<入れ替わり>戸惑いの表情を見せてほしい①~観察~

彼は、右手の人差し指と、左手の人差し指で
指を指した人間同士を”入れ替える”力を持っていたー。

そんな彼は、入れ替わって戸惑う人々の様子を
見て、楽しむ日々を送っていたー。

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いつもはめている黒い手袋を外しながら、
ニヤッと笑う男ー。

彼の名は、鶴田 宗平(つるた そうへい)ー。

宗平には”ある力”があったー。

それはーー

右手の人差し指で、道を歩いているOLらしき女性を指差すー。
そして、左手の人差し指で、スーツ姿のおじさんを指差すー。

二人を指差したまま、ニヤリと笑う宗平ー。

するとーー

「な、な、なにこれ!?」
突然、少し先にいるスーツ姿のおじさんが声を上げるー。
「え!?なんで!?えっ!?どうなってるの!?」
おじさんが、おじさんらしからぬ声を発しながら、
あたふたと狼狽え始めて、周囲がその様子に困惑しているー。

一方、少し離れた場所にいたOLの方も、
「うわっ!?な、なんだこれ!?どうして俺がこんな格好を!?」と、
奇妙な言葉を発していて、周囲の通行人たちが
戸惑っているー。

その様子を、4階建ての建物の屋上から、双眼鏡も手にしつつ
見つめる宗平ー。

「クククー戸惑ってる戸惑ってるー…」

そんな宗平の存在を知らないまま
”入れ替わってしまった二人”は、互いに気付いてー、
「な、なんで俺が目の前に!?」
「ど、どうしてわたしが!?」と、そんな反応を見せているー。

やがて、二人は周囲の注目を集めてしまっていることに気付くと、
ソワソワしながら”い、移動しましょうー”みたいな会話を始める。

「ーーククーよくある戸惑い方だなー。
 ま、急に入れ替わってしまったら誰だって焦るだろうけどなー」

そう思いつつ、再び双眼鏡で下の景色を見つめるー。

宗平にはー
”右手の人差し指と、左手の人差し指”で、指を指した人間同士を
入れ替える力があったー。

その力で宗平は、こうして日々、
他人の身体を入れ替えては楽しんでいるー。

元々、バードウォッチングが趣味だった彼は、
近くの建物の屋上から、入れ替わった人々を見て楽しむ遊びを
”チェンジ・ウォッチング”と自分の中でそう呼んでいるー。

「ーー次は、あの二人を入れ替えて見るか」
宗平は笑いながら、ベビーカーに乗っている赤ん坊とー、
少し離れた場所の女子高生を指差すと、
その二人を入れ替えるー。

友達と会話中だった女子高生が、突然、
その場に寝転んで、足をばたばたさせながら泣き始めるー。

「えっ!?ちょっと!?えっ!?急にどうしたの!?
狼狽える友達ー。
ざわめく通行人たちー。

中身が赤ん坊になってしまった女子高生は、
スカートの中が丸見えになっているのもお構いなしに、
足をばたばたさせながら、赤ちゃんのように泣いているー。

一方ー、ベビーカーに乗っている赤ちゃんになってしまった
女子高生の方も、言葉を発することはできないのか、
ベビーカーから身を乗り出して、驚いた表情を浮かべているー。

目が飛び出しそうなほどに目を見開いている
赤ちゃんのその姿を見て、宗平はゲラゲラと笑うー。

そして、双眼鏡を手に、
先程入れ替えたOLとサラリーマンのおじさんの方を確認するー。

「えっ!?も、元に戻ったみたいですー!」
OLが戸惑いながらそう言葉を口にしているー。

そして、スーツ姿のおじさんの方も、
「うぉっ!?ど、どうしてー…?」と、そう言葉を口にしつつ
「と、とりあえずー…よかったですねー」と、
OLと共に安堵の表情を浮かべているー。

宗平は、その様子を確認すると、
再び、赤ちゃんと女子高生の入れ替わりの騒動を双眼鏡で見つめるー。

宗平の入れ替わりは”一組”までー。
誰かを入れ替えた状態で、
別の組み合わせを入れ替えると、
その前に入れ替わっていた2人は元に戻るー。
そういう力だー。

そのため、女子高生と赤ちゃんを入れ替えたことによって、
その前に入れ替えたスーツ姿のおじさんとOLは元に戻ったのだー。

泣きじゃくる女子高生に、
”自分の身体”から離れていくのに、どうすることもできない
ベビーカーに乗った赤ちゃんー。

二人の入れ替わりを十分に堪能すると、
宗平は再び、”別の人間”を指差すー。

高校生カップルだろうかー。
二人を指差して入れ替えると、
「えっ!?」 「あっ!?」と、
二人とも、入れ替わったことにすぐに気づき、
戸惑いながら「ど、どういうことー!?」「何で俺が目の前に!?」と、
そう声を上げているー。

一方ー、
赤ちゃんになってしまっていた女子高生は元に戻りー、
路上に横たわって泣いていた状態から、
慌てて恥ずかしそうに、顔を真っ赤にしながら
友達と一緒に走り去る姿が見えたー。

「ーーははー最悪の状況だろうなー」
そう呟きながら、宗平は入れ替わったカップルを見つめるー。

「えっ!?すごくないー?せっかくだから色々試してみようよ!」
「い、色々ってー…?」

そう言葉を口にする二人の様子が見えるー。

「ーーーー」
宗平が使っている”双眼鏡”には特殊な加工が施してあり、
見ている場所の”音”も拾うことができるー。

そのため、4階建ての建物の上にいる宗平にも、
入れ替わった者同士の”会話”を聞き取ることができるのだー。

「ーーで、でも、ここじゃまずいだろ?人もたくさんいるし」
高校生カップルの彼女の方がそう言葉を口にするー。
入れ替わっているため、中身は彼氏のほうだー。

「えへへーいいじゃんいいじゃんー。わたしの胸、揉んでみてもいいよ?」
彼氏の方が、そう言葉を口にするー。
中身は彼女ー。

”あのカップルの女ー意外とエロいのかもなー”
そう言葉を口にしていると、宗平は予想外の言葉を耳にするー。

「でも姉さんー、やっぱここじゃー」
そう言葉を口にする彼女らしき女の身体になった彼氏らしき男ー。

が、”それ”は間違いだったことに気付くー

「姉さんー?なんだ、あいつらカップルじゃねぇのかー
 仲良さそうに一緒に歩いているからてっきりカップルかとー」
宗平はそう言葉を口にしながら、
もう一度、二人を見つめるー。

会話内容を聞くと”高校生カップル”ではなく、
”双子の姉弟”だったようだー。

「ーははー…まぁ、それはそれで面白いなー」

二人は一緒に近くのカラオケに入っていくのが見えたー。

「あ~あ…入れ替わった状態で楽しもうとしてるんだろうなー」
宗平はそう呟くも、
カラオケの店内に入られてしまった以上、
その様子をもう見ることはできないために、
それ以上の興味は失せて、
別の組み合わせを指差して入れ替えるー。

”入れ替わった身体”を楽しむためにカラオケ店に入店したであろう二人は
今頃、元に戻っていて、戸惑っているはずだが、
そんなことは宗平にはどうでもよかったー。

「ーーあ??」
「ーーえ???」

カラオケに入った二人を元に戻すために、
とりあえず適当に街を歩く二人を指差して入れ替えた宗平ー。

適当に指さしたため、
冴えないおじさんと、特徴のない眼鏡の男が入れ替わってしまい、
二人とも戸惑っているのが見えたー。

「ーククーお前らの入れ替わりなんて興味ねぇよ」
宗平はそう思いつつも、
真剣に話し合い始める二人のおじさんを見て、
「反応もつまんねぇな」と、そう呟くー。

続いて、楽しそうに会話をしながら歩いてきた女子高生三人組のうち、
二人を入れ替えると、
「えっ!?なにこれ!?」と、入れ替わった二人が
騒ぎ出すのが見えたー。

「きゃ~~~!」
「ーーえ?ウケるんだけど!きゃはははは!」

楽しそうに笑い出す入れ替わった二人の女子高生ー。

「ははーのんきなやつらだなー」
そう思いながら、宗平が観察を続けていると、
入れ替わった二人のうちの一人が、
早速、友達の身体になったにも関わらず、
お構いなしに自分の胸を触ったり、
とても楽しそうにはしゃいでいるー。

「ーーえ?すごくない?わたしより大きいし!すごっ!やばっ!」
一人で嬉しそうにしている子と、
もう一人の子は、「えいっ!」などと言いながら
元自分の身体を触って楽しんでいるー。

「ーククー
 楽しそうじゃないかー」
宗平は双眼鏡で、入れ替わった二人の女子高生が
楽しそうにしているのを見つめるー。

「ーへへー俺もそこに混ざりたいぐらいだがー…
 まー、俺は見ているだけで我慢するかー」

そう呟くと、宗平はしばらく、
双眼鏡で入れ替わったその二人を見つめつつ、
入れ替わった者たちを観察して楽しむ
”チェンジ・ウォッチング”を続けるー。

「ーーーーしかし、周りの奴も見てるのに
 よくもまぁ、あんなに堂々揉んだりできるもんだなー」

そんなことを呟きつつ、観察を続けると
やがて入れ替わった二人の女子高生は
お互いに相手の髪ー…
”元自分の身体”の髪をいじって楽しみ始めたー。

二人とも色々な髪型を即興で試しては
ゲラゲラと笑っているー。

「ーーー…」
微笑ましい様子を見つめながら宗平も
ニヤニヤしつつ、無言で観察を続けるー。

がー、ふと、双眼鏡で見つめている場所に
歩いてきた男を見つめるー。

美少女キャラが大きくプリントされたシャツを着て、
缶バッジをーー…数えきれないほどー、
そう、100個は超えているかもしれないぐらいの数をつけた
リュックを背負った、巨体の男の姿が見えたのだー

「ーおぉ、おぉー…」
宗平はニヤニヤしながら頷くー。

趣味は個人の自由だし、宗平もそこは別にどうでもいいー。
が、”JK”からすればあの手の男は避けられる運命にあるー。

宗平はそう思いつつ、
「ちょうどいいのが来たじゃねぇか」と、そう言葉を口にすると、
右手の人差し指でその男をー、そして、左手の人差し指で、
入れ替わりを楽しんでいる女子高生の一人を指差したー。

”新しい入れ替わり”を発生させると、
その直前に、それまで入れ替わっていた組み合わせは
元に戻るため、
”既に入れ替わっている人間”を新たに入れ替わりの対象にしても、
入れ替わるのは元々の持ち主の方だー。

二人の女子高生ー…
AとBが入れ替わっている際に、
Bの身体になっているAと、巨体の男を入れ替えた場合ー、
Bの身体の中にいるAが巨体の男になるのではなく、
Bが巨体の男と入れ替わる形だー。

新しい入れ替わりを発生させた際に
まず、女子高生AとBの入れ替わりが解除されー、
そこから入れ替わるために、この場合は指を指された女子高生Bと、
巨体の男の入れ替わりが発生するー。

「ーーえっ!?!?ちょっと、何これ!?!?えっ!?!?
 はっ!?!?ちょ、うわっ!キモッ!」

巨体の男になった少女がそう叫ぶー。

さっきまで、友達と入れ替わっていた時は
とても楽しそうにしていたのに、
明らかな拒絶を示す反応ー。

一方、突然、見ず知らずのJKになってしまった男はーー
喜ぶーー…

かと、思いきや、宗平の想像とは異なる反応を示したー。

「う…うわっ…な、なんだこれー…うわっーー…う…うぅぅぅぅ」
突然、嫌悪感を示す女子高生になった男ー。

「んん?ああいう奴はJKと入れ替わったら喜ぶと思ったがー」
宗平は双眼鏡で、その様子を見つめながら呟くー。

さっきまで友達と入れ替わっていたもう片方の少女が
「えっ!?ど、どうしたの!?
 あれ?しかも、わたし、元に戻ってるしー」と、
戸惑いの表情を浮かべているー。

「なんだこれっ!?なんだこれはー!?
 ぼ、僕が三次元の女にーー…?
 うっ…うぉぉぉえええええええ」

突然、その場に嘔吐するJKになった男ー。

「ーーあ~あ…なんだありゃー」
宗平は双眼鏡でその様子を見つめるー。

「ぼ、僕は、二次元しかー…
 う…うぉぉぉああああ」
女子高生の身体のまま、嘔吐したものも放置して
逃げ出す巨体の男ー。

その様子に男の身体になってしまった彼女は、
「え!?ちょっと待ちなさいよ!
 ってか、わたしの身体に何、吐いてんの!?」と、
怒りの形相を浮かべているー。

「ーーなるほどなー
 リアルの女に何かトラウマがあるのかー」
宗平は、そう言葉を口にしながら納得すると、
ここからでは見えない範囲に、JKになった男が走り去ってしまったことで、
興味を失いー、また別の入れ替わりを発生させようと笑みを浮かべたー。

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「ーーー…”あの男”を確認ー」
男がそう言うと、「分かったわー。動きがないか見張ってて」と、
そう女が返事をするー。

宗平がいる建物の非常階段付近ー。
二人の捜査官がそんな会話を繰り広げるー。

宗平は気づいていなかったー。
既に、自分は警察にマークされていることをー。

そして、捜査官が既に目前まで迫っていることをー。

②へ続く

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コメント

他人同士を入れ替えて
ひたすら楽しむ男のお話デス~!

建物の屋上から入れ替わった人々の様子を観察する…
ちょっと悪趣味な貴族の遊び(?)なのデス…!

今日もありがとうございました~!

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