変身能力を使い、
1日だけ”依頼人”の代わりをやってくれる男ー。
そんな彼の元には
今日もたくさんの依頼人が
その能力を求めてやってきていたー。
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とある結婚式の会場ー
一人の女性が”親友”の結婚を祝福しー、
穏やかな表情を浮かべがら拍手していたー。
「ーー和美(かずみ)ー
今日は本当にありがとうー」
同級生と結婚した親友の梓(あずさ)が
そんな言葉を口にするー。
その言葉に、和美は穏やかに笑うと、
「ーおめでとうー」と、改めて祝福の言葉を
口にするー。
梓は嬉しそうに頷くと、
そのまま他の友達に話しかけられて、
会話を始めるー。
そんな様子を見つめながら”和美”は
少しだけ笑うとー、
小さくため息を吐き出したー。
「ーー人間の嫉妬とは、難しいものだなー」
和美はそう言葉を口にするー。
そして、ゆっくりと歩き始めると、
”梓”や結婚相手の家族や友達が集まる場へと
足を運ぶー。
そこで、久しぶりに会う友達だったりー、
最近でも連絡を取り合っている友達だったりー、
色々な人間と会話を交わすー。
その姿は、どこからどう見ても”和美本人”にしか見えずー、
周囲も何も疑っていないー。
しかしー…
今日、この場にやって来ているのはー…
”和美”ではなかったー。
自身の持つ変身能力によって、
和美に変身している男ー、神 幸人(じん ゆきと)ー。
彼は、”指定した日1日だけ”その変身能力で”代わり”を
やってくれるー、そんな仕事をしている男だったー。
1日中身代わりをやってもらうことはもちろんー、
1日のうちの”特定のタイミング”だけ代わってもらうこともできるー。
今日、幸人は
”親友の結婚式に招待されてるんですけどー、
嫉妬で狂ってしまいそうなので、1日代わりをやって欲しいですー”
と、そんな依頼を受けて依頼人の”和美”に変身ー、
和美の姿として、和美の結婚式に参加していたー。
「ーーうんーじゃあまたねー」
ようやく一連の式が終わり、
和美は”仕事が忙しいから”という理由で
ここで退散することになったー。
「ー今日は忙しいのにありがとね!
やっぱり和美が来てくれると、本当に嬉しいー」
今日の主役だった梓が、
親友の和美に対してそう言葉を口にすると、
「ーーうんー。喜んでもらって良かったー」
と、そう言葉を口にして握手を交わしたー。
「またねー」
そんなやり取りをして、和美に変身している幸人は
その場から離れるー。
”またね”
とは言ったものの、幸人が”和美”でいるのは今日1日だけー。
”結婚式が終わるまで”という依頼であったために、
幸人の仕事はこれで終わりだー。
和美の姿のまま、幸人はため息を吐き出すと、
帰り道の夜道で、煙草を1本吸うと、
”依頼”を受けた時のことを思い出すー。
”わたしの親友の結婚相手の男の人ー…
わたしがずっと好きだった相手なんですー
だからー、結婚式に招待されてるんですけど、
行ったら嫉妬で狂ってしまいそうでー”
涙ながらに依頼人の”和美”はそう言ったー。
そして、彼女はこうも付け加えたー。
”でも、ーその子はわたしの親友で…
わたしが欠席すれば悲しむと思うんですー
だからー…”1日だけ”代わってもらえないでしょうかー。
よろしくお願いします”
とー。
そんな依頼を無事にこなした幸人はそのまま
静かに夜の闇の中へと消えて行ったー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー。
謎の仮面を身に付けた男ー、
神 幸人は、
やってきた女のほうを見つめたー。
「ーわたしの代わりに、彼氏に別れ話をして欲しいんですー」
依頼人の女子大生・横村 千鶴(よこむら ちづる)が
そう言葉を口にすると、
「ーそれはどうしてー?」と、そう言葉を口にするー。
すると、千鶴は意を決した様子で、
”彼氏”である高本 慎太(たかもと しんた)のことを
口にし始めたー。
慎太は、付き合い始める前は優しい彼氏であったものの、
付き合い始めてから豹変ー、
束縛が酷く、少しでも気に入らないことがあると
大声を出して机を叩いたりするのだと言うー。
そんな慎太に別れ話をしようと思っているものの、
今まで慎太と一緒にいた経験上、”何をされるか分からない”と
そう危機感を抱いて、千鶴は
”1日だけ変身して、代わりになんでもやってくれる”のだという
神 幸人の元へとやってきていたー。
「ーそれで、費用はどのぐらい必要なのでしょうかー?」
不安そうに千鶴が尋ねると、
神 幸人は仮面の下で笑いながら言ったー。
「私はねー…
この力を困ってる人間のために使おうと思ってー、
こういう活動を始めたんだー。
君みたいに本当に困っている人からは、
そんなにたくさん、お金を取ったりはしないよ」
神 幸人はそこまで言葉を口にすると、
紙に金額を記入して、それを千鶴に手渡すー。
「ーえっ…?せ、1000円?」
千鶴はあまりの安さに思わず表情を歪めるー。
「ー後から追加で請求したりはしないから、安心して」
神 幸人は優しくそう言い放つと、
「ー依頼の内容と、どれだけ困っているかー、そういうところを
総合的に考えて、お金を受け取ってるー。
ー例えば先週、私に依頼をしに来た男子高校生ー
いじめを受けていた彼の”代わり”をやる依頼も1000円で引き受けたしー、
先日、結婚式に身代わりに出た時はー、平均価格の1万円ー。
逆に、自分勝手な依頼なら、何万円も要求することだってあるー」
と、そう説明を続けたー。
「ー君は本当に困っているー。
だからー、これでいいー」
神 幸人はそこまで言うと、
”1000円”と書かれた紙を、千鶴の方に今一度差し出すー。
千鶴は「本当に、ありがとうございますー」と、
頭を下げると、神 幸人は静かに頷いてから、
「ーー別れ話は明日でいいんだったね?」と、そう再確認するー
「はいー」
千鶴は心の底から安心したような表情を浮かべると、
目に涙を浮かべながら今一度お礼の言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
”千鶴”と合流した神 幸人は、
”仮面”に手を触れると、仮面が光りー、
一瞬にして全身が光に包まれるー。
そして、1秒もしないうちに
”千鶴”本人の姿に変身して見せると
服も含めて完全に千鶴の姿になってみせたー。
「ーす、すごいー……」
千鶴は思わず、”前に前にわたしがもう一人いる状況”を目にして、
そんな言葉を口にするー。
「ーーーー」
千鶴に変身した幸人は少しだけ千鶴になった自分の姿を見つめると、
やがて「君はどうする?私が好き勝手しないかどうか心配であれば、
監視しててもらっても構わないが」
と、そう言葉を口にするー。
千鶴は少しだけ考えてから「ーあなたを信じます」と、そう言葉を口にすると
千鶴に変身した幸人は「分かったー。では、依頼が終わったら連絡する」と、
そんな言葉を口にして歩き出したー。
そしてー、
少し離れた場所で千鶴の彼氏である高本 慎太と合流すると、
慎太に対して”別れ話”をし始めたー。
「ーーーだから、今日で終わりにしたいのー」
千鶴の姿で、完全に千鶴になり切って
そう言葉を口にする幸人ー。
がーー、別れ話をされた彼氏・慎太は
ガリガリと髪を掻きむしり始めると
やがて「なんでー…?どうしてー?なんでだよっ…!」と、
怒りの形相を浮かべ、千鶴のほうを激しい形相で
睨み始めたー。
「ーーーーーー」
”馬鹿な真似はやめておけ”ー
千鶴に変身している慎太は内心でそんなことを思ったものの、
直後ー、慎太は千鶴を力強くビンタしたー。
それがー、”本物の千鶴ではない”とは知らずにー。
「ーーーおい!誰と別れたいって???
僕の聞き間違いだよな?あ????」
千鶴の姿をした幸人をビンタした慎太は、
そのまま胸倉を掴んで、脅し始めるー。
「ー聞き間違えなら許してやるー。
ーーもう1回聞くぞー。
千鶴ー。”別れたい”ってのは、僕の聞き間違いだよな?」
相手がもしも、本物の千鶴だったのであればー、
千鶴は危険な状況に陥っていたかもしれないー。
がーー…
今、目の前にいるのは本物の千鶴ではなくー、
”千鶴の姿”に変身した神 幸人ー。
「ーーー!」
慎太が表情を歪めるー。
千鶴に変身した幸人は事前に”小型カメラ”を自分自身で装備していたー。
「ーー別れ話をした彼女に”暴力”を振るったなんて言われたら、
問題になると思うんだけどー」
千鶴の姿でそう言うと、慎太は震えながら
「ち…千鶴…!」と、そう声を上げるー。
「ーわたしも騒ぎにしたくないのー
こういうことはやめて、大人しく引き下がってくれたら
わたしも何もしないー
だからー」
千鶴の姿に変身した幸人がそう言葉を口にするー。
あくまでもーーーー
”千鶴”がこのあと、慎太関連のトラブルに
巻き込まれてしまわないように”対処”してあげる必要があるー。
すると、慎太は言ったー。
「ーふ、ふざけんな!!僕を、そんなので脅すのか!!
僕は…!僕はーー」
怒り狂った様子の慎太ー。
がー…
慎太は、”映像を録画されていた”と知ったからか
途端にトーンダウンして、
「僕はー…」の先を何も言えずに、その場に項垂れてしまうー。
「ーーつ、つい、カッとなっただけだー
た、頼むー…許してくれ」
慎太は悔しそうにしながらも、その場で土下座をすると、
千鶴に変身している幸人は
「ーこれからは馬鹿な真似をしないでね」と、
それだけ言葉を口にするー
慎太は、なおも土下座を続けたままー、
謝罪の言葉を口にするー。
”別れ話”を無事に終えることができたー。
千鶴に変身している幸人は、内心でそんな風に呟くと、
その場から立ち去りー、
”本物の千鶴”と合流するー。
「ーー君の彼氏とは無事に別れたー。
恐らくはもう何も手出しはしてこないはずだー。」
神 幸人はそれだけ告げると、
本物の千鶴はお礼の言葉を口にした上で、
少しだけ照れ臭そうに笑ったー。
「ーなんだか、わたしが二人いるみたいで、変な気分ですー」
とー。
「ーーー」
少しだけ意外そうな表情を浮かべる千鶴に変身している幸人ー。
そして数秒だけ間を置くと、
「ーそれが”普通”の感想かもしれないなー」と、そう呟くー。
千鶴が不思議そうにしながら、
”わたし”と同じ姿をしている幸人のほうを見つめると、
幸人は”千鶴”への変身を解除しながら言ったー。
「ー毎日のように他人の姿に変身していると
同じ人間が二人いる光景が
”当たり前”のものになってしまうー」
とー。
幸人からすると、普通ではあり得ない、
”同じ姿の人間が二人いる”状況が普通になってしまっていたー。
毎日のように人の生死に向き合う仕事をしていると、
人は”人が死ぬ”光景に慣れてしまう者もいるー。
幸人もそれと同じー。
毎日のように他人の姿に変身して、
他人の姿で行動する生活を続けていると、
それが”普通”のように思えて来てしまうー。
「ーーそういえば、その力はいったいどうやってー…?」
千鶴が幸人にそう尋ねると、
神 幸人は仮面をはめたまま、
少しだけ笑うと、
「ーーすまないが、それは言えないー。悪いね」と、
そう言葉を口にしたー。
千鶴は「あ、いえ、こちらこそー」と
お礼の言葉を口にすると、
幸人もそれに応じて、千鶴は立ち去っていくー。
幸人はそんな”客”である千鶴の後ろ姿を見つめながら
静かに息を吐き出すのだったー。
「私のこの力ーーそれはーー…」
神 幸人は静かにそう呟いたものの、
首を横に振ると
「余計なことを話して、人を怖がらせる必要はないー」と、
そう静かに呟くと、ゆっくりと歩き始めたー。
”たった1日”ー
”たったひと時”ー
それが、人間を追いつめることもあるー。
で、あればーー…
私はその1日を、そのたったひと時を
代わってあげたいー。
神 幸人はそう思いつつ
仮面に手を触れると、静かに夜の闇へと消えて行ったー…。
②へ続く
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コメント
変身能力を、主に人助け方面で役立てている男の
物語デス~!!!
続きはまた明日デス~!!
今日もありがとうございました~!☆

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