<憑依>ログインボーナス①~アプリ~

”憑依アプリ”を見つけた彼ー。

彼は”一度だけ”のつもりで、
自分の好きな子に憑依したー。

しかし、彼は”憑依アプリ”の
「ログインボーナス」の存在を知ってしまいー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ー憑依アプリー…?なんだこれー?」
男子高校生の杉沼 優斗(すぎぬま ゆうと)は、
スマホを見つめながら、そんな言葉を口にしたー。

その画面には”憑依アプリ”と表示されているー。
名前の通り、”他人に憑依することができるアプリ”で、
このアプリを起動した状態で、スマホを憑依したい相手に向けると、
その相手に”憑依”することができる、というものだー。

ネットで調べ事をしていた優斗は、
そんなアプリを偶然見つけてしまったのだー。

「ーははははー、憑依なんて、そんなことできるわけないじゃないか」
優斗は思わず笑ってしまうー。

パソコンで恋愛アドベンチャーゲームを遊びながら
そのゲームの攻略方法をスマホで確認しようとしていた優斗ー。

その最中に見つけた憑依アプリー。

「ーーーーーーーーーー」
最初は”そんなことあり得ない”と笑い飛ばしながら
すぐにゲームの攻略法を再び検索し始めたもののー、
数分後ー、優斗は再び”憑依アプリ”の説明ページを見つめていたー。

”もしも、これが本当ならー…”

そんなことを思った優斗が、思わず笑みを浮かべるー。
優斗にはー、好きな子がいるー。
同じ図書委員として活動しているクラスメイト・奥村 尚美(おくむら なおみ)ー。

もし、この憑依アプリが”本物”なら、
”奥村さんに憑依できる”ー
そんなことを、考えてしまい、それを妄想してしまうー。

”僕が、奥村さんの身体になって、奥村さんの声で喋ったりー…
 あんなことやこんなこともーー!?”

”尚美”となって、尚美の身体を動かしている想像をしただけで
ドキドキして、ニヤニヤしてしまうー。

そんな中ー、
「ーーねぇ、そういえば、さっきなんか届いてたよー」
ふいに、声が聞こえたー。

「ーー!?」
ニヤニヤしながら、”妄想”していた優斗は
ドキッとして振り返ると、
1歳年下で同じく高校生の妹・杉沼 麗奈(すぎぬま れな)の姿があったー。

麗奈がネットショップから届いたプチプチつきの封筒を手に、
優斗のほうを見つめているー。

「ーーえっ…あー頼んでたやつー。ありがとうー」
優斗が気を取り直して、そう言葉を口にしながら
麗奈から封筒を受け取ると、麗奈は少し不思議そうにしながら言うー。

「ーー今、なんかニヤニヤしてなかったー?」
とー。

「ーえっ……あ、いやー」
優斗は慌ててそう言葉を口にすると、
パソコンの画面に映っている、
今ちょうどプレイしている最中の恋愛アドベンチャーゲームのヒロインを指差すー。

「ーーほ、ほら、ロロちゃんが可愛くてー」
そんな優斗を見て、麗奈は不思議そうな表情を浮かべながら
「そういうキャラクターってさ、かわいい子でもイケメンでもそうだけど、
 ただの”絵”とかCGだよねー?」と、そう言葉を口にするー。

「ーーーい、いや、そ、そうだけどさー」
優斗は、”憑依アプリ”のことを誤魔化せたことに少し内心でホッとしながら
そう言葉を口にすると、
麗奈は「わたし、キャラクターに恋をするとか感情移入するとか分からないんだよねー」と、
それだけ言い放つー。

麗奈はとても可愛いものの、とても冷めている性格で、
何事も、現実的に考えるタイプー。

4歳ぐらいの頃だっただろうかー。
母親が”流れ星”を見かけて、そう言葉を口にすると、
「願い事なんて、叶わないもん」と、麗奈はそう言っていたし、
サンタクロースも、そのぐらいの年齢の時にはもう、
「ーっていうか、サンタさんっていないでしょ。
 靴下とか置いておいても意味ないし、臭いだけ」などとそう言っていたー。

麗奈は、とことん冷めているのだー。

「ーーは、ははははーそれでこそ麗奈ー」
優斗がそれだけ言うと「これ、ありがとう」と、
荷物をわざわざ部屋まで持ってきてくれたことのお礼を口にするー。

「別にーリビングにあると邪魔だったから持ってきただけだし」
そう言葉を口にしながら立ち去っていく麗奈ー。

一人、優斗はホッとすると、
”憑依アプリ”について書かれた説明を再び見つめて
また、ニヤニヤと笑みを浮かべ始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

ちょうど放課後の図書当番を尚美と一緒に
することになっていた優斗は、
いつものようにドキドキしながら、尚美と一緒に
図書当番の仕事をこなしていたー。

「ーーこれ、わたしが戻しておくねー」
返却された本を手に、尚美がそう言葉を口にして、
本棚にそれを戻しに行くー。

大人しい性格の尚美とは、
そこまで話は弾むことはないものの、
何でも気配りができる性格と、優しい振る舞いに、
優斗は、尚美に対して好意を抱いていたー。

「ーーーーーー」
そんな”奥村 尚美”になることができるー。

優斗は、憑依アプリを起動したスマホをこっそりと
握りしめながら、尚美の後ろ姿を見つめるー。

ドキドキが止まらないー。

けれどー、
”憑依される側”のことを考えると、
やっぱり、そんなことしちゃいけない、とも心の中で思うー。

”欲望”と”理性”の狭間で揺れる優斗ー。

もしも、本当に憑依できた場合ー、
憑依される側の尚美からすれば、とても怖い思いをすると思うー。

でもーー

”1回だけー…1回だけならー”
優斗は、そう思いながら本棚の整理をしている尚美のほうを見つめるー。

今日は、チャンスでもあるー。
放課後の図書当番は、最後に図書室の戸締りをするために、
尚美と”二人きり”になるのだー。

”憑依したあと”どうなるのかは分からないけれど、
例え、自分の身体が抜け殻になったとしても、
生徒たちを帰らせたあとの図書室ー…
”戸締り中のタイミング”であれば、問題はないー。

放課後の図書当番で尚美と一緒になる機会は
そう多くはないー。
”この場面”以外、尚美と二人きりになるようなタイミングもないー。

そう思った優斗は、”憑依アプリ”を起動して
本棚を整理している尚美の方に向けてしまうー。

”1回だけー1回だけだからー”
そう自分に言い聞かせながら、”憑依アプリ”に表示された
”憑依する”ボタンを押すと、優斗の意識は一瞬にしてはじけ飛んだー。

そしてー…

「ーーーー!」
一瞬にして、図書室のカウンターの方から、本棚の方に
”ワープ”したように感じたー

「ーーぁ」
手に持っていた本が、その場に落下して、
足元を慌てて見つめるとー、
優斗はすぐに”何が起きたのか”を理解したー。

下を向いた優斗の視界に入って来たのは、
スカートや胸の膨らみー、自分の視界に入る長い髪ー…

自分の身体では”あり得ないもの”ばかりだったからだー。

「ーーぼ、僕ーーほ、本当にー…?」
そう言葉を口にすると、口から出たのは”自分の声”ではなく、
優斗が好きな相手ー…
尚美の声ー。

「ーうわ……お、お、奥村さんの声だー…
 う、うわ…す、すごいー」
尚美になった優斗は、顔を真っ赤にしながら言葉を失うー。

そして、ゴクリと唾を飲み込むと、
「す、す、す…すぎー…杉沼くんのことー…す、好きー」と、
そう言葉を口にさせてみせたー

「ーー…はぁ…はぁ…す、すごいー
 ぜ、絶対に奥村さんが言わないことを…言わせることができるなんてー
 えへへへー」

尚美の顔は気づけば真っ赤になっていたー。

「ーーわたし…す、杉沼くんのことがずっとーずっと好きだったのー」
そう言葉を口にして、嬉しそうにその場で足をバタバタさせる尚美ー。

そんな言葉を何度か繰り返すと、やがて
「ってー、僕の身体はどうなってー」と、
”憑依アプリ”を使ったあとの自分の身体のことを思い出して、
優斗がいたカウンター側のほうを振り返るー。

尚美の身体を動かすたびに、いちいち髪が揺れる感覚に
「なんかすごい…」と、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、
カウンターの方に向かうと、椅子にもたれかかるようにして
優斗の身体がぐったりと意識を失った状態になっていたー。

「ーーーそっかー”憑依アプリ”を使うと、僕の身体は
 その場で意識を失うんだなー」
尚美は、そう言葉を口にすると、
元の自分ー…優斗の身体を見つめるー。

「ーよかったー…放課後の図書室で使ってー」
尚美は安堵の表情を浮かべるー。

憑依アプリを使った瞬間、自分の身体が幽霊みたいになって、
自分の身体ごと一旦消える…
そんな可能性もあったけれど、どうやら自分の身体は
その場に意識を失った状態で残るようだー。

使う場所を間違ったら、騒ぎになるところだったー。

「ーー…って、”僕”生きてるよなー?」
少しだけ不安になる尚美ー

試しに、自分の呼吸を確認するために
尚美の顔を、意識を失っている優斗の顔に近付けるー。

幸い、優斗の身体は呼吸はしていて、
ただ抜け殻になっているだけの状態のようだったー。

「ーーー…!」
ふと、「お、奥村さんの顔ー、僕の顔のすぐそばにー」と、
意識を失っている自分の顔のすぐそばに尚美の顔があることを
意識して、ドキドキしてしまうー。

やがて「ーーい、今なら…き、キスもできちゃうーってことかー?」と、
ドキドキしながらそう言葉を口にすると、
尚美はしばらく考えたあとに「ぼ、僕と奥村さんのキスー」と、
顔を真っ赤にしながら、”意識を失っている自分”に、
繰り返しキスをし始めたー。

「ーーはぁぁぁ…奥村さんとキスできるなんてー夢みたいだー」
興奮して、自分の身体を抱きしめながらうっとりとした表情を浮かべる尚美ー。

「ーーま…まぁ、い、今は”奥村さんの身体で僕とキスしてる”状態だけどー」
そう言葉を口にする尚美ー。

やがて、自分の身体から離れると、尚美の身体で
尚美に言わせたかった言葉を色々口にしたりー、
鏡を見ながら色々な表情を浮かべて見たりー、
恥ずかしそうにスカートを触ったり、色々なことを楽しんだー。

そしてーー

「ーーー…」
ゴクリ、と唾を飲み込むー。

尚美の身体で、さらにその先を楽しみたいー
そんな風にも思ったものの、既に憑依してから20分以上が経過しているー。

憑依アプリには”制限時間”のようなものが表示されていて、
優斗のスマホには、あと10分ほどであるという表示が出ているー。

「ーーそ、それにーこれ以上やったらーー
 奥村さんにも気づかれちゃうかもしれないしなー…」
尚美はそれだけ言葉を口にすると、
少し躊躇してから「ここまでにしておこう」と、そう言葉を口にすると、
”憑依アプリ”の解除ボタンを押したー。

「ーーー!」
その瞬間、尚美がその場で失神して倒れ込んで、
優斗は自分の身体へと戻るー。

”憑依されている間の記憶は補正されて、自分は寝落ちしていた”
そういう風になると、説明には書かれていたはずだー。

優斗は失神したままの尚美を見て、
少し戸惑うも、
「ーさ、先に帰ったほうがいいかなー?」と、
尚美が目を覚ました時に自分が近くにいると、
何か気付かれちゃうかもしれない、とそんな不安を抱いて、
そのまま図書室を後にしたー。

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帰宅した優斗は、”あのまま帰っちゃって大丈夫だったかな”と
少し不安を抱きながらも、
”ま、まぁ、大丈夫だよねー”と、自分に言い聞かせながら
スマホを操作するー。

”憑依は1回きりー”
自分の中でそう決めていた優斗は”憑依アプリ”を操作して、
それを削除しようとし始めたー。

がー
その時だったー

”ログインボーナス”と画面に表示されていることに気付くー

”他人の身体に憑依(ログイン)するたびに新たな要素が解放される!!”と、
そんな説明文と共に表示された”ログインボーナス”画面ー。

1日1回ー、憑依する度に、他人の身体へのログインボーナスとして、
報酬が得られる仕組みのようだー。
同じ日に何回憑依しても、報酬は得られないものの、
明日、また誰かに憑依すれば、報酬が得られるようだー。

1日目の報酬は”憑依最大時間+5分”を表示されているー。
制限時間30分が、35分に伸びたようだー。

そしてー
この先の報酬を確認する画面が表示されるー

そこにはー

”自分の身体ごと霊体に変換して抜け殻を残さず憑依できるゴーストモードの解放”や、
”自分の身体と相手の身体を同時に操作できるダブルモードの解放”など、
豪華な報酬も表示されていたー

さらにーー

”憑依後、憑依した相手の思考や意識を改変できる”汚染モード”の解放”

そんなボーナスを見た優斗はあることに気付くー

”これを使えば、奥村さんに告白されることもできるんじゃー…?”
とー。

憑依アプリの”ログインボーナス”に気付いてしまった優斗は
笑みを浮かべると、憑依アプリを削除する手を止めてーー…
やがて、欲望に満ちた笑みを浮かべたー

②へ続く

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コメント

使えば使うほど、機能が充実していく憑依アプリ…!

色々使い道がありそうですネ~!!

続きはまた明日デス~!!