自分の分身体を気になるあの子に憑依させた
男子高校生。
しかし、その相手は”憑依されているはず”なのに
いつも通りの振る舞いを続けていてー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あぁ~…くそっ…モヤモヤするー」
昼休みー
男子トイレでそんな言葉を口にする秀和ー。
”自分の分身体”を憑依させたはずの由香里が
”いつもと同じ様子”であることに、
秀和は困惑していたー。
”つまり、俺の分身は憑依に失敗したってことかー?”
そう言葉を口にする秀和ー。
ニヤニヤしながら、由香里がキスしてくれるシーンー
由香里が”俺の胸、触って見ろよ”と胸を触らせてくれるシーンー。
由香里に憑依した分身体が”由香里のような口調”で告白してくれるシーン。
そんな場面の数々を”妄想”して、楽しみにしていた秀和ー。
が、楽しみにしていたことが当日になって中止になったような、
そんな喪失感を味合わされた秀和は、
少しイライラしていたー。
「くそっー!あの分身、無能だなホントー…
でも、もう1本憑依薬を買おうとしても
高すぎてもう買えないし」
そんな言葉を口にしながら、トイレの外に出る秀和。
「ーー……」
しかし、秀和はふと、廊下を歩きながら思うー。
”ーー肝心な時に失敗するってのもー…
ある意味、俺っぽいのかもなー”
とー。
教室に戻った秀和は、由香里の方を見つめるー。
いつもと同じように”友達と一緒に”昼食を食べている姿を見て
”俺の分身、あんな大口叩いておいて失敗したのかー”と、
ため息をつくー。
がー
その時だったー。
「ーーーどうしたの?」
「ーーえ?あぁ、ううんーなんでもないよー」
由香里が、ふと、持ってきていた弁当の中の
”トマト”を手にとって、食べるのを躊躇している様子が見えたー。
「ーーー」
秀和は、特にそれを見た瞬間には何も思わなかったものの、
座席について、色々考えている最中に
ふと”ん?今、秋月さんー、トマト嫌がってたかー?”と、
そんなことを思うー。
秀和は”野菜が大嫌い”だー。
トマトを見ただけで、食欲が失せるぐらいには
野菜が嫌いだー。
「ーーー」
由香里の方をもう一度見つめる秀和ー。
もちろん、”由香里”も、トマトが嫌いなのかもしれないし、
別の理由で手を止めたのかもしれないー。
しかしー…何となく”由香里”のトマトを手にした時の表情を見て、
秀和は少しだけ違和感を覚え始めていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーまた明日~!」
放課後ー
由香里は友達と別れて、そのまま女子トイレの方に向かうー。
秀和は「くそっー結局何もなかったー」と、
悔しそうに呟くと、そのまま下校していくー。
しかしーーーー
秀和は知らないー
女子トイレに入った由香里が、ニヤニヤしながら
”自分の胸”を揉み始めていることをー。
「ーーへへへへへー は~~~我慢するの大変だよなぁ♡」
由香里は制服の上から自分の胸を嬉しそうに揉みながら
そう言葉を口にするー。
そうー、分身体の”由香里”への憑依は成功していたー。
「まさか、秋月さんの記憶まで全部読めるとは思わなかったけどー…
あ~~~……秋月さんの全てが俺のものになってるって感じで
滅茶苦茶興奮するー」
由香里は夢中になって胸を揉みながら
そう言葉を口にするー。
由香里に憑依して、由香里のこれまでの記憶が
全部流れ込んで来たー。
まるで、一人の人生を追体験したかのような
不思議な感覚だったー。
由香里の黒歴史やら、恥ずかしいミスやら、
そういった些細なことまで全てが流れこんで来てー、
記憶を辿るだけで興奮できるー。
それにー…
記憶が流れこんできたことによって、
”由香里のフリ”をすることもたやすいことだったー。
「ーーーへへへー
に、しても”俺”のあの不機嫌そうな顔ー
最高だったなぁー」
由香里はそう言葉を口にすると、
笑みを浮かべるー。
「ーー”俺”には悪いけどー、
憑依したのは”俺”なんだから、好きにさせてもらうぜ」
由香里はそう言葉を口にすると、
「ーーーはぁ~~なんでこんなに気持ちいいんだー?」と、
また夢中になって胸を揉み始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帰宅した秀和は、憑依薬の説明書をもう1回読み始めるー。
「くそくそっ!まさか失敗するなんて聞いてないぞー」
秀和は不満そうに、そんな言葉を口にしながら
説明書の文章をひとつひとつ、細かく読んでいくー。
いい加減な性格の秀和は、
憑依薬を使う前に、説明書も十分に読んでおらず、
中途半端にしか読んでいなかったー。
”失敗するとか、書いてあったのかなー”
そんなことを思いつつ、憑依薬の説明書を全部読んでいく秀和ー。
そしてーーー
その記述を見つけてしまったー。
”憑依後は、対象の脳に記憶されている記憶を読み取ることが可能”
という記述をー。
「ーーーー!」
それを見た秀和は、やはり”由香里”は既に
”俺の分身”に憑依されていて、”由香里のフリ”をしているだけなのではないかと
考え始めるー。
「いや、でもそれなら何で俺に何も言って来なかったんだー?」
秀和はそう言葉を口にすると、
ふと、”ある可能性”を思いつくー。
「ーーそ、そうかー…
俺がもし”女”だったらー、俺なんか相手にしたくないしー
俺なんかと付き合いたくもないー」
秀和はそう呟くー。
秀和は、自分のことが好きじゃないー。
もしも、自分が女子だったらー
”自分と付き合いたいか?”と言われたら、
確実に”No”だー。
自分と付き合うなんて絶対ごめんだー。
「ーーアイツー…くそっ…!
自分だけ楽しむつもりかー!」
秀和はそう確信すると、不満そうな表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「ー秋月さん!」
朝ー。
由香里が登校してくるのを待ち伏せしていた秀和は
由香里に声をかけるー。
教室に入られてしまうと、由香里は友達の美也子をはじめ、
他の子と一緒にいる機会が多くー、
由香里を呼び出すにしても、周囲から変に思われてしまう可能性があるー。
そのため、朝早くに学校にやってきて、
由香里が登校してくるのを待ち伏せしていたー。
「ーーー…あれ?田宮くんーおはようー」
由香里が”いつものような笑顔”で微笑むー。
「ーー……そ、そういうのやめないかー?」
秀和は緊張しながら”由香里”にそう言い放つー。
昨日、説明書を読んで
”由香里”は既に俺の分身に憑依されていると
確信ーーー
したはずの秀和ー。
しかしーー…
「ーーーえ……?ど、どういう意味ー?」
由香里が心底困ったような表情を浮かべているのを見て、
秀和は「え……えっと、そのー」と、
一気に、今日、学校に来るまでの
”強気な態度”が消えてしまうー。
「ーー……わ、わたし、何かしたー?」
由香里の言葉に、秀和は激しく動揺するー
”だ、騙されるな俺ー、俺の分身が、秋月さんのフリをしてるだけに
決まってるだろー…!騙されるな!”
心の中で何度も何度も自分に対してそう言い聞かせるー。
しかしー…
ついには「いや、ご、ごめんーなんでもない」と
秀和はそう言葉を口にしてしまうと、
何も聞けないまま、由香里との会話を終えてしまったー。
「ーーーへへへーそれでこそ”俺”ー」
由香里は立ち去りながらニヤッと笑みを浮かべると、
”ーどうせ、”もし俺の分身が憑依してなかったらどうしよう”とか
考えちゃって問い詰められないんだろ?”
と、由香里に憑依した分身体は心の中で呟くー。
”お前にも分かるだろー?
俺は”自分”が嫌いなんだよー
嫌いなやつと仲良くする必要なんてないだろー?”
由香里に憑依した分身体は笑うー。
秀和は”自分の顔”も、”自分のこと”も好きではないー。
そんな秀和が由香里に憑依すればー、
”自分”の彼女になったり、”自分”とHなことをしたりー、
そんなことをするはずがないのだー。
「ーーへへー俺が”分身”のほうでよかったぜー」
由香里はそう言葉を口にすると、
そのままゆっくりと自分の教室へと向かって歩き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー」
秀和は、由香里の方をちらっと見つめるー。
由香里は今日も友達の美也子と楽しそうに話をしているー。
ーー”いつも通り”にー。
”くそ…俺の分身はやっぱ憑依に失敗したのかー?”
表情を歪める秀和ー。
由香里とのあんなことやこんなことを期待していたのにー
そう思いつつ、秀和は”分身体”への怒りを募らせるー。
相手も自分自身ー…とは言え、
仮に由香里への憑依に失敗しているのだとしたらとんだ無能だし、
由香里に憑依する前に、他に可愛い子を見つけて”本体”に
何も言わずに憑依対象を変えたのだとしたら裏切者だー。
そしてー
もしも由香里への憑依が成功しているにも関わらず
”由香里のフリ”をしてとぼけているのであれば、
絶対に許せないー。
分身体は自分だけ楽しもうとしていることになるのだからー。
「ーーーーうん、じゃあ、それはまた今度ねー」
由香里が美也子と話を終えると、自分の座席へと
戻っていくー。
「ーーーー…」
秀和は、由香里の様子から”怪しいところ”を見つけることが出来ずに
表情を歪めるー。
がー…
”絶対に化けの皮を剥いでやるー”
と、やはり自分の分身は既に由香里に憑依しているのではないかと、
そう考えながら、この日から秀和は由香里の学校内での行動を
細かく”観察”し始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーふふふふふ♡」
憑依された由香里は、帰宅後に笑みを浮かべるー。
「ーーー…は~~~~~…”俺”の戸惑う顔ー
最高だったなぁー…」
由香里はうっとりとした表情を浮かべながら
笑うと、
今朝の”由香里のフリ”をした時に戸惑っていた自分の本体ー
秀和のことを思い浮かべながら、
「ーーー分身である俺の方が、こんなに可愛い身体を手に入れたんだからー
もう”上”なんだよー…へへ」と、
ニヤニヤと笑うー。
”秀和”本人も、逆の立場だったら同じことをしたー。
”秀和”は自分が嫌いだー。
だから、由香里の身体を手に入れた秀和の分身体も、
こういう行動に出ているー。
”俺”を楽しませるために、せっかくゲットしたこの身体を使うなんて、
”あり得ない”ことなのだー。
「ーーへへへーさ~て…秋月さんの身体を使って金稼ぎっとー」
由香里はニヤッと微笑むと、
”由香里の身体”を使って、ある目的のために”金稼ぎ”を始めたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからも、秀和は”由香里”のことを観察していたー。
すると、由香里は”妙にトイレに行く回数が多い”ことに気付いたー。
授業が終わる度にトイレに行っている気がするー。
「ーーーー…」
この日も、1時間目の終わりにトイレに行き、
2時間目の終わりにも、3時間目の終わりにも、由香里は
トイレに行っているのが分かったー。
「ーーーー」
秀和は表情を歪めるー。
「あいつ…トイレの中で楽しんでるんじゃないだろうなー…」
そんな疑念を抱くー。
がーー…
元々、”由香里”がどのぐらいの頻度でトイレに行っていたかなんて、
秀和は知らないー。
もしかしたら、元々由香里は毎回の授業が終わる度に
トイレに行っていた可能性も十分にあるし、
まだ”確実に黒”とは言えないー。
「くそっー…秋月さんに俺の分身が確実に憑依してるっていう
確たる証拠を掴まないとー…」
ガリッと爪をかじる秀和ー。
もしー、
単に分身体が憑依に失敗しているだけであった場合ー、
ヘタな行動を取れば、由香里に変態扱いされてしまうー。
そうなれば学校にも居づらい状況になってしまうだろうし、
それは避けたいー。
「ーーーあ~…くそー
憑依薬がもうちょい安ければもう1本買って、
試せるのにー」
秀和はそんなことを思いながら、由香里がトイレから出てきたのを見て
その様子を見つめるー。
「ーーーー」
少しだけ、顔が赤らんでいるようなーー
気がするーー
いや、でも、やはりそれだけでは”トイレの中で楽しんでいた”とは限らないー。
「ーーー…はぁ」
秀和は大きくため息を吐き出すと、
この日も何の確証を得ることもできずに
1日を終えるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
由香里の親友である美也子から、秀和は突然呼び出されたー。
イヤな予感をしながら、美也子に指定された場所に向かうと、
美也子は不満そうに言葉を口にしたー。
「ーねぇ、なんで最近ー、由香里のことばっか見てるのー?」
とー。
「ーーえ…」
美也子の思わぬ言葉に、秀和は青ざめながら
「ーーい…いや、そ、それはーー」と、
言い訳も浮かばず、明らかに挙動不審な態度を見せてしまうのだったー…。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
分身だけ憑依を堪能している状況…★!
結末は、明日のお楽しみデス…!
今日もお読み下さりありがとうございました~!☆!
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