<憑依>乗っ取った相手は誘拐されてる最中でした①~不穏~

手に入れた憑依薬を使い、
新たな人生を手に入れようと目論んでいた男ー。

どの子に憑依するか迷った挙句、
”父親とドライブ中”の可愛い子を見つけた彼は、
ようやく見つけた好みの子に喜々として憑依したー。

しかし、その子と一緒に車に乗っていたのは”父親”などではなくー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「へへへへ…ついにー、ついに手に入れたぞー」

40代前半の男、高木 大輔(たかぎ だいすけ)は
ニヤニヤしながら、その容器を見つめていたー。

その容器の中に入っている液体はー、
”憑依薬”ー。

彼は、今持っているほぼ全財産を使って
その憑依薬を手に入れたのだー。

一応正社員で、独身であることからか、
それなりに貯まっていたお金全てと、
住んでいた両親から受け継いだ家も売却ー、
そこまでして用意したお金を全て使いー…
高額な”憑依薬”を手に入れたのだー。

しかし、この憑依薬は高額な割に、
”飲んだ瞬間”自分の身体は消滅して”霊体”になるため
後戻りをすることはできない上、
その状態で”憑依”した身体に魂が定着してしまうため、
とにかく”後戻り不可”の一方通行の憑依薬だったー。

飲んだ瞬間、自分の身体には後戻りすることが出来ずー、
誰かに憑依した瞬間、”やっぱりコイツの身体はイヤだなー”と
抜け出すようなこともできないー。
そういう、憑依薬だー。

けれど、それでも大輔は満足していたー。

元々大輔は”両親が死んだら、あとはどうでもいいや”と
考えていたぐらいに自分の人生に執着はなくー、
父親は5年前に、母親は1年前に既に他界しているー。

”後は、いつ死んでもいいや”などと、
そんな風にさえ思っているぐらいだったー。

しかし、そんな大輔がネット上で偶然”憑依薬”を発見ー。
勿論、”本物かどうか”は疑ったものの、
”偽物だったら死ねばいいだけだし”と、
そんな”失うものは何もない”状態であった大輔は
その憑依薬が本物であることに賭けて、憑依薬を購入したー。

そして今、その憑依薬が手に握られているー。

”本物”なら、好みの子の身体を乗っ取って新たな人生を送ることができるー。
”偽物”なら、全財産を失った自分は惨めに死んでいくだけー。
そして、”毒”なら、この場で死んで終わりー。

それだけのことだー。

大輔は、そんな風に思いながら
憑依薬の入った容器を見つめつつ、唾をゴクリと飲み込むー。

「ーへへへへー…いずれにせよ、今日で”俺の世界”は変わるー」

他人に憑依して、新しい人生を始めるかー。
あるいは死んであの世で次のステージに進むか。

いずれにせよ、”新しい扉”が開くー。

大輔はいよいよ意を決すると、そのまま”憑依薬”を飲み干したー。

その直後、自分の身体が光の雫のようになって
下の方から消滅していくー。

ほんの少しだけ”恐怖”を感じたものの、
すぐにその恐怖感を押し殺して、
大輔はニヤリと笑うー。

「ー俺は、この身体を捨てるぞー」
そう言葉を口にした大輔はそのままその場で”霊体”となったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”へへへへー
 まさか、ホントに霊体になれるなんてなー”

数日後ー

憑依薬を飲んだ大輔は無事に霊体になって、
宙を彷徨っていたー。

憑依薬を飲んでから数日間が経過しても、
霊体のまま宙を彷徨っているのは、
”どの身体を乗っ取るか”を悩んでいるからだー。

「一度憑依したら引き返せねぇからなー
 俺好みの最強の身体を見つけ出すぜ」
大輔はそう言葉を口にしながら
高校周辺を霊体のまま彷徨うー。

当然、霊体であるために、周囲にいる人々は、
全く大輔に気付いていないー。

「へへへへへー
 可愛い子ばっかりだぜー」
大輔はニヤニヤしながら
校舎内を移動している女子たちを見つめるー。

大輔は、憑依薬を手に入れた時から
”女”に憑依することしか考えていなかったー。

その動機は単純明快。
下心によるものだー。
それと、どうせ新しい身体を手に入れるなら
今、自分が体験しているほうじゃない性別を
味わいたい、というそんな好奇心のような気持ちもあったー。

「ーーねぇねぇ、美桜(みお)~!」
ふと、そんな声が聞こえて大輔は、
”美桜”と呼ばれた子のほうを見つめるー。

「ーうぉっ…か、可愛いじゃねぇかー
 顔もスタイルも最高だなー」

”ついに俺好みの子”を見つけたー。
理想にかなり近いー。

大輔は笑みを浮かべながら
「よしー…美桜ちゃんとか言ったなー…
 お前にするかー」と、
そう言葉を口にしながら、
その子に自分の霊体を重ねようとしたー。

がーーー

その直前で大輔はぴたっと動きを止めるー。

”いやー、待てー…
 もう少しー…もう少しこうー…胸が大きい方がいいかもしれねぇー”

別に極端な巨乳が好きだとか
そういう拘りがあるわけではないー。

ただ、”欲を言えば”もう少しだけ大きい方がいいような、
そんな気がしたー。

「ーーーまだ時間はたっぷりあるし、
 もう少し探してみるかー」

そう言葉を口にしながら、大輔はその場を立ち去るー。

もちろんー、その子…”美桜”は、
たった今、自分の近くに”霊体”となったヤバい男が
いることには全く気付いていないー。

けれどー、大輔の気が直前で変わったことで、
美桜は命拾いをした。

もしも、この場で美桜が憑依されてしまっていたら
美桜の人生はそこで終わったも同然だったし、
美桜の周囲の人間の運命も大きく変わっていたはずだー。

直前で大輔の気が変わったことにより、
彼女は、正真正銘の”命拾い”をしたのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

その翌日ー。

「あんまり長く霊体の状態でいると、
 魂が消滅するって書いてあったから、
 そろそろ乗っ取る身体を決めないとなー」

未だ、霊体のままの大輔は
”憑依薬”の説明書に
1週間以上霊体のままでいると安全を保障できない、と
書かれていたことを思い出すー。

今日で憑依薬を飲んで5日目ー。
そろそろ、”乗っ取る身体”を決めなくてはならないー。

そう思いつつ、今日も”乗っ取る身体”の物色を
続けていたその時だったー。

「ーーー!!!」

見つけたー
ついにー、理想の中の理想の子をー。

その子は父親らしき人物と共に車に乗っていたー。

どこか、幸薄そうな大人しい雰囲気ながら、
そんな表情と雰囲気でも隠し切れない可愛さにスタイルの良さー。
胸の大きさも、大輔の理想とする大きさで、
昨日見かけた”美桜”という子よりもさらに
完璧な子を見つけたー。

「ーへ…へへへー
 決めたー…こいつだー」

大輔はいよいよ”自分が乗っ取る身体”をその子に決めると、
「父親も、優しそうな感じだしなー」と、
停車していた車の運転席にいる父親のほうを見つめるー。

父親は穏やかに笑っていて、
とても優しそうな雰囲気だー。

”まぁ、JKに憑依すると親がいるのが面倒だけどー…
 でも、JK時代を味わいたいからなーへへへへ”

大輔は内心でそんなことも呟くー。

最初は一人暮らしの女子大生にでも憑依しようかと
そう考えていたものの、
”女子高生”という貴重なステータスを持つ身体に
どうしても憑依したくなったー。

その結果ー、最後に選んだのがこの子だー。

「ーへへへへー その身体ー俺が有意義に使ってやるぜ!」
大輔がそう言葉を口にしながら、
その子に霊体を重ねると、「ひっ!?!?!?」と、
思った以上にビクッと身体が震えて、大きな声が出てしまったー。

「ーーーー???」
車を運転していた父親が少し困惑した表情を浮かべると、
「ー美鈴(みすず)ちゃんー大丈夫?」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーえ… あ、ぁ、あぁあ、えへへー
 ちょ、ちょっと夢を見ててー」

”この子の名前は、”美鈴”って言うのかー”と、
そう心の中で呟きながら
”そういや、俺としたことが見た目の可愛さに
 引き寄せられて憑依する前に名前を確認するのを
 忘れてたぜ”と、心の中でそんなことを呟くー。

危うくー、”好みじゃない名前”の身体に
憑依してしまうところだったー。

大輔自身、特別”この名前じゃないと嫌だ”と、
そこまでの拘りはなかったものの、
”できれば避けたい名前”というものは
彼自身の中にはあったー。

例えば、せっかく女子に憑依するのに、
男か女か分からないような名前は、
大輔としては”避けたい名前”だったー。

どうせなら、男の自分では名乗ることができなかった名前ー
それを名乗りたいーとー。

「ー美鈴ーかー…クククー」
”わたしは美鈴ー”と内心でそう言葉を口にすると、
美鈴に憑依した大輔はニヤリと笑みを浮かべるー。

がー、それと同時に
ふと”あること”が頭の中に浮かんだー。

”んーーー?
 この父親、さっき俺のことを”美鈴ちゃん”って言ったよなー?”

美鈴に憑依した大輔は少しだけ違和感を覚えるー。

まだ学校にも通っていないような小さい子であれば
自分の娘のことを”美鈴ちゃん”と呼ぶこともー…
あるかもしれないー。

ただー、たった今、
憑依して身体を乗っ取った相手は”女子高生”だー。

高校生にもなった自分の娘を”ちゃん”付けで
呼んだりするだろうかー?

いや、もちろんそういう人間もいるかもしれないー。
ただーー何となく、その部分に大輔は強い違和感を覚えたー。

「ーーーーー」
ゴクリ、と唾を飲み込む美鈴ー

”コイツが父親じゃないとしたら、誰だー?
 ーー親戚の伯父さんとか、そんな感じかー?”

そう思いながら、チラッと父親…かもしれない人物のほうを
見つめると、
美鈴に憑依している大輔は、少しだけ表情を曇らせてから
口を開いたー。

「ーあ、あのー…
 え、えっとー…今、どこに向かってるんだったっけー…」

とー。

何か会話をすれば、この男が”誰”なのか分かるかもしれないー。
そう思いつつ、そんな言葉を吐き出したー。

”美鈴の声”が、美鈴の口から出るー。
美鈴からすれば当たり前のことー。

しかし、美鈴に憑依したばかりの大輔からすれば、
この先”自分の声”になるこの声が
自分の口から出ているこの状況は、
とても新鮮で興奮する状況だったー。

思わずニヤッとしそうになるも、
それを堪える美鈴に憑依した大輔ー。

がー、代わりに、
車を運転している男がニヤッと笑ったー。

「ーさっきも言っただろー?
 僕は美鈴ちゃんー君にふさわしい”城”を用意したんだー」
と、そう言葉を口にしながらー。

「し、城ー?」
美鈴に憑依している大輔は”何だか話がおかしい”と、
そう思いながら、表情を歪めるー

”コイツはこの女の父親じゃない”
そう確信した美鈴は、”運転手の男”が誰なのかを
探るために頭をフル回転させて、言葉を口にしたー。

「ーあ、あ、あのー…
 し、城に行く前に、一度父親ーー
 え、あ~~~…いや、お父さんに連絡してーいい?」

美鈴に憑依している大輔は美鈴が普段、
自分の父親のことを何て呼んでいるのかは分からないー。

がー、一番無難そうな”お父さん”と呼んで、
父親に連絡していいかを運転手の男に確認するー。

その”反応”次第で、
どうするかを考えようと、そう思ったのだー。

がーーー
「美鈴ちゃんー!」
と、男は、優しそうな顔に不気味な笑みを浮かべると、
「そんなことされたら、僕、”誘拐犯”と勘違いされちゃうじゃないかぁ~」と、
少し不満そうにも見える態度でそう言葉を口にしたー。

「ーーー~~~
 え……
 ま、まさかお前ーこ、コイツを誘拐ー…」

美鈴に憑依している大輔は、
思わず美鈴のフリをするのを忘れて
そんな言葉を口にすると、
突然、優しそうな雰囲気だった男が
グーで美鈴を殴りつけたー。

「ーひっ…!?」
いきなり殴られた美鈴に憑依している大輔は
思わず情けない声を出してしまうー。

すると、男はニヤニヤしながら言ったー。

「ー美鈴ちゃんー
 僕を誘拐呼ばわりするなんてひどいじゃないかー
 僕は”姫”を”城”にお連れしようとしているだけだよー」

とー。

その言葉に、美鈴は恐怖を覚えるー

”く…くそっ…な、なんだコイツー…”

そう思いながらも、どうすることもできないこの状況を前にー、
美鈴に憑依している大輔は焦りを覚えるー。

そうー
大輔はこの日、”誘拐”されている最中の人間に
憑依してしまったのだったー…

②へ続く

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コメント

今月最初のお話デス~!!

いきなり大変な状況になってしまいましたネ~!!

今月も皆様にたっぷり楽しんでもらえるように、
頑張ります~!!
改めて、今月もよろしくお願いします~!

続けて②をみる!

「乗っ取った相手は誘拐されてる最中でした」目次

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