<皮>毎日支給される皮②~代償~(完)

①にもどる!

新しい自分になれることを謳う謎のサービス。

そんなサービスと契約した彼の元には
毎日”皮”が届き、
色々な身体での日常を楽しむ日々が始まったー。

しかし、彼は届いている皮が
”現実に存在する人間が皮にされたもの”だとは
夢にも思っていなかったー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「晴美ー…?」

和弘はこの日届いた”皮”を見て、
表情を歪めたー。

5歳年下の妹・晴美ー。

その晴美に届いた”皮”がそっくりなのだー。

「ーー…は、ははー。
 まぁ、晴美のやつ、よくいる感じの可愛い顔だからなー
 たまたまだろ」

兄である弘和からしても、妹の晴美は可愛いとは思うー。

既に晴美も20代中盤ではあるものの、
最後に会った時も相変わらず可愛い感じだったし、
学生の頃とそんなに大きく変わった様子はなかったー。

今はお互いに実家を出ていて離れて暮らしているものの、
特別”不仲”というわけでもなく、
会う機会があれば普通に話をする間柄ではあったー。

「ーーー…に、してもー…」
弘和はそう言葉を口にしながら
「晴美によく似てるなぁ」と、不思議そうな表情を浮かべるー。

実は晴美がモデルだったりするのだろうかー。
そんな風にも思ってしまうほどだー。

「ーーー…」
妹の晴美”そっくり”の皮でお楽しみをする、というのは
弘和的には少し気が引ける部分もありはしたものの、
”まぁ、せっかく届いたんだしー”と、そう言葉を口にしながら、
妹・晴美の皮をー…
弘和は”晴美にそっくり”だと思っている皮を
そのまま身に付け始めたー。

そして、晴美になった弘和は
「あ~~…あ~~~…」と、晴美の身体で声を出し始めるー。

しかしー…

「い、いやいやいや、声も晴美そっくりじゃねぇかー」
晴美の声でそう言葉を口にする弘和ー。

見た目だけではなく、”声”まで晴美本人にそっくりー。
そんな状況を前に、急速に不安が膨らんでいくー。

「ーー…い、いや…は、晴美だったりしないよなー…?」
晴美の身体でそう言葉を口にするー。

弘和はあくまでも、”毎日支給される皮”が、
本当の人間そっくりに作られた高度な着ぐるみだと
そう理解しているー。

”人間フリーズドライ”なる技術で作られている皮が
まさか”本物の人間”だとは夢にも思っていないー。

「ーーーー」
購入した姿見で、”晴美”の姿を確認する弘和ー。

本当に、晴美本人に見えるー。

「ーーお兄ちゃんー」
試しに、そう言葉を口にするー。

やはり、どうしても”晴美本人”の声に聞こえてしまうー。
そんなことあるはずがないとは思っているけれど、
不安はさらに膨らんでいくー。

「ーちょっと、電話してみるかー」
晴美の”皮”を一旦脱いで、弘和は
妹の晴美に電話をかけて見るー。

最後に会ったのは、今年の初めに実家に帰った時だー。
ちょうど、今から半年ちょっと前ぐらいのタイミングだろうか。

その時は特に変わりはなかった気がするし、
”いつも通り”だったのを覚えているー。

「ーーーー」
心配そうな表情を浮かべつつ、晴美が電話に出るのを待つ弘和ー。

しかし、晴美が電話に出ることはなかったー。

「ーーーー…」
弘和は不安そうに床に置いたままの”晴美の皮”を見つめると、
もう一度晴美の皮を身に着けたー。

「ーは、晴美なわけないよなーははー」
そう言葉を口にすると、
”変なことを考えずに、楽しむか”と、そう思いながら
そのまま胸を揉み始めるー。

「はは…へへへへへ♡」
この皮は、妹の晴美なのではないかー?

そんな不安を抱いているからだろうかー。
どこか不安そうな表情を浮かべながら
いつもより控えめな様子で胸を揉んでいく弘和ー。

がーー
その時だったー。

「ーー!?!?!?」
腕のあたりに”見覚えのあるほくろ”が見えたことに気付いて、
晴美を乗っ取っている状態の弘和は手を止めるー。

「ーい、い、いやー…
 えっ…?」

そのほくろを見つめながら、”信じられない”という様子で
瞳を震わせた晴美はー、
そのまま後頭部に手を触れて、すぐに晴美の”皮”を脱ぐー。

このほくろは、確実に”晴美”だー。

顔も、身体も、声も、ほくろも一致するなんてあり得ないー。
こんな”偶然の一致”だけは
絶対にあり得ないー。

不安が爆発しそうになった弘和は、
実家にいる母親に連絡しようとスマホを手にすると、
すぐに母親に電話をかけたー。

”あら、弘和ー。珍しいわねー
 どうかしたの?”

母親が、普段そんなに電話を掛けたりはしない弘和からの電話に
少し意外そうにしながらそんな言葉を口にするー。

弘和はすぐに、
「いや、最近”晴美”と話したかなって思ってー」と、
今の状況は隠しつつ、そう言葉を口にしたー。

”え?晴美とー?
 うんー。たまに電話もかかって来るし、
 昨日もメールのやり取りはしたわよ”

母親のその言葉に、弘和は「電話も?」と、そう言葉を口にするー。

”そうよー。最後に話したのはー、
 この前の日曜日だったかしらー

 最近は忙しいみたいで電話も短いけどね”

母親のその言葉に、
弘和は「そ、そっかー」と、それだけ言葉を口にすると、
後は母親と少し雑談してそのまま電話を切るー。

”気にしすぎ”だろうかー。
そう思いつつ、少し息を吐き出すと、
ちょうど、”晴美”からメッセージが届いたー

”電話があったみたいだけど
 今は電話に出られないからー

 何かあったの?”

とー。

「ーーーー…晴美ー」
弘和は、ホッと安堵するー。

晴美から連絡があったということは
やっぱりこの”皮”は晴美ではーーー

そう思っていると、
メッセージを見つめながら表情を歪めたー。

”お兄ちゃん今日も頑張ってね”
と、最後に書かれている部分強烈な違和感を感じたー。

「ーーー!」
弘和は、目を見開くー。

晴美はメッセージのやり取りをするとき、
必ず”おにいちゃん”と送って来るー。

前にその理由を聞いたときに、
”変換が面倒臭いから”とか、そんなことを言っていたー。

それが、今、届いたメッセージには”お兄ちゃん”と書かれているー。

それに、文章も晴美の文章ではないようなー、
そんな気がした。

晴美は親しければ親しい相手であるほど”メッセージが適当になるタイプ”の子で、
”頭がイカれてるんじゃないか?”と思うぐらいに
恐ろしい文章が返って来ることも多いのだー。

その晴美にしては、妙に整い過ぎているー。

そう思った弘和は
ネットで”人間フリーズドライ”と検索してみるー。

すぐには情報は出て来なかったものの、
執念深く情報を探っていくとー、

”あの人間フリーズドライはヤバい”と、
そう書かれたネットの書き込みを見つけることができたー。

そこにはー
”奴ら、実在の人間を”皮”にしてやがるー
 俺の彼女もやられた”と、そう書かれていたー。

「ーーーー~~~~~っ…」
弘和は、”晴美”の皮を見つめるー。

そして、不安そうに表情を浮かべると、
晴美から届いたメッセージを見つめながら
”本当に、晴美かー?”と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

”何も知らずに”欲望の限りを尽くしていた頃が
懐かしいー…

そんなことを思いつつ
”晴美の皮”を、いつものように返却するべく、
玄関先に設置すると、
弘和は、部屋の外に出て、アパートの廊下の死角になる部分に
身を隠しながら”回収”と”支給”に来る人物を待ったー。

”あの皮が晴美かどうか、確認してやるー”
弘和はそう思いつつ、回収者がやって来るまで待つー。

すると、しばらくして、
”回収担当”の人間がやってきたー。

”晴美”の皮が入った箱を回収し、
その代わりに今日”支給”される皮が入った箱を置いていくー。

かなり慣れた手つきで、その時間は3秒にも満たない速さだったー。

がー、
その場所に姿を現し、弘和はその相手の腕を掴んだー。

「ーーー!」
フードを被った回収人が表情を歪めるー。

その相手を室内に引きずり込むと、
弘和は「表じゃそっちも困るだろー?少し聞きたいことがある!」と、
そう言葉を口にするー。

「ーー人間フリーズドライってなんだ!?
 昨日、支給された皮は俺の妹に見えた!
 あれはいったい、何なんだ!?」

すると、回収人は少し考えてから言葉を口にしたー。

「それを知れば、引き返せなくなるー」
とー。

回収にやってきたフードの人物はどうやら女のようだー。

いや、女でも男でもどっちでもいいー。

「こ、答えろ!」
弘和がなおもそう叫ぶと、
フードの女は、弘和を振り払ってから
そのフードを取って、素顔を晒したー

「ーー!?」
その女はー、弘和がサービスの利用を開始した初日に
支給された皮・茉莉だったー。

恐らく、あの日の弘和と同じように
回収にやってきた人物が、茉莉の皮を身に付けているのだろうー

「くっ……し、正体を見せろ!」
弘和がそう叫ぶも、茉莉を着ている人物は笑みを浮かべながら
「それはできない」と、そんな言葉を口にするー。

その上で、弘和のほうを見つめながら言葉を口にしたー。

「ー”余計なこと”を知ろうとしなければ、
 これからもお前は毎日支給される皮で
 楽しい人生を送ることができるー。

 だがー、知ればー…
 真実を知る代わりに代償を払うことになる」

茉莉がそう言うと、弘和は険しい表情を浮かべるー。

「お前だって、楽しんでただろう?
 この女の皮を着てた初日だって
 存分に欲望を楽しんだはずだー」
茉莉のそんな言葉に弘和は悔しそうな表情を浮かべるー。

もちろん、楽しんではいたー。
Hなこともたくさんしたし、こんなに素晴らしいことがあるのかと
思うぐらいに、欲望に身を委ねたー。

けれどー…
それはあくまでも”本物の人間”ではなく、
”本物の人間そっくりの皮”だとそう思っていたからー。

もし、実在の人間が材料として使われているのであればー、
それをお構いなしに楽しめるほど、欲望に染まってはいないー。

そんな思いを回収人にぶつける弘和ー。

すると、
茉莉の皮を着ている回収人は静かに呟くー。

「真実を知れば、代償を払うことになるー。
 それでも、知りたいと言うのか?」
とー。

「ーーーー言え。その皮は、俺の妹かー?」
弘和は意を決した表情で脅しに屈さずにそう言葉を口にするー。

すると、茉莉の皮を着た回収人は
少し間を置いた末に答えたー。

「イエスだ。
 ー皮にした人間は知り合いの元には支給されないようになってるんだが、
 時々事務局がミスるー」

茉莉はそう言うと、
「今日、回収してる皮は、”お前の妹”だー。」と、
ニヤニヤしながらそう言い放ったー

「き、貴様ー…!!」
弘和が怒りの形相を浮かべると、
茉莉は言うー。

「”人間フリーズドライ”は、人間を特殊な乾燥技術で皮にする技術のことだー
 生きている人間をそのまま、なー」

とー。

その上で、皮にした人間の家族には定期的にメッセージを送ったり
場合によってはその皮を着た状態で電話したりするなどして
発覚しないように偽装工作も行っている、と、そう説明を続けたー。

「ーふ、ふ、ふざけるな!晴美を元に戻せ!」
弘和が怒りの形相で言うー。

「それはできない」
茉莉はそう言葉を口にすると、
「これはビジネスだからなー」
と、そう呟きながら立ち上がるー。

「ーお、お前たちのしてることは犯罪だぞ!」
弘和は怒りの形相でそう叫ぶと
「今すぐ警察に通報してやる!」と、スマホを手にする。

それを見ていた茉莉は少しだけ笑うと、
「ーー真実を知った代償を払ってもらおうか」と、
何か小型の装置のようなものを手にしたー。

「ーー!」
スマホを手にしていた弘和が表情を歪めるー。

それと同時に茉莉が持っていた小さな
SFチックな装置のようなものから、
特殊な空気が放たれるー。

「ー”人間フリーズドライ”
 お前自身の身体で、とくと味わうと良いー」

茉莉のその言葉と共に、
弘和は急速に自分の身体から力が抜けていくのを感じるー。

「ーは…はははー…」
絶望的な状況を前に、弘和は思わず笑ってしまうー。

そして、薄れゆく意識の中、弘和は思ったー。

”ーー変なサービスを利用して
 欲望を満たした俺への罰かー…”

とー。

それと同時に、”晴美ーすまねぇ”と、
妹を助けることができなかったことを
後悔する言葉を、心の中で呟くのだったー…

おわり

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コメント

毎日支給される皮の真相を知ってしまって、
自分も皮にされる結末でした~…!

妹の皮が送られてこなければ
何も気づかず楽しい日々を送れたのかもしれませんネ~…!

お読み下さり、ありがとうございました~!!

「毎日支給される皮」目次

作品一覧

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皮<毎日支給される皮>

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