優等生の転落 ① ~乗っ取られた信念~

クラスでいじめられている生徒を気遣う
心優しき生徒副会長。

しかし、そんな彼女に悲劇が迫る…

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「大丈夫?」
生徒会副会長の城咲 香織が訪ねた。

「うん…」
隣にいた男子生徒、高野 守は、
泣きそうな顔をしながら言う。

そう、高野はクラス一の悪、井浦という生徒に
いじめられていた。

クラスメイトの井浦と、その親友、浦野。
二人は気弱な高野に目をつけ、ことあるごとにいじめていたのだ。

それを見かけるたびに、香織は井浦らを止め、
高野を助けていた。

井浦らも、煙たがりつつも、流石に女子の香織に手を出すほど
落ちぶれてはいないようで、
香織が介入すると、そこでいじめは終わる、、というのが
お決まりのパターンになっていた。

「何かあったら、言ってね?」
香織が言う。

整ったストレートヘアーの黒髪、
しっかりと着こなされた制服は、彼女が真面目な生徒で
あることを表している

「うん、ありがとう」

「ホラ、そんな顔しない」
涙ぐむ高野に香織は言葉をかける

「でも、どうして、僕なんかを…?」
高野と香織は元々知り合いではない。

高校2年になって、初めてクラスが一緒になり、
知り合った程度の間柄。

なのに、香織は一生懸命高野をかばってくれる。

高野からしてみれば不思議だった。
「何で僕なんかを…」と。

「私ね…」
香織が思い出す様にしながら言う。

「中学生の頃、仲の良かった子が
 いじめの被害に遭って、不登校になっちゃったの」

香織がさびしそうに言う。

「でね…あるとき、その子の家に会いに行ったの…。

 でも、もうその子は変わっちゃってた。
 あんなに毎日遊んでいたのに、私の顔も見たくないって…

 私は何度も会いに行ったんだけど、結局、私の気持ちは
 通じないまま・・・

 今、どうしてるんだろう…」

高野は真剣に香織の話を聞いていた。

「あ、ごめんね!
 しんみりした話 聞かせちゃって!

 …要するに、いじめは許せないな!って
 ことだから」

そう言うと香織は微笑んで、

「さ、そろそろ帰ろ」
と行った。

ーーーーその様子を影から2人組が見ていた

「くっそー うぜぇよな高野のヤツ。

 さすがに城咲を殴るわけにはいかねーし」

井浦が言う

「じゃあよ…城咲が高野をいじめるってのはどうよ?」
浦野がニヤッとした表情で言う

「はぁ?どうかしちまったんじゃねーのか浦野!
 あの城咲が高野をいじめるわけねーだろうが!

 脅しでもすんのか?」

井浦が笑いながら言う

「ちげーよ。。見ろよ」
浦野がとあるモノを差し出した。

透明な液体が入った小瓶だ。

「なんだこれは…?」
井浦が聞くと 浦野がニヤッとして言う。

「ネットで買ったんだけどよ…
 これ飲むと、幽体離脱、、ってのが出来てな…

 その状態で人の体に入ると、その体を自分のものに
 できちまうって薬よ!」

浦野が言う

井浦がそれを聞いて爆笑する

「ンな話あるわけねーだろ!
 幽体離脱?人の体を??

 ばかげてる!!」

井浦の言葉を聞き、浦野はささやいた

「騙されたと思って、試してみろよ」
そう言い、浦野は井浦に小瓶を手渡して立ち去った

夜。。

井浦は「ま、飲んで減るもんじゃねぇしな」とつぶやく。

なるほど。
この薬であの城咲の体を乗っ取り、
俺が城咲になって、高野の奴を痛めつける。

高野からすりゃさぞショックだろうな。。

面白れぇ…

そう呟くと、井浦は小瓶の中身を一気に飲み干した。

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「あ、、いけない!!
 忘れてた~」

自宅で香織は一人、自分の部屋にいた。

「明日 高野君の誕生日プレゼントだったの忘れるところだった!」

そう言うと、香織は自分の机から小包を取り出した。

「喜んでくれるかな?」

その時だった。

突然手の感覚が無くなる

「え??何?」
香織が戸惑いの表情を浮かべる

そして、続けて足、顔と感覚が無くなっていく

「えっ…・・・ええ?」

慌てた香織だったが、抵抗もむなしく、
そのまま机にうつ伏せになって倒れてしまった。

ーーーー数分が経った。

香織がゆっくりと起き上がった。

「……まじかよ」
香織がつぶやく。

「浦野のヤツ、とんでもねーものを手に入れやがったな!

 スゲーぜコレ!

 本当に俺が城咲になってやがる!」

そう言うと、部屋にあった鏡で自分の顔を見る

「まじで可愛いよな城咲」
そう呟くと、ニヤっと笑みを浮かべた

「…ごめんね高野くん。。
 私、今日から井浦君のしもべになるね…」

わざと香織の口調でしゃべる。。

そして…

「高野君…
 香織が地獄に落としてあ・げ・る
 
 フフ♪」

香織は邪悪な笑みを浮かべてそう呟いた

②に続く

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憑依<優等生の転落>

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