ある日のことー
突如として教室にやってきた謎の集団が、
クラスメイトたちを次々と”皮”にして
その身体を乗っ取っていったー。
しかしー、”あまりにも影が薄い”彼は、
一人だけ”正気”であることに気付かれないままー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー」
とある学校の昼休みー。
いつものように賑わう教室の中ー、
そのクラスの生徒の一人である薄井 瑛太(うすい えいた)は、
いつものように、”寝たふり”をしながら
昼休みの時間を過ごしていたー。
別に眠いわけではないー。
やることがないのだー。
友達もいないし、勉強好きでもないしー、
かと言って、校舎内を徘徊する趣味もないー。
誰かに話しかけられたい…などという気持ちもなく、
逆に話しかけられたら面倒なだけだし、
こうして、眠くないけれど机に伏して
寝ているフリをしているー。
「ーーえ~?ホントにー?
じゃあ、今度わたしが聞いておいてあげるよー」
瑛太が”寝たフリ”をしている座席の近くでは
生徒会の会長を務める女子生徒・森里 遥香(もりさと はるか)が
楽しそうに友達の水野 聖奈(みずの せいな)と話をしているー。
生徒会長の遥香とは座席が近くー、
その遥香の座席にいつも友達の聖奈が
話しかけに来ているため、二人の会話が聞こえてしまうのは
日常茶飯事だったー。
特に生徒会長の遥香はとても可愛い見た目をしているからか
クラスでも人気があり、よく色々な生徒から話しかけられているー。
「ーーなぁなぁー、森里さん!聞いてくれよ!」
そんな遥香に、お調子者の男子生徒・清水 哲夫(しみず てつお)が
いつものように、何やら話しかけているー。
ただー、瑛太にはそのいずれにも興味はなかったー。
可愛い子が近くで友達と話していようと、
その二人に、お調子者の男子生徒が絡んでいようと、
瑛太には興味がないし、関係のないことだったー。
”あ~……早く6時間目まで終わらないかなぁー”
特に帰宅してからもあまりやることはないけれど、
学校にいるよりはマシー。
そんなことを思いつつ、
昼休みも、5時間目も、6時間目も早く終わって欲しいと、
そう心の中で願うー。
そんなー、良くも悪くも”いつも通り”の学校生活を
瑛太は過ごしていたー。
そんな性格であるため、瑛太はクラスの中でも
存在感が皆無ー。
あまりの存在感の薄さに誰からも気付かれず、
先生に出席確認を飛ばされたり、
5時間目の授業が体育だった日には、
教室でウトウトしていたら、
女子たちが、まだ瑛太がいることに気付かずに
着替え始めてしまったりしたぐらいに、
存在感が薄かったー。
そんな出来事を積み重ねるうちに、
瑛太はやがて
”僕の才能は、影が薄いことだなー”などと
そんな自虐ネタも頭の中に思い浮かべるぐらいになっていたー
今日も当然、そんな瑛太に話しかける人間はなく、
存分にその影の薄さを発揮していたー。
がーーー
そんな”いつも通りの日常”が流れていくはずだった
その時だったー。
「ーーうっ…」
突然、教室の入口付近に立っていた男子生徒がうめき声を上げるー。
「ーーどうしたの?」
その様子に
近くにいた気の強そうな眼鏡の女子生徒が
表情を歪めながらそう呟くと、
直後ー、うめき声を上げた男子生徒から”空気”が抜けていくかのように、
力が失われていき、そのまま”皮”にー…
まるで着ぐるみのようになって
その場に崩れ落ちたー
「ーえっ…な、なにー!?」
気の強そうな女子生徒がそう声を上げると同時に、
教室の前方からー、後方からー、
そして窓から”謎の集団”数十名が、教室の中に
なだれ込んで来たー。
一人、また一人と、謎の針のようなものを打ち込まれて
”皮”にされていくー。
教室内で悲鳴が上がりー、
逃げ出す生徒、立ち向かう生徒ー、
色々な反応を見せているー。
がー、そうこうしているうちに、謎の集団が
”皮”にした生徒を”着て”ー、そのまま身体を乗っ取り始めたー。
「ーークククク
いい身体をゲットしたぜー」
気の強そうな眼鏡の女子生徒を乗っ取った男が、
嬉しそうに笑みを浮かべるー。
「ーへへー俺は大人しい系にしたぞ」
そこに、別のボブカットの少女がやってきて
そう言葉を口にすると、
二人は「早速キスしてみようぜー?女同士でさー」などと
そんな言葉を口にしながら、
抱き合ってキスをし始めるー。
「ーちょ、ちょっと…み、みんなー!?」
生徒会長の遥香が困惑した様子で声を上げるも、
教室内に残っていた謎の集団の男数名が
遥香の方に向かっていくー
「いい身体じゃねぇかー」
「ーふざけんな!あの子は俺のだー」
謎の集団の男二人が、そんな声を発しながら
遥香の方に向かうー。
がー、そんな状況を前に
まだ皮にされていなかったお調子者の男子・哲夫が、
謎の集団の男のうちの一人を思いっきり殴り飛ばして、ノックアウトするー。
「ーー貴様ーー」
既にクラスの”半分以上”の身体を乗っ取りー、
謎の集団の人数も大分減って来たー。
いやー、正確に言えば減ったのではなく、
”元の身体のまま”でいる謎の集団の人数が減って来たー。
教室の中では抱き合ったり、キスをしたり、
胸を揉んだり、
男子は男子で、女子生徒とキスをしたり、
身体を確かめたり、”乗っ取られた生徒たち”による、
混沌とした光景が広がっているー。
「ーも、森里さん!!早く逃げろ!」
お調子者の哲夫がそう言葉を口にすると同時に、
背後から迫って来た謎の集団の一人に”針”のようなものを
打ち込まれてそのまま”皮”になっていくー。
「ーし、し、清水くんー」
怯えた表情を浮かべる遥香ー。
その背後では、遥香の親友である聖奈も
”針”を打ち込まれて”皮”になっていたー。
残っていた生徒も一人、また一人と、
皮になっていく中ー…
”存在感皆無”の男子生徒ー、瑛太は
ひたすら”寝たフリ”を続けていたー。
”いつも通り”にー。
全く逃げる素振りもなく、
抵抗する素振りもなかったためだろうかー。
教室に入って来た”謎の集団”も、瑛太には気づかないまま、
クラスメイトたちを次々と”皮”にしていたー。
「ーーー」
そして、瑛太自身も”異変”に気付いていなかったー。
悲鳴が聞こえたり、争うような声が聞こえたり、
妙に足音が聞こえたりはしたものの、
周囲に無関心な瑛太は”騒がしいなぁ”ぐらいにしか
思っていなかったー。
謎の集団が入って来たことも、
顔を上げずに、ずっと寝たフリをしていたために、
そもそも瑛太は”気付いてすら”いなかったのだー。
「ーーークククー
残り物には福があるーーだったっけか?」
謎の集団の男の最後の一人が、
笑みを浮かべながらそう言葉を口にしつつー、
生徒会長の遥香に向かってゆっくりと歩いていくー。
遥香は震えながら後ずさるもー、
親友”だった”聖奈が背後から遥香の腕を掴んだー。
「ー大丈夫だよー?何も怖くないしー
”皮にされる瞬間”って、案外気持ちいいからー
ふふー」
聖奈が邪悪な笑みを浮かべながら言うー。
聖奈は既に、謎の集団の一人に皮にされて
身体を乗っ取られているー。
その姿は、その声は、聖奈のものであっても、
もはや中身は聖奈ではないー。
「ーや…やめて!聖奈ー…離して!」
生徒会長の遥香は必死にそんな言葉を発するー。
しかし、聖奈は笑みを浮かべながら
「ーほらー、もう”最後の一人”だよー?
わたしたちの仲間になろ?」と、
そう言葉を口にした上で、
残る一人ー…、まだ”生徒の身体を乗っ取っていない”男のほうを
見つめながら、
「ほら、さっさとこの女の身体を乗っ取れよー」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーーークククー
そうだなー…」
男はそう言葉を口にすると、
顔を隠すために身に着けていたマスクのようなものを外したー。
「ーーん~~~~…
いい顔だー…」
そう言いながら、顔に傷のある男が、
笑みを浮かべながら、生徒会長・遥香の顔を
じ~っと見つめるー。
遥香は怯えた表情を浮かべながら目を逸らすと、
男はニヤニヤと笑いながら頷いたー。
「すぐに、お前の笑顔も、怒った顔も、気持ち良さそうな顔もー
全部、俺が確認してやるよー」
そう言葉を口にすると、
男は隠し持っていた針のようなものを手に、
そのままそれを遥香に打ち込んだー。
「ーーー…~~~~…」
その時ー、
ちょうど、チャイムが鳴ったー。
”そろそろ5時間目か。
早く帰りたいなぁ…”
依然として眠そうにしながら、
存在感があまりにも薄い男子生徒・瑛太が顔を上げると、
ちょうど、生徒会長の遥香が”皮”になっていくのが見えたー。
「ーー?」
瑛太は少しだけ表情を歪めるー。
あまりにも信じられない光景に
目を疑いつつも、
特にリアクションは起こさずに
その”続き”を見つめるー。
”皮”になって崩れ落ちた遥香が、
男に掴まれるー。
そして、男は”皮”になった遥香を
嬉しそうに着ると、
そのまま男は、”遥香”となったー。
遥香の身体を完全に乗っ取り、
自由に動かすことができる状態になったのだー。
「ーーー…!?!?!?」
”周囲のことに興味がない”瑛太とは言え、
流石にその光景には驚きを隠せずに
目を見開くー。
「ククククーーー」
乗っ取られた遥香は、突然欲望に満ちた笑みを浮かべながら
自分の胸を嬉しそうに揉み始めるー。
普段の遥香は”そんなこと”は絶対にしないー。
その異様な光景を前に瑛太は、呆然としながら
その様子を見つめていると、
周囲の生徒たちの様子も、おかしいことに気付いたー。
女子同士で抱き合ってキスをしていたり、
「くそっ!こんな根暗そうなやつに!」と、普段は大人しい別の男子生徒が
叫んでいたり、
女のような言葉遣いをしている男子二人が、身体をベタベタと触り合っているのも見えたー。
”な、なんだこれ…?い、いったいどうなってー…?”
瑛太は内心で激しく動揺するー。
が、元々コミュニケーションが別に得意ではない瑛太は、
そんな状況のクラスメイトたちに声をかけることもできずに
ゴクリと唾を飲み込んだー。
するとー、生徒会長・遥香の友達である聖奈を乗っ取った男が言ったー。
「ーこれで、このクラスの人間を全員乗っ取ることができたなー」
とー。
謎の集団はー、
このクラスの人間の身体を狙い、
教室を強襲したー。
クラス全員の身体を一度に奪ってしまえば、
目撃者もついでに消すことができる上に、
その後も”集団”で行動しやすいー
そういった理由でちょうど、”自分達と同じ人数のクラス”が
存在する学校を狙い、そして、強襲したー。
”新たな身体”を手に入れるためにー。
がーーー
「ーーん???
コイツ、誰も乗っ取れてなくねー?」
お調子者の哲夫ー…
もちろん、乗っ取られてしまっている哲夫が
そう言葉を口にすると、
倒れている男を、聖奈が見つめたー。
「ーん???
あぁ、その身体にぶん殴られてたなー」
聖奈は、お調子者の哲夫を見つめながら
そう呟くと、少し面倒臭そうに
「おい、起きろ」と、気絶している仲間を足で起こしたー。
先程、生徒会長の遥香を守るため、
お調子者の哲夫が思いっきり殴りつけた男ー…
その男はそのまま気絶して、床に倒れたまま
誰の身体もまだ乗っ取ることが出来ていない状態だったー。
「ーーん???ーー
でも、俺たちは28人で、このクラスの生徒も28人ーー
だったはずだよなー。
こいつがまだ誰の身体も乗っ取ってないってことはー…?」
乗っ取られた聖奈がそう言葉を口にすると、
乗っ取られたボブカットのクラスメイトが笑いながら
「ーもう一度、人数を数えてみようぜ!」と、そう言葉を口にするー。
”~~~~~~!!!”
その状況を前に、瑛太は震えるー。
あまりの影の薄さからだろうかー。
謎の集団はまだ”瑛太”が正気の状態であることに
気付いていないようだー。
がー、このまま数を数えられてしまえばー…
まだ、瑛太が正気なことに気付かれるかもしれないー。
「ーーねぇ、そこのお前さー、男子の人数数えておいて」
ボブカットのクラスメイトが瑛太にそう声をかけるー。
瑛太は一瞬ビクッとしたものの、
「あ、あぁーい、いいぜー」と、謎の集団っぽい受け答えをすると、
”自分を含めて男子は14人”いるところー、
「だ、男子は13人だなー。」と、一人減らして報告したー。
「ー女子は14人ー
ってことは、27人かー。
このクラスは28人って聞いてたけど、一人欠席者がいたんだろうなー」
ボブカットの女子はそう言葉を口にするー。
瑛太が震える中、乗っ取られた聖奈は
気絶していた仲間を見つけると、
「わりぃなー。身体、27個しかなかったみたいだー
だからお前は余っちまったー。」と、
冗談めいた口調でそう言葉を口にしたー。
”ーーーーー~~~”
自分以外のクラスメイト27人が乗っ取られてしまったー。
しかしー、相手は”瑛太だけまだ正気”ということに気付いていないー。
そんな状況を前に、
瑛太は”き、気付かれる前に逃げなくちゃー”と、
自分の存在感の薄さに感謝しながら、心の中でそう呟くのだったー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
瑛太くんは、
存在感が薄すぎたおかげで
難を逃れることができました~~!
でも…この先が大変そうですネ~…!
続きはまた明日デス~!!

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