サキュバスに身体を奪われてしまった勇者ー。
大切なものが壊されていく中ー、
サキュバスになってしまった勇者は何とか”自分”を
止めようとするー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー勇者が、魔王の手下と一緒にいるぞー!!!」
リリア(アルヴィン)が大声で叫ぶー
”リリアの声”だったものの、姿を見せずに叫べば問題はないー。
城下町の住人たちが、
その声を聞きつけて、
アルヴィン(リリア)と、魔王軍3大幹部の一人、
魔界呪術師アリスが一緒にいる場に駆け付けるー。
「ーーーやばっ」
小柄な小悪魔風の容姿のアリスが気まずそうに笑うー。
「ーー勇者めー…」
アルヴィン(リリア)は小声でそう言葉を口にすると、
城下町の住人たちが、どよめきを見せたー。
「ーーー」
その様子を物陰から見つめるリリア(アルヴィン)ー。
”俺はこれで裏切者扱いされるかもしれないー
でもー、それでもいいー。平和を守るためならーそれでいいんだー”
リリア(アルヴィン)は、”自分の身体”が汚名を着せられてもいいー、と、
そう思いながらその光景を見守るー。
「ーーねぇ、どうするの?あたしがーー」
魔界呪術師のアリスが、隣にいるアルヴィン(リリア)のほうを見つめながら言うー。
がー、その時だったー。
「ー魔界呪術師アリス!城下町に侵入して何を企んでいた!」
アルヴィン(リリア)がそう叫んだー。
「ーえっ…」
魔界呪術師・アリスが表情を歪めるー。
そしてーーー
信じられないことに、アルヴィン(リリア)は、勇者の剣で、
仲間であるはずの魔界呪術師・アリスを一刀両断したー。
「ーーあ……な、なんで……」
アリスはそのままその場に崩れ落ちて消滅していくー。
「ーーみんなー騒がせてすまないー。
魔物が街に侵入していたけど、無事に退治したから、安心してくれ」
アルヴィン(リリア)がさわやかな笑顔を浮かべるー
アルヴィン(リリア)は、”入れ替わり”が発覚しないようにー、
魔物と通じていることを悟られないように、三大幹部の一人、アリスを
殺す決断をしたのだー。
”ーーくっ…あのサキュバスー…仲間をー”
リリア(アルヴィン)は、目論見が失敗したことに焦りを感じながら
そう呟くー。
「ーさすが勇者さま!」
「ー勇者さま!疑ってすまねぇ!」
「ーあの騒いだ女はどこに!?」
城下町の人々がそんな声を上げるー。
「ーーくそっーなんとか止めないとー」
”俺”を止めないとー…
リリア(アルヴィン)は、慣れない身体で王宮の方に向かうと、
王宮の裏側に回りーー…
死に物狂いで、女王・シャルロッテのいる女王の間にたどり着いたー。
「ーー!?!?」
女王・シャルロッテが驚きの表情を浮かべるー。
「ー姫様ー。今、ここにいる勇者は”勇者”じゃありませんー!
中身は、中身は魔王の側近のサキュバス・リリアですー」
リリア(アルヴィン)は、これ以上アイツを野放しにできない、と
危険を承知で、姫に直訴するー。
「ーー俺が勇者なんです!
魔王軍の何かの術で、俺とサキュバスの身体が入れ替わってしまってー
このままじゃ、騎士団も、王国もー、大変なことになりますー!
どうかー、どうか信じて下さい」
リリア(アルヴィン)がそう言葉を口にするー。
しかしー
”警戒心が強い”ことで有名な王国の宰相が、
シャルロッテに耳打ちをするー。
「ーーサキュバスは人を惑わす魔物ー耳を傾けてはなりませぬー
第1、魔術において、入れ替わりなど行うことができる魔術は
存在しておりませんー」
宰相はそう呟くー。
”魔王の始祖が残した禁忌のアイテム”による入れ替わりー。
その存在は魔王しか知らずー、
物知りな宰相が知らないのも無理はなかったー。
「ーー姫様!この者をどうしますかー?」
王宮警護を担う騎士団”コスモス”が、駆け付けて、そう叫ぶー。
「ーー捕えて下さいー」
女王・シャルロッテがそう命じるー。
「ーだ、ダメだ!俺に触れちゃだめだ!」
また”人間”を溶かしてしまうー。
リリア(アルヴィン)は騎士団に向かってそう叫びながら、
姫のほうを見つめるー。
「信じてくれ!俺が勇者なんだ!」
と、そう叫ぶリリア(アルヴィン)ー
「こんな姿だけど、俺が勇者なんだ!」
目の涙を浮かべながら叫ぶー。
それでも、
「ーーあなたは、勇者ではありませんー」と、
女王・シャルロッテはそう言葉を口にするー。
”勇者の剣”は、勇者の血筋にしか使えないー。
今のアルヴィンも、ちゃんと勇者の剣を振るっているとー、
女王シャルロッテは言うー。
しかし、入れ替わったことで”身体”は勇者であるアルヴィンは
中身がサキュバスでもそれを使えているだけー。
けれどー、ついに、リリア(アルヴィン)は信じてもらうことが
出来ずに、そのまま騎士たちを強行突破して、その場から逃亡したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”ルーメン海岸”ー。
アルヴィン(リリア)が流したニセ情報により
王宮騎士団の部隊の一つ”ローズ”が魔王軍の罠にはまり、
大乱戦が起きていたー。
「ーー遅いー。アリスのやつ、何をしているー?」
拳で騎士を撃破しながら、魔王軍三大幹部の最後の一人、魔界戦士ブロンが
表情を歪めるー。
「ーーー」
そんな中、そこにアルヴィン(リリア)も姿を現すー。
魔王デュランに、”やむを得ずアリスを殺した”ことを報告ー。
本来ここにブロンと共に来るはずだったアリスの代わりに、
アルヴィン(リリア)がこの場所にやってきいていたのだー。
「ーー俺も援護するー」
「ーおぉ、勇者さま!」
騎士団の副団長の声をかけたアルヴィン(リリア)ー。
がー、すぐに物陰に入ると、
副団長を突然、勇者の剣で斬り捨てて殺害するー。
人の血を浴びて、赤く染まっていく勇者の剣ー。
「ーふふー。人の血を吸う気分はどうかしらー?」
邪悪な笑みを浮かべるアルヴィン(リリア)ー。
”勇者”として騎士に接触し、一人一人斬り捨てていくー。
そんな行為を繰り返し、騎士団を全滅させようとするー。
しかしー
そこに、リリア(アルヴィン)が、姿を現したー。
「ーーあらー。”サキュバス”が何の用かしらー?」
クスッと笑うアルヴィン(リリア)ー。
リリア(アルヴィン)は息を切らしながら
「ー美貌だっかり磨いてないで、少しは運動しろよー」と、
リリアの身体でここまで走って来るのは大変だったー、とそう呟くー。
「ーーふふ それでーここに来てどうするつもり?
その身体じゃー、騎士たちの味方をしても、敵だと思われるだけー」
アルヴィン(リリア)がそう言うと、
「今はわたしがー、いいえ、”俺が”勇者なんだからー」と、笑みを浮かべるー。
「ーーーあぁ、そうだなー」
リリア(アルヴィン)は頷くー。
「ーーどうしたら”俺”を止められるかー
どうしたら、みんなを守れるか、色々考えたー。」
リリア(アルヴィン)は少し寂しそうに言うと、
騎士団と魔物たちの軍勢が激突する中、言葉を口にしたー。
「ーー俺は、王国と民を守るためー、
”俺”を殺すー」
とー。
「ー!」
アルヴィン(リリア)は少しだけ驚くー。
が、すぐに「わたしの身体じゃ、”勇者”には勝てない」と、
そう微笑むー。
「ーー今のお前の身体は、人間に触れただけで、人間を溶かすー」
リリア(アルヴィン)がそう言うとー、
アルヴィン(リリア)は「触れられなきゃ、問題ないわー」と、
そう言葉を口にしながら、勇者の剣を手にするー。
禁忌のアイテムは一度きりー。
それを知って”入れ替わった”リリアは、元自分を殺すことに躊躇はなかったー。
一方、それを知らないアルヴィンは”元に戻れるかもしれない可能性”状況で
”元自分”を殺すことを、これまで躊躇してきたーーー
けれどーーー
「ーーー”サキュバス”リリア!覚悟しろー!」
アルヴィン(リリア)は”わざと”そう宣言すると、
勇者の剣を持って襲い掛かって来たー。
”俺はー、平和のために俺を殺すー”
リリア(アルヴィン)はそう思いながら、”元自分”の身体に
触れようとするー。
けれどー、
”リリアの身体”では、”アルヴィンの身体”の動きに
ついていくのは難しかったー
「ーぐあっ!」
リリア(アルヴィン)が地面に叩きつけられるー。
アルヴィン(リリア)は嬉しそうに笑みを浮かべると
「ーこの剣ー、勇者に代々伝わる剣なんでしょ?」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーーーー」
リリア(アルヴィン)は悔しそうにアルヴィン(リリア)を見つめるー。
「ーーこの剣でねーー
守るべき人間を斬るとーー
とってもーーー素敵な気分になるのー」
アルヴィン(リリア)は勇者の剣を舐めながら笑うー。
そしてーー
それをリリア(アルヴィン)に向けたー。
「ー”本当の持ち主”の血もー
今から、この剣に吸わせてあげるー」
アルヴィン(リリア)が嬉しそうに笑うー。
リリア(アルヴィン)は死を覚悟するー。
”俺が死んだらーーー
王国はー、民たちはーー”
そう思いながらも、もう、反撃のチャンスはないー。
リリア(アルヴィン)は悔しそうにしながら、
「その剣がこれから吸う血は、”お前の血”だろー
この身体はお前のなんだからー」と、皮肉を口にしたー。
アルヴィン(リリア)は「減らず口ねー」と、そう言葉を口にすると、
そのまま、勇者の剣を振るおうとしたー。
がーーー
「ーーーー!?!?!?」
アルヴィン(リリア)は異変に気付いたー。
「ーーな…にーー?」
アルヴィン(リリア)の身体が動かないー。
”勇者の剣”が、まるで拒否反応を示すかのように、
赤い光を放ちながら、言うことを聞かないーー
勇者の剣がようやく所有者の異変に気付いたのかー、
”元勇者”を殺すことに拒否反応を示しているのかー、
人間の血を吸わせすぎたことで異変が起きたのかー、
あるいはー、”入れ替わった二人”が遭遇したことで何か異変が起きたのかー
それは、分からないー。
けれどーー
リリア(アルヴィン)はこのチャンスを逃さなかったー
仲間だったエヴァとヨゼフのことを思い出すー。
自分を信頼してくれた女王シャルロッテや、警戒しながらも運命を託してくれた宰相を思い出すー。
王国の人々を思い出すー。
そんなー、笑顔を守るためならー
もうー、守れない笑顔もあるけど、それでもー
「ーーー平和を守るためなら、俺は俺を殺すー!」
そう叫びながら、リリア(アルヴィン)は動けなくなったアルヴィン(リリア)の
腕を掴むー
「~~~~~~!」
リリアの制御できない魔力が、”アルヴィン”の身体をも腐敗させていくー
「ーーぅ…ぅ~~~~~~~…」
アルヴィン(リリア)が苦しそうにしながら、リリア(アルヴィン)を見つめるー
まるでー、”自分が苦しんでいる”ように見えて、
リリア(アルヴィン)は、手を放しそうになってしまうー。
それでもーーー
王国を守るため、リリア(アルヴィン)は手を放さなかったー。
アルヴィン(リリア)の目から涙のようなものが溢れ出すー
「ーーやめ……放せー…」
自分が泣いているように見えたー
”自分自身を殺す”ー
それは、思った以上に辛かったー。
”元・自分の身体”が助けを求めているように見えたー
殺さないでー、と言われているような気がした。
でもーー
リリア(アルヴィン)はその手を放さなかったー。
衰弱していく”俺”を見つめるー。
もう、2度と元には戻れないー。
もう、”俺”は勇者じゃないー。
やがてー、弱り切ったアルヴィン(リリア)が
その場に崩れ落ちるー。
「ーーーーぁ………ぐ…」
アルヴィン(リリア)が、何かに救いを求めるかのように
手を伸ばすー。
リリア(アルヴィン)はそんな、アルヴィン(リリア)を
見つめながら、
「ーー俺はもうアルヴィンじゃないー」と、そう言葉を口にすると、
アルヴィン(リリア)は瞳を震わせながらその場に倒れ込んで、
溶けるようにして消えてしまったー。
「ーーー」
残された勇者の剣を見つめるリリア(アルヴィン)ー
それに触れるもーーー
電流のようなものが走って痛みを感じると、
「ーーだよなー。俺はサキュバスだもんなー」と、
リリアの妖艶な身体を見下ろしながら、少しだけ寂しそうに
言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーほぅー。リリアは死んだかー」
魔王デュロンが、生き残った三大幹部の一人、魔界戦士ブロンから
報告を受けるー。
「ーーはっー。
勇者はリリアの身体のまま、行方を晦ましております」
ブロンがそう言うと、デュロンは「構わんー。あの身体では何もできはしない」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーーー」
魔界戦士ブロンは「はっ」と頭を下げてそのまま立ち去っていくー。
残された魔王デュロンは、少しだけ笑うと、
「ー忠実な女を失ったのは痛いがー、まぁ、”勇者の身体”を始末することができたー
ご苦労だったなリリア」と、悲しむ様子も見せずにそう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーー」
ローブのようなものを被り、その姿をほとんど隠した状態の女が、
とある森の中にやってくるー。
ここはー、”3人”で、以前、
”必ず魔王を倒す”と誓い合った場所ー。
「ーエヴァ…ヨゼフー…」
勇者の仲間だった二人を弔うために、手作りの墓の前で
手を合わせると、
その女ー…サキュバスのリリア(アルヴィン)は少しだけ寂しそうに笑うー。
「ーーー」
そして、ゆっくりとその場を離れるとリリア(アルヴィン)は
歩き出すー。
「ーー俺はもう勇者じゃないー」
そう呟くと、リリア(アルヴィン)は己の身体に未練を断ち切るかのように
言葉を続けるー
「わたしは、サキュバスー」
とー。
けれどーーー
「ー魔王を倒すのが、勇者じゃないといけないなんて決まってない」
リリア(アルヴィン)はそう言葉を口にすると、
魔王城のある方角を見つめたー。
魔王を倒すサキュバスがいたって、いいはずだー。
そう思いながら、リリア(アルヴィン)は
魔王の城を目指して歩き始めるのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~★
①のあとがきで書いた通り、
本作はリクエスト特典で、飛龍様から頂いたリクエストを元にした作品でした~★!
①でお約束したので、リクエストの原文をご紹介しますネ~!
頂いたリクエストの原文は~
・・・・・・
人間の王国と魔王が支配する魔物たちが戦ってる世界観で、
王国の勇者が魔王の部下のサキュバスに魔王の策略で体を入れ替えられてしまう。
勇者の体になったサキュバスは王国に戻り人間達の信頼を利用して勇者の振りをしつつ
情報を魔王に流したり人間側が不利になるような策を取る。サキュバスの体になった勇者は
人間達に自分こそが本物の勇者だと伝えようとするが、人間達からは魔物と見られて攻撃されてしまう。
サキュバスになった勇者は元の自分の体を倒してでも人々を守ろうと決意する。
結末についてじゃ元に戻らないエンドでお願います。
あと、入れ替わりは1回しか使えないマジックアイテムみたいな感じが良いかな。
あまり気軽に入れ替えられると、
「最初からそれやっとけよ」という話になってしまうので。
・・・・・・・
と、いうものでした~~★★!
ここから生まれたのが今回の物語ですネ~!!!
お読み下さった皆様にも、
飛龍様にも感謝デス~!
ありがとうございました~~!★!

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