<憑依>病院嫌いの彼女

同居している彼女は”大の病院嫌い”だったー。

そんな彼女が、昨日から”体調が悪い”と言い始めて
心配していた彼氏ー。

それでも病院に行かないと言い張る彼女を見かねた彼は
”小さい頃”に手に入れて使わずに持っていた
”憑依薬”を使うことを決断する…!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

彼女の鈴原 紀香(すずはら のりか)は、
大の病院嫌いだったー。

がー、昨日から紀香は頭痛が酷いらしく、
翌日の今日になってもそれが収まらずに、
めまいもする…と言い出したために、
同居している彼氏の、奥島 治樹(おくじま はるき)は、
心配な気持ちでいっぱいになっていたー。

現在、二人は社会人2年目ー。
社会人生活に慣れたらお互いに結婚しようと約束していて、
その約束通り、来年ぐらいを目途に結婚しようと、
そんな約束もするほどに、順調な同棲生活を送っていたー。

「ーーー大丈夫ー。大丈夫だからー」
紀香が面倒臭そうにそんな言葉を口にするー。

しかし、それでも彼氏の治樹は心配そうに紀香を見つめるー。

「ーやっぱり、1回病院行ったほうがいいってー
 普段、紀香は頭痛持ちじゃないんだし、
 そんなにぐったりするような感じだと、
 診察受けた方がいいよー」

治樹は心底心配そうにしながら、そんな言葉を口にするー。

けれどー、それでも紀香は病院に行こうとしなかったー。

「ー大丈夫ー寝てれば落ち着くからー」
そう呟きながらも、とても大丈夫そうには見えない紀香ー。

紀香は、”大の病院嫌い”だったー。
その病院嫌いっぷりは、紀香の両親も困り果てているぐらいで、
治樹も同居をする際に、紀香の父親から、
”紀香は病院嫌いだからなぁ~”などと伝えられていて、
”もしも何かあったら、気絶させてでも連れていってくれ”と
半分冗談で言われていたほどだー。

「ーーーあー」
飲み物を飲もうとして掴んだコップを落としてしまった紀香ー。

たまたま、コップを落としただけかもしれないー。
が、手がしびれているのはないかと心配になってしまった
治樹は「ー病院に行こうー。俺が車で送っていくからー」と、
そう声を上げるー。

「ーイヤだ!!絶対に病院は行きたくないの!」
紀香が目に涙を浮かべながら言うー。

普段は穏やかで、
相手の言う事にも耳を傾けるタイプの性格の持ち主である紀香ー。

が、病院のことになると、
紀香は人が変わったかのように、
”絶対に行かない”の一点張りで困ってしまうー。

「ー何かあってからじゃ遅いし、病院に行ったほうがいい!」
治樹がなおもそう言葉をかけるー。

しかし、紀香は「大丈夫って言ってるじゃん!」と、
泣きそうになりながら、あくまでも病院に行くことを
拒否するのだったー。

「ーーーー」
治樹は、紀香の説得を一旦は諦めて、
自分の部屋に戻ると
”早く紀香を病院に行かせないとー”と、そんな風に思うー。

明らかに”おかしい”状態ー。
普段、紀香は頭痛持ちじゃないし、
かと言って”風邪”のようにも見えないー。

加えて、さっき、コップを落としたあとから
紀香は手を何度も気にしているー。
もしかしたらしびれが出ていたり、
思うように動かせないのかもしれないー。

「ーーこのままじゃー…」
このままでは、紀香は死んでしまうかもしれないー。
そんな不安に襲われる治樹ー。

とは言え、紀香を力づくで病院に連れて行くのも難しいー。
しかし、紀香の病院嫌いはあまりにも深く、
このまま説得を続けるのも難しいー

「考えろー…何かー、何か方法はー」
険しい表情を浮かべながら、治樹はひたすら考えたー。

”紀香”を病院に連れて行く方法はないか、とー。

そしてー

「ーーーーーーー!!!!!」
治樹はハッとした様子で目を見開いて立ち上がると、
「あったー…!いけるかもしれないー」と、
そんな風に言葉を口にして、
机の引き出しを開けるー。

机の引き出しの奥底から、治樹が取り出したのはー、
小さい頃”転校した親友”から貰った不思議な薬ー。

その親友は”祖父”が変な発明ばかりをしていて、
よく、不思議なものをくれたりしていたー。

彼が”転校”した際にくれたのがこの”憑依薬”だー。

彼によれば”他人に憑依することができる薬”で、
1時間だけ、他の人の身体を好きに操ることが
できるのだと、そう言っていたー。

が、他人の身体を乗っ取るなどということが
本当にできるとは思っていなかったしー、
仮に本当にできたとしても、
そういうことを勝手にしてしまうのはよくない、と
そう思っていたために、貰った”憑依薬”は使わずに、
その親友との”大切な思い出”として
ずっと手元に保管していたのだー。

しかしー今ー
治樹はその”憑依薬”のことを思い出して、
あることを考えていたー。

これを使って紀香に”憑依”すれば、
紀香を病院に行かせることができるかもしれないー、と。

この憑依薬で本当に”憑依”などということが
できるのかどうかは分からなかったし、
仮にできるのだとしても、もうかなりの時間が経過しているため
腐っているかもしれないー。

それにー、紀香に後で何て言おうか、という点も問題ではあるー

がー、
部屋の外の紀香の様子を見ると、かなり調子が悪そうに見える上に、
さっきから片方の手を使おうとしないー。
しびれているか、何か問題が起きているけれど、
そう言うと”病院に行こう”と言われるから、
意地になって黙っているのかもしれない、と、そんな不安が膨らんでいくー。

「ーーー紀香を助けられるならー」
もう迷っている時間はないー。
悩んでいる時間もないー。

治樹は意を決して、”憑依薬”を口に運ぶと、
自分自身の身体の感覚が抜けていきー、
気付いた時には”透明”の状態になっていたー。

「ーーす、すげぇー…」
自分の身体から幽体離脱する感じではなく、
自分自身がそのまま幽霊になるような感じー。

その感じに驚きながらも、治樹は”よし”と、声を上げると、
そのままリビングの方にいる紀香の方に戻って行くー。

紀香はー、リビングに足を踏み入れても反応しなかったー。
”透明”になった治樹のことが見えていないのだろうー。

「ーー紀香、ごめんなー
 でも、俺、紀香に死んでほしくないんだー

 あとで、文句ならたっぷり聞くからー。
 だから、許してくれー」

そんな謝罪の言葉を口にしながら、紀香に自分の身体を
重ねる治樹ー。

すると、紀香は「うっ」と震えて、
身体の感覚がなくなっていた治樹に、”身体の感覚”が戻って来たー。

「ーーー!!」
自分の”手”を確認する治樹ー。

色白な綺麗な手がその視界に入ると同時に、
髪や、胸の膨らみが見えてドキッとしてしまうー。

「ほ、ホントに紀香になってるー」
紀香の声でそう言葉を口にすると、
またそれに”ドキッ”としてしまう治樹ー。

が、ドキッとすると同時に、左手の強いしびれに気付くー。

「おいー…の、紀香ー
 こんな状態で我慢してたなんてー」

紀香の身体に憑依したことによって、
紀香の身体が”現在置かれている状況”が嫌というほど伝わって来たー。

想像以上に”良くない”状態で、
紀香の左手は感覚がなくなっている状態ー。

しかも、頭痛も想像以上にきつい状態だったー。

「絶対ー…やばいだろー」
紀香の身体でそう言葉を口にすると、
”憑依時間は1時間”と、時計を確認してから
「救急車を呼ぼう」と、そう言葉を口にするー。

が、スマホを手に、電話を掛けようとしたものの、
突然、救急車を呼ぶ番号が分からなくなってしまったー

「ーーーー…くそっ!」
紀香の身体で声を荒げる治樹ー。

”紀香の脳”に異常が起きているー。
そう確信せざるを得なかったー。

幸い、病院はそう遠くはないー。

どうしても、病院の電話番号を思い出せなくなってしまいー、
しかも、スマホを使って検索すればすぐに出て来るー、というところにも
考えが及ばず、やむを得ず、紀香は家を飛び出したー。

”ーー紀香の脳を使っているからかー…
 全然、思い出せねぇー…”

絶対に普通の状態ではないー。
早く、紀香を病院に到着させないとー、
そう思いつつ、外を移動し始めるー。

がー、
スカートで外を歩く感覚にドキッとしてしまうー。

「~~~~~こ、これがー…」
紀香は少し顔を赤らめながら、自分の身体を見下ろすー。

紀香に憑依して、必死だったために
そんなこと、すぐには考える暇もなかったものの、
よく考えると、”女の身体に憑依している”というこの状態はー、
治樹にとっては、とてもドキドキする状態ー。

勿論、紀香の身体で”悪いこと”をしたりするつもりは
毛頭ないけれど、どうしても、
ドキドキせずにはいられない状態だったー。

「ーーー…ーーーーそ、そういえば俺、今、紀香の声で
 喋れるんだよなー…」

自分の口から”紀香”の声が出ていることも
改めて実感する治樹ー。

さらに、ドキドキは高まっていくー。

「ーーー…~~」
今、自分の身体には”胸”があるー
男では決して味わうことのできない状況ー。

ゴクリ、と唾を飲み込む紀香ー。

「ーーーい、いや…だ、だめだだめだー」
渡ろうとしていた横断歩道の信号が青になったことで、
欲望に飲み込まれそうになった自分を何とか自制して、
そのまま病院へと向かって歩き始めるー

「ーーーよし、病院も見えて来たなー」
紀香は、病院が視界の先に見えて来たことに安堵しながら
歩いていると、再び横断歩道で赤信号になったのを見て、
表情を曇らせたー。

そしてー、
紀香は再び自分の胸の膨らみを服の上から見つめるー。

「ーーー…す、少しぐらいならーい、いいよなー?」
ゴクリと唾を飲み込む紀香ー。

ここの信号は確かなかなか青にならないー。

そんな風に思いながら、一旦路地の方に身を隠すと、
そのまま、紀香の胸を触り始めたー。

「ーーうぁ…こ、こんな感じなのかー…えへー…」
紀香は思わずニヤニヤしてしまうー。

”触られる側”を体験するのはこれが初めてだー。
だからこそ、治樹からしてみればその感覚は新鮮で、
とてもゾクゾクしたー。

「えへっ…やべぇ…想像以上に気持ちいいー」
紀香が普段、どう思っているかは知らないものの
少なくとも、治樹にとっては
”人生で初めて体験する揉まれる感覚”は
とても気持ちよくー、興奮せずにはいられないものだったー。

「へ…へへへー」
ついつい胸を夢中になって揉んでしまう紀香ー。

「ーへへへ♡ すげぇ…へへへへへへ♡」
下品な笑みを浮かべてしまう紀香ー。

治樹はー、”本来”ー
こんなことをするタイプの人間ではないー。

仮に”紀香”に憑依したとしても、
一直線に病院を目指し、
少なくとも、紀香本人の意思を無視して、
胸を揉むことなどなかったはずだー。

しかしー、
今はー…”紀香の脳”が、正常に思考できない状況に
陥っていて、救急車を呼ぶための電話番号も
思い出せない状態ー。

分かることと、どうしても分からないことが入り乱れて、
そんな紀香に憑依した治樹にも異常が生じていたー。

本能を抑えるだけの理性も失われていて、
夢中になって胸を揉む紀香ー。

どんどん興奮だけが強まっていき、
「へへー」と、顔を真っ赤にしていた紀香は、
あまりにも”興奮”しすぎたことによってー、
異常が生じていた脳に刺激を与えてしまったー。

そしてーーー

「ーーーーぁ…」
紀香は突然、身体全身が言うことを聞かなくなってしまったのを感じて、
その場に座り込むー

「ーーぁ…やばいー…びょういん…」
病院に行くという本来の目的を思い出した紀香に憑依している治樹ー。

しかし、紀香はその場で気を失い、倒れ込んでしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

通行人が、鈴原 紀香を発見したのはー、
10分後のことだったー。

交差点から裏路地に隠れて胸を揉んでいたため、
発見が遅れてしまったのだー。

そしてー…
紀香は助からなかったー。

一刻も早く診察を受けるべき、脳の異変が生じていて、
手遅れになってしまったのだー。

治樹が憑依した後、紀香を興奮させてしまったことも、
紀香の脳が”限界”を迎える時間を早めてしまったー。

結果的にーー
紀香もー、そして、憑依している状態のまま
その身体が死亡してしまったことで治樹もー、
”帰らぬ人”となってしまったのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

1話完結のバッドエンドモノでした~…!

もっと早く、本人が病院に行くと言ってくれていれば…
二人とも無事だったかもしれませんネ~…!

お読み下さり、ありがとうございました~!★!

作品一覧

PR
小説

コメント