<憑依>やさしい憑依 ② ”本当の死” (完)

彼女の死に落ち込む幼馴染を慰めたいー。

また、笑ってほしいー。

そんな想いからー
憑依したー。

けれど、、
こんなことになるなんて…

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「お前なんだろーーー理恵ーー」

彼氏の幸信は去りゆく彼女にそう言ったーー。

見た目は留美ー。
でも、彼には分かっていたー。

死んだはずの留美が目覚めた日から彼にはー
分かっていた。

同じだけど、留美とは違う笑顔。

そして、その笑顔はー
自分の良く知る笑顔ー。

小さいころからずっと一緒だった笑顔。

ーでも、彼は言い出せなかった。

何て言い出していいか分からなかった。

言ってしまえば、
留美もー 理恵も-
二人とも居なくなってしまう気がしたー。

最愛の彼女、留美ー
そして、かけがえのない幼馴染、理恵。

二人とも、彼にとっては、
失うことのできない”大切なモノ”-。

「---なんだ……
 わかってたんだ…」

留美はひきつった笑顔を浮かべた。

ばれたことに動揺しているわけではないー。

もう”限界”だった。

体がーーーもう。。

留美の肉体は死んでいた。
しかし、理恵が憑依したことにより、
何らかのショックが与えられたのか、一度は
体の一部の機能が回復していた。

だがー
やはり”死人は死人”だったー。

次第に体の機能は再び停止していき、
今の留美はー
立っているのがやっとだった。

「----怒ってる…よね」
留美は言った。

幸信は静かに留美に近づいた。

「------」
殴られる覚悟をして留美は目をつぶる。

いま、殴られたら、自分は2度ともう立てないだろうーー。

立ち上がるだけの力が、もう、この体には
残されていないー。

「------」

暖かい手が頬に触れた。

その手は、とても暖かった。。

一度死んだ留美は-
既に体温をほとんど失っていた。

だから、その手はとても暖かった。

「----ごめんな」
幸信が優しくつぶやいた。

「俺がーー弱いからーー
 お前にこんな心配かけちゃったんだよな」

留美は顔を上げた。

怒ると思っていた幸信は笑顔だった。。

「……おこら…ないの?」
留美は恐る恐る尋ねた。

だが、幸信は怒らなかった

「-馬鹿かも知れないけど、
 留美と一緒に居れる時間が増えて嬉しかった…

 そして、理恵、お前の優しさが嬉しかった…

 本当にありがとう」

幸信は続けて言う

「--もう十分だよ、ありがとう。
 理恵、お前は元の体に戻れー」

幸信は知っていた。

小さいころ、何かにつけて祖父が遺した
”憑依薬”というのを理恵は自慢していた。

それを、使ったのだろうーーと。

「ーーーーもう、、、戻れないの」
留美が涙を流した

「えーーー?」
幸信が不思議そうに言う

「アンタ・・・
 本当にニュースとか見ないのね……」

留美は呆れたように言う。
その手はガクガク震えている。

「もう…・・・私の体、、、
 死んじゃったみたいなの…」

そして、留美はその場に崩れ落ちた

「お、、おい!」
倒れた彼女を幸信は支えた

「—馬鹿だよね……
 得体の知れない薬なんか飲んじゃって…」

留美はうつろな目で言った。

「---おい、、冗談よせよ。。
 早く、元の体に戻れよ!」

幸信が言う。

だが、留美は首を振った

「罰が当たったのーー。
 本当は優しさなんかで憑依したんじゃない…

 私、ずっとあなたのことが好きだった…

 だから、留美の体を奪えば…
 貴方の彼女になれるかなって…」

そこまで言うと、留美は咳き込んだ。

「----理恵…」

幸信は悲しそうな顔で留美を見た。

「最後にーーー
 一つだけ我儘言っていい?」

留美ははかなげに笑う。

「何だよ?」
幸信が悲しそうな声を出して、
留美を抱きかかえながらその顔を見た

「---…1回だけでいいから…
 わたしと…やってほしいの…」

やる…?

幸信は迷った。

留美はもう死んでいるー。

人道的に、ここは断るべきだろう…。

だがーーー。

幸信は己の欲望と戦った。

どうするべきかー?

理恵の最後の願いをかなえるべきかー?

だが、自分の体を利用した理恵と、
行為をしたなんて、留美が知ったらなんていうだろう…。

ーー。。

「…わかった」

幸信は理恵を悲しませるわけには行かない、
そう自分に言い聞かせて、理恵の申し出を受けることにした。

「---ありがとう」
留美は涙を流しながらそう言った。

留美はそう言うと、幸信の手をつかみ、
自分の胸に押し付けた

「うっ…はぁ…きもちいいよ……幸信・・・」
うっとりとした顔で天を見る留美。

幸信は複雑な思いだった。
生前、留美とは一度もこういうことをしたことが無い。

留美はーーー。
少し男性恐怖症だった。

幸信はそれでも良いと思っていたし、
急かす様なことは絶対にしなかった。

だからこそー複雑だった。

「うっ…ぁっあっ…凄いよ!
 幸信……わたし…・・感じる♪」

留美が喘ぎだす。
本当に瀕死なのだろうか、と思うぐらいに。

その声で、幸信は興奮を覚えた。

ー留美はこんな声で喘ぐのかーーと。

ふと見ると、既に留美の下着は、湿っていた。

「---あっ…ぁあああぁ♡」
恍惚な表情を浮かべている。

留美の手の動きがさらに激しくなる。

「ううぅぅっっぁあああああ!
 幸せ!!幸信ぅ、、わたし、、
 本当にあなたのことが、、、好きだった
 あぁっ♡」

留美が声をあげる。。

幸信はその言葉を聞きながら涙を流したーー。

”好きだった”

留美の言葉にも聞こえるー。
理恵の言葉にも聞こえるーー。

幸信の頬を涙が伝った…。
彼女の留美だけでなく、
幼馴染の理恵も失うなんてーー。

「うっあぁあああああああっ!ひぁあああっあぁ♡」

留美が絶頂に達したのか、倒れたまま体を
ビクビクと震わせた。

周囲にいやらしい液が飛び散った

「ふぅぅ、、、あぁあ・・・♡」

留美が燃え尽きたような表情で天井を見つめている。

「------」
留美の頬に涙が落ちた。

幸信の涙だ。

「----泣かないで」
留美にはもう、何も見えなかった。
もちろん、留美はもう死んでいる。

そしてーー留美に憑依している理恵にも、
もう何も見えなかったー。

「--ー」
幸信は涙ぐんだ顔で
彼女でもあり、幼馴染でもある人間の顔を見た

「---…幸信に…笑ってほしいから……
 憑依したの………だから、、、笑って」

留美は既に今にも消えてしまいそうな雰囲気だった。

「------」
幸信は涙を拭いてーー
そして、笑ったーーー

「分かったよーーもう、、、悲しまない。
 お前のおかげで元気が出たよー」

”嘘”だった。

”留美”をもう一度失うような感覚ー。

同時に幼馴染の”理恵”も失う。

笑えるはずがなかった。

だがー彼女はもう…
だから、彼は最後に笑った。

留美にはーーその笑顔がしっかりと伝わってきた。

「-----ありがとう」

そして、留美は再び…”死んだ”

もう、、、二度と動くことは無かった。

「留美ーーー。
 理恵ーーーーー。

 気付いてやれなくて…本当にすまなかったーーー」

幸信はただひたすらに、その場で涙を流したーー。

自転車で転倒したと聞いたときに、何故気づいてやれなかったのか。

何故、理恵が翌日、家に来てくれた時に彼女の想いに気付けなかったのかーー。

…幸信はふと思う。
”理恵の祖父は何のために憑依薬なんて作ったのだろうか”と…。

「---泣かないで」

ふいにそう聞こえた気がした。

幸信は、涙を拭いて立ち上がった。

「---分かったよ。。
 ありがとう 留美…
 ありがとう 理恵…」

そう呟き、彼は、悲しそうに動かなくなった
留美の方を見つめたーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とある式場。

ある大学生の葬儀が行われていた。

菅原 理恵(すがわら りえ)

幸信の幼馴染だった女子大生ー。
ある日、突然、変死体となって発見された彼女ー。

その葬儀だ。

明るく交友関係もそこそこ広かった理恵の式場には
多くの参列者が集っていた。

哀しみに暮れる参列者たちー。

しかし、
”異変”は起きた。

ーーゴト ゴト

理恵の体が入っている棺から音がするーー。

驚いて会場関係者が棺を確認するーーー

するとーーー

「------」
目を開いた理恵の姿があったーー。

「ひぃぃぃぃぃ!」
会場関係者が悲鳴をあげる。

そして、棺が開いたーー

「ーーーーーーーーー」
うつろな目で理恵は周囲を見渡した。

そして、、、
笑みを浮かべて言った。

「------ただいま。」

そして彼女は意味深な笑みを浮かべて言った。

「---久しぶり」

と。

おわり

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コメント

TSF要素が少なくなってしまった気もしますが、
こんな感じで完結です^^

明日や明後日の作品はまた、、闇サイドになる予感(汗

最後のシーンの解釈は、
ご想像にお任せします^^(え?理恵が戻ってきたんじゃなくて?笑)

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憑依<やさしい憑依>

コメント

  1. 匿名 より:

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    これ誰が憑依したにせよ一回死んでたなら理恵の身体もすぐダメになるのでは

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
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    > これ誰が憑依したにせよ一回死んでたなら理恵の身体もすぐダメになるのでは

    その可能性もありますね^^

    憑依薬による
    仮死状態だった可能性もありますが…