”お姉ちゃんの様子がおかしい”
妹が抱いた、そんな違和感から始まった不思議な日々ー。
その果てに待つ結末とはー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学園祭の準備中に、
最初に起きた”事故”と同じような環境を、
病院内に準備した克枝ー。
姉の菜々花、菜々花の親友の克枝が見守る中、
菜々花の妹・千里に憑依してしまった紀彦は
ゴクリと唾を飲み込むー。
脚立の上に立ち、”あのとき”と同じように
転落しー、
下にいる、”昏睡状態の自分の身体”とぶつかるー。
そうすることで元に戻ることができるはずだと、
そう信じて、千里は菜々花と克枝の方を見つめるー。
”それにしても、最初は高峰さんに憑依してしまってー、
やっと解決したと思ったら今度は妹の千里ちゃんに
憑依してしまうなんてー”
千里に憑依している紀彦はそんな風に思うー。
”千里ちゃんに、怒られるだろうなぁ”
菜々花に憑依している頃、千里とは色々と話をしたー。
あの時の千里の言動を思い出すと、
絶対に、千里が正気に戻ったら怒られるに決まっているー…
がー、ずっとこのままでいるわけにはいかないー。
早く自分の身体に戻って、紀彦自身の趣味である
音楽を存分に楽しみたいし、
千里にも早く身体を返してあげたいー。
それに、菜々花や克枝にも迷惑をかけてしまっている
この状況は、早くなんとかしたいー。
”今度こそ、俺の身体に戻れますようにー”
そう思いつつ、眼下の自分の身体めがけて、
脚立から転落する千里ー。
落下した千里の身体は、車いすに乗せられた
昏睡状態の紀彦の身体に接触ーー
そのまま、千里は意識を失ったー。
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「ーーーー………!」
病室に運ばれた千里が目を覚ますー。
今回は”病院”で試したために、
すぐに千里を病室に運び込みー、
また、昏睡状態が続く紀彦の身体もすぐに病室に戻すことができたー。
”まだ”紀彦は昏睡状態のままー。
紀彦が、自分の身体に戻れたのであれば、
紀彦の方だって目を覚ますはずー。
が、結局、紀彦の意識が戻らないまま、
先に千里が目を覚ましたー。
「ーーち、千里ー…?」
姉の菜々花が不安そうに、千里の名前を呼ぶー。
菜々花の横にいた菜々花の親友・克枝も
不安そうにその様子を見つめるー。
このあとの千里の”第1声”で色々とこの先の展開も変わって来るー。
”千里”が正気を取り戻していれば
まだ昏睡状態ではあるものの、紀彦は自分の身体に戻れたのだろうし、
”千里”にまだ紀彦が憑依した状態であれば、
紀彦を千里の身体から出すにはどうすれば良いのか、また考えなくてはいけないー。
「ーーー…千里ーーー…大丈夫?」
菜々花がそう言うと、
千里は不思議そうな表情を浮かべながら
周囲を見渡してから、言葉を口にしたー
「ーーお姉ちゃんーー……ここ、どこー?」
とー。
その言葉に、菜々花は目を輝かせながら千里に駆け寄るー。
「ち、千里ー!?千里なんだよねー?」
とー。
普段は妹の千里とは違い、大人しくて
リアクションも薄いことが多い菜々花ー。
しかし、妹のことはやっぱり心配していた様子で、
千里だと分かると同時に、嬉しそうに千里に駆け寄ったー。
「ーーあ、当たり前でしょー…?
そ、それよりここはー?」
千里のその言葉に、菜々花は少しだけ不安そうな表情を浮かべると、
背後にいた菜々花の親友・克枝が口を開いたー。
「千里ちゃんー…
菜々花に憑依しちゃった柿沼くんを、菜々花の身体から出して
柿沼くんの身体に戻そうとしたところまでは覚えてるー?」
とー。
「ーーえ… あー…はいー」
千里が、克枝の方を見て頷くー。
紀彦に菜々花が憑依されている際に、
姉・菜々花の親友である克枝には色々と世話になったー。
そのことはもちろん覚えているー。
「ーーー…あのあとー…」
克枝は、菜々花に代わり、事情を説明するー。
菜々花に憑依していた紀彦が、
車いすに乗っている”自分の身体”とぶつかろうと
転落したのに、
車いすを運んでいた千里に憑依してしまってー、
今まで千里の身体は紀彦が使っていたのだとー。
「ーーえ…」
千里は少しだけ戸惑いの表情を浮かべながら
呆然としていたものの、
やがて、「え~~~~~~~~っ!?!?!?」と、
声をあげてー、ガバッとベッドから起き上がるー。
「ーーわ、わ、わ、わたしの身体を
お姉ちゃんに憑依してたあの人が使ってたの!?」
とー。
「ーーう、うんー」
克枝がそう言うと、千里は姉・菜々花の方を見て
「えっ!?あ、そういえばお姉ちゃんは無事に正気に戻ったんだね!
わたし、お姉ちゃんが変になっちゃったって思って心配してたんだよ?!」と、
ペラペラと勢い良く喋り始めたー。
「ーあ、あははー…わ、わたしなら大丈夫ー
千里が色々してくれたみたいでー…ありがとねー」
菜々花が自分が憑依されていた際のお礼を改めて口にすると、
千里は「ううん!全然!お姉ちゃんのためならいくらでも頑張るから!」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーそ、そうだ!それよりー、
わたしに憑依してた、あの人は、どうなったのー?」
千里がそう言葉を口にすると、
菜々花と親友の克枝が顔を見合わせるー。
「ーーそれが…まだ目を覚ましてなくてー」
克枝が言うと、千里は「そ、そうなんですねー」と、
克枝の方を見つめながら呟くー。
菜々花も、克枝も、
千里が目を覚まし、無事に千里が正気に戻ったこと自体には
一安心していたー。
けれど、まだ千里に憑依していた紀彦自体が目を覚ましていないー。
「ーーー…でも、千里ちゃんが目を覚ましたってことはー」
克枝が、千里の姉・菜々花の方を見つめながら言うと、
菜々花は「うんーそうだねー」と、頷くー。
「ーちょっと、柿沼くんがどうなったかも見て来るねー」
克枝がそう言うと、
菜々花の妹・千里は「わたしも行きますー」と、そう言葉を口にするー。
その言葉に、姉の菜々花も心配そうに千里に声をかけるも、
「ー別に病気で倒れてたわけじゃないんだし、もう大丈夫」
と、身体をぶんぶんと振って見せるー。
「ーー…ーーふふーじゃあ、無理はしないでね」
菜々花はそんな千里の様子に優しく微笑むと、
紀彦の身体が入院している病室へと向かうー。
”菜々花”自身も、憑依されていた状態から
目を覚ますー…
という経験は、この前にしているー。
確かに、体調自体は良かったし、
すぐに動けるのは、”憑依されたあと、正気を取り戻す”という
経験をした菜々花自身が一番よく分かっているー。
「ーーーーー」
三人が、紀彦の病室にたどり着くと、
紀彦はまだ意識を取り戻していなかったー。
「ーーーー………ーーー」
菜々花も、千里も、克枝も少し心配そうな表情を浮かべるー。
「ーーー……もうすぐ、意識を取り戻すんじゃない?」
克枝が不安を打ち消すかのように、
そう言葉を口にするー。
しかし、菜々花は不安そうに表情を曇らせるー。
すると、千里が紀彦の方に向かって近づいていくと、
「お姉ちゃんの身体を勝手に使っただけじゃなくて
わたしの身体も勝手に使ったなんてー
色々ー言いたいことあるんですけどー…!」と、
不満そうに言葉を口にするー。
当然、昏睡状態の紀彦は、そんな千里に対しても
返事をすることはなく、
そのまま眠り続けているー。
「ーーー…ーー勝手にわたしの身体を使っておいてー
そのまま逃げるなんてー…
許しませんからねー」
不満そうにそう呟くと、千里は
少し間を置いてから悲しそうな表情を浮かべるー。
別に、紀彦に対して強い思い入れはないー。
姉・菜々花が憑依された件までは、紀彦のことなど
知らなかったし、憑依されている間も色々と不満はあったー。
がー、それでも紀彦は一緒にいて、悪人ではないとは感じていたし、
こうして彼だけが昏睡状態という結末を迎えるのは、
後味が悪かったー。
「ーーーー……千里ー」
姉の菜々花がそんな千里に声を掛けると、
千里は少しだけ複雑そうな表情を浮かべながらも、
眠ったままの紀彦から離れたー。
「ーーー…」
菜々花の親友・克枝も少し戸惑いながら、
「でも、千里ちゃんが正気を取り戻したのに、
柿沼くんの意識が戻らないなんてー」と、
困惑した表情を浮かべるー。
千里が正気を取り戻したということは、
紀彦は千里の身体からは抜け出しているということー。
「ー菜々花の中にまたいたりしないよねー?」
克枝が少し心配そうに、菜々花の方を見つめるー。
”また”最初のように、紀彦が菜々花の方に憑依してしまって、
菜々花のフリをしているのではないかと、
そんな心配をしたようだー。
「ーううんー…わたしは、もう憑依されてないよー」
菜々花が戸惑いながらそう言葉を口にするー。
「ーーー」
克枝は、心配そうに眠ったままの紀彦の方を見つめると、
そのまま小さくため息を吐き出したー。
結局ー、
紀彦の身体は昏睡状態のままで、
千里の身体から抜けたはずの紀彦が、
”どこ”に行ってしまったのかは分からないままだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー。
「ーーえぇっ…ハエがたかりはじめたー…?」
困惑の表情を浮かべながら、親友の克枝とスマホで
話をしている姉・菜々花ー
その様子を心配そうに聞いている妹の千里ー。
「ーーで、でも、柿沼くんの身体は死んでるわけじゃないんでしょ?」
菜々花が克枝に確認すると、
克枝は”うんー生きてはいるけどー”と、そう言葉を口にしたー。
電話を終えて、小さくため息をつく菜々花ー。
千里が「お姉ちゃんー…あの人はー?」と心配すると、
「なんかー…ハエがたかりはじめたみたいー」と、困惑した様子で言うー。
遺体にハエがー…という話は聞くー。
が、紀彦の身体はまだ生きているはずなのに、どうしてー?
菜々花が険しい表情を浮かべていると、
千里は「このままじゃ、後味が悪いよねー」と、そう言葉を口にするー。
「ーうんー…なんか巻き込んでごめんねー。
元々、わたしが憑依されちゃったことがきっかけでこんなことにー」
菜々花がそう言うと、千里は「ううんー大丈夫」と、
そう言葉を口にしながら、
そのまま自分の部屋に戻っていくー。
「ーーーーーーーーーーーー…」
自分の部屋に戻った千里は、
少しだけ表情を歪めると、
小さく息を吐き出してから、言葉を口にしたー。
「ーーー…わたしの身体を勝手に使った説教、したいのにー」
とー。
寂しそうな表情を浮かべながら、
千里はそのまま窓の外を見つめるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー。
病院長である父の許可を取って、
菜々花の親友である克枝は、再び
昏睡状態が続いている紀彦の様子を見に来ていたー。
「ーーーーーーーーーーー」
克枝は、そんな”紀彦”の身体を見つめると、
少しだけ表情を歪めるー。
「ーーー…菜々花も、千里ちゃんも、
あんたのこと心配してるよー」
とー、そう言葉を口にする克枝ー。
「特に、千里ちゃんはあんたに文句を言いたいってー。
ちゃんと、戻ってきて聞いてあげなよ」
克枝は少し寂しそうにそう言うと、
何も変わらない紀彦の様子を見て、
今一度大きくため息を吐き出すー。
がー
その時だったー。
”また”ハエが紀彦の身体の近くを飛び回るー。
「ーーも~~!…まだ柿沼くんは
死んでないから!」
克枝は面倒臭そうにそう言うと、そのハエを潰そうとするー
がーー
そのハエは、病室内に飾られている
植木鉢の土の部分に逃げ込むと、
奇妙な動きをし始めたー。
「ーー?」
克枝が困惑しながらその様子を見つめるー。
ハエが必死に土の上を動き回りー、
そこに、何やら”文字”のようなものを書き始めるー。
「えっ…?なにー?どういうことー?」
克枝が戸惑いながら、土を見ると、そこにはーー
”お れ だ”
と、そう書かれていたー。
「ーーーえ…」
克枝は、戸惑いながら”ハエ”の方を見つめるー。
あの時ーーー
2度目の”元に戻るための落下”をした際にー
”たまたま”ハエが近くを飛んでいたー。
その結果ー、紀彦は自分の身体ではなく、
ハエに憑依してしまったようだったー。
”意識のない身体”よりも、魂はどうしても、
意識のある身体に吸い込まれてしまうー…
その結果、紀彦はまた失敗しー、
自分の身体の周りを飛び回り、
何とか克枝らにそのことを知らせようとしていたのだー
「ーーえぇっ…今度はハエにー…?」
克枝がそう言葉を口にすると、土の部分に今度は
Yes と書いてみせたー。
「ーーーーー」
克枝は苦笑いしながら
「潰されないように、虫かごを用意するから待ってて」と、
そう言葉を口にするとー、
「ーまったく、世話が焼けるんだからー」と、
苦笑いしながら、歩きだしたー。
おわり
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コメント
千里に憑依した柿沼くんを見たい!という
感想を頂いたので、書いて見ました!~☆!
ハエ編は……流石にないかもしれませんケド笑
お読み下さりありがとうございました~!★
コメント
すご〜く面白かったです!
ハエになった後口の中に入れば元に戻れるのでは?と思った
感想ありがとうございます~!☆☆!
口の中に入ったら…
確かに戻れるかもしれないですネ~!
でも、失敗したら大変なことに…☆笑