

今回のターゲットは…。

頂きましたリエクスト「小児性愛者の悪の魂を小児にー」
を題材としたお話です^^

※過去のシリーズはこちらです
悪の魂シリーズ

ピアノの音が響き渡るー。

不気味に暗いホールで、
男がピアノを弾いている。

流れているメロディは
ベートーヴェンのピアノソナタ 第14番 「月光」。

男は激しく頭を揺らしながら音色を奏でている。

目の前には、祭壇。
その中心部にはピアノを弾いている男の
”妹”の魂が祭られていたー。

”妹の悪の魂”-。

死んでしまった妹を悪の魂から復活させることはできないのかー。

ジョーはその方法を見つけるべく、研究していた。

そして、ジョーは、メロディを奏で終えた。

ピアノの脇に置いてあったワイングラスをつかみ、
妹の悪の魂に向かって乾杯した

「良い音色だっただろうー。

 もうすぐ、蘇えらせてあげるからねー」

ジョーはそう言うと、不気味にほほ笑んだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とある幼稚園。

幼稚園たちが騒がしく走り回っている。

一角で、一人の男児が泣いている。
どうやら転んで怪我をしたようだ。

「だいじょうぶ?」

心配そうに綺麗な黒髪の
可愛らしい子が訪ねたー。

岩田 裕美(いわた ひろみ)

幼稚園年中の彼女は、
幼いながらも世話好きの、面倒見の良い子だった。

聞き分けも良いので、幼稚園の先生たちからも
気に入られている

「せんせいー!たかと君がころんじゃったー」

幼稚園の「きりん組」と書かれた教室に
走って行く裕美。

先生は笑顔でそれを出迎えた。

ーーーそして、
”もう一人”笑顔でその様子を見ている人物がいた。

周囲からは見えない”透明”の状態で。

そして、ジョーは手にした”悪の魂”を構えた。

手にしたのは”小児性愛者”の死体から取り出した
悪の魂ー。

「幼稚園児を誘拐して、乱暴したあげく、
 その幼稚園児を手にかけた男の悪の魂」

ジョーは淡々と語る。
誰も聞いていない、その場所で。

「--逮捕されて服役を終えた後も
 同じことを繰り返したこの男ー。

 そして最後には病気になってあっけなく死んだ…」

語り終えると、ジョーは
純粋な笑顔を浮かべる幼稚園児、裕美の方を見た

「小児性愛者の悪の魂を、
 純粋な幼稚園児に放り込んだらー?」

ジョーは目を細めて笑ったー。

「純粋(ピュア)な心は、悪の色に打ち勝つかー?」

そしてジョーは、野球のフォームの如く、
悪の魂を、幼稚園児の裕美に放り込んだ。

「あっ!」
裕美が突然、違和感を感じてキョロキョロする。

「どうしたの?裕美ちゃん?」
幼稚園の先生が訪ねる

「え~
 今、おばけが居たの!おばけが!」

裕美が不思議そうな顔で言う。

「え~、大丈夫よ裕美ちゃん。
 何も居ないよ。」

そう言って、先生は微笑んだ。

ジョーは笑う。

「もしかしたら…
 今回が初めての”悪の魂克服”かもなー」

思えば、こんな小さな子に悪の魂を
放り込むのはーーー。

純粋であるがゆえに、
悪の魂を憑依させても、それに”影響”されないかも知れないー。

夜。

ジョーは再びピアノを奏でていた。

なぜ、お前は死んでしまったのかー。
なぜ、お前は悪の魂を克服できなかったのか。

妹の悪の魂を見ながら思う。

ジョーにとって、妹は天使のような存在だった。

天使ですら、悪の魂を克服できないというのかーー。

ジョーは涙を浮かべながらドビュッシーのベルガマスク組曲
奏で続けた。

いつまでもーーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌朝。

既に異変は起きていた

「ママー!
 お洋服着たくない!」

裕美が泣きじゃくっている。

幼稚園に行くのに洋服を着たくないというのだ。

そして、鏡で自分の姿を泣きながら見ている。

「----」
裕美は泣きながら思う。

なんか、自分を見ていると
すっごく胸の奥がドクンドクンする…と。

幼い裕美には分からなかったが、
裕美は興奮していた。

自分の体にーー。

「ホラ!裕美、お洋服着ないと幼稚園に行けないでしょ!」
母親がやっとの思いで服を着せる。

「うぅぅぅぅ!お洋服なんていらないもん!」

裕美がすねた様子で
頬を膨らませた。

自分の洋服を睨むようにしてみる。

そうーーー
たったの一晩で裕美の心は
憑依された悪の魂の影響を受けていた。

「チッ…」
透明な状態でそれを見ていたジョーは舌打ちした。

「ピュアであるほど… 
 浸食も早い、、ということか」

ジョーは失望感をあらわにした。

確かに、そうかもしれない。

女子高生でもそうだ。
純粋であればあるほど、
真面目であればあるほど、
早く悪に染まった。

98人目に悪の魂を放り込んだ、
愛華という子もそうだった…。

純粋であれば、あるほど。

だから、妹もー。

裕美が幼稚園バスに乗って、
幼稚園へと辿り着いた。

昨日まで、男の子とも仲良くしていた裕美が、
今日は、女の子とばかり話している。

そして、やたらと女の子の体を触っている

「ちひろちゃんのおなか!きゃはは~!」
裕美が、他の女児のおなかを服の上から
こするようにして触っている。

裕美は何が何だかわかっていなかった。

このあふれ出る感情は何だろう。

女の子がとても愛おしい。

欲しいー。

ほしいー!

おもちゃじゃなくて、女の子が欲しいーーー!

「ほしい!!!ほしい!!!」

気づけば、裕美は口に出して
大声でそう叫んでいた。

先生は、笑みを浮かべて裕美に近づく

「裕美ちゃん?
 何が欲しいの?」

なおも、裕美は叫び続ける!

「ほしい!!!!!
 ほしいぃぃ!!!!!!!」

そして裕美は、先生を見た

「おんなのこがほしいよぉ!
 ちっちゃいおんなのこが!!!

 あははははは」

可愛らしい無邪気な笑みを浮かべながら
裕美は言う。

先生は青ざめたー。

この子は何を言っているのかーーと。

「お友達ならーー
 いっぱいいるでしょ?裕美ちゃん」

そう言って、笑みを浮かべた先生。

しかし、次の瞬間、先生の表情は
驚きと恐怖に塗りつぶされたーー。

裕美が突然、洋服を脱ぎ捨て始めた

「お洋服なんて、いらな~~~い!」

無邪気に、
嬉しそうに言い放つ裕美ー。

ほかの園児たちは
「ひろみちゃんなにしてるの~」と
意味も分からず、笑っている。

「お洋服着ないといけないんだよー」
男児が悪い子を注意するような口調で指摘する。

しかし、裕美は笑っていた。

「千尋ちゃんもお洋服捨てるの!」

そう言いながら、同じ園児の千尋に襲い掛かった。

裕美は、幼稚園児とは思えないような手つきで、
泣きじゃくる千尋の服を脱がせた。

千尋の体を見て、裕美が幸せそうな笑みを浮かべた。

「えへへー!
 ちひろちゃんの体綺麗ー!」

裕美の中に放り込まれた
”悪の魂”は、
”子供の服の脱がせ方”をよく覚えていたー。

それが裕美にも影響を与えた。

そしてーー

裕美は飢えた獣の表情で、千尋の体を舐めはじめた

先生が叫ぶ

「裕美ちゃん!やめなさい!」

しかし、裕美は止まらない。

裕美の表情は、
無垢な女児の顔などではなかった。

クチュクチュと音が立つ。

裕美が、千尋の顔をペロペロと舐めはじめた。

千尋はわけがわからず、泣きじゃくっている。

他の園児たちの間にもパニックが起きたー

先生がたまらず止めに入る。
だがーー

「おばさんは邪魔!」

そう言うと、裕美は近くの椅子を乱暴に先生に投げつけた。

先生はたまらず後ずさる。

”悪の魂”の
歪んだ部分。
裕美はその全てに支配されていた。

悪の魂から流れ込んできた全てを
その純粋な心は受け入れてしまっていた。

同じ園児の千尋をなめまわし終えると、
次の園児を見つめた

「あいこ ちゃんも可愛い♡

 っ…あぁ!」

園児とは思えない声をあげると、
今度は愛子と呼ばれた児童に襲い掛かった。

その顔はー
もう、女児の顔では無かった。
歪んだ悪の魂の元の持ち主の、
表情に、よく似ていた。

ジョーはつまらなそうにその様子を見ていた。

「…ダメだな。」

そう呟くと、ジョーは振り返って
幼稚園を後にした。

あの裕美とか言う子は、これからどうなるのだろうー。

幼いからだろうかー。
悪の魂の影響が強く、そして早かった。

ーーならば、赤ん坊に妹の悪の魂を吹き込めば、
妹が復活するのではないかー?

…。

だが、まだデータが足りない。
”悪の魂”は一度放り込んだら取り出せない。

万全を期さねば。

ジョーはそう考えた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。

ジョーは月夜の差し込む部屋で、
ホワイトボードを見つめた。

端の方に幼稚園児の裕美の写真が×印をつけられ、
飾られている。

そしてー
ホワイトボードの中心には、
大学生と高校生の姉妹の写真が貼りつけられていた。

その上に”103” ”104”と書かれている。

そして、ジョーは2つの悪の魂を持ちながら笑みを浮かべた。

”次は、君たちだよーーー”   と。

102ニンメ 完

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コメント

リクエストを元にした作品でした^^

それほど書くのが得意分野ではないのですが、
こんな感じになんとかまとまりました。。

次回の”悪の魂”もリクエストによる作品をお送りします!

書くのはいつになるか分かりませんが、
気長にお待ちください^^

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憑依<”悪の魂”>

コメント

  1. 柊菜緒 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    やはり自我が薄い分浸食も早いですね

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > やはり自我が薄い分浸食も早いですね

    色々考えたのですが、
    やはり、すぐに侵食されるだろうな、、ということで
    この展開にしました^^