横暴な振る舞いを繰り返していたとある王国の王女ー。
しかし、メイドと入れ替わってしまって
その立場は逆転ー、
罪人として地下牢に放り込まれてしまうー。
妹にまで見捨てられてしまった第1王女・アリエルと、
アリエルになったメイド・エマを待ち受ける結末はー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーお疲れ様ですー」
アリエル(エマ)は穏やかな表情で
王宮内の使用人にぺこりと頭を下げるー。
「ど、どうもー…」
使用人は戸惑った表情を見せるー。
アリエルが、下々の人間にそんな風に
労いの言葉を掛けることなど、絶対になかったからだー。
しかし、アリエルの中身がエマになってからはー、
エマは”わたしが良い王女様になるのー”と、そう決意していたため、
その振る舞いは嘘のように変わっていたー。
そのことに疑問を抱く人間は当然いたー。
けれどー…
それでも、アリエルの今までの悲惨な振る舞いを思い出し、
誰も”アリエル様が優しくなった理由”を深く探ろうとはしなかったー。
”むしろ、このままでいいー”と、
王宮内のほとんどの人間がそう思っていたからー。
「ーーーーーー」
がー、そんなアリエル(エマ)の様子を物影から
見つめている人間がいたー。
エマの同僚で、同じくメイドのグレンダだー。
「ーアリエル様ー…何てしぶといのー…?
死ねば良かったのにー」
普段から、同僚であるエマや、
お姉さま的な雰囲気を持つメイド・ジェーンに対して
”アリエル様が死ねばいいのに”と漏らしていたメイド・グレンダ。
実はあの日ー…
アリエルが階段の上からエマに向かって転落してきたのはー…
このグレンダの仕業だったー。
”死ねばいいのに”という思いが溢れてー、
ついにグレンダはそれを自ら実行に移したのだー。
階段の下にエマがいたのは誤算だった。
エマを巻き込むつもりはなかった。
アリエルを転落させて、死なせるー。
それだけで十分だったー。
しかし、結果的に
アリエルは死なず、
しかも、エマは何らかの罪で地下牢に幽閉されているー。
”入れ替わっている”ということを知らないグレンダからすれば、
”エマはアリエル様にはめられて地下牢に幽閉されて、
殺されかけたアリエル様は一時的に大人しくしている”と、
そんな風に解釈している状態だったー。
”今度こそー…必ずー”
グレンダは、”アリエル様を今度こそ排除して、エマも助け出さないとー”と、
そんな風に考えていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーディアナさーー…
いえ、ディアナ…話ってー?」
数日後ー。
第2王女ディアナから呼び出されたアリエル(エマ)は
うっかり、”ディアナ様”と言ってしまいそうになって
慌ててそれを訂正して、そう言葉を口にするー。
”ディアナ様を呼び捨てにするなんて”
エマはそんな風に思いつつも、
”これからのわたしは、王女・アリエルなんだからしっかりしないと”と、
心の中でため息を吐き出しながら、
静かに息を整えるー。
がーー…
「ーー色々、苦労をかけてごめんなさいー。
ーー…エマさんー…」
と、ディアナはそう言葉を口にしたー。
「えっ…!?え、えっ!?!?
い、いえいえいえいえ、わたしは、わたしはアリエルよ!?」
アリエル(エマ)は、いきなり”エマさん”と言われて
パニックになりながら、明らかに”動揺してます”と
言わんばかりの振る舞いをしてしまうー。
「ーーふふふー…
大丈夫ですよ、エマさんー。
わたしはむしろ、こうなって良かったと思ってますからー」
ディアナは穏やかな表情を浮かべながらそう言ったー。
「え…」
アリエル(エマ)が、少し驚いた表情を浮かべると
ディアナは続けたー。
「わたしもー、お姉さまの横暴な振る舞いには心を痛めていたんですー。
ただー、お姉さまはわたしのことも見下していて
意見も出来ない状態でしたからー…
だからー、”こうなって”ホッとしてますー。
エマさんたち、王宮で働いて下さっている皆さんもそうですし、
民の皆さんも、これ以上苦しんでいる顔は見たくありませんでしたからー…」
とー。
その上で、ディアナは言ったー。
「ーお姉さまにはこのままエマさんの身体で地下牢に
幽閉された状態で過ごしてもらいますー。
ーーそれで、エマさんー。
こんなことお願いするのも、本当に申し訳ないのですがー、
エマさんさえよければ”お姉さま”として
このまま振る舞い続けていただけませんか?」
そんな言葉に、
アリエル(エマ)は「わたしが…王女様」と、
改めてそんな言葉を口にするー。
”強大な権力”ー。
それを前に、エマはほんのわずかだけ、
邪な感情を抱きそうになったー。
人は、”力”を前にすると脆いー。
エマのような優しくて、穏やかな人間であっても、
”それが手に入る”と分かった瞬間ー、壊れてしまうー。
がー、アリエル(エマ)は首をぶんぶんと横に振ると、
「ーーわたしで良ければー…わたしも、
みんなが苦しむ姿を見たくない気持ちは同じなのでー」と、
そう言葉を口にするー。
ディアナは「ありがとうございますー」と、
そう言葉を口にすると、
「何かあれば、わたしも力になりますから、いつでも相談して下さい」と、
そんな言葉を口にするのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーわたしは…アリエル…
わたしはー…アリエルー…」
地下牢では歯ぎしりをしながら、
エマ(アリエル)が、ボロボロの状態で、
何とかここから脱出しようと、
そんな考えを巡らせていたー。
けれどー…どんなに考えても、
ここから脱出する方法は
すぐには思い浮かばなかったー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アリエル(エマ)は、”アリエル”としてー、
”心を入れ替えた王女”として
一生懸命、日々を過ごしていたー。
父親のヘクターも、
「最近のアリエルはよくやってるー。
ようやく、国とは民なのだー、ということが
分かってきたようだなー」と、感心した様子を
見せていたー。
”これであれば、私が死んだ後も、安心して国を託せる”
とー。
がー、
そんなアリエル(エマ)のことを”何としても排除”して、
”エマを助けなくちゃ”と、メイドのグレンダは、
アリエル(エマ)の行動を徹底的に監視ー…
”隙”を伺っていたー。
”今度こそ、確実に殺すしかないー”
そう決断したグレンダは、
やがて、アリエル(エマ)の”隙”を見つけ出すー。
アリエル(エマ)は、夜になると、
王宮の離れにあるバルコニーで第2王女のディアナとこっそり会っているようだー。
”アリエル様さえ排除すればー、
ディアナ様が次期女王様だしー、わたしたちも安泰ー”
グレンダはそう思いつつー、
その翌日ーー…
”それ”を実行に移したー。
辺境の村から手に入れた特殊な毒ー。
それを手に、グレンダはアリエル(エマ)に近付いていくー。
王宮の離れに向かう途中のアリエル(エマ)は無防備ー。
周囲に人もいないし、人の目もないー。
ここならーー…
「ーーーーアリエル!!!あんたのせいでー…!死ね!!!」
グレンダはそう叫ぶと、
アリエル(エマ)に向かって毒を仕込んだ針を打ち込んだー
「えっ… ぁ…」
アリエル(エマ)は、毒を打ち込まれて
急激に身体に襲い掛かる異変を感じ取ると
青ざめながら「グ…グレンダ…?」と、言葉を振り絞るー。
しかし、息が出来なくなり、口から泡のようなものが
溢れ出し、意識が遠のいていくのを感じると、
アリエル(エマ)は何もできないまま、
その場に倒れ込んでしまったー…。
「ーーはぁ…はぁ…はぁ…」
グレンダは手を震わせながら、
その場から姿を消すー。
そしてー、その日のうちに、地下牢へと”侵入”したー。
「ーーー」
グレンダは”エマ”を救うために地下牢の構造と
地下牢の警備体制も徹底的に調べていたー。
”アリエル様にはめられたに決まってるしー…
わたしはエマを見捨てたりしないからー”
グレンダはそう思いながら、
手筈通りに地下牢へと潜り込んでいくー。
幽閉されている”エマ”の中身が
グレンダの嫌う…そして、多くの人を苦しめて来た
王女アリエル本人だとは夢にも思わずにー…
そしてー…
先程、グレンダが仕留めた”王女・アリエル”の中身が、
同僚のメイドであったエマだと夢にも思わずにー…
「ーーーー…エマ」
ようやく、エマ(アリエル)のいる牢屋にたどり着いたグレンダ。
すると、すっかりボロボロになったエマ(アリエル)がそれに気づくー。
「あんたはー…」
エマ(アリエル)がそう言いかけると、
グレンダは「しっ」と、静かに話すように合図を送るー。
その上で、
「エマ!助けに来たよー。アリエル様に嵌められたんでしょ?
こんなところにいる必要はないよー。逃げよう」
と、そう言葉を続けるー。
エマ(アリエル)は、”自分のことを悪く言われている”状況ー、
そしてゴミと見下すメイドの一人であるグレンダを前に、
拒絶反応を示しそうになったものの、
すぐにそれを、心の中とグッと堪えたー
”こいつはわたしのことをこのゴミメイドだと思ってるー
だったらー、利用すればー”
そう思いながら、
エマ(アリエル)は笑みを浮かべるー。
「助けに来てくれてありがとうー…
わたし、嬉しいー」
いちいちゴミの名前など覚えていないー。
助けに来てくれたグレンダの名前も分からないまま
そう言葉を口にすると、
グレンダはそのまま、何とかして手に入れた牢屋の鍵を手に、
エマ(アリエル)を外に出そうとするー。
エマ(アリエル)は
”何とかして、身体を取り戻さないとー
このわたしが、王女なのよー”
と、内心でそんなことを思いつつ、笑みを浮かべるー。
がー、その時だったー。
「ー何をしている!!」
「ー!?」
グレンダと、エマ(アリエル)が振り返ると、
そこには兵士の姿があったー。
「ーー…え……そ、それはー」
グレンダは青ざめるー。
”見つからないように”
十分に計画は練ったはずー。
王女アリエルを始末し、
エマを救出、そのままエマを連れて
姿を消すつもりだったー。
それなのにー…
エマ(アリエル)も青ざめながら
「ーわ、わたしは王女アリエルよ!」と、そう叫ぶー。
その言葉にグレンダは「えっ!?」と表情を歪めるー。
エマ(アリエル)は、見つかった以上、
もうグレンダに利用価値はない、と、そう踏んだようだー。
がー…
兵士は言うー。
「ー貴様は、アリエル様を殺害したー
牢屋の中のこの女と、共謀していたわけだな」
とー。
「ーわ、わたしを殺害!?」
エマ(アリエル)は怒りの形相でグレンダを見つめるー。
グレンダは咄嗟にその場から逃げ出そうとするー。
しかしー…
兵士は”アリエル殺害”の犯人であるグレンダにその場で剣を振るうー。
さらに、エマ(アリエル)に対しても、
アリエル王女の命を奪ったグレンダと”共謀”していたとして
剣を振るうと、二人は悲鳴を上げてその場に倒れ込んだー。
兵士はすぐに「犯人を仕留めた!」と、そう言葉を口にすると、
外に向かっていくー。
既にグレンダは息絶えているー。
エマ(アリエル)は苦しそうにしながらも、
何とか這いずって行こうとすると、
そこに、足音が聞こえて来たー。
「ーーお姉さまー」
その言葉に、顔を見上げると
そこには妹の第2王女・ディアナの姿があったー。
「ーーお姉さまは、酷すぎますー。
民を苦しめて、王宮で働く皆さんを苦しめてー
でも、妹であるわたしにはどうにもできなかったー。
けれどー…お姉さまとメイドが入れ替わったと知ってー
思ったんですー。
ようやく”チャンス”が巡って来たってー」
ディアナは穏やかに微笑みながらそう言葉を口にするー
「で…ディアナ…」
苦しそうにしながら、エマ(アリエル)は悔しそうに
ディアナを見上げるー
「ーーだからわたしは、お姉さまをここに閉じ込めて
お姉さまになったエマさんに”代わり”をやってもらうことにしましたー。
でもー、所詮エマさんは貧民ー。
王女の立場なんて務まりませんー。
だからわたしは、お姉さまを突き落としたメイドを、
わたしの”部下”で、メイドたちの中に忍び込ませている
ジェーンを使って焚きつけて、もう一度命を狙ってー、
そして、エマさんの身体になったお姉さまをエマさんだと
思い込んだまま助けに来るように仕向けましたー。
そしてー…
グレンダさんは、お姉さまの身体になったエマさんを消してくれましたー。
”お姉さま”の身体がいなくなれば、
あとはグレンダさんも用済みー。
ここに来たら、二人を反逆者として始末すればー…
お姉さまの身体も、中身もこの世から消えるーーー」
ディアナはニヤッと笑うー
アリエルになったエマと、わざわざ夜に”人が少ない場所”で、
話し合いをしていたのは、グレンダがアリエル(エマ)を狙うタイミングを
作ってあげるためだったー。
「あ、あんたー……ず、ずっとー次期女王の座をー…」
エマ(アリエル)がそう言うと、
ディアナは首を横に振ったー
「お姉さまがメイドと入れ替わるまでは
そんなこと思ってませんでしたー
でもーーー
チャンスが巡って来たー
チャンスがあると分かったらーー
ふふーー…思ったんですー
”お姉さまがいなくなればわたしが次期女王”ーだってー…」
ディアナは笑うー。
人は、”力”を前にすると脆いー。
優しくて、穏やかな人間であっても、
”それが手に入る”と分かった瞬間ー、壊れてしまうー。
エマは”アリエルの身体”を手に入れてもギリギリ耐えたー。
けど、ディアナは”力”を前にして耐えられなかったー。
「さようならお姉さまー。
第1王女のお姉さまさえいなければー
次期女王は、このわたしー」
ディアナはそう言葉を口にすると、
「お姉さまがゴミとあざ笑った身体で
ゴミとして死んでいきなさいー」と、
冷たい口調でそう言葉を口にするー。
「ーわたしは…
メイドの皆さんをゴミだなんて言いませんよー。
たとえ、思っていたとしてもー
その方がー、世の中は上手く回りますからね」
ディアナはそれだけ言うと、立ち去っていくー。
”ゴミとあざ笑った身体で、
ゴミとして死ぬー”
一人残されたエマ(アリエル)は
間もなく死ぬその身体で
人生最大の屈辱を味わいながら
悲鳴を上げるのだったー…
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!★
入れ替わりは仕組まれたもの…ではありませんでしたケド、
結果的に二人とも滅ぶ結末になってしまいましたネ~…!
お読み下さり、ありがとうございました~!★
★作品一覧★

コメント
入れ替わりの犯人はディアナじゃなくてグレンダだったんですネ!☆
スゴい展開でいろんな結末が想像できましたネ!!!!!!
ディアナが王女になると少しはまともな国になりそうですが…
感想ありがとうございます~~~!★
ディアナは、表面上はちゃんと振る舞うので、
裏は腹黒でも、ちゃんとした国にはなりそうですネ~!!