<憑依>寿命が見える男

彼はー、
生まれつき”人の寿命”が見えていたー。

力を込めながら相手のことを見ると、
その人間が命を落とすまでの”現在の”日数が表示されるのだー。

そんな男と、”憑依”の物語ー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー!」

彼には、”人が死ぬまで”の日数が見えていたー。

相手のことを見つめると、
相手の近くに”死ぬまでの日数”が表示されるのだー。

そんな彼ー、男子大学生の
藤本 幸治(ふじもと ゆきはる)は、
表情を歪めていたー。

大学の親友である、丸岡 慎太郎(まるおか しんたろう)の
寿命が突如”7”と表示され始めたからだー。

「ーー7…???」
幸治は戸惑うー。

昨日まで慎太郎の頭上には”22895”と
表示されていたのだー。

が、突然、残りの寿命が”7”になったー。

そうー、
表示されている数字は
あくまでも”現時点”での数字ー。

”何か状況が変わると”その数字は変化するー。

元々、人間の”運命”はある程度は決まっているようで、
その数字が表示されているものの、
何か想定外のことが起きたり、
本人が予定を変えたりすると、
この数字ーー…”残りの寿命”が変わることがあるのだー。

「ーー…おいおい、嘘だろー…」
幸治は一人、そう呟くと、すぐに慎太郎の方に近付いていくー。

幸治の能力は、”不安定”ではあるものの、目安にはなるー。

何らかの理由で運命が変わり、
寿命が極端に残り少なくなってしまうことはあるー。

ただ、即死するような事象でない限り、
運命を変えることもできるのだー。

「なぁなぁ慎太郎ー
 来週の土曜日、何か予定あるかー?」

幸治がそう言葉を口にするー。

その土曜日が”7”日後ー…
昨日まで寿命が2万日以上もあった慎太郎の
今の時点での命日だー。

「ーーん?
 あ~、その日は父さんのお見舞いに行こうと思っててなー」

慎太郎のその言葉に、幸治は
”そういや、この前からそう言ってたなー”と、
内心でそう考えるー。

慎太郎の父親は、病気で入院中でー、
慎太郎は定期的にそのお見舞いに行っているー、と
聞いてはいるー。

「ーー……来週の土曜日のお見舞いってー…
 昨日とか今日、急に決まったことかー?
 何か急に時間帯を変えたとかー」

幸治がそう確認すると、
慎太郎は「いや?もう先週から決めてたからー、
特に変わったってわけじゃー」と、
そこまで言いかけるー。

がー、

「ーあぁ、そうそうー、バイクで行こうとしてたんだけどさ、
 バイク、昨日盗まれちまってさー…
 すぐに戻って来そうにねぇから、電車で行こうと思って」

と、慎太郎はそう言葉を続けたー。

”ーーーそれが原因かー”
幸治は、その言葉を聞いて、心の中でそう呟いたー。

恐らく、”バイクを盗まれた”ことで、
バイクで病院に向かおうとしていたのを、電車で向かうことに変えた結果ー、
慎太郎は”何か”に巻き込まれるのだろうー。

バイクを盗まれたのは昨日だと言っていたー。

それで、恐らく残りの寿命が変化したー。

”電車に変えたら、残りの寿命が減ったってことはー…”
そう思いつつ、幸治は考えるー。

恐らく、”電車で事故が起きるか”
あるいは、駅で何か事件が起きるか、
もしくは駅に向かう途中に交通事故に遭うかー、
そのあたりの理由であると、幸治は考えるー。

一瞬、何か天変地異が起こることになったのではー?とも考えて周囲を
見渡したものの、周囲の人間の寿命の数字に変化はないー。

よってー…
慎太郎の寿命があと7日になってしまったのはー
”電車”に乗ったこと、
あるいは電車に乗るために駅に向かう途中や駅で
何かに巻き込まれることによるものだろうー。

「ーーちょうどいいやー。
 俺、その日、近くに用事があるから、
 送って行ってやるよー」

幸治がそう言うと、慎太郎は「えっ?マジか!?」と、
少し驚いた表情を浮かべるー。

「ーはは。マジだよー。親友だろ?」
幸治がそう言うと、
「じ、じゃあーまぁ、お願いするかなー」と、
慎太郎はそう言葉を口にしたー。

”22894”
慎太郎の側に浮かび上がっている”数字”が変化したー。

昨日は22895と表示されていたから、
今日になって1日減って、22894ー

”元通り”の数字に戻ったー。

「ホッー…」
幸治は少し安堵の表情を浮かべるー。

”親友の死”を回避できたー。

そう思いつつ、慎太郎と別れると、
大学での用事を済ませて、
帰ろうとするー。

ふとー、お調子者の男子学生の近くに、”691”と表示されているのを見て、
幸治は少しだけ溜息を吐き出すー。

この男子は、”元々寿命が短い”表示が出ている男子だー。

ただー、慎太郎の”7”のように近い数字ならともかく、
691日後の死を今からどうこうするのは難しいー。
原因の特定が困難だからだ。

それに、全員の寿命のことを考えていたら
おかしくなってしまうー。

だから幸治は、”自分と関わりのある人間”かつ
極端に急に寿命が短くなった場合以外は
考えないようにしていたー。

”冷たい”ということではないー。
寿命が見えるとは言え、
一人の人間である幸治が
全人類の寿命を背負うことなどできないー。

寿命が残り少ない人間を見つけたからと言って
いちいち声を掛けることはできないし、
そもそも一人の力では”出来ること”自体が限られているー。

さらにー、
先程”寿命”を修正した慎太郎のような相手であればともかく、
”全く見ず知らずの人間”にいきなり話しかけて
運命を変えることは難しいー。

例えば、”5”と、数字が表示されている人を見かけた時に、
幸治がいきなり「5日後に、何かする予定はありますかー?」などと
聞いたりすれば、確実に不審者扱いされてしまうー。

だからー、幸治は割り切って
”自分の身近な人”だけの寿命を気にすることにしていたー。

「あ、ハルくんー」
ふと、そんな声が聞こえたー。

”ハルくん”とは、幸治のことだー。
そんな声に振り返ると、
そこには幸治の彼女である、日村 真桜(ひむら まお)の姿があったー。

「ーあぁ、真桜ー」

そう言葉を口にしながら、
”23225″と表示されている真桜の数字を見つめるー。

”寿命が見える”ー。
そんなことは、当然、彼女の真桜にも伝えていないー。

いきなり”俺、実は寿命が見えるんだ”なんて言われても、
頭がおかしいと思われてしまうかもしれないし、
そもそも、自分の寿命を”知りたい”などとは
思っていない人もたくさんいるとは思うー。

だから、幸治は彼女の真桜にも、
他の人たちにも”自分の力”のことは
伝えずにいたー。

真桜といつも通り、日常的な話題を話しつつ、
楽しそうに大学内を歩く幸治ー。

がー、その時だったー。

”1”ー

「ー!?」
幸治が思わず表情を歪めるー。

「ーーえ…?ど、どうかしたー?」
真桜が不安そうにそう言葉を口にすると、
幸治は「い、いや…」と、そう言葉を口にするー

真桜の近くに表示されている数字が
突然”1”に変わったー。

まだ、50年以上の寿命があった真桜ー。
それが急に”明日”死ぬことになったー。

「ーーーー」
幸治は冷静に状況を考えるー

今、真桜とは普通に会話をしていただけだー。

例えば今、デートの約束をした瞬間だったりしたならば、
恐らく、その”デート”で何かが起こることにより
真桜が死んでしまうのだと予測できるー。

が、今は普通に雑談していただけで
真桜の運命が変わってしまうような話はしていないー。
行動や予定にも影響はないはずだー。

と、なればーー

”外部の要因”ー

つまり、真桜ではなく、真桜以外の誰かの行動が何らかの理由で
変わった結果、真桜が明日死ぬことになってしまったのだー

”ーーー可能性が高いのは、交通事故かー…?”
幸治はそう考えながら
「そうだー、真桜ー。明日、俺の家に遊びに来ないかー?」と
そう提案するー。

「ーえ…?あ、うんー別にいいよ!
 特に予定ないし!」

真桜は、たまたま予定がなかったのか、
穏やかな表情でそう答えるー。

ホッとした様子で幸治が
真桜の近くに表示されている”数字”の方に視線を向けるー。

がー…

”1”

真桜の近くに表示されている”寿命”の数字には
変化が見られなかったー。

”な、な、な、何でだー…!?”
幸治は戸惑うー。

今、幸治が家に遊びに誘ったことで、
真桜が明日”いる場所”は変化したはずー。

それなのに、数字が変化しないー。

”俺の家に呼んでも1のままってことはー…?”
幸治は青ざめながら、
頭をフル回転させて考えるー。

予定を変えても、数字が変化しないー。
と、言うことは交通事故ではなさそうだー。

夜間ー、あるいは早朝あたりに
真桜の家で何か起きるかー、
それとも、真桜が急病で命を落とすかー…

その辺りが怪しいー。

「ーーーー」
幸治は周囲を見渡すー。

周囲の人間の数字が変化していないー。
と、なれば”天変地異”の類ではないー。

真桜だけの身に何かが起きるのだー。

そう思いつつ、真桜に「じゃ、明日」と、そう言葉を口にすると、
幸治は青ざめながら
”俺は真桜を絶対に助けるー”と、そう内心で呟いたー。

そしてーー…
その日は徹夜を覚悟で、0時過ぎから
真桜の家の周囲で、真桜の身の安全を
確認していたー。

”真桜の予定”を変えても寿命は”1”のままだったー。

と、すれば、交通事故ではないー。

残るは急病か、幸治の家に遊びに来る以外のタイミングで
真桜の家で何かが起こるー、ということぐらいしか
考えられなかったー。

”火災かー…いや、誰か家に来るのかー…?”

そう思いつつ、真桜の家を見張るー。

がーー…
ついに火災は起きず、真桜の家に誰も来る様子もなくー、
朝になると、真桜がゴミ出しのために部屋から
出て来るのが見えたー。

少なくとも、今は元気そうだー

”0”ー

真桜の近くには赤い文字でそう表示されているー。

真桜の寿命は”今日”尽きるー。

”くそっ…何でだー…俺が見張っていても、
 真桜の寿命が変わらないー…”

そう思いつつ、幸治はたまらず物影から飛び出すと、
「真桜ー」と、そう言葉を口にして
「おはようー」と、言葉を続けたー

「ーえっ…?ハルくんー?
 どうしてここにー?」

今日は”幸治の家”に遊びに行く約束を昨日したばかりー。
なぜ、幸治がここにいるのかと、不思議そうな表情を
浮かべているー。

がー、幸治は「いやぁ、ちょっと早く目が覚めちゃって」と、
そう言葉を口にすると、
そのまま真桜と話し始めるー。

しかし、それでも、真桜の寿命は”0”のままー。
つまり、”今日死ぬ”運命が変わらない状態のままだったー。

”どういうことだー?なぜ死の運命が変わらない?”

真桜の予定を変えても、真桜の寿命が変化しないところを見ると
やはり”急病”だろうかー。
あるいは、真桜に強い恨みを持つ人間でもいて、
真桜の命を奪いに来るのだろうかー。

そう思いつつ、幸治は
”どっちにしても、俺がすぐ側にいれば助けられるかもしれない”と、
そう考えるー。

そして、そのまま幸治の家に行き、
戸締りをしっかりした上で、
真桜が急変した場合、病院にすぐ通報できるように
スマホも常に肌身離さずに持ち続けたー。

それでも、真桜の寿命は”0”のままー。

「ーーーーーー…」
幸治は「あ、そうだー。あのさー、今日、家に泊まっていかないかー?」
と、そう提案するー。

「え?ハルくんの家に?」
真桜は不思議そうに首を傾げるー。

ここまで寿命に変化がないとなると
”真桜が帰宅したあと”あるいは”帰宅中”に誰かに襲撃されるか
あるいは急病で倒れるのかもしれないー。

そう思っての提案だー。

すると真桜は少し考えてから「うん!じゃあ、せっかくだし」と、
そう言葉を口にしたー。

ホッとする幸治ー。

けれどー
真桜の寿命は”0”のまま変わらないー。

”くそっー…何でだー”

幸治はそう思いつつ、真桜の変化、そして家の周囲の安全に気を配りつつ
真桜と過ごすー。

寿命の表示が変わると信じてー。

しかしー…
寿命の表示はやはり、0のままー
夜を迎えたー。

「ーーーーいったい、どうしてー…」
幸治が一人そう呟くと、
真桜は「あ、そうだー」と、そう言葉を口にしながら
台所の方に向かうー。

幸治は「ん?どうかしたかー?」と、
そう呟きながら真桜のほうを見つめるー

すると、真桜は突然、台所にあった包丁を手にしたー。

「ーーこれで、22人目ー」
真桜がニヤッと笑いながら呟くー。

「ーーえっ…?」
言葉の意味を理解できず、戸惑う幸治ー。

それと同時にー、
真桜は持っていた包丁で、自分の首を勢いよく切りつけたーーー

ぴゅっ、と血が噴き出して真桜が倒れ込むー。

「ーま、ま、真桜!?」
幸治は驚いて真桜に駆け寄るー。

”憑依人”ー
志田 楽斗(しだ らくと)ー。
街中で”充実してそうな可愛い子”を見つけては
憑依して一瞬で自死させるという、極めて悪質な欲望を楽しんでいる憑依人ー。

先日ー、この楽斗が、真桜を見かけて
真桜が次のターゲットにされてしまったー。

だからー、真桜の寿命が変化してしまったのだー。

「ーーう、嘘だろ!?真桜!?どうして!?」
幸治は泣きながらそう叫ぶー。

しかし、真桜は自分の胸を揉みながら
嬉しそうに「身体から力が抜けていくこの感覚…たまらねぇ…」と、
そう言葉を口にすると、そのまま力尽きて事切れたー

「ーーーーー…」
呆然とする幸治ー。

幸治は、何が起きたのか分からないまま、
自分の能力に対して”役立たずがー”と、
悔しそうにそう呟くのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

1話完結のお話でした~!☆

憑依モノなのに、憑依は最後のオチの部分だけ…
という珍しいパターン(?)で書いて見ました~!!

お読み下さり、ありがとうございました~!☆

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