自分の力で他人同士を入れ替えて、
その戸惑いの表情や、喜びの表情、色々な反応を楽しむ男ー。
彼のお楽しみが続く中、
彼のいる建物には、捜査官が迫りつつあったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ー鶴田 宗平がもしも移動したら教えてー」
女性刑事の市川 愛(いちかわ あい)は、
そう言葉を口にすると、
通信相手の後輩・喜多 幸也(きた ゆきや)が
”はいー今のところ動きはありません”と、
そう返事を返したー。
”絶対にー…逃がさないからー”
愛はそう言葉を口にしながら、非常階段の上を見上げるー。
この屋上に鶴田 宗平がいるー。
彼女は最近発生している
”不審な事件”の調査を行っていた警察官だー。
最近、この周辺では謎の相談が複数件寄せられていたー。
それが、”身体が入れ替わった”という相談だー。
そして、それ絡みの事件もいくつか起きているー。
”入れ替わって身体を触られた”とか、
”いきなり身体が入れ替わってしまって交通事故を起こした”とか、
暴力事件を起こしてその場で取り押さえられた人間が
”わたしは何もしてません!さっきまで身体が急に入れ替わってて”と、
必死に訴えて来たりー、
そういう事件だー。
もちろん”入れ替わっていたんです!”などと言われて
”はいそうですか”なんていう風にはならないし、
”入れ替わり!?それは大変だ!”などという反応にはならず、
警察内でも”言い訳”だとか、”被害妄想”だとか、
”悪戯”とか、そんな風に捉えられていて、
”入れ替わり”のことと、まともに向き合うような動きは
起きていなかったー。
当初は、愛もそう思っていたー。
”入れ替わりなんてありえない”とー。
だがー、そんな愛の考えはあることをきっかけに変わったー。
それは、彼女の妹であり、
昨年から社会人になって、現在は保険会社で働いている
由美(ゆみ)が、”入れ替わり被害”に遭ったからだー。
通勤中に突然、男と入れ替わってしまい、
訳も分からぬまま、入れ替わった相手に自分の身体を
弄ばれた由美は、酷くショックを受けて、
精神的に病んでしまっていたー。
そんな由美の話を聞いた愛は、”入れ替わりは本当に起きているのかもしれない”と、
そう考えを改め、後輩の幸也と共に、”入れ替わり”の騒動を
徹底的に調べ始めたー。
上司からは、”そんなことに時間を費やすなんて”と
呆れられてはいたものの、
”もしも本当に誰かの仕業でそんなことが起きているなら、
放っておくわけにはいかない”と、
周囲の白い目にも耐えながら、
ここまで調べて来たー。
そしてー、
”入れ替わり”の証言を地道に集めた結果ー、
愛たちはある男にたどり着いたー。
それが”鶴田 宗平”だー。
入れ替わってしまったという相談ー、
入れ替わりに関係するトラブルー、
それらの現場を徹底的に調査ー、
さらに監視カメラの映像を徹底的に確認したところ、
”入れ替わり”が騒がれる場所に
必ずある男が写っていることが確認された。
そして、その男の身元を調べた結果、
”鶴田 宗平”に行きついたのだー。
もちろん、愛たちからすれば
宗平が入れ替わりに直接的に関係しているのかどうかは
分からないー。
しかし、入れ替わりが騒がれる場所に”毎回”必ず姿を現していることから、
鶴田 宗平が入れ替わりについて何か知っている可能性は高い、と、
そう判断していたのだー。
”先輩ー気を付けて下さい
もしも鶴田宗平が人を”入れ替えている”のだとしたらーー
先輩も巻き込まれる可能性があります”
後輩の幸也が通信でそう言葉を口にするー。
「まさか、人間にそんなことができるとは思わないけどー…
でも、油断は禁物ねー」
愛はそう言葉を口にしながら、非常階段をゆっくりと登っていくー。
けれどー、
愛は最初は”入れ替わり”自体信じていなかったー。
皮肉なことに、自分の妹・由美がその被害に遭うまではー。
自分の妹・由美がその被害に遭って、初めて
入れ替わりのことを真剣に考えるようになり、
捜査をするようになった愛ー。
鶴田 宗平がもしも関係者なのであれば、
何が起きてもおかしくないー。
「ーー」
愛は、念のため銃を確認すると、そのまま屋上に向かって
息を潜めながら非常階段を進んでいくー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そんなことも知らず、屋上では
宗平が”チェンジ・ウォッチング”を続けていたー。
「ーちょっと!わたしの身体を返してよ!」
そう叫ぶおじいさんと、
ニヤニヤしながら胸を揉んで、さらにはスカートをめくっている少女の
姿が見えるー。
”へへへージジイのくせに、なかなか積極的じゃねぇか”
宗平はニヤニヤしながらそう言葉を口にするー。
”ま、自分の人生の終わりも見えてきたような年齢で、
急に美少女になったら多分、世界が変わるんだろなー”
宗平はそう言葉を口にしながら笑うー。
自分はまだ高齢者ではないー
高齢者と呼ばれる年代に差し掛かって、
色々身体も衰えて来る中、
美少女の身体に急になったらー
きっと、感動するだろうし、
世界が変わって見えるだろうしー、
輝いて見えるだろうー。
もちろん、入れ替わり相手が同じ男でもそうだと思うし、
おばあさんが若い女と入れ替わってもそうだと思うー。
きっと、何もかもが輝いて見えるはずだー。
そんなことを考えつつ、宗平は双眼鏡で、
その様子を見つめるー。
「あ~あ…あの子はもう、人生滅茶苦茶だなー」
美少女と入れ替わったおじいさんが、
「今日は気分がいいぞ!サービスじゃ!」などと言いながら、
スカートの中身を周囲の通行人に見せ付けているー。
「ーへへー俺もサービスを受け取るとするかなー」
ニヤニヤしながら、双眼鏡でめくれたスカートのあたりを
観察する宗平ー。
一方、おじいさんになってしまった美少女は
その場で泣き崩れていて、
なんだか様子がおかしいー。
「ーん?アイツー」
そう思いながら宗平が、双眼鏡を向けると、
どうやら、突然の入れ替わりによるパニックと、
自分の身体が酷い扱いを受けているショックで
過呼吸を起こしてしまったらしく、苦しそうにしているのが見えるー。
そうこうしているうちに、おじいさんになった美少女は
その場に倒れ込んでしまい、下ではちょっとした騒動が起きているー。
「ん?ーーえへへへー」
一方の美少女と入れ替わったおじいさんは
”元自分”が倒れているのを見てもお構いなしー。
そんな様子を見て、「エロジジイめー」と、
宗平は少しだけ呆れ顔で笑うと、
また違う人を人差し指で指さして、笑みを浮かべたー。
「ーー!?」
「ーー!!!」
子連れの親子が入れ替わって、戸惑いの表情を浮かべているー。
それと同時に、元々入れ替わっていた美少女とおじいさんが
元に戻りー、
スカートをめくっていた美少女が、泣きながら走り去っていくー。
一方、おじいさんは過呼吸で倒れた自分の身体に戻り、
意識を失ったまま救急搬送されていくー。
「あのジジイ、あのまま死んじまったら
訳が分からないままあの世で目を覚ますんだろうなー」
宗平はそう言葉を口にしながら、少しだけ笑うー。
ニヤニヤしながら、続いて入れ替えた親子ー。
母親と息子の様子を見つめると、
「ぼ、僕がお母さんになってるよ?!」と、
母親になった息子が叫んでいるのが見えたー。
「ーーい、いったい、どうなってるのー!?」
息子になった母親が狼狽えながらも、
周囲を見回しているのが見えるー。
「ーすごいー…僕がお母さんだー!」
そう言いながら、母親の顔で顔を赤らめている息子ー。
その表情を双眼鏡で見つめながら
宗平は少しだけ笑うと、
「俺のせいで、あのガキの性癖が狂ったかもしれねぇな」と、
ニヤニヤしながら、
さらに別の組み合わせを指差して入れ替わるー。
路上で部下に説教を垂れていたおじさんと、
若手の男性社員ー。
男同士の入れ替わりの反応も、宗平は等しく楽しむー。
急に、偉そうにしていた上司が委縮し始めて、
部下の身体になったおじさんは途端にそのまま
「お前が俺に何かしたんだろう!?」などと怒りの形相で
喋っているー。
「ーははははー人間の表情の変わりようも面白いよなー」
宗平は双眼鏡で、入れ替わった人々の観察ー
”チェンジ・ウォッチング”を続けながら笑みを浮かべるー。
怯えた表情を浮かべていた部下が、
中身が変わった途端、鬼のような形相になり、
鬼のような形相を浮かべていた上司が、
入れ替わった途端に弱弱しい表情を浮かべているー。
その変化を見つめるのも、宗平にとっては
”お楽しみ”の一つだー。
「クククー…まぁでも、俺もいつまでも男を
見ている趣味はないんでなー」
そう言葉を口にすると、彼は再び
建物の屋上からターゲットめがけて指を指すと、
そのまま別の組み合わせの身体を入れ替えたー。
「おっとー」
宗平は双眼鏡で下の様子を確認しながら
思わず声を上げるー。
入れ替えようと思った組み合わせは、
OLらしき女と、いかにも悪さをしてそうな雰囲気の若い男
だったものの、
指を指す際に少しズレがあったのか、OLとランドセルを背負った少年が
入れ替わってしまったー。
「チッー、ちょっと距離があるからなー
たまに、俺が指を指したつもりじゃない相手が入れ替わっちまう」
宗平はそう言葉を口にしながらも、
中身が子供になったOLは一緒に歩いていた友達の少年に
「俺、女になってる!すっげぇ!これ触ってみろよ!」などと
嬉しそうに叫んでいるー。
一方、子供の身体になってしまったOLは
「ち、ちょっと!?何してるの!?」と、そんな声を上げているー。
「へへー…予期せぬ入れ替わりでも、色々な戸惑いが
見れるからなー…
やっぱ、チェンジウォッチングはやめられないぜー」
宗平は、ニヤニヤと次々と発生する入れ替わりを楽しむー。
「さて、今度はあそこの派手なギャルとー、
真面目そうな女子高生を入れ替えるかなー」
そう言葉を口にして、
次の入れ替わりを発生させようとしたその時だったー。
「ーーーん…?」
宗平は表情を歪めるー
振り返ると、そこには女性刑事・愛の姿があったー。
「ーーそこで何をしているの?」
愛はそう言葉を口にする。
すると、宗平は少しだけ笑みを浮かべてから、
「ーー”人間観察”ですかねー。」と、
そう言葉を口にしたー。
「人間観察ー…」
愛は少しだけ表情を歪めるー。
「ーーそういうそちらこそ、誰です?」
宗平はそう言うと、愛は警察手帳を見せ付けたー。
まだ、”入れ替わり”に
この鶴田宗平が直接的に関わっているかどうか、までは
愛には分からないー。
注意しながら、宗平に近付きつつ、
愛は言葉を口にするー。
「ーー最近、この辺りで”入れ替わり”の騒ぎが起きているのは
知ってるー?」
とー。
その言葉を聞いた宗平は
「ーーいれ…?いれ、かわりー? はてー?」と、
とぼけた表情を浮かべるー。
「ーーそれって、あれですかー?
アニメとか、漫画とかで起きるやつ?」
揶揄うような口調で宗平はそう言うと、
愛は「とぼけないで」と、そう言葉を口にしたー。
「いやいや、とぼけてなんかいませんよー。
俺はただ、人間観察をしていただけです。
この双眼鏡で、街行く人を見つめていただけー。
別に、法律に違反するようなことは何もしてないでしょう?」
宗平がニヤニヤしながら言うー。
愛は、人を小馬鹿にするような態度に腹を立てながらも
「その双眼鏡を見せなさい」と、そう言葉を口にしたー。
「ーーへへ。どうぞ。」
手渡ししようとする宗平ー。
しかし、愛は警戒してか、こっちに近付かずに
双眼鏡を投げるように要求するー。
「ー別に構いませんけど、キャッチに失敗して
壊さないでくださいよ?刑事さん」
宗平はそう言うと、双眼鏡を愛の方に投げつけるー。
愛はすぐに双眼鏡を確認したー。
しかし、双眼鏡に何か変わった様子はないー。
「この屋上は別に立ち入り禁止にもなっていません
そこで俺はただ、人間観察をしていただけ。
どうですー?
何も警察のお世話になるようなことはしてないでしょう?」
宗平はそれだけ言うと、
「双眼鏡、返してもらえます?」と、
笑みを浮かべながら言葉を口にしたー。
愛がムッとして双眼鏡を投げ返すと、
双眼鏡をキャッチした宗平は笑ったー
「と、いうことですので。
俺は失礼しますよ」
警察が来たからか、そのまま立ち去ろうとする宗平ー。
がー、
愛は言ったー。
「最近、入れ替わりの騒動が起きている場所で
必ずあなたがいることが確認されてるー。
監視カメラに映像も残っているのー。
ーー…入れ替わりについて知ってることがあるなら、答えなさいー」
とー。
「ーーーー」
その言葉に、立ち止まった宗平は
少しだけ間を置いてから口を開いたー。
「ーー…仕方ないですねー
知ってることを話してあげましょうー」
宗平はそう言い終えると、少しだけ笑みを浮かべながら
愛の方を見つめたー…
③へ続く
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次回が最終回デス~!☆
どんな結末が待っているのか、
ぜひ見届けて下さいネ~!
今日もありがとうございました!~☆
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