それは突然だったーーー。
さっきまで元気だった彼女がーー
眠るようにして死んでしまったー。
突然の事に気持ちの整理がつかないー。
これは、そんな彼氏に起こった
やさしい憑依の物語。。
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ーーそれは”突然”だった。。
つい、昨日までーー。
あんなに元気だったのにーーーー。
「---・・・・・・少しは何か食べないと体によくないよ」
彼の隣に隣にいた幼馴染の理恵(りえ)が言う。
彼、倉木 幸信(くらき ゆきのぶ)は大学生で一人暮らし。
昨日も彼女の仁科 留美(にしな るみ)は彼の家に遊びに来ていたーー。
だが、、彼女はーーー。
「わかってるーー」
幼馴染の理恵は、
幸信の彼女が急死したという知らせを聞いて、
幸信を心配して、家に駆け付けていた。
理恵と幸信は小学生時代からの腐れ縁のような
関係だ。
理恵は、幼馴染の幸信に好意を抱いていた。
けれどーー。
幸信は理恵をよくからかった。
そして、理恵も、幸信に小言をよく言っていた。
幼馴染と言う近すぎる距離ーー。
けれども、その距離は決してそれ以上縮めることのできない、
微妙な距離だったー。
理恵が、幸信に告白しようと迷っているうちに
幸信には彼女が出来た。
仁科 留美。
同じ大学のとてもかわいらしく、聡明な彼女。
全てにおいて、理恵は負けていたー。
頭の良さもー
容姿もー愛嬌もー。
だから、理恵は身を引いたのだった。
「----大丈夫。。
しばらく一人にさせてくれないか」
幸信が言う。
いつものような、ちょっかいを出す、少し意地悪な幸信は、
そこには居なかった。
”ぬけがら”のようになってしまった男がーー
そこにうなだれているだけだった。
「-----・・・幸信・・・」
幼馴染の理恵には辛かった。
こんなに、弱気になってしまった、彼を見るのが。。。
「----じゃあ、私、帰るね」
けれどもーー
理恵には何もできない。
彼の心を癒せるのはーー
死んでしまった彼女の”留美”だけなのだからーーー。
理恵は、自分の力不足に悲しい気持ちになりながらーー
何とかしてあげたいという気持ちを抑えながらー
静かに立ち去った。
「----留美・・・」
幸信は、その日も、彼女の横たわるベットから微動だにしないまま、
セミの抜け殻のように1日を過ごした。
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「---ちょっと遅れちゃった、ごめんね」
彼女の留美が、幸信の家にやってきた。
可愛らしいセミロングの髪、
清楚な服装に身を固めている。
「--お~~留美、ちょっと遅いから心配したよ」
留美が約束の時間に遅れるのは珍しい。
・・・と言っても5分だけなのだが。
それでも彼氏の幸信にとっては心配だったのだ。
「---ちょっと、自転車で途中、転倒しちゃってね~」
留美が笑いながら言う。
「おいおい、大丈夫かよ?」
幸信が言うと、
留美は笑いながらちょっとぶつけただけだから! と笑う。
確かに外傷はない。
「そっか」
幸信は安心して笑顔で言った。
留美が家に来てから1時間後ー。
「ちょっと、頭痛がするなぁ・・・
風邪でも引いたかなぁ・・・」
留美はそう言った。
頭痛・・・
確かに留美は結構風邪を引きやすいタイプだった。
「しばらくあっちの部屋で休んでなよ」
幸信は”いつもの風邪”だと考えて
留美に休むよう促した。
「うんーーーそうする!」
留美が笑ったー。
いつもと同じ、太陽の光のような笑顔ーー。
幸信には、この笑顔が何よりも大切だったー。
けれどーーー。
それがー
彼女の”最後の笑顔”になったー。
3時間たっても、起きてこないことを
心配した幸信は、彼女が寝ている部屋を訪ねた。
「留美ー
大丈夫か?
この寝坊助~!」
ふざけたことを言いながら部屋に入る幸信。
だがーーー
留美はーーもうーーー。
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「うっ!」
幸信は冷や汗まみれになって起き上がった。
「---夢か・・・」
彼女が死んだ日ー。
一昨日の夢ーー。
幸信は、留美の死体の目の前で寝てしまっていた。
まだ、涙がこぼれるーー。
「留美ーーー」
駆け付けた医師が、あの日、教えてくれた・・・。
彼女は直前、自転車で転倒した際に頭を打ち付けていたーー。
そしてーーそれが原因で、急性の頭蓋内出血で彼女はーーー。
こぼれる涙ーーー。
彼女は穏やかに眠り続けているーーー。
「----留美ーーー」
その時だったーーー
突然、彼女のー留美の体がビクンとなった。
「---留美!?」
幸信は叫んだ。
そしてーーー
留美が、ゆっくりと目を開いたーーー
「------幸信・・・」
穏やかな笑みを浮かべる留美。
ー幸信は目を見開いた。
ーーーそんな馬鹿な・・・
留美は確かに死んでいた!
駆け付けた救急隊員もーーー。
彼女はーー死んでいると・・・
目の前の留美が笑みを浮かべるー。
その笑みはーー。
いつも通り、優しい笑みだったーーー。
「----ごめんね。。心配かけて・・・。
幸信の事が心配で心配で・・・
戻ってきちゃった・・・」
そう言って笑顔を浮かべる留美ーー。
「-ーーーーーーー」
彼氏の幸信は何か言おうとしたが、
言葉が浮かばず、そのまま涙を流したーー。
彼女を抱きかかえるようにして幸信は言った
「なんだよ、、驚かさないでくれよーー
本当に、、、、本当に、、心配したんだぞ」
幸信が泣きながら言うー。
そして、留美も涙を流しながら言う。
「泣かないでーー。
これからはずっと一緒だからーー」
留美が幸信の頬に触れる。
「------・・・・・・留美」
幸信は呟いた。
とても悲しそうにーー。
”彼女”の手はーーー
死人のように冷たかったーーー
これはーー。
もしかするとーー
彼女の死を受け入れられず、自分は”幻”を見ているだけなのかも
知れないーー。
けれどーー。
それを認めてしまうのが怖かったーー。
幸信は笑顔で、少し休んだ方がいいよ、と奥の部屋を
留美に貸したーーー。
あの時のようにーー。
「ありがと」と言いながら部屋に向かう
留美を見るー。
この瞬間が、このまま永遠に続けばいいーー
そう思ったーー。
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部屋に入った留美はため息をついた。
「---あんなに嬉しそうにしちゃって・・・」
留美は複雑な笑みを浮かべたーーー
「私より・・・ずっと可愛いもんね・・・」
そう留美は呟いたーーー。
「本当に・・・本当に・・・こんなことができるなんて・・・」
留美はーー。
帰ってきたわけではない。
幸信の幼馴染、理恵は、幸信の事が好きで好きで仕方が無かった。
彼女の死で苦しんでいる幸信を元気づけてあげたかった。
そして、昨夜、理恵は思い出した。
自宅にー祖父が遺した”憑依薬”という謎の薬があることをー
「そんなことーあるわけないよね」
そう思いながら、理恵は薬を飲んだ。
するとーー
自分が”幽体離脱”したーー
驚きながらも理恵は、すぐに行動に出たーー。
幼馴染の幸信の彼女、留美の死体ーー。
それに、彼女は憑依したー
そしてーー
「はぁ・・・可愛い」
自分の顔を見て顔を赤らめる留美。
少し胸を触ってみる
「ふぁっ・・・♡」
留美の口から色っぽい声が出た
「うぁ・・・すごい感度・・・
私の体とは大違いーーー」
理恵は留美になった。
幼馴染の幸信を元気づけてあげたいー。
そして、、
あわよくば自分が、、幸信の彼女になりたいーー
彼女はずっと、ずっと、ずっと
幸信の事が好きだったーー
けれどー
素直になれない理恵はー、
幸信に彼女が出来るまで、その想いを
伝えることができなかった。
「---すごいなぁ・・・」
スカートから覗く足を触りながら思う。
留美の足はとても綺麗だったーー。
理恵はちょっとかぶれやすい体質でー、
それが恥ずかしくてー
長めのスカートや、ズボンなどで足を隠すことが多かった
「ウフフ・・・なんだかすごい」
留美は自分の足をこするようにして触った。
鏡を見るー。
鏡の中の留美はーー
ちょっとだけ興奮気味に顔を赤らめていたーーー。
その日からー
幸信と留美は同居を始めたー。
何も変わらない日々。
「留美ーー」
5日が経った頃、幸信が言った。
「---なぁに?」
可愛らしいミニスカートと、ブラウスを着た留美が笑みを浮かべた。
彼女はーー
”自分”ではできなかったおしゃれを留美の体で楽しんでいた。
「------いや、なんでもないよ」
幸信が笑顔で返事をした。
「…・・・・・・・・・・・」
幸信が机の写真を見た・・・
男女数名が写る写真・・・。
そこには幸信本人と彼女の留美、
そして幼馴染の理恵も写っていた。
「ーーーごめんな」
ふいに、彼はそう呟いた
「---え?」
留美が可愛らしく首をかしげた。
「いや、何でもないよ」
幸信は笑ったーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
部屋に戻った留美はーー。
ネットのニュースをスマホで見て、目を見開いたーーー。
”女子大生 変死”
ーーーーそれは、、、自分自身のーーー
”理恵”の死を伝える記事だった。
「----えーー」
留美は驚きの表情でそのまましばらく動けなかった。
留美に憑依している間にーー
自分の体が死んでしまったのだーーー
「------そんな」
しばらく信じられない、というような表情を浮かべていた
留美は、少しして、笑みを浮かべた
「・・・・・・そっか、、
私は、、留美として生きて行けばいいんだね・・・」
そう言うと微笑んだ・・・
「私は留美・・・ うん、理恵じゃない。
私は留美ーー 留美・・・」
自分に言い聞かせるようにして呟いた。
念願の幸信を手に入れたんだからーーー
悲しむことなんて何もない。
「あっ・・・やっぱすごい・・・♡」
自分の胸を触って少し喘ぐ留美ー。
”自分の体”ではほとんど味わえなかった快感ーー。
留美はそれにおぼれていたー。
毎晩のように一人、行為を繰り返したー。
早く、幸信と本番を・・・
そんな風に考えていると、自分の下着が少し
濡れているのに気付いた。
「あっ・・・・感じちゃった・・・」
留美がつぶやいた。
その時だったーーーーー
突然、右腕を激しいしびれが襲ったーー
「------えっ・・・」
留美は驚きの表情を浮かべた。
そのまま、自分がどうにかなってしまうんじゃないか、と
思えるぐらいのしびれだった。
だが、それはすぐに収まった
「---なんだったんだろう・・・」
それからも、留美と幸信は幸せな毎日を送っていた。
けれどもーー。
留美の体は次第に、壊れて行ったーーー
自分の部屋で留美は思う・・・
”きっと、、この体はーーもう死んでいたからーー”
「・・・・・・私、、、もしかして・・・」
部屋にある幸信の写真を見つめる。。
ーーこの体は既に死んでいたーー。
一時的に、自分(理恵)が憑依したことによって
活力を取り戻していたけれど、
やっぱりーーー。
そう、留美の体はもう死んでいたーー。
次第に、あるべき姿へと戻っていく。
彼女の体はどんどん衰弱していった。
でもーーー
幸信には何も言えなかったーー。
”本当は自分が留美じゃない”だなんてーー。
そしてーー
”自分の体の調子が悪いだなんてー”
・・・ここで自分が倒れれば、
また幸信が悲しんでしまうからーーー。
ある日、自分の”限界”が近い事を悟った留美は、
幸信に言った。
「---ごめん。
実家のおとうさんが倒れちゃったみたい」
ーー本当はもう、普通にしゃべることも
苦しかった。
口を開くたびに、激痛が留美を襲ったー。
「---私、一回帰るね
また、連絡するから」
手短に伝えて、笑みを浮かべて、
背を向けた。
「---待ってくれーー」
背後から幸信の声がした。
留美は振り返ったーー。
そして、幸信が口を開いたー
「行かないでくれーー。
”もう帰ってこないつもりなんだろ”
・・・・・・留美・・・
いや・・・・・・理恵・・・」
幸信の言葉に留美は、目を見開いた
そして、幸信は続けた。
「お前なんだろーーー理恵ーー」
ーーーと。
②へ続く
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コメント
ホワイト憑依・・・
ホワイトで書くとH的なシーンが減りますねぇ(汗)
難しいところです。
でも、せっかく毎日書いているので、たまにはこういうのも・・・!
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