憑依小説 昆虫の逆襲②

彼女が豹変したーーー。

彼に思い当たる節はない。

既に”昆虫の復讐”は始まっていた・・・

----------------------------------------------

今日は怜奈の機嫌がとても悪い。

何故だろうか?俺が何かしてしまったのだろうか?

だが、考えても、考えても思い当たる節はない。

塚本はそんな風に考えていた。

いつものように大学で怜奈と会った塚本は
おはよう とあいさつをした。
しかし怜奈は蔑むような視線を塚本に投げかけ、
そしてそのまま立ち去ってしまったのだ。

食堂で出会った時もそうだった。
怜奈は何故か自分で持ってきたと思われるフルーツを
食べていた。

塚本は「フルーツダイエットか何かか?」と笑いながら
声をかけたが怜奈は嫌悪感を隠そうともせず
「話しかけないでけがらわしい」と
塚本に侮蔑の言葉を投げかけた。

一体、何があったんだ・・・?

塚本は自分の記憶を探るが、どうしても自分が何かを
してしまったとは思えなかった。

ではなんだ?
生理とかか?
それともーーー。

「ねぇ・・・」

背後から声がした。

驚いて振り向くとその声の主は怜奈だった。

「あ、怜奈・・・」

塚本が驚いていると、怜奈は塚本を睨みながら言った。

「今日、アンタの家に行っていい?」

塚本は違和感を感じた。

塚本の事を怜奈は
「塚本君」もしくは「卓也」と呼んでいた。

それなのにいきなり「アンタ」とは・・・?

「い・・・いいけど」

ちょうど今日は怜奈の誕生日だ。

塚本はそう思った。

一昨日約束をしたプレゼントを渡せば、
怜奈も機嫌を直してくれるかもしれない。

「・・・じゃあ、行くから」
それだけ言うと、怜奈は立ち去ろうとした

「ちょ、、怜奈!
 俺、何かしたか?

 何か怒ってるなら謝るから!」

塚本が叫ぶと
怜奈は振り向いて言った

「・・・私に話しかけるな!」
怜奈は激しい剣幕で塚本に言葉を投げかけた。

今まで見たことのない怜奈の様子に
塚本はたじろぐ

「れ・・・怜奈・・・」

しかし、怜奈は憎しみに満ちた目で塚本を見ると
そのまま立ち去ってしまった。

「・・・・・・な、、、何だ・・・」

その夜。

塚本の家に怜奈がやってきた。

「・・・怜奈・・・まだ怒ってるのか?
 なぁ・・・本当にごめんってば」
塚本が言う。

「・・・・・・アンタさ・・・」
怜奈が口を開きかける。

その時だった。
クモが壁を這っているのが塚本の目に入った。

塚本は
「お、このやろ~」と笑いながら
クモをつぶそうと近づいていった。

クモを潰そうと狙いを定めたその時だった。

背後から突然 頭をつかまれ、
そのまま壁に叩きつけられた。

塚本は激しい痛みと同時に何が起こったのか
理解できなかった

「テメェ・・・いつまでも私たちが黙ってると
 思ってるんじゃねぇよ!」

背後から怜奈の声がした。

恐ろしく乱暴で、怜奈が絶対に出さなそうな
キツイ口調で話している

「れ・・・れい・・な?」
塚本は言葉を失った。
なんとか振り向くと怜奈が怒りをにじませていた。

「・・・な、何だよ 急に」

すると怜奈が胸倉をつかんできた

「テメェ、調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
怜奈の目は正気ではない。

「ど・・・どうしたんだよ!怜奈!」
塚本が怜奈を呼びかける。

しかし怜奈な馬鹿にしたような笑みを浮かべた

「馬鹿な人間だ・・・」

その言葉に塚本は違和感を感じた

「いま、、何て・・・?」
そう尋ねると
怜奈は邪悪な笑みを浮かべた。

そして、何かが怜奈の耳から姿を現した。

金色と銀色に光る 小さいゴキブリのような虫だった。

「なっ・・・」
異様な光景に塚本は恐怖する。

しかし怜奈は全く気にする様子もなく
笑っている。

怜奈の目がうつろになる。

「怜奈・・・?」

怜奈がぎこちない様子で話し始めた

「私は・・・クィーン・・・。
 進化を遂げた昆虫だ・・・

 お前が我々の仲間を殺し続けた・・・
 だから・・・私は報復のために・・・
 お前の彼女の体を頂いた・・・。

 人間など・・・私の手にかかれば・・・
 カンタンに支配できる・・・」

怜奈はうつろな目のまま機械的にそう言った。

「な・・・何の冗談だよ怜奈」
塚本が金色の虫の方に近づく。

なんだかわからないが、とにかくこの虫はヤバイ。

耳から糸のようなものでぶら下がっている。

しかし塚本がその虫に触れようとすると、
怜奈が動きだし、俺のみぞおちを蹴り飛ばした

「触れるな・・・無礼者」
怜奈は無表情のままそう言った。

「お、、、おい!しっかりしろよ怜奈!」
俺は怜奈に呼びかけた。

「フフ・・・大切なモノを奪われる苦しみ・・・
 アンタも味わいなさい・・・」

そう言うと、虫は再び怜奈の耳の中に入っていってしまった。

怜奈が生気を取り戻す。

「どう?状況は理解できた?」
怜奈はそう言うと、ほほ笑む。

「・・・・・・お、、おい、、どうすれば怜奈を返してくれるんだ」

怜奈は普通じゃない。

おそらく本当にあの虫が怜奈を・・・。

「・・・どうすれば?馬鹿ね。
 私はもう怜奈じゃない。
 クィーンになったの。

 もうこの体は返さない」

怜奈はそう言うと、俺に近づいてきた。

「この女は、永遠に心の奥底に閉じ込めておく。
 もう表には出て来れない。永遠に」

怜奈は俺を睨みつけながらそう言った。

俺はその言葉にーーーーー絶望感を感じていた。

③へ続く

PR
憑依<昆虫の逆襲>

コメント