<憑依>父親の不倫相手に憑依してしまった②~怒り~(完)

①にもどる!

突然の事故により、
命を落としてしまった男子高校生。

しかし彼は、階段で一緒に転落してしまった女に
憑依した状態で目を覚ますー。

そんな状況の中、”憑依した身体”は、
父親の不倫相手であると知りー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”この麗香って人ー、
 もしかしてーー
 父さんの不倫相手ー…?”

麗香に憑依している修司は
そんなことを思いながら表情を歪めるー。

確かに今、父・哲夫は、
修司の母親である紗季と別れて、
一緒になると、そう言葉を口にしたー。

「ーこ、こ、この病院に来たのってー
 ーーこの女ー… いやー
 ーーわたしのため?
 息子さんのためじゃなくて」

麗香の身体に憑依している修司は
途中から麗香のフリをして、
振り絞るようにしてそう言葉を口にすると、
父・哲夫は「当たり前だろー」と、そう即答したー。

「ーなんだー…そうかよ」
麗香の身体なのに、修司は思わずそう言葉を口にしてしまうと、
「ー自分の息子より、不倫相手の女の方が心配かよ!
 ーそうかそうか!」と、そう叫びながら
父・哲夫を軽く突き飛ばしたー。

父親が不倫をしていたー、
息子である自分自身のことを”どうでもいい”と言ったー。

そんな、立て続けのショックな出来事に
その場に立っていることも辛くなって、
足早に立ち去っていく麗香ー。

「れ、麗香!」
父・哲夫は当然、”不倫相手”である麗香に
死んだ息子の修司が憑依しているなどとは
夢にも思っておらず、
慌てたような表情を浮かべると、
大きくため息をはき出しながら
首を横に振るのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーくそっ…!
 何なんだよ!」
麗香は苛立ちを隠せない様子で
夜の街を歩いていたー。

いったい、いつから父・哲夫は
不倫をしていたのだろうかー。

哲夫とは、特別関係が悪い訳ではなかったし、
ごく普通の親子だと思っていたー。
母・紗季との関係も悪い感じには見えなかったー。

なのに、裏ではこんな風に不倫をしていたのだろうかー。

「ふざけんなー…」
麗香はギリギリと歯軋りをすると、
麗香の綺麗な顔には似合わないような
鬼の形相を浮かべて、近くの壁を蹴りつけるー。

「ーーくそっー…」
麗香に憑依している修司は、
父・哲夫への激しい怒りを覚えながらも、
やがて、小さくため息を吐き出すー

「ーーー俺は、これからどうすればいいんだー…」
父・哲夫の不倫も一大事ー。
その上、自分の身体は階段から転落した際に
既に死亡してしまっていて、
元に戻ることもできないー。

”この状態”もいつまで続くのか分からないー。

この先もずっと
この身体ー…”相葉 麗香”として生きていくことに
なるのだろうかー。

それともーー
あと何日かすれば、自分は成仏して消滅するのだろうかー。

あるいはー…
この人ー、麗香の意識が戻って
一つの身体に二人がいるー…みたいなことになるのだろうかー。

「くそっー…分からないことだらけだー」
麗香は心の底から困惑した表情を浮かべながら
その場にしゃがみ込むー。

どうしたらいいのかも分からないー。
いったい、この先どうすれば良いのだろうかー。

がー、しゃがみこんでいると、
小太りのおじさんが少しニヤニヤしながら
「大丈夫ー?」と、そう声を掛けて来たー。

麗香に憑依している修司は
すぐに「大丈ーー」と、答えようとするも、
自分の声を聞いて、
改めて今、自分が女になっていることを思い出して
顔色を変えるー。

妙に不自然にニヤニヤしているおじさんー。

そんなおじさんを前に、麗香は
「だ、大丈夫ですー」と、今一度そう言葉を口にすると、
そのまま逃げるようにして走り去っていったー。

「ただの親切なおじさんだったら悪い気はするけどー…」
麗香の身体で、修司はそう言葉を口にすると、
「とりあえず、外で落ち込んでるのは良くないな」と、
そう言葉を口にしながら、
麗香の”持ち物”を焦るー。

程なくして、身分証明書を発見すると、
そこに記載されている住所に止むを得ず、
走り出すのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

麗香の身分証明書を頼りに
麗香の家にやってきた修司は
「女の人の家に入るなんてーなんかいい気はしないけどー…」と、
そう言葉を口にしながらも、
「まさかこの身体で自分の家に帰るわけにも行かないしなー…」と、
そう言葉を続けるー。

「はぁ~…」
大きくため息を吐き出す麗香ー。
長い髪がぐしゃぐしゃになるまでかきむしると、
「どうしてこんなことにー」と、
再びため息を吐き出すー。

階段から転落したのは、他でもない自分のせいだー。
不運であったとは言え、
誰かに押されたわけではないし、
誰かに罠にはめられたわけでもないー。

自分自身で、階段から転落してしまっただけだー。

けれどー、
一方で修司は、危ない歩き方をしていたわけでもないし、
スマホをいじりながら前を見てなかったわけでもないー。
ただ、普通に歩いていただけ。

誰も悪くないー、
本当に不運な出来事だったー。

「ー俺は死んで、父さんも不倫しててー…
 父さんの不倫相手のこの人の身体も奪ってる状態でー…
 最悪だなー…」

麗香に憑依している修司は自虐的にそう呟くと、
ふと、部屋にある姿見に自分の姿が映っていることに気付いたー。

自分の姿、と言っても”麗香”の姿であって、
修司自身の姿ではないー。

「ーーー」
改めてこうしてみてみると、30代前半ながら
かなり綺麗な感じで、
修司は少しドキドキしてしまうー。

しかしー、
すぐに首をぶんぶんと横に振ると、
「ーひ、人の身体で変なこと勝手にするのはダメだろー」と、
自分自身に言い聞かせるようにしてそう言葉を口にするー。

がー…
しばらくして、少しだけ気持ちが落ち着いて来たタイミングで
部屋の中を確認すると、
”不倫”の証拠が数多く出て来たー。

父・哲夫との吐き気を催すほどのラブラブなメッセージも
出て来て、思わず麗香の身体のまま
修司はこの世の終わりのような表情を浮かべてしまうー。

「ーー…はぁ…マジで不倫してるのかー」
頭を抱える麗香ー。

麗香はキャバクラで働いているらしく、
そこで父・哲夫と出会ったようだったー。

連絡のやり取りを見返すと、結構前から不倫関係にあって、
しかも最初は麗香の方から執拗にアプローチしていたのも
確認できたー。

「ー確かに綺麗な人だけどー…
 でもーーそんなのに引っかかるなよなー」
心底不満そうに呟く麗香に憑依した修司ー。

麗香もなかなかの悪女のようで、
”奥さんと子供なんて捨てちゃえばいいのよ”などという
メッセージも確認できたー。

怒りが湧いて来るー。

「ーーーくそっ…この女ー……
 父さんも父さんだけど、この女もこの女だー」

麗香に憑依している修司は”滅茶苦茶にしてやる”と、
そう思ったー。

邪悪な笑みを浮かべて、両手で両胸を揉み始める麗香ー。

父と麗香の不倫関係を知り、怒りを覚えた修司は、
狂ったように胸を揉みながら
その快感に身を委ねていくー。

”どうにでもなれ”と、そう思ってしまったー。

麗香に憑依してから、
”この人の身体で勝手なことはできない”と理性で、
下心も抑えて来た修司ー。

しかし麗香と父・哲夫のやり取りを見て怒り狂った修司は
麗香の目を赤く光らせながら、
自分の身体を刺激し続けたー。

こんな女、どうなっても知ったことじゃないー。

とー。

喘ぎ狂い、欲望に身を委ねていく麗香ー。

目の赤い輝きが増して、
黒いオーラのようなものまで周囲に浮かび上がり始めるー。

がー、そんな時だったー。
姿見に反射したそんな”自分の姿”を見た
麗香に憑依している修司はハッと、我に返ったー。

「ーーなんて顔してるんだー…俺ー」
目を赤く光らせて、憎しみと欲望に身を委ねた
恐ろしい顔だったー。

まるで、悪霊のようなそんな顔ー。

「ーーーー」
このまま憎悪に飲み込まれて、滅茶苦茶にしてしまうところだったー。

けれどー…
麗香の身体で怒りに身を任せて欲望に溺れそうになっていた修司は
その場でしばらく座り込むと、小さくため息を吐き出したー。

「”俺にしか”できないことー」
そう言葉を口にした麗香は静かに頷くー。

「そうだー…こうなったのにはきっと何か理由があるはずだー
 俺にしかできないことが、あるはずだー」
麗香はそう言葉を口にすると、意を決したように立ち上がったー。

欲望に溺れそうな自分ー
憎しみに溺れそうな自分ー
それを救ったのは、麗香の部屋にあった姿見だったー。

自分が悪魔のような表情を浮かべて
憎しみと欲望に飲み込まれそうな姿が、姿見に映っているのを見て
寸前のところで止まることができたー。

ーーとは言っても、
このあと、トイレやお風呂でドキドキすることにはなったけれど、
さっきのように欲望に飲み込まれてしまうようなことはなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

父・哲夫から謝罪の連絡が来たー。

”昨日はすまなかったー。
 息子のことはショックだし、どうでもいいなんて思ってないー。
 けど、君のことが心配で心配でたまらなかったー”

とー。

昨日は言い過ぎたと思っているのだろうかー。
ただ、それでもやはり不倫相手の麗香が
最優先だと言わんばかりの言い方ー。

そんな父・哲夫に対して
「今日、会える?」と、麗香のフリをして
静かにそう言葉を口にすると、
父・哲夫は少しだけ間を置いて
”今日は、息子のことで忙しくてー”と、そう言葉を口にしたー。

修司は死んだー。

ここで”麗香”に憑依した状態で生きてはいるけれど、
修司は死んだのだー。
親として色々やるべきことがあるのだろうー。

「ーーー家族のこと、どう思ってるの?」
麗香がそう言葉を口にすると、
哲夫は”え…?あ、いやー、一番君だ。君が望むなら紗季とは離婚ー”と、
なおもそう言い放つー。

がー、麗香に憑依している修司は言うー。

「”今の家族のこと”どう思ってるか聞いてるんだ!」
とー。

その口調に哲夫は驚いた様子ではあったものの、
すぐに言葉を口にしたー。

”ーー本音を言えば大事だー。
 でも、君も大事だー。
 ー俺がクズだと言うことは分かってるー
 けど、どっちもー…”

哲夫のその言葉に、麗香は少し間を置いてから言ったー。

「ーーー母さーいや、奥さんのことも大事ってことね?」
とー。

”いやー、き、君がーー”
哲夫がなおもそう言い放つのを聞いて
「ーわたしはいいから、家族が大事かどうか、情があるのかどうか答えろ!」
と、声を荒げるー。

哲夫は戸惑いながらも
”すまないー紗季は大事だー。修司もー”と、
不倫はしているものの、自分の家族も大事だとそう言葉を口にしたー

その上で、昨日、息子の修司をどうでもいいと言ったり、
妻の紗季と別れると言ったのは、
息子が死んだと聞かされて気が動転していたからだとも言ったー。

不倫としていたことは許さない。
ただ、家族に少なくともまだ情があることを知れた修司は
麗香の身体で言ったー。

「ーわたしとは別れて、関係をすっぱり切って。
 わたしー、他の男とも浮気したり、不倫してるからー」

麗香がそう言い放つー。

”え!?なんだって!?”
父・哲夫が情けない声で叫ぶー。

嘘ではないー。
事実だー。

昨日の夜、麗香の身体でスマホをいじっていたら、
麗香はキャバクラの仕事で気に入った男複数にアプローチをかけて
関係を続けていることが分かったー。

麗香は麗香で、悪女であることが分かったー。

「ーーわたしみたいな悪女は忘れて
 残った家族を大事にしてー。
 でないとー…」

修司は麗香の身体で”俺が許さない”と、そう言いかけたものの、
それ以上は言わなかったー。

そして、不倫のことは母・紗季には絶対に言わず
死ぬまで母・紗季を支えて、償うように言ったー。

電話を切る麗香ー。

「母さんがこんなこと知ったら、ショックだー。
 知らない方がいいー」

麗香に憑依している修司は、そう言葉を口にすると、
静かにため息を吐き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから、しばらくが経過したー。

父・哲夫は麗香と縁を切り、
母・紗季を支え続けているようだー。

そのことをしっかり確認した麗香に憑依している修司は
「母さんを頼むー」と、それだけ言葉を口にして、
自分の家だった家を見つめながら立ち去っていくー。

あのあと、麗香の身体で不倫相手全員と縁を切ったー。
麗香の悪事と、それに惑わされる男たちの悪事を止めたー。

そしてー…

「ー結局、俺はこの身体で生きていくことになるんだなー」
麗香の身体から抜け出す方法は分からず、
消えることもなく、麗香の意識が戻ることもないー。

人の身体と人生を奪ってしまうことには
申し訳なさを思いつつ、
”俺は、父さんが道を踏み外したり、この女の人の悪事を
 止めるためにこうなったのかもしれないなー”と、
内心でそんな風に思うー。

「ーでも、いきなり高校生だった俺が30代の女として
 生きていくことになるなんてなぁ…」

麗香はそう言葉を口にすると、
そのままゆっくりと歩き出すのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

結局、元に戻ることはできなかったものの、
新しい人生(?)を手に入れる結末でした~!

お読み下さり、ありがとうございました~!★

「父親の不倫相手に憑依してしまった」目次

作品一覧

コメント

  1. TSマニア より:

    ドロドロな展開に発展しなくて良かったですネ(´∀`)b

    修司の母さんがかわいそうですが…

    自分が麗香になって生きることになったらキャバの仕事で稼げるだけ稼いで

    麗香は見た目いいから美容サロンとか経営したいですネ!☆

    もちろん麗香のカラダで欲望を満たします(^_-)☆笑

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~!★

      お母さんは色々大変ですネ~…!

      TSマニア様が修司くんの立場だったら、
      その後の人生は充実間違いなし!ですネ~!!