最強と言われた剣士と、
その相棒である回復魔法使いー。
しかし、二人は魔物に包囲され、窮地に陥ってしまうー。
”二人が揃って生き延びる方法”はただ一つ。
それは、回復魔法使いの秘技で、剣士を彼女自身に憑依させ、
剣士が彼女の身体で戦い、包囲を突破することだったー。
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「くっー…」
”最強”と言われた若き剣士・ジェラルドは
各地で出没する魔物の討伐を繰り返す日々を送っていたー。
その実力は王国の騎士団をもしのぐほどで、
精鋭中の精鋭である中央騎士団をも上回る実力の持ち主ー。
そんな彼は、騎士団には属さず、
フリーの剣士として、魔物の討伐に力を貸していたー。
もちろん、彼ほどの実力者であれば騎士団からのスカウトもあったし、
彼がその気になれば、騎士団長を目指すこともできたかもしれないー。
しかし、騎士団に所属すればどうしても
組織として動く必要があり、
無駄な仕事も増えてしまう。
そこの部分に配慮した女王・アリアンナが、
”あなたの腕前は、組織ではなくその外でこそ輝きますー”と、
ジェラルドには自由を与えつつ、破格の契約をすることで
騎士団の柵(しがらみ)の外で、活躍できるように
図らっていたー。
がー…
今日、そのジェラルドが窮地に陥っていたー。
「くそっー、想像以上に敵の数が多い」
ジェラルドがそう言葉を口にすると、
その背後にいたジェラルドの相棒である
回復魔法使い、ミレーナは
「わたしの結界もいつまで持つかー」と、
そう言葉を口にするー。
ジェラルドの相棒、ミレーナは
既に5年の付き合いで
共に行動している回復魔法使いだ。
5年前ー
魔物に襲撃された辺境の村をジェラルドが救出するために
駆け付けた際に、魔物から命を救った少女、
それがミレーナだったー。
その際に両親を魔物に殺されたミレーナは
ジェラルドについていくと行って聞かずー、
それからは二人で旅を続けているー。
ミレーナ自身、最初は戦うことが出来ず、
ジェラルドとそんなに歳も変わらないというのに
最初は”子守り”をさせられているような
そんな感覚に陥ってしまうこともあったー。
けれど、ミレーナもそんな自分が足手まといになっていることは
当初から自覚していて、冒険の最中で必死に
魔法を学び、修行を続けて、
ついには回復魔法を中心とした魔法で、ジェラルドを
サポートできるまでに成長したー。
今ではジェラルドからしても”子守り”ではなく、
立派な相棒と言えるような、
そんな存在に成長したー。
しかしー…
「ーーこれほどの敵に囲まれるとはー…」
ジェラルドは表情を歪めるー。
ミレーナは必死に魔力結界を展開しながら
敵の攻撃を防ぎつつ、
光の魔法で敵を攻撃するー。
と、言ってもミレーナの得意な魔法は
回復魔法とサポート系の魔法で、
魔物たちへの攻撃はそこまで決定打とはならないー。
「ーージェラルド!あなただけでも逃げて」
ミレーナはそう言葉を口にするー。
”ジェラルド一人なら逃げられる”
これまで彼と5年ー、一緒に戦ってきたミレーナには
そう確信出来たー
”わたしがいなければ、逃げられるー”
とー。
事実ー、ジェラルド一人であれば
この窮地を何とか脱出することができる可能性はあったし、
ジェラルド本人もその可能性には気付いていたー。
がーー
「ーミレーナを置いていけるわけないだろ」
ジェラルドはそう言葉を口にしながら、
剣で魔物を倒していくー。
しかし、
”ミレーナを守りながら”
この包囲を突破するのは難しいー。
それほどまでにギリギリの状況でー、
”何かを守りながら”包囲を突破できるような余裕は
最強の剣士であるジェラルドにもなかったー。
ジェラルドがミレーナを諦めて逃げるか、
あるいはジェラルドが自らの命を犠牲にして
死力を尽くしてミレーナを守るかー。
現実的な選択肢はその2つしかなかった。
「わたしは5年前のあの日ー、
ジェラルドがいなかったらとっくに死んでたー。
だから、もういいのー。
あなたのおかげで、5年も長く生きられたー。
本当だったら、なかったはずの人生」
ミレーナが目に涙を浮かべながらも、
何とか魔法で敵の攻撃を防ぎながらそう言葉を口にするー。
しかし、ジェラルドは言うー。
「ーお前を見捨てて逃げたりするものかー。
5年なんかじゃない。まだミレーナには10年、20年と
先があるんだー」
ジェラルドは魔物を倒しながらそう言葉を口にするー。
「ーーでも!ジェラルドが死んだらーー!」
ミレーナが叫ぶー。
ジェラルドが死んだら、魔物は勢いづくー。
王宮騎士団だけでは止められるかどうか怪しいー。
ミレーナとは違い、
世界のためにジェラルドが必要なのだー。
「ーーそれでも俺はーー…
俺はミレーナを見捨てない!」
ジェラルドはなおもそう食い下がったー。
「ーーーー」
ミレーナはジェラルドが
そこまで自分のことを大切にしてくれていることに
少し嬉しく思いつつも、
”でも、このままじゃ本当に二人とも死んじゃう”と、
そう心の中で呟くー。
そして、暫く考えるような表情を浮かべると、
意を決した様子で言葉を口にしたー。
「ーー”わたし”を守らなくてもいいとしたらー、
この包囲を突破できるよねー?」
ジェラルドに、改めてそう確認するミレーナ。
「ーーーー俺は一人で逃げるつもりはー」
ジェラルドが再びそう答えかけるも、
ミレーナは真剣な表情で「答えて」と、そう呟くー。
「ーーー…できるーできると思う」
ジェラルドはそう答えると、
ミレーナは一呼吸置いてから言葉を口にしたー。
「ーわたしの身体でも、できる?」
とー。
「な、何を言ってー?」
ジェラルドが困惑の表情を浮かべると、
ミレーナは言葉を口にしたー。
「わたしの秘技ー…
他の人の魂をわたしの身体に移す魔法があるのー」
とー。
「な、何だって?」
ジェラルドが戦いながら言うと、
ミレーナはジェラルドの魂をミレーナの身体に憑依させて
ジェラルドがミレーナの身体を動かすことができるのだと、
そう説明したー。
「ーだから、わたしの身体でも、ジェラルドが戦えるなら
ジェラルドは何かを守ることなく、戦いに集中できる」
ミレーナのその言葉に、ジェラルドは驚きの表情を浮かべるー。
ジェラルドがミレーナの身体に憑依して、
”身体がひとつ”の状態になり、
ミレーナの身体を動かし、この包囲を突破するー。
確かにジェラルドの身体と違って華奢な面はあるし、
慣れていない身体だー。
上手く戦えるかどうか、100パーセントの確証は持てないー。
ただ、
それなら、”突破”することができる気がしたー。
「ーー何だー、そんな魔法があるなら
先に言ってくれればー」
ジェラルドは少しだけ安堵の表情を浮かべるー。
そして、
「その魔法の効果はどのぐらい続くんだー?
包囲を抜けるには少し時間が掛かるかもしれないー」と
ジェラルドがそう言うと、ミレーナは表情を曇らせたー。
ギリギリまで言わなかったのは”これ”が理由だー。
「ーーー1年」
ミレーナがそう言葉を口にするー。
「1年???」
ジェラルドが表情を歪めるー。
「一度使えば、1年間、ジェラルドはわたしの身体で生活することになってー
1年間、わたしの意識は眠ったままになるー」
ミレーナは淡々と、そう言葉を口にするー。
その様子に、ジェラルドは
「そ、そんなー…そ、それじゃ、ミレーナは…」
と、1年間ミレーナの意識が眠ったままになってしまうことに
心底戸惑いを覚えるー。
しかしー、
ミレーナはジェラルドの手を握ると言ったー。
「ーわたしとジェラルドの二人が生き残る方法はそれしかないー」
とー。
「ーーー」
ジェラルドは表情を曇らせるー。
ただ、ミレーナの言う通り”それしかない”のは
嫌でも理解できてしまったー。
二人揃って生き延びるには、
”剣術を使えるミレーナ”となって、
魔物たちを蹴散らしながらここを突破するしかないのだー。
「ーーーーー…」
ジェラルドは散々迷った挙句
「分かったー」と、そう言葉を吐き出すと、
ミレーナは安堵の表情を浮かべながら頷くー。
「ーー1年経てば、また、会えるからー」
ミレーナがそう言葉を口にするー。
ジェラルドは悲しそうにしながらも頷くと
「必ず生き延びるー」と、そう言葉を口にした上で、
1年間、ミレーナの身体を大事にすることをその場で誓うー。
「うん、ありがとうー。信じてるー」
ミレーナはそれだけ言葉を口にすると、
「もう時間がない」と、それだけ言葉を口にして、
禁断の秘術を唱え始めるー。
するとー、剣士・ジェラルドの身体が光の雫のようになっていきー、
そのまま消滅ー、
その光の雫がミレーナの方に向かっていくー。
そして、ミレーナがビクッと震えると、
周囲にいた魔物たちが困惑の表情を浮かべるー。
「ーー剣士が…消えたー…?」
上級クラスの魔物ー、人語を喋ることができる魔物が
困惑の表情を浮かべながらそう言葉を口にすると、
少し迷ってから、「その人間の女だけなら、何てことはない!片付けろ!」と、
そう言葉を口にしたー。
がー、ミレーナに憑依したジェラルドは
「お前たちのせいでー、ミレーナは1年間眠りにつくことになったんだー…
その報いを受けてもらうぞ!」と、
ミレーナの声でそう叫んだー。
「ー!」
自分でも自分の口からミレーナの声が出たという状況に
どこか戸惑いのような表情を浮かべつつも
「ミレーナ…必ず俺はお前のことを守るー」と、
そう言葉を口にするー。
自分が持っていた剣を素早く拾い、
魔物たちを蹴散らし始めるミレーナ。
「ー!?」
ミレーナを取り囲んでいた上級クラスの魔物が
驚いたような表情を浮かべると同時に、
「こ、この女ー…剣も使えるのか!?」と、
そう言葉を口にするー。
魔物たちは、ジェラルドがミレーナに憑依したという
状況を理解できていないー。
「ーっ」
剣を振るいながら、表情を歪めるミレーナ。
”剣技”はジェラルドの中に染みついているー。
が、ミレーナの身体で剣を振るうとなると、
いくら知識としては、身に付いていても、
身体の感覚がかなり違うー。
揺れる髪に胸の感覚ー、
巫女服のような雰囲気の服にも少し戸惑いを覚えながらも、
それでも、卓越した剣技と、戦術眼で魔物たちを潜り抜けていくー。
身体は変わっても、これまでの数多くの戦いで得た経験は
そのままー。
何とかミレーナの身体を駆使して魔物たちを
蹴散らしていくと、
そのままミレーナの身体でジェラルドは走り出すー。
”俺の身体より、走りにくいがー…
けどー…”
ミレーナを絶対に守ると約束したー
1年後のその日までー。
途中で待ち伏せしていた魔物たちの攻撃を受けながら
何とかそれを躱して、さらに先へと進んでいくー。
ミレーナを守りながら戦っていたのでは、
やはり、恐らく死んでいたと思うー。
ただ、今は”自分自身がミレーナ”になっているために
自分が命を守れば、結果的にミレーナも守れるー。
ミレーナの言う通り、こうすることでしか
二人とも生き延びる方法はなかったと思うー。
ジェラルドは、ミレーヌの身体で
一瞬、魔法を使うようなポーズをしてみたものの、
やはり、”使い方”が分からない以上はどうにもならず、
思わず苦笑いをすると、そのまま剣を振るって
魔物たちをさらに蹴散らすー。
「よしー…」
そしてー、
眼下に海が広がる崖までたどり着くと、
魔物たちのほうを振り返るー。
もう逃げ場はないー。
逃げるなら”ここ”だー。
そう思いつつ、意を決して崖から飛び降りると、
そのままミレーナは海の中へと姿を消したー。
海に飛び込んですぐー、魔物たちに見つからないように
海を泳いで、できるだけこの場所から離れた海岸を目指すー。
途中で何度か意識を失いそうになったものの、
”俺は…俺はミレーナとの約束を果たすんだー”と、
心の中で自分を奮い立たせると、
なんとか海岸まで意識を失わずにたどり着くー。
「ーーは…ははははー」
海岸までたどり着いた時点で、ミレーナは既に
意識を失う直前ー。
が、魔物からはなんとか逃げ切ったー。
それに、この辺りは確かー…
すぐ近くに村があったはずー。
ミレーナはそう思いながら、何とか立ち上がると、
やむを得ず、近くの村に助けを求めるために歩き始めたー。
②へ続く
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コメント
1年間、憑依したままでいないといけない状態に…!
無事に1年過ごすことができるのかどうかは
次回のお楽しみデス~!!
今日もありがとうございました~!☆

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