肝試しを楽しむために、
”狂気の墓場”と呼ばれる場所にやってきた
大学生グループ。
しかしそこで学生たちは”本当の恐怖”に直面することになってしまうー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーーーー」
肝試しにやってきた7人の大学生の一人ー、
無口な武藤 倉男は
霧に包まれた廃墟の墓地を一人、徘徊していたー。
その手には、”謎の注射器”が握られているー。
「ーーーー…」
そして、倉男は人影を見つけると、
無表情のままではあるものの、
僅かに表情を変えてから、その人影の方に向かって歩き始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふ…福中さんー…?」
一方、いつもクールな真弓ー…
この肝試しの発案者でもある洋介の彼女・真弓の姿を見て、
理恵は困惑の表情を浮かべていたー。
真弓が普段は絶対に浮かべることのないような
不気味な笑みをその顔に浮かべたまま
自分の指をペロッ、ペロッと舐めているー。
「ーーー…な、何を…してるのー?」
理恵がそう言葉を口にすると、
真弓はニヤッと邪悪な笑みを浮かべながら理恵を見つめたー。
「ーーあ~~~~~…
”お前”の方が良かったなぁ…」
そう、言葉を口にしながらー
「な…な…何…?ど、どういう意味ー?」
怯えた表情を浮かべながら後ずさる理恵ー。
そんな理恵に対して、
真弓は舌を出して自分の手を舐め回すと、
「ー”この身体”より”お前の身体”の方が良かったってことだよー」と、
そう言葉を口にしながら、
理恵に向かってゆっくりと歩き始めたー。
「ひっ……ど、どうしちゃったの!?こ、来ないで!」
理恵がそう言葉を口にしながら
真弓のほうを見つめるー。
けれど、真弓は聞く耳を持たずに
地面に落ちていた”謎の注射器”を手にするー。
「ーこれで、お前の身体をー…」
真弓がそう言葉を口にしながら、今度は注射器をペロリと舐めるー。
正気じゃないー。
理恵は、そう思ったー。
普段のクールな雰囲気の真弓とは
まるで雰囲気が違うー。
同じ姿、同じ声なのに、同じ人間とは思えないー。
「ーーーっ…」
理恵は慌てて、真弓の反対側に向かって走り始めるー。
するとーー
「あははははっ♡ あははははははっ♡」
ラブラブカップルの彼女・寧々の笑い声が聞こえて来たー。
寧々はさっき、真弓よりも前に様子がおかしくなっていて、
”死んでよかったぁ”などと言いながら
自分の胸を狂ったように揉んでいる姿を理恵は
目撃しているー。
「ーーー…ま、丸山さんー…」
理恵は恐怖しながら、寧々に見つからないように
その場所を通過しようとするー。
がーー…
よく見ると、寧々が倒れている何かを
何度も何度も”注射器”のようなもので刺しているのが見えたー。
「ーーー…」
見つからないように通過しようとしていた理恵は、
木々に身を隠しながら恐る恐る寧々が何をしているのかを
確認しようとしたー。
するとー…
寧々が注射器を何度も何度も突きさしている相手はー…
この肝試しの発案者である男子・洋介であることが分かったー。
洋介は呻き声を上げながら、
「たすけて…くれ…」と、そう呟いているー。
がー、すぐに洋介の身体からまるで空気が抜けるようにして
洋介はしぼんでいきー、
先程見かけたラブラブカップルの男子のほうー、和樹と同じように
”脱ぎ捨てられた着ぐるみ”のようになって、
その場に倒れ込んだー。
「ーククククククーー…ふふふふふふ♡」
寧々は興奮しきった表情で、
皮になった洋介を雑に蹴り飛ばすと、
「ー女は乗っ取って、男は処分ー」と、
そう言葉を口にしたー。
そしてー
「死んでよかったぁ♡」などと、
また意味深な言葉を口にすると、
そのまま理恵がいる方向とは違う方向を向いて
ニヤニヤしながら歩き始めたー。
ガクガクと身体を震わせる理恵ー。
”今の光景はいったいー”
そんな風に思いつつも、理恵は
寧々とは反対側に歩き出すー。
早くこの”狂気の墓場”から脱出しないとー。
そう思わずにはいられないー。
この狂った場所から、何とか脱出しないとー…。
理恵は歩きながら、
頭の中で考えを巡らせるー。
遊びに来た自分以外の6人のうち、
既に洋介と和樹は”皮”にされていて、
”寧々”と”真弓”は様子がおかしくなってしまっているー。
この4人と自分を除けばあとは二人ー。
理恵にとって親友でオカルト好きの楓ー。
そして、無口の男子生徒・武藤 倉男ー。
その二人しかいないー。
「ーー楓と武藤くんを早く見つけ出して
ここから逃げなくちゃー」
そう言葉を口にしつつ、
理恵は移動を始めるー。
がー、その時だったー。
背後から突然口を塞がれた理恵は
驚いた表情を浮かべるー。
そして、悲鳴を上げようとすると、
背後から理恵の口を塞いだ人物が
「騒がないで!騒がないで!」と、小声でそう言葉を口にしたー。
「ーーー!」
理恵が相手の顔を確認すると、
そこにいたのは、理恵の親友でオカルト好きの楓だったー。
楓は逃げ回っているうちに、散々恐ろしい目に遭ったのか、
汗まみれの状態で、息を吐き出すと
「ーー…り、理恵…理恵だよね?」と、
理恵が正気かどうかを確認したー。
理恵は「う、うんー…」と、そう返事をすると、
楓は「よかった」と、そう言葉を口にした上で、
「やっぱりここ、わたしが危険な気配を感じてた通り、
ヤバいところみたいー」と、そう言葉を続けながら、
霧に包まれた場所を歩き始めるー。
「聞いた?様子のおかしくなったみんなー
”死んでよかった”とか、訳の分からないことを言ってたの」
楓の言葉に、理恵は”おかしくなった寧々”のことを
頭の中に浮かべながら「う、うんー…」と、静かに頷くー。
すると、楓は険しい表情を浮かべたまま、
「幽霊の仕業ってことだと思うー」と、そう言葉を口にするー。
理恵は「ゆ、ゆ、幽霊ー…」と、そう言葉を返すと、
楓は静かに頷くー。
その上で理恵は「男は処分、女は乗っ取るーって…
寧々が言ってたー」と、さっき聞いた言葉を口にすると、
楓は少し考えてから「男の幽霊なのかもねー」と、
それだけ言葉を口にしたー。
そして、楓は「とにかくここから出ないとー
わたしたちもみんなみたいになっちゃうしー、
そしたら、外に助けを求める人がいなくなっちゃうー」と、
そう言葉を口にするー。
理恵は、寧々や和樹、洋介や真弓らを
置いていく形になってしまうことは
気乗りしなかったものの、楓の言う通り
”全滅”してしまったら、外に助けを求める人もいなくなってしまうー、ということには
納得して、楓と一緒にこの墓場の跡地から
脱出するために行動を開始したー。
「ーーーあと無事な可能性があるのは、武藤くんだけってことねー」
理恵と情報交換した楓は、
まだ”無事”でいる可能性があるのは無口な男子生徒・武藤 倉男だけだと
そう理解して静かに頷くー。
「ーできれば武藤くんとも合流できればいいけどー」
楓がそう言葉を口にするー。
がー、その時だったー。
突然、木の影から、”女”が現れて楓の首に注射器が打ち込まれるー
「ぁ……」
身体を震わせる楓ー。
「ーーか、楓!!」
理恵が叫ぶと、
楓に注射器を突き刺した女ー…
普段はクールな女子・真弓が姿を現して
邪悪な笑みを浮かべたー。
「ーーーーーぁ…」
楓はその場に崩れ落ちて”皮”になるー。
そして、真弓は笑みを浮かべると、
怯えた表情の理恵のほうを見て今一度笑ったー
「やっぱり、その身体の方がイイー」
真弓がそう言葉を口にするー。
がー、理恵は咄嗟に真弓の反対側に向かって
涙目で走り始めたー。
「逃げなくちゃー…逃げなくちゃー」
そう思いながら必死に走る理恵ー。
とにかく助かりたいー
その一心だったー。
真弓の声がー、寧々の声が聞こえて来るー。
既に”ペラペラ”の状態になってしまった
親友の楓の姿がー、そして一緒に肝試しに参加していた
和樹の姿が、洋介の姿が頭の中に浮かぶー。
”とにかく、逃げなくちゃー…
助けを呼ばなくちゃー”
自分まで”狂気の墓場”の狂気に飲み込まれたら
誰も外に助けを呼びに行く人間がいなくなってしまうー。
ここで、諦めるわけにはいかないー。
その一心で、理恵は霧に包まれたこの場所の出口を目指すー。
がーー
その時だったー。
「ーー!」
”奇跡”だろうかー。
周囲を包み込んでいた不気味な霧が突然晴れ始めたー。
そんな状況に理恵は驚きの表情を浮かべながらも
「これならー…出られるかも」と、そう言葉を口にするー。
霧が晴れたことによって、
自分のいる位置がハッキリと分かるようになったー。
進むべき方角も、ハッキリと分かるようになったー。
理恵は無事に”狂気の墓場”を脱出すると、
スマホで警察を呼ぼうとしたー。
が、逃げる途中でスマホを落としてしまったことに気付くと、
理恵はこの場から通報するのを諦めて、
近くの交番があった場所を思い出しつつ、
そのままその場所に向かって走り始めたー。
・・・・・・・・・・・・・
「ーーあ~あ、逃げられちゃったよー」
真弓が笑みを浮かべながらそう言うと、
いつもイチャイチャしているカップルの彼女・寧々は
自分の胸を揉みながら「でもまぁ、大丈夫でしょ」と笑うー。
これまでにも”何人か”に逃げられたことはあるー。
がー、大きな問題にはなっていないー。
「ーーーークククク まぁ、そうだな」
真弓はそう言葉を口にすると、後頭部に手をかけて
まるで”着ぐるみ”を脱ぎ捨てるかのように、
”自分自身”を脱ぎ捨てたー。
真弓の”皮”の中からは
ホームレスのような風貌の男が出現するー。
そして、先ほど皮にしたオカルト好きの楓の皮を手に取ると
「こっちの女の方が好みだな」と、
そう言葉を口にして、楓を着こむー。
「ーへへへ」
楓の身体を乗っ取った男は、ニヤニヤしながら
自分の指を舐め始めるとー
闇の中から姿を現した”三人目の男”が、
「じゃ、俺はコイツを貰うか」と、
脱ぎ捨てられた真弓の皮を手に、それを着始めるー。
真弓を乗っ取った男ー、
楓を乗っ取った男ー、
寧々を乗っ取った男がそれぞれ笑みを浮かべるー。
彼らはこの周辺に住み着いていたホームレスー。
そして、そのうちの一人が数か月前に
”人を皮にする注射器”を手に入れてしまったー。
そして、彼らはこの場所を利用し始めたー。
かつて墓場であったこの場所に、不穏な噂を意図的に流しー、
肝試しスポットとして、利用されるように仕組みー、
やってきた若者たちを”皮”にして、
女の身体はそのまま乗っ取り、男の身体はそのまま処分するー
そんな行為を繰り返し始めたー。
”霧”は、ホームレスの男の一人が手配した”無毒の煙幕”だー。
白と紫の煙が発生する特殊なもので、
”幽霊の仕業”を演出するため、
そして、ここにやってきた人々を迷わせるために使っているー。
ただー、一定時間で薄れていくため、
結果的に男たちに皮にされずに逃げ切った理恵は
煙幕が晴れて、”霧が晴れた”と思いながら脱出に成功したー。
そしてーー
「ー逃げた女は?」
「ーーー大丈夫さ。いつも通り放っておけばいい
この場所はすっかりヤベェって噂だから、誰も近寄らないさー」
男たちは、乗っ取った身体でそう言葉を交わすー。
そうー
この場所はホームレスの男たちがやってきた若者たちを
”皮”にして乗っ取っているために
”行方不明者”や”様子がおかしくなった子”が続出していることに
なっていて、それは”怨霊によるもの”だと噂が広まっており、
肝試しに来る物好き以外、誰も近寄らないのだー。
実際には怨霊ではなく、ホームレスの男たちの仕業であるものの
この場所に来たら、身体を乗っ取られたり、皮にされた上で処分されて
消息不明になったりすることには変わりないため、
恐ろしい場所であることには変わりはないー。
「ーー”死んでよかったぁ”ってわざと叫んだりしてるからなー
逃げたあの女も、幽霊の仕業だと思ってるだろ」
乗っ取られた寧々は笑うー。
”幽霊の仕業”だと思わせるための演技も完璧だー。
寧々、真弓、楓の三人を乗っ取ったホームレスの男たちは、
皮にした和樹、洋介ー、
そしてホームレスの男たちが使った人を皮にする注射器の
空容器を拾ったあと、乗っ取られている寧々の姿を見つけて、
声を掛け、返り討ちに遭ってしまった
無口な男子生徒・武藤 倉男の皮を”処分”すると、
そのまま奪った三人の身体で存分に楽しむために、
深夜の墓地跡地の闇の中へと消えて行った…
おわり
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コメント
無事に一人だけ脱出できる結末でした~★
でも、結局”得体の知れない幽霊の仕業”みたいな
扱いになってしまって、
友達を助けることはできなかったのデス…!
お読み下さり、ありがとうございました~!☆☆!
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