魔王を倒すため、魔物たちとの戦いに身を投じる勇者ー。
勇者は、確実に魔王討伐に近付いていたー。
しかし、追い詰められつつあった魔王は
”禁忌のアイテム”を側近であるサキュバスに手渡したー。
それはー、”他人と身体を入れ替える”恐ろしいものだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー違う!俺の話を聞いてくれ!」
とある村ー。
一人の”サキュバス”がそう叫ぶー。
美しい容姿を持ちながらもー、
一目見て、”普通の人間”ではなく、魔物の仲間だと分かるー、
そんな妖艶な女が、村人たちに向かって必死に
そんな言葉を発しているー。
しかし、突然の”サキュバス”の出現に村人たちは
パニックになるー
悲鳴を上げて逃げ惑いー、
サキュバスの話を聞こうとする人間はいないー。
「ーー違う!!待ってくれ!違うんだー!」
妖艶な雰囲気を漂わせるような風貌なのにー、
サキュバスはその見た目から受けるイメージとは
まるで違う様子で、声を上げるー。
「ーーこ、こ、この村はやらせねぇぞー!」
そんな中ー、村人の一人が槍を手に、近付いて来るー。
「ーま、待ってくれ!ーみ、みんなを傷つけるつもりはないんだ!」
サキュバスはそう叫ぶー。
声にまで漂う妖艶な雰囲気ー。
けれど、発している内容は、見た目とも、声とも合わないー
なんだか冷静さを欠いたような、そんな言葉ー。
「ーう、嘘をつけ!騙されないぞ!
お前のことは知ってるー
魔王に仕えるサキュバスー…
リリア!」
村人がそう叫ぶと、
魔王の側近でもあるサキュバス”リリア”が、表情を曇らせるー。
「ち、違う!違うんだー!
見た目はー見た目は、サキュバスだけど、
俺はアルヴィンー…アルヴィンなんだ!」
サキュバス・リリアが、そう言葉を発するー。
アルヴィンとはーー
王国を守るために立ち上がった”勇者”の青年ー。
サキュバスのリリアは、自分がそのアルヴィンだと名乗り、
村人に迫っているー。
「ーふ、ふ、ふ、ふざけるな!
勇者様は、お前のような、そんな格好をしてないしー
そもそも男だぞ!」
村人が槍を向けたまま叫ぶー。
「ーーこ、このサキュバスに身体を”入れ替えられて”ー、
い、今、城下町にいる”アルヴィン”は俺じゃないんだ!
信じてくれ!」
サキュバス・リリアはそう叫ぶー。
そうー
魔王の側近の一人でもあるサキュバスのリリアと、
勇者のアルヴィンは、魔王の策略により、
身体を入れ替えられてしまっていたー。
今、ここにいるサキュバスのリリアの中身は
勇者のアルヴィンー。
そしてーーー
”魔王との最終決戦のため、万全の準備を整えたい”という理由で
一度王宮に帰還した勇者・アルヴィンの中身は
サキュバスのリリアー。
このままでは、大変なことになるー。
そう思ったリリア(アルヴィン)は、近場の村に駆け込み、
危機を伝えようとしたー。
けれど、結果はこれだー。
「ーうるさい!人を惑わす悪女め!」
槍を手に、村人がそれをリリア(アルヴィン)に向かって振るうー。
必死に槍を押さえながら、
自分の身を守るために村人の腕を掴むー。
「信じてくれ!俺が勇者なんだ!」
サキュバス・リリアがそう叫ぶー。
けれどーー
「うっ… ぁっ… ぁああああっ」
「ーー!?」
苦しそうに声を上げた村人を見て、
リリア(アルヴィン)は表情を歪めるー。
”リリア”の手から紫色の魔力のようなものが放たれ、
村人の手が腐敗していくー。
「ーー!!」
慌てて手を離すリリア(アルヴィン)ー。
「ーーあ…ぁあああ…」
紫色の瘴気のようなものの影響を受けた村人は
その場で苦しみながら倒れ込むー。
「ーーし、しっかりしろ!!お、おいっ!」
リリア(アルヴィン)は必死に叫ぶー
村人を何とか助けようと、抱え起こすーー
がーー
村人はさらに苦しみ初めて、
リリアの”闇の瘴気”によって、溶けるようにして
そのまま消えてしまったー
「ーーー…そ、そんなーーー」
呆然とするリリア(アルヴィン)ー
サキュバス・リリアの持つ”魔力”は、
弱き人間をあっという間に溶かしてしまうー。
もちろん、リリア本人は”そうしないように”
力をコントロールすることができるものの、
”リリアの身体の使い方”や、力の抑え方が分からない
勇者・アルヴィンには、”リリアの身体の魔力”をコントロールすることが出来ずー、
”触れるだけ”で、相手を溶かしてしまうー、そんな状態になっていたー。
「こ、こんなことってー」
呆然としながらも、リリア(アルヴィン)は
「でもーーこのままじゃいけないー」と、そう言葉を口にすると、
この村で、”危機”を伝えることは諦めて、村から飛び出すー。
これ以上、この村に留まればさらに犠牲者が増えてしまうー。
だから、村を飛び出したー。
森の中を走り抜けながら、リリア(アルヴィン)は思うー。
”ーどうして、こんなことにー…”
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日前ー。
勇者・アルヴィンは
仲間のエヴァ、ヨゼフの二人と共に
快進撃を続けー、
魔王の城まであと一歩のところまで迫っていたー。
エヴァとヨゼフは、魔王の城の裏口の調査のために別行動をしー、
勇者アルヴィンは、正面から魔王城に向かっていたー。
そんな中ー…
「ーーぐ… くそっ…!」
魔界騎士・デスサタンが、表情を歪めるー。
「ーー魔王軍の”3大幹部”とやらもこの程度か!」
勇者・アルヴィンは手にした勇者の剣を振るいながら、
魔界騎士・デスサタンを追いつめていくー。
この世界ではーー
人間たちの住む王国と、魔王率いる魔王軍が、
長きにわたり、戦いを繰り広げていたー。
今から数百年前に大きな争いがあったとされていてー、
その際に”魔王”が勇者によって封印ーー、
その後は、魔物たちとの小競り合いが定期的に発生する程度だったものの、
数年前、封印されたはずの魔王”デュラン”が復活を果たしたー。
魔王デュランの復活に伴い、魔物たちは狂暴化ー
王国は次第に追い詰められていくー。
けれどー…
そんな時だったー
王国の中心部から離れた村に”勇者の末裔”がいることを知った
王国の女王・シャルロッテは、その辺境の村を自ら訪れ、
3度に渡り、勇者の末裔であった青年・アルヴィンを説得、
王宮に封印されていた勇者の剣を手渡したー。
元々正義感が強く、”勇者の末裔”だと知らされたアルヴィンは、
最初でこそ躊躇したー。
それは、”臆病風に吹かれたから”ではないー。
自分が村を離れることで、自分の生まれ故郷である村を
危険に晒してしまうのではないかー、と、そう思ったからだー。
しかし、女王のシャルロッテは根強くアルヴィンを説得ー、
最終的に王宮直属の騎士団の一つ、通称・ローズを、
村の警護のために派遣することを約束し、
村の安全が確保されたことで、アルヴィンは王国を救うために立ち上がることを決意ー、
これまで戦いを繰り広げて来たー。
「終わりだ!」
勇者・アルヴィンは幼少期から、剣術を磨き続けて来たー。
辺境の村で、独学で学んだその剣技はー、
想像以上の力を発揮ー、
魔王軍の幹部ですらも圧倒したー。
「ーーぐ…」
三大幹部の魔界騎士・デスサタンも決して弱い訳ではないー。
王宮騎士団の団長クラスをもしのぐ力を持つー。
けれど、それでもーー
勇者・アルヴィンにはまるで歯が立たなかったー
”ぐあああああああ”
魔王城の玉座で、
偵察用の”魔蝙蝠”からの映像を確認していた
魔王デュランは、表情を歪めるー。
幹部の一人、魔界騎士デスサタンが簡単に倒されたー。
「ーーーあらあらー」
横にいたサキュバス・リリアが妖艶な笑みを浮かべると、
「ーー魔王様ー、あの男、どうするの?」と、
そう言葉を口にしながら、魔王デュランに身体を密着させるー。
「ーーーー」
魔王デュランは少しだけ険しい表情を浮かべるー。
「ーー先ほど、魔界呪術師アリスと、魔界戦士ブロンを
迎撃に向かわせたー」
魔王デュランはそう言葉を口にしながらも、
その表情は険しいー。
勇者・アルヴィンは魔界騎士デスサタンを簡単に倒すような男ー。
アリスとブロンも実力者であるものの、
勇者を止められるかどうかと言われれば、怪しいー。
魔王デュランは大きくため息を吐き出すと、
「リリア」と、そう言葉を口にしてから、
魔王の間の奥に安置されていた、謎の宝箱のようなものの一つを手にするー。
「ーこれは我が一族に伝わる”禁忌のアイテム”だー。」
魔王デュランはそう言葉を口にすると、
「ーーー”始祖”の強大な魔力が封じられておる」と、宝箱の中から
禍々しい紫色の宝玉を取り出したー。
魔王にとって代々伝わる秘宝のような存在ー。
一度しか使うことが出来ず、どのような方法で作り出されたのかも
分からないー。
が、”最後の切り札”たるこれを使う日が来たー。
「ーーーこれはー」
サキュバスのリリアが驚きながら、禍々しい輝きを見つめると、
「ーー”他人と身体を入れ替えることができる”ー、禁忌の魔術が封じ込められている」
と、魔王デュランは説明したー。
「ーーこれを使い、勇者の身体を奪うー。
ーーーやってくれるか?」
魔王デュランがそう言葉を口にすると、
リリアは驚きながらも、静かに頷いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーー!」
魔王の城の入口付近いたどり着いたアルヴィンは表情を歪めるー。
そこに現れたのはー、妖艶な女ー…
サキュバスのリリアだったー。
「ーー俺を止められるつもりかー?」
アルヴィンがそう言葉を口にするー。
「ーあらあらー…」
サキュバスのリリアは不敵な笑みを浮かべると、
「ーわたしはリリア。よろしくねー」と、自己紹介の言葉を口にするー。
それを笑うアルヴィンー。
「ー悪いが、俺は魔物に誘惑などされないー」
剣を構えて、早々にリリアを突破しようとするアルヴィン。
リリアは、”闇の魔力”を放つも、
アルヴィンからすれば、”敵”ではないー。
「ーーー終わりだ!」
アルヴィンがリリアにトドメの攻撃を加えようとするー。
がー
その時だったー。
リリアはニヤッと笑みを浮かべるとーー
禍々しい紫色の光を放つ球体をーー
その場で破壊してみせたー
「ーー!?!?!?」
紫色の煙のようなものが噴き出すー。
「ーーなんだこれは!?」
勇者・アルヴィンがそう声を上げるー。
すぐに息を吸わないように口と鼻を塞ぎ、
さらには”気配”で、リリアの攻撃に備えようとするー。
ただの目晦ましや、毒による攻撃ならば、
それは正しい判断だったー。
けれど、これはー”魔王の始祖が残した禁忌のアイテム”による魔術ー。
息を吸わずともー、その効果を発揮するー
「ーーー!!!」
アルヴィンは、身体に今まで感じたことのない違和感を
感じて、そのままその場に倒れ込むー。
その様子を確認したサキュバスのリリアも、
笑みを浮かべながらその場に倒れ込むのだったー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーもうすぐ魔王城の裏口側にたどり着くわー」
勇者・アルヴィンの仲間のエヴァと、ヨゼフは
少し遅れて魔王城の裏口にたどり着いていたー。
「ー気を付けろよ」
槍使いのヨゼフがそう言葉を口にすると、
その直後、「待て!」と、人の気配を感じて
槍を構えたー。
がー、そこに現れたのは、敵ではなく、勇者のアルヴィンだったー。
「ーーアルヴィン!?どうしてここにー?」
エヴァが驚いて声を上げるー。
アルヴィンは”正面”から突入する手はずだったからだー。
「ーーエヴァー。ヨゼフー。
魔王の城は思った以上に守りが固いー。
いったん、王宮に戻って状況を報告ー、
態勢を整えてから出直そうー」
アルヴィンがそう言葉を口にするー。
「ーはぁ!?ここまで来て、撤退するのか?」
ヨゼフがそう言うと、
アルヴィンは「このまま攻め込んでも、俺たちが死ぬだけだー
それじゃ意味がないー」と、そう言い放つー。
「で、でもよー」
ヨゼフが戸惑うと、エヴァは「魔王たちにも態勢を立て直す時間を
与えてしまうわーと、そうアルヴィンに反論するー。
しかしー
「ー”勇者”の俺の言うことが聞けないのか?」
アルヴィンは笑顔でそう言い放つー。
「ーーえ…」
エヴァは少し戸惑う様子を見せると、
アルヴィンは「いやー、はは、ごめんごめんー。でも、
ここで犬死するわけにはいかないだろ。魔王を倒して、
平和を取り戻すためにー」と、そう説明するー。
渋々アルヴィンの考えに従い、王宮への撤退を決めるエヴァとヨゼフー。
二人が歩き出したのを見て、アルヴィンはーー
いや、アルヴィンと入れ替わったサキュバス・リリアは
「馬鹿な人間たちー」と、笑みを浮かべたー。
そしてー、”偵察”を担う”魔蝙蝠”を通じて
魔王デュランに報告をすると、
アルヴィン(リリア)は不気味な笑みを浮かべながら
歩き始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーな………なんだこれー…??」
一方ー、遅れて意識を取り戻した
”リリアになってしまったアルヴィン”は、
その場で困惑の表情を浮かべるー。
そしてー、”自分の身体”がいないことに気付くと、
リリアになってしまったアルヴィンは、すぐに森の中を走りだしたー。
そしてーーー
”自分の身体”が、サキュバスのリリアに奪われたことを知るのだったー。
…あれから数日ー。
リリア(アルヴィン)は、辺境の村に危機を伝えに来たものの
”失敗”したー。
王宮に帰還して、今、城下町にいる”アルヴィン”は、
サキュバスのリリアだと、とにかくみんなに伝えなくてはいけないー。
「ーー…仕方ないーこうなったらー」
リリア(アルヴィン)は、たとえ騒ぎになっても、
この姿のまま王宮付近まで行くしかないー、と、そう考えるー。
そして、慣れないサキュバスの身体で、森の中を移動し始めるのだったー。
②へ続く
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コメント
勇者とサキュバスが入れ替わってしまうお話デス~!!!
リクエスト特典で、飛龍様から頂いたリクエスト内容を元にした
作品デス~!!
(※一般のリクエスト受付はトラブル防止のため停止中デス!ごめんなさいデス~!)
どんなリクエストを頂いたかは…
まだ今の時点で書いちゃうとネタバレしちゃうので、
最終回のあとがきでご紹介しますネ~!!

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