彼は、いつも昆虫に対して厳しく当たっていた。
”家に入ってくる昆虫は撲滅するべし”
しかし、そんな彼に、昆虫の報復が始まるのだった。
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バン!
塚本卓也は、家に侵入した
コオロギを勢いよく潰した。
「ひっ…」
たまたま塚本の家に遊びに来ていた彼女、
篠原怜奈(しのはられいな)は、急な音にびっくりする。
二人は同じ大学に通う大学生だ。
「ちょ、、ちょっと…」
怜奈が言う。
塚本は潰した虫を確認した。
潰れているのはコオロギだった。
「……やりすぎだよ…」
怜奈が言う。
それを聞いた塚本が笑う
「人間様の家に入ってくる昆虫が悪いんだぜ。
だからこうやって処刑してやるんだよ」
塚本は、彼女の怜奈に対して優しかったし、
友人関係も多い人間だった。
しかし、虫に対してだけはやたらと厳しかった。
彼女の怜奈から見ても、そこまでする必要ないでしょ、というような
仕打ちをしていることも多い。
「……可哀想だよ」
怜奈が言う。
篠原怜奈は
ポニーテールがよく似合う女子大生で、
3か月ほど前から塚本と付き合いを始めた。
虫が苦手だと、最初に塚本に言ったせいもあるのだろうか。
塚本卓也は虫を見つけると、害虫であっても、そうでなくても
徹底的に潰すのだった。
「……まぁまぁ」
塚本が言う。
二人は楽しい休日を過ごした。
「そうだ。明後日、誕生日だったよな怜奈?」
塚本が訪ねる
「え?あ、うん。そうだよ」
怜奈が笑顔で答える
「俺からBIGなプレゼントがあるからよ。
楽しみにしててくれよ」
塚本が言う。
塚本の表情を見る限り、そのプレゼントにはよほどの自身が
あるのだろう。
怜奈はそう思った。
顔がドヤ顔になっている。
「…うん、楽しみにしてる。じゃあね」
怜奈は微笑んで、塚本の家を後にした。
「可愛いなぁ…」
怜奈が立ち去ったあと、塚本がそう呟いた。
そして、その塚本の背後で、不思議な色をした虫が
塚本の方を見ていた。
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帰路
「遅くなっちゃった。買い物をして帰ろっと」
怜奈は大学進学のために上京してきて
今は一人暮らしをしている。
帰り道。
少し人気のない道を通るのだが
比較的明るい雰囲気だったし、
怜奈はその道で恐怖を感じたことはなかった。
カサ・・・
「?え?」
背後から音がした気がして怜奈が振り返る。
「……気のせいかな」
怜奈が一人微笑んで、前を向くと、
そこには不思議な色の虫がいた。
金色…?銀色・・・・そんな感じの虫だ。
サイズはゴキブリの半分ぐらいだろうか。
「きゃっ…」
目の前に虫が現れて驚く怜奈。
しかし、本当に驚くのはここからだった。
その虫は突然、飛び出し、怜奈の口元に止まった
「ひっ…な、、なに…きゃああ!」
怜奈が思わず、声を上げると、そのタイミングで
謎の虫は怜奈の口の中に入っていってしまった。
「い…いや!」
怜奈がむせる。しかし虫は喉の奥へと進んで行ってしまった
「い…な、、何…何なの…
いや…気持ち悪い」
怜奈が涙を浮かべる。
その時だった。突然、頭に激痛が走る
「うっ……い、、痛い…
だ、、、だれか…」
怜奈が頭を抱えてうずくまる。
「おい、大丈夫か!」
近くにいた通行人が怜奈の異変に気づき、
怜奈に駆け寄る。
怜奈は頭を抱えたままうずくまっていた
「おい…」
駆け寄った通行人が声をかけると
怜奈は静かにたちあがった。
そして、振り向いて笑みを浮かべた
「…大丈夫ですよ、私なら」
「・・・・・・な、なんだ 驚かせないでくれよ」
通行人はそう言い、立ち去っていく。
「・・・・・・」
通行人が去っていく様子を怜奈は黙って見つめた。
そして笑みを浮かべた
「これが・・・人間の体」
怜奈は自分の体を眺める
「・・・あぁ・・・そう、、不思議~
人間の記憶…こんなになってるんだ」
怜奈は一人呟いている。
「フフ…あいつ、いつも私たちを虫けらにように
扱っちゃって…
今度はアイツの番よ」
そう言うと怜奈は不気味にほほ笑んだ
そして、近くの木に止まっていたハチを見つけると
微笑み、そのハチを手に載せた。
「ウフフ…かわいい子…」
そう呟くと、そのハチを舌でなめ始めた。
ハチも大人しくしている
「……大丈夫よ。
私が人間たちに復讐するわ」
そう言うと、怜奈は自分の家に向かって歩き始めた。。。
②へ続く
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