憑依暗殺部隊 ④ デルタ

憑依暗殺部隊ー。

最後の隊員”デルタ”が指導するー。

憑依した相手の意識を残したまま暗殺を行う、
冷徹な憑依暗殺隊員。

彼の今回のターゲットはーーー。

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「今回の対象はーー
 悪徳マネージャー。野崎 辰夫(のざき たつお)

 若手アイドルを食い物に色々ときな臭いことをやっている男だ」

リーダー格のアルファが
スクリーンに対象の写真を写しだす。

「そして、今回はこのマネージャーが今、熱心に育てている
 アイドル、愛佳(まなか)に憑依して、暗殺を行う」

憑依対象の愛佳がスクリーンに映し出される。
いかにもアイドルらしい、容姿で愛嬌のある笑みを浮かべている。
衣装もアイドルらしく、可愛らしいモノになっている

「---フフフ、俺の出番だな」

デルタが手を挙げた。

彼はメンバーの中でも”もっとも残酷”と評されており、
彼に乗っ取られた子は災難だとまで言われている。

「あ~あ、この子も可哀想に」
ベータがニヤニヤしながら言う

「-ーそうですねぇ」
ガンマがスクリーンの方を見つめた。

アイドル、愛佳ーーー。
”デルタ”に魅入られた時点でもうーーー。

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「このあと握手会があるから」

マネージャーの野崎が言う。

「はい!頑張ります!」
愛佳が可愛らしい仕草で返事をした。

ー別に裏方で愛嬌をふりまく必要はないのだが、
アイドルをやっていると、どうしても誰にでも愛嬌を
振りまいたりするようになってしまう。

「愛佳ちゃんは本当に頑張ってるよ」
野崎が言う。

愛佳は現役の女子大生で、
ある日、街でスカウトされてアイドルの道へと進んだ。

既に2年。
今はまだ地下アイドルレベルだが、
次第にその人気も上がってきており、
いずれは全国区デビューも考えられていた。

「はい、ありがとうございます」
可愛らしく返事をする愛佳。

「じゃ、そろそろいいかな」
野崎が言う。

そして、愛佳は会場へと向かった。

「---おーー愛佳ちゃん!」

会場で待っていたファンたちが一斉に声をあげる。

愛佳は笑顔で手を振った

「みんなーおまたせー!

 愛佳のためにありがと!」

最大限の愛嬌を振りまいて
ステージに立つ。

だがーーー彼女は男性が苦手だった。
特に、オタク系が苦手で仕方が無かった。

だが、彼女はスカウトされてからというものの、
本気でアイドルになりたいと考えていた。

だからこそ、自分を殺し、
色々と我慢もしてきたのだ。

「へへー今日も可愛いね」
最初のファンがやってきた。

「ありがとうございます♪」
愛佳は笑みを浮かべながら、
握手を交わす。

ファンが財布を落とし、それを拾う。

愛佳は内心嫌悪した。

わざと財布を落としてチュールスカートを
覗こうとしているのだと分っているからーーー。

その時だった。

「---うっ!」
愛佳が変な声を出した

「ん~どうしたの?」
ファンの男が聞く

すると突然、愛佳で笑みを浮かべて
乱暴に机を倒すと、男を抱き寄せた

「握手だけじゃ…満足できないでしょ?
 ホラ…愛佳のサービス♪」

男は顔を真っ赤にしている。

「--え…イヤ!イヤ!
 な、、、なに!離れて下さい!」

しかし、突然 愛佳が悲鳴を上げる。

ファンの男は驚いて、愛佳から離れた

「な…なに、、今?私勝手に…」
愛佳が怯えの表情を見せる

「--おいおい、何やってるんだ!」
マネージャーの野崎が愛佳の方へ歩み寄る

「---邪魔すんじゃねぇ!」
愛佳が突然、大声で怒鳴った。

ファンもマネージャーも足を止めた

「---えっ…え、、あれ??
 な、、何これ!
 今の口が勝手に!」

また愛佳がおびえた様子を見せる

そしてーーー

急に笑みを浮かべると愛佳が言った

「は~い!握手会は中止!
 今日はみんなを気持ちよくしてあげるね♡

 愛佳の大サービス!!」

愛佳が男を誘うようにスカートを
ふわふわとさせた。

ファンの男たちは鼻の下を伸ばして
一斉に愛佳に近づいた。

だがーーー愛佳の目からは涙があふれていた

「--どうしたの?」
ファンの男が愛佳のスカートをいやらしく触りながら言う

「ううんーーー
 うれしくて!愛佳の体でみんな、こんなに喜んでくれるなんて
 
 ホラ!もっと好きにして!」

愛佳が誘うように甘くささやいた。

男たちの興奮は頂点に達した

「~~~
 (く、口が動かない…どうして!やめて!
 きもちわるい!!やめて!やめて!はなれて!」

愛佳は自由にならない体と口におびえながら
懸命に叫んだ。

だがーーー

「ホラ!もっと~~
 愛佳を楽しませて!
 愛佳、み~んな大好き!♡」

自分の体は男たちを受け入れ、
体を触られることに快感を感じている。

「ホラ、もっとやっていいよ…」

そう言うと、愛佳は怯えた表情を浮かべながら
自分のアイドル衣装を脱ぎ捨てた。

男たちが歓喜の声をあげる。

マネージャーは戸惑っている。

「……(誰か助けて!)」

愛佳がそう叫んだ瞬間だった。

口の主導権が戻ってきた

「たすけ…あっ!あっ!やめ、、あぁぁあ!
 うああぁ、あ、、ぁ、、やめて、、愛佳、、、このままじゃ♡」

既に愛佳の体は感じてしまっていた。

助けを求めようとするが声にならない。

そして、脳内に声が響き渡る

「(どうだい…体が自由にならない感覚。
 新鮮だろう?むはははは!)」

中からけがらわしい声が聞こえる

「あ、、あなたは、、、だれ、、、あな、、あぁぁあ♪
 きも、、、きもち、、、気持ちイイ!!
 も、、、もうやめて、、まなか… あっ♡」

そして愛佳はそのまま絶頂に達し、
会場に響き渡る大きな声で喘いだ

「あっあああああぁぁあ~~♡」

ファンの男たちは
「まじかよ すげーぜ」
と言っている。

「(見てな…)」

愛佳の中の男が再び主導権を握った。

今しがた絶頂に達した愛佳が立ち上がる。

そして、男たちに言う

「いまから、愛佳のとっておきのショーを始めるね!」

そう言って愛佳がほほ笑んだ。

だがーその目からは大粒の涙が流れている

「---いや、、やめて!」
突然、愛佳が叫び出した

ファンもマネージャーも困惑している。

「いやだ!やめて!私から出て行って」

愛佳はそう叫んでいるが、
その言葉をよそに、先ほど、愛佳に憑依する前に、
この会場に”発送”しておいた小包を乱暴に開けた。

その中にはーーー
輝くナイフが入っていた。

愛佳は下でそのナイフを舐めた。

可愛らしい愛佳が妖艶にー
ナイフを舐めている。

ファンの男たちは興奮した

「私に何させるの!やめて!お願い!助けて!」

愛佳がそう叫びながら、
マネージャーの方へ向かう。

「へーーー?」
マネージャーが間抜けな声を上げた
次の瞬間だった。

愛佳がマネージャーの首にナイフを突き立てた。

「やめてぇーーーーーー!
 いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

愛佳が泣き叫ぶ。

だが、その表情は笑っている。

そしてーーー

「あははははははははーーーー!
 愛佳の殺人ショー♪

 あは!あは!たまらない!!」

ファンたちが悲鳴をあげて一斉に逃げ出した

そして、愛佳は冷たくなった野崎の姿を見つめた

「まなか、人を刺しちゃいました~」

笑いながら言う愛佳。

そして、

「…うっ…うっ……
 どうして……」

愛佳がただただ泣きじゃくった。

そしてその愛佳の表情が再び笑みを浮かべたものに変わる

「--俺はよぉ、
 こうやって対象を始末しながら、
 同時に自分ではしたくないことをさせられる絶望?
 それを見るのが大好きなんだよ!

 今回の君みたいにな。

 純粋な子の絶望。それが俺を興奮させるんだよ。

 はっはっはっ」

愛佳が愛嬌のある声で汚らしく笑う。

「ま、心配すんな、
 君は”楽”にしとくからよ」

愛佳がデルタの意思でそう呟くと

「えーー?」

と言葉を発し、
突然痙攣し始めた。
白目を剥き、痙攣する愛佳ーー。

そして痙攣が落ち着いた頃ーーー
愛佳はそっと目を覚ました

「---うあーーー?」

愛佳はーー何も覚えていなかった。

この世に生まれた時からのことを全てーーー

「あーーー、、あぁ…」

腑抜けた顔でよだれを垂らしながらその場で
茫然とする愛佳にーーー
元の面影はなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「どうだったよ?」
”帰還”したデルタが言う。

「---ひどすぎだろ」
ベータが言う。

”人に暗殺をさせている”という点でひどいのは4人とも同じだろう。

だがーー
ベータはデルタのやり方に恐怖していた

”本人の意識を残したまま暗殺させる”

そして、”最後に無意味に憑依相手の記憶を全て消す”ことにーーー。

「ーーー悪趣味ですねぇ」
ガンマもその様子をモニターで見ながら、そう呟いていた。

ーーー彼らの”仕事”は終わらない。

そしてーー
彼らには”大きな仕事”が迫りつつあった。

おわり

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コメント

憑依暗殺部隊 完結です!

と、言っても次回作
「憑依暗殺部隊の大仕事」を少し間を開けて掲載予定です。

次のターゲットは大手ブラック企業の経営者一族。
会長、長男、次男、三男。

4人を暗殺するため、
アルファら4人は、
経営者一族のプライベートパーティの日に、暗殺を決意します。

経営者一族の妹、
経営者一族の豪邸のメイド、
一族の長男の婚約者。
そして会長の愛人。

それぞれ憑依した4人は、
4人同時暗殺作戦を決行しますーー。

お楽しみに^^

憑依暗殺部隊、ひとまずは終了デス
お読みいただきありがとうございました

明日は悪の魂 の続きです。
そろそろジョーさんが退屈してるので(笑)

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憑依<憑依暗殺部隊>

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
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    続編楽しみ。もちろん悪の魂の続きも楽しみ
    暗殺部隊どれもいい仕事っぷりでした

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ありがとうございます!
    どちらの続きも頑張ります!

    > 続編楽しみ。もちろん悪の魂の続きも楽しみ
    > 暗殺部隊どれもいい仕事っぷりでした