逃亡中の凶悪犯と女子大生が入れ替わってしまったー。
突然、追われる立場となってしまった女子大生と、
手に入れた美貌を悪用する凶悪犯ー。
二人の運命は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇねぇ、そういえば知ってるー?」
大学の昼休みー。
雑談をしていた二人組の一人がそう言葉を口にするー。
「え?知ってるって何を?」
飲み物を飲んでいた女子大生・天野 萌々香(あまの ももか)が、
不思議そうに首を傾げるー。
萌々香は、この大学でもトップクラスの美貌の持ち主で、
密かにファンも多いものの、
本人はのんびりとした性格の持ち主で、
自分の”美貌”をあまり自覚はしていないー。
年相応におしゃれにはしているものの、
可愛いと言われても、”わたしは全然ー”と、恥ずかしそうに笑うぐらいに
”自覚のない美人”だったー。
そんな萌々香に対して、
友人の望月 樹里(もちづき じゅり)が、
スマホの画面を見せると、
そこには”ある事件”についてのニュースが表示されていたー。
それは、とあるアパートで起きた事件ー。
容疑者である龍宮寺 宗平(りゅうぐうじ そうへい)という男が、
住人の一人の家に押し入り、その命を奪った事件だー。
命を奪われたのは、宗平の”元カノ”であったという女だー。
そして、その家にいた”元カノ”の現在の彼氏の命まで奪い、
その騒ぎを聞きつけて駆け付け、悲鳴を上げた隣人のおばさん、
さらには階段ですれ違った配達員まで切りつけて
逃亡した凶悪犯だー。
結果、龍宮寺 宗平の元カノとその彼氏は死亡、
隣人のおばさんも搬送先の病院で死亡が確認され、
配達員の男は全治数か月の重傷を追ったー。
龍宮寺 宗平は見た目からして
いかつい感じの男で、
ニュースで報じられていた”同級生”へのインタビューによれば
”昔からキレやすいやつだった”とのことだったー。
そんな男が今、逃亡中なのだと、
樹里はスマホを見せながら、
萌々香に対してそう言葉を口にしたー。
「え~……なんだか物騒だねー…」
萌々香が戸惑いながらそう言葉を口にすると、
「ほら、萌々香のんびりしてる感じだから、
気を付けてねーって、そう思って」と、樹里が
苦笑いしながら言うー。
「う、うんー気を付ける」
どこかふんわりした雰囲気の萌々香。
真面目で、成績も優秀で、
色々なことができるタイプではあるけれど、
そういう面での”危うさ”のようなものを
どうしても感じずにはいられないー。
「ーーなんか、萌々香の場合、
逃亡犯から声を掛けられても
気付かずに親切にしちゃいそうな感じがするしー」
樹里がなおも苦笑いをしながら
そう言葉を口にすると、
萌々香は少し照れ臭そうにしながら、
「う、うんー。気を付けるねー。ありがとう」と、
そんな言葉を口にするのだったー。
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「ーーあ、この前はありがとうー」
大学での1日が終わり、
帰路につこうとしていた萌々香に
”幼馴染”である男子大学生の北沢 直幸(きたざわ なおゆき)が
声を掛けて来たー
「ーーううんー。全然ーちょっと手伝っただけだしー」
萌々香は少し照れ臭そうにそう笑うー。
少し前に、直幸は萌々香に大学の課題を手伝ってもらっていて、
ちょうどそのお礼を口にしているところだったー。
「ーーあははー…そんなことないよー
天野さんに手伝って貰ってなかったら僕、まだ悩んでたかもだしー」
直幸がそう言うと、萌々香は笑いながら、
「でも、完成させたのは直くんなんだしー」と、
そう言葉を口にするー。
二人は付き合っているわけではないものの、
幼馴染として仲良しだー。
もしかすると、お互い、相手に対して恋愛感情のようなものを
抱いている…のかもしれないけれど、
二人とも奥手で、そういう部分にはどこか鈍感な一面もあるために
特に何か”進展”を見せるようなことはなく、
幼馴染の状態のままが続いていたー。
「ーーー天野さんには小さい頃から本当に世話になりっぱなしだなぁ」
直幸は苦笑いしながらそう言うと、
「小さい頃、”大きくなったら僕が天野さんを守るんだ!”なんて言ってたのにー」と、
そう言葉を付け加えたー。
その言葉に、萌々香は笑うと、
「ー守ってくれるの、楽しみにしてるねー?」と、そう言葉を続けるー。
「ーーも、もちろん!僕だって、いつかはー!」
直幸は照れ臭そうにそう言葉を口にすると、
今日も二人は仲良く笑うのだったー。
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直幸と別れ、大学の外に出た萌々香は、
自分の家に向かって歩き始めるー。
”何か買っていくもの、ある?”
実家で暮らしている萌々香は、母親に対して
そうメッセージを送ると、
しばらくして、母親から”今日は特にないかな?ありがとう!”と、
そんな返信が届くー。
それを確認した萌々香はスマホをしまって
ゆっくりと歩き始めるー。
夜になると薄暗い、公園のような場所を通過していく萌々香ー。
親友である樹里が言う通り、
どこか萌々香はのんびりとした部分があってー、
”危機感”の部分が少し欠けているような感じがあるー。
今もー、
”女子大生”があまり夜に一人で歩くには
少し物騒過ぎる場所を
無意識のうちに通過してしまっているー。
そしてー、そんな萌々香に”危険”が迫っていたー。
近くに”彼”がいたのだー。
龍宮寺 宗平ー。
3人の命を奪い、一人に重傷を負わせた凶悪犯がー。
”くそっー……さっきもパトロール中の警官に姿を
見られちまったー
俺は悪くねえー。このまま捕まってたまるか”
ニット帽にマスクという怪しい雰囲気の宗平はー、
周囲を見渡しながら
足早に公園の中を移動し始めるー。
パトロール中のパトカーだろうかー。
それとも別件だろうかー。
パトカーのサイレンの音が聞こえたことに
宗平は少し焦りを感じると、
木陰から飛び出して早歩きで
公園の反対側に抜けようと走り始めるー。
がー、その時だったー
「ーーー!!!!」
足早に走っていた宗平は、
ちょうど街灯があまりなくて暗い場所であったこともあって、
前からやってきた女子大生の萌々香に気付かなかったー。
「ーー!?」
萌々香も目の前から急に男の影のようなものが出現したことに
驚き、表情を歪めるー。
しかし、二人ともお互いに相手に気付いた時には
既に手遅れで、そのまま正面衝突してしまい、
勢いよく転倒してしまったー。
衝撃と痛みに耐えながら、
「ーーくそっ…!女!!気を付けろ!」と、声を荒げるーー
がーー、そう叫んだのは
逃亡犯の宗平ではなく、萌々香だったー。
「ーー…あ????」
怒りの声を上げた萌々香が、自分自身でも「え?」というような
表情を浮かべるー。
そう言われた”宗平”の方も
「え…えっとー…え…???」と、
”謝る”よりも前に、
”目の前に自分がいる”ということに驚きの表情を浮かべるー。
「な、なんだこれー…???
お、俺がーー女にー?」
萌々香が意味不明な言葉を口にすると、
目の前にいる”宗平”を見つめてから
「お…俺…?」と、さらに戸惑いの表情を浮かべるー。
がー、やがてニヤリと笑みを浮かべると、
「ーー…何だか分からねぇけどー…こいつはいいー」と、
萌々香になった”宗平”がそう言葉を口にするー。
一方、宗平になってしまった萌々香は
「い、一体どうなってるんですかー…?」と、
心底戸惑った様子でそう言葉を吐き出すと、
萌々香(宗平)は、邪悪な笑みを浮かべながら
「ーー知るかよー」と、そう答えたー。
再び、パトカーのサイレン音が聞こえて来るー。
その音に反応を示した萌々香(宗平)は
「ククーーじゃあなー」と、それだけ言葉を口にして
萌々香の身体のまま、不自然な足取りでそのまま
逃亡していくー。
宗平(萌々香)は「ちょ、ちょっと待ってくださいー!」と、
そう言葉を口にすると、
戸惑いの表情を浮かべながら、自分の手を見つめたー
「わ、わたしが男の人にー…?」
困惑する宗平(萌々香)ー。
ちょうど、萌々香が持っていたバッグから
ぶつかった際に飛び出てしまったと思われる
手鏡が落ちていることに気付いた宗平(萌々香)は、
それを拾うー。
そして、自分の姿を見た宗平(萌々香)は
思わず声を漏らしたー。
それもそのはずー。
鏡に映った”顔”は、
今日のお昼に、親友の樹里が見せてくれた
ニュースに表示された顔ー…
”いかにも悪人”のような顔立ちで、強く印象に残った
”龍宮寺 宗平”の顔だったのだからー。
「ーな…なにこれ…?
ど、どうしてーー?」
宗平になってしまった萌々香は、そう言葉を口にすると、
戸惑いの表情を浮かべながら、
しばらくその場に立ち尽くすことしかできなかったー。
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「ーーへ…へへへーマジかよー」
一方、女子トイレに駆け込んで
”自分の顔”を確認した萌々香(宗平)は、
”想像以上に美人な顔”に、ゾクゾクしながら
笑みを浮かべていたー。
さっきは、”出会い頭にぶつかった”せいで、
相手の顔を把握することができていなかったし、
入れ替わったあとは、身体は見えても
顔は自分では見ることができないために、
今、初めて”萌々香の顔”を把握していたー。
「ーーすっげぇ可愛いじゃねぇかー
しかもーー…」
萌々香(宗平)はニヤッとしながら
自分を見下ろすと、
「エロイ身体だぜー…」と、そう言葉を口にしながら
自分の胸を揉み始めるー。
しばらく、気持ちよさそうに鏡の前で胸を揉んでいた
萌々香(宗平)ー。
やがて、トイレに別の利用客が来て、
胸を揉んでいる”萌々香”の姿を見ると、
”変な子”を見るような目で露骨に見つめて来たため、
萌々香(宗平)は「こっち見るんじゃねぇ」と、
それだけ吐き捨てて、そのままトイレの外に出たー。
「ーーへへへへー…
に、してもいい身体が手に入ったぜー」
自分のスカートを嬉しそうに触りながら、
ニヤニヤが止まらない様子で萌々香(宗平)が
そう呟くと、
「さてー」と、バッグの中から学生証を取り出して、
”自分の住所”を確認したー。
「ここのところ、逃亡生活ばかりだったから
少しの間、ゆっくりさせてもらうとするかなー」
萌々香(宗平)はそう言葉を口にすると、
デパートの外に出てゆっくりと街を歩き始めるー。
”事件”を起こして以降ー、
自分が”逃亡犯”となってしまったため、
のんびりと街中を歩くことができなかったー。
が、今は違うー。
女子大生の身体を手に入れた宗平は
自由に街を歩くことができるー。
嬉しそうに両手を広げて、くるくると回りながら
”堂々と街を歩ける”状況を堪能する萌々香(宗平)ー
そんな萌々香の”異様な行動”に、周囲の通行人たちは
困惑した様子で振り向いたものの、
萌々香(宗平)はそれを無視して、街中を歩ける自由を噛みしめたー。
「ーそうだー。逃亡中は牛丼ものんびり喰えなかったからなー」
萌々香(宗平)はそう言葉を口にすると、
「ー女の身体でも、まぁ喰えるだろ」と、そう呟きながら
嬉しそうに、牛丼店の中へと入っていくのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
宗平になってしまった萌々香は、
一足先に”萌々香の家”に到着していたー。
「どうしようー…」
宗平(萌々香)はそう言葉を口にしながらも
「ーとにかく、お母さんとお父さんに伝えなくちゃ」と
意を決して、インターホンを鳴らすー
”はいー。天野ですが”
萌々香の母親がそう言葉を口にすると、
「ーあ、あのー…お、お母さんー」と、
宗平(萌々香)はそう言葉を返すー。
”ーー…???
え?何か御用ですかー?”
母親の心底戸惑ったような声が聞こえて来るー。
”何とか信じて貰わなくちゃ”
そう思いながら、宗平(萌々香)は、慌てて
「し、信じられないと思うけど、わたしー…萌々香なの」と
そう言い放つ。
”な、何を言ってるんですかー?あなたはいったいー?”
萌々香の母親は、心底混乱した様子で言葉を返してくる。
混乱するのも無理はないー。
でも、信じて貰わないといけない。
宗平(萌々香)が、そう思いながら
自分の個人情報を口にしようとする。
しかしー…
背後から悲鳴が聞こえたー。
「ーー!?」
宗平(萌々香)が振り返ると、
そこには近所のおばさんの姿ー。
「ーあ、あなたー…に、ニュースでやってたー…?」
震えながらそう言葉を口にするおばさんを見て、
宗平(萌々香)は必死に「ち、違うんです!」と叫ぶー。
けれど、
騒ぎはどんどん大きくなっていきー…
親にこのことを伝えるどころではなくなってしまった
宗平(萌々香)は
やむを得ず、近くの雑木林に飛び込んだー
”どうしようー…どうしようー…”
逃亡犯になってしまった萌々香ー
女子大生の身体を手にした宗平ー。
二人の黒き入れ替わりは幕を開けたばかりだったー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
女子大生と凶悪犯…!
最悪な組み合わせの入れ替わりですネ~!
この先もぜひ楽しんでくださいネ~!!
今日もありがとうございました~!★!

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