”蚊に刺されたくない”
毎年のように、よく蚊に刺される彼は
そんな愚痴をこぼしていたー。
そんなある日、
”蚊に刺されない”彼女と入れ替わってしまいー?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あ~くそ…かゆいー」
関口 雅夫(せきぐち まさお)が、
不満そうにそう言葉を口にするー。
社会人2年目の雅夫は、
大学時代からの彼女である村木 麻耶(むらき まや)と
同居しながら、仕事もそれなりに順調な日々を送っていたー。
がー、二人ともちょうど同じタイミングで
1週間ほどの夏休みに突入した今日ー、
雅夫は苦しんでいたー。
”蚊に刺されたことによる「かゆみ」”にー
「あー、くそくそくそー
なんで俺は蚊にこんなに刺されるんだろうなー…?」
戸惑いの表情を浮かべながら、雅夫は
蚊に刺されて赤くなった部分を掻きむしりながら、
そう言葉を口にするー。
そんな様子を見ていた彼女の麻耶は
「これ塗ったらー?」と、心配そうにそう言葉を口にしながら、
虫さされのかゆみに効く薬を手渡しつつ、雅夫のほうを見つめるー。
「あ、あぁーありがとうー」
雅夫は、薬を塗ってヒリヒリしているのか、
少し耐えるような表情を浮かべると、
「ーそれにしても逆に、麻耶は全然、蚊に刺されないよなぁ」と、
苦笑いしながら言うー。
「ーう~ん、確かにわたしは全然、蚊に刺されないよねー」
麻耶も、自分で蚊に刺されにくいことを自覚しているのか、
少し申し訳なさそうに言葉を口にすると、
雅夫を元気づけるためか、
「ーーでも、それだけ人気者ってことじゃないー?」と、
冗談めいた口調で言葉を口にしたー
「か…蚊の人気者になっても嬉しくないなぁ~」
思わず笑いながら雅夫はそう言葉を口にするー。
「あ~~こうなったらー」
雅夫はそう呟くと、思い出したかのように、
大学時代に麻耶を含む、大学の仲間たちと
卒業旅行に行った際に立ち寄った神社で購入した
”願いが叶うお守り”に向かって、
「ーー蚊に刺されにくい身体が手に入りますようにー」
「ーー蚊に刺されにくい身体が手に入りますようにー」
と、何度も何度もそう言葉を口にし始めるー。
「ーあははー
そんなこと言ってると、
明日の朝には、身体がロボットになってるかもよ~?」
麻耶が笑いながらそう言うと、
雅夫は「それはそれで色々楽しそうだな」と、笑いながら
再び、お守りに対して
”蚊に刺されにくい身体が手に入りますように”と
何度も何度もお願いをし始めたー。
がー、その翌日ー
「ーーえぇぇぇぇ…?」
朝、目を覚まして自分の身体に異変を感じた雅夫は、
慌てて鏡の前にやってきて、
呆然と”自分の姿”を見つめていたー。
何故ならー、
朝、起きたら自分の身体が
彼女の麻耶の身体になっていたからだー
「え…な、なんだこれー…」
呆然とする麻耶(雅夫)ー
目が覚めた時には、自分は麻耶のベッドの方で眠っていて、
”えっ!?”と、寝るベッドを間違えてしまったかな?だとか、
そんなことを考えていたものの、
すぐに、髪に手が触れて、自分が”麻耶”そのものになってしまっていることに気付いたー。
驚いて隣のベッドを見ると、
そこには”雅夫”ー、自分自身の姿がー。
まだ、”雅夫”は眠っているものの、
自分が麻耶になっているということは、恐らくはー…
「ーー~~~~~」
麻耶(雅夫)は、鏡で麻耶の姿になっている自分を見つめながら
ドキドキしていたもののー、
既にそれなりの時間、一緒にいるからか、
”変なことをしよう”ということが頭に浮かぶよりも前に、
”え?麻耶は大丈夫かー?”と、そっちの方が心配になってしまったー。
自分が麻耶の身体になっているからと言って、
麻耶が雅夫の身体に入っているとは限らないー。
最悪の場合、”麻耶の中身はどこに!?”なんて展開に
なってしまう可能性も否定はできないからだー。
「ーーーま、麻耶ー?麻耶だよなー?」
麻耶(雅夫)は、自分の口から麻耶の声が出ている状況に
戸惑いの表情を浮かべながらも、
”雅夫”を起こそうと声をかけるー。
「ーーーう、う~ん…」
ようやく目を覚ました”雅夫”ー。
ひとまず、”自分の身体は昏睡状態で、自分の魂は麻耶に入ってしまった”
みたいな状況でなかったことに安堵するー。
そしてーー
「ーーー…おはようー?」
”雅夫”が、そう言葉を口にしながら、麻耶(雅夫)の方を見つめたー。
このあとの”雅夫”の反応次第で、この先取るべき行動も
色々変わって来るー。
ゴクリ、と唾を飲み込みながら、
麻耶(雅夫)はー、
「ーーあのーー…ま、麻耶ーーだよな?」と、
緊張した様子でそう言葉を口にすると、
まだ寝ぼけているのか、自分の身体が雅夫になったことにも、
目の前に自分自身がいることにも、あまりリアクションを示さない様子のまま
「ーーま…麻耶だけどー?」と、
そう言葉を口にしたーー。
それから10秒ちょっとしてからー、
ようやく麻耶も身体が入れ替わってしまっていることに気付いたのか、
戸惑いの声を上げるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーちょうど夏休み中だから、仕事は大丈夫だけどー
いったい、どうしてこんなことにー?」
雅夫になった麻耶が、
混乱した様子で自分の身体を見つめると、
麻耶(雅夫)は、少し青ざめた様子で、
昨日、”蚊に刺されにくい身体が手に入りますように”と、
お願いしたお守りのほうを見つめるー。
「ーーひょっとして、昨日、俺がお願いしたせいじゃー?」
不安そうに呟く麻耶(雅夫)ー
雅夫(麻耶)は「まさかぁ~」と、笑いながら
昨日、”雅夫”がお願いしていたお守りのほうを見つめるー。
そんな話題を口にしていたら、
”雅夫の身体”の蚊に刺された場所のかゆみを思い出して、
途端にかゆくなって来たー。
「ーー…か、かゆいねー…蚊に刺された場所ってー」
雅夫(麻耶)が、戸惑いの表情を浮かべながら
そう呟くと、
麻耶(雅夫)も「ごめんなー俺の身体になっちまって」と、
そう言葉を口にしながら、
かゆみに苦しんでいる雅夫(麻耶)を見つめるー。
「ーううんーそんなことは気にしなくていいよー
せっかくなんだし、かゆくないわたしの身体で
少しぐらい休んだらー?」
雅夫(麻耶)がそこまで言葉を口にすると、
ふと、苦笑いをするー。
「ーー雅夫の身体でいつもの喋り方をすると、
なんだかちょっと気味悪いねー」
とー。
「ーーははー…確かにー
麻耶の身体もそうだけどー
中身が違うと、変な感じだよなー」
麻耶(雅夫)はそれだけ言うと、
「に、しても、やっぱ蚊のかゆみがないって楽だな~」と、
嬉しそうに笑うー。
「ーーふふ、それならよかったー」
雅夫(麻耶)はそう言いながら、蚊に刺されている場所を
少しだけかくと、
腕を見つめながら、「雅夫の腕ー…っていうか、男の人の腕って
やっぱりなんかこうーー…立派だよねー」と、
そう言葉を口にするー。
「ん?えーーそ、そうかぁ?
別に俺、筋肉質とかじゃないし、
鍛えられた腕って感じじゃないけどー」
そう言いつつ、麻耶(雅夫)は、今は一時的に自分の腕である
”麻耶の腕”を見つめて、
少しだけドキドキするー
「あー、不便だったらごめんねー?
雅夫と比べたらわたし、全然力もないと思うからー」
雅夫(麻耶)は少し申し訳なさそうにそう呟くー。
「いやいや、蚊に刺されないだけで十分幸せだよ!」
あくまでも、蚊に刺されにくくなったことを喜ぶ麻耶(雅夫)ー。
「ーーそれで、元に戻るためにはどうしたらいいのかなー?」
雅夫(麻耶)がそう言葉を口にすると、
麻耶(雅夫)は「そりゃ当然、あのお守りのせいで入れ替わったんだから
もう一度お願いすりゃ、元には戻れるだろ」と、
楽観的な言葉を口にするー。
「ホントに、あのお守りの力で入れ替わったのー?」
少し不安そうな雅夫(麻耶)ー
その言葉に、麻耶(雅夫)も少しだけ不安そうな表情を
浮かべつつも、
「あれに、蚊に刺されにくい身体が~ってお願いしたぐらいしか
思い当たることがないしー」と、
昨日の行動を振り返りながら、そう呟くー。
「ーま、まぁ、確かにそうだねー」
雅夫(麻耶)はそう言うと、
「でも、これで蚊に刺されにくくなって良かったね!」と、
笑いながらそう呟くー。
「ーはははーこういう風になるつもりでお願いしたんじゃないしー、
すぐ元に戻ーー」
麻耶(雅夫)が申し訳なさそうに言うー。
これじゃ、彼女の身体を奪おうとして
お守りに入れ替わりをお願いしたような、
そんな状況になってしまっているー。
「ーあははー、そんな気にしなくてもいいのにー
今はどうせ夏休みだし、数日ぐらいこのままでもわたしは大丈夫だよー?」
案外乗り気の雅夫(麻耶)ー。
「そ、そ、そうかー?」
麻耶(雅夫)は少しだけ戸惑うような表情を浮かべつつも、
「な、ならー」と、数日間だけ麻耶の姿で過ごすことにするのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
二人は”元々予定していた”通り、
夏休みの期間中を生かして、計画していた1泊2日の旅行に出かけたー。
旅行前に元に戻るか?と、提案したものの、
麻耶が”わたしと、雅夫だけの旅行だし、別にこのままでも平気だから、
せっかくだし、このまま行こうよ”と、入れ替わったまま旅行に行くことになったー
がー、その最中、立ち寄った場所には”蚊”が
ウヨウヨとしていて、麻耶(雅夫)は、蚊から逃げ惑いつつも、
「い、い、今の俺の血は美味しくないからな!」と、
蚊に刺されない麻耶の身体になったことで、
ちょっとだけ得意気な表情でそんな宣言をしていたー。
がー、しかしー
「~~~~~~~~」
宿に到着した麻耶(雅夫)は「かゆい!!!!」と、そう叫んだー。
蚊に刺されない麻耶と入れ替わったのに、
何故か麻耶(雅夫)が蚊に刺されて、
雅夫(麻耶)は、蚊に全く刺されなかったー。
「ーーくっそ~…まさか、蚊に刺されやすいところまで
入れ替わったのかー?」
苦笑いする麻耶(雅夫)ー
雅夫(麻耶)は、戸惑いながら笑うと、
麻耶(雅夫)は「ー俺の魂と蚊の間には、切っても切れない縁があるってことかー」と
自虐的に笑いながら、そんな言葉を口にしたー。
そしてー
結局、翌日も麻耶(雅夫)だけが蚊に刺されてしまいー、
どういうことなのか、
その日以降、雅夫になった麻耶は蚊に刺されず、
麻耶になった雅夫は、蚊に刺され続けるのだったー。
どうやらー、身体以外に刺されやすい原因が、
あるのかもしれないー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
「ごめんー麻耶の身体なのにー
こんなに蚊に刺されちゃってー」
申し訳なさそうに麻耶(雅夫)が言うと、
雅夫(麻耶)は「う~ん、でも、ほら、
たまにはわたしがかゆみを代わってあげられるなら
それはそれでいいしー」と、
元に戻れば、蚊に刺されたのは麻耶の身体だから、
かゆみを代わってあげられる、と、そう言葉を口にするー。
「ま、まぁー…でも、なんか、ごめんー」
麻耶(雅夫)がそう言うと、
雅夫(麻耶)は「それより一昨日のー」と、
旅行中の宿での夜の出来事を、楽しそうに振り返り始めるー
「~~~~い、いや、その話はやめよう」
麻耶(雅夫)は恥ずかしそうにそう言うと、
気を取り直して、
「じゃあ、お守りにお願いするよー」
と、明日の朝、元に戻っている状況にするため、
お守りに”身体を元に戻してください”と、そうお願いするー。
明日を含めて、夏休みはあと2日ー
余裕を持って、元に戻っておきたいー。
お守りにお願いし終えると「じゃ、おやすみー」と、
二人はそのまま眠りにつくのだったー。
がーーー
その翌日ーーー
「ーーー戻ってない!?」
「ーー!!」
麻耶(雅夫)と雅夫(麻耶)が声を上げるー。
「ど、どうして!?お守りに昨日、ちゃんとお願いしたのに!?」
麻耶(雅夫)がそう言葉を口にすると、
雅夫(麻耶)は「やっぱり、入れ替わった原因、お守りじゃないんじゃー?」と、
心配そうに言葉を口にするー。
予想外の”元に戻ることができていない”現状に戸惑う二人ー。
そして、二人は結局、元に戻ることができないまま
夏休み明けを迎えてしまうのだったー
おわり
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コメント
入れ替わっても、蚊から逃れることができない~!
そんなお話でした~!!
(蚊でかゆかゆしてる時に思いついた作品デス~笑)
改めて、8月もよろしくお願いします~!!
★作品一覧★

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