<憑依>確かに俺のはずなのに①~分身体~

自分の分身を相手に憑依させる力で、
意中の子に憑依した彼。

しかし、”自分の分身”が憑依したはずのその子は
いつも通り振る舞い続けていて、
彼は翻弄されていくことにー…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

田宮 秀和(たみや ひでかず)は、
ニヤニヤしながら、”目の前”に立つ
”自分自身”の姿を見つめていたー。

「ーーへへへへ…すげぇー本物だー」

秀和はニヤニヤしながら、そう言葉を口にすると、
目の前に立つ”自分自身”も言葉を口にしたー。

「ーへへへへーそんな驚いたツラするなよー」
とー

「ーお、おわっ!?し、喋るのかー!?」
秀和は、目の前の自分相手に心底驚いた様子でそう言葉を口にすると、
「ーへへ…そりゃそうだろ?その”憑依薬”は、自分の分身体を生み出して
 相手に憑依させる薬なんだからよー」と、
目の前にいるもう一人の秀和ー…
”秀和の分身体”がそう言葉を口にした。

「ーーーま…まぁ、そ、それはそうかー」
秀和が戸惑いの表情を浮かべながら笑うー。

彼の目の前にいるのは”秀和の分身体”ー。
秀和は先ほど、数日前にネットで偶然見つけて注文した”憑依薬”を
口にし、”自らの分身体”を生み出したのだー。

この憑依薬は自分の分身体を生み出し、
好きな相手に分身を憑依させることができるー…というもの。

”本人自身”が憑依することはできないものの、
分身体を憑依させることによって、
その相手を意のままにすることができるー。

「ーーお、俺の分身ってことは、当然ー
 言わなくても俺のしようとしてることは分かるよな?」

秀和が、自分の分身体にそう言葉を口にすると、
「へへー。決まってるだろー」
と、分身体は”当然”と言わんばかりに答えるー。

秀和の目的は
同じ高校に通うクラスメイト、
秋月 由香里(あきづき ゆかり)ー。

明るい性格で、誰にでも優しいクラスの人気者だー。

秀和は、そんな由香里に好意を抱いているものの、
昨年、告白した際に振られてしまったー。

顔も特にイケメンではないし、
どことなく不真面目でいい加減な性格の秀和ー。

”俺なんかが秋月さんと付き合えるわけないよなー”
と、そう思いつつ、その想いを封印してきたものの、
先日、ネットを眺めていた際に
たまたま”憑依薬”の存在を知り、
それを購入ー、
”俺の分身”を、由香里に憑依させて、
由香里を”俺のもの”にしようと、そんなことを目論んでいたー。

「ーーしかし、へへーー…
 俺が秋月さんになれるなんてー
 考えただけで興奮するぜー」

秀和の分身体がそんな言葉を口にするー。

「ーーーーへへー憑依する前から
 そんなに興奮しててもいいけどー、
 ”憑依”をしくじるなよ?」

釘を刺すようにそう呟く秀和ー。

「へへー分かってるってー。
 でも、あの顔も、あの身体も、あの声も
 俺のものになるって考えたら
 興奮せずにはいられねぇだろ?」

秀和の分身体がニヤニヤしながら言うー。

”さすがは俺”
秀和はそう思ったー。

確かに分身体の言う通りー。
もしも、自分が憑依する側の立場だったら
同じことを言うだろうしー、
同じ思考をしているが故に、目の前にいるのが
正真正銘”俺の分身体”であることが分かるー。

「ーへへー
 この顔とも、この声ともおさらばできると思うと
 ホント、楽しみだなぁ」

秀和の分身体がニヤニヤしながら言うー。

秀和は自分の顔も、声もあまり好きではないー。
そんな考え方もやはり”同じ”だー。

「ーへへへへーじゃあ、さっそく、秋月さんに憑依して来いよー」
秀和がそう言うと、秀和の分身体は
「もちろん、言われなくてもそのつもりだぜー?
 ”俺同士”で喋ってても面白くもねぇし」と笑うー。

「ははー。だな」
秀和は頷くと、
「ーじゃあ、明日朝、30分前に学校に来れるかー?」
と、そう言葉を続けるー。

今日はもう遅いー。
今から秀和の分身体が由香里を乗っ取ったとしても、
秀和の家に来させるのは、難しいー。

由香里の家族にも変に思われてしまうだろうしー、
秀和の家族にも変に思われてしまうだろうしー、
それに、中身が男とは言え、”憑依された由香里”の
夜の一人歩きはリスクがあるー。

「ーーへへー、もちろん。待ち合わせ場所は”部室”だろ?」
秀和の分身体が笑いながら言うと、
秀和は「ーへへへー言う前から分かっててくれるなんて、さすが分身」と、
嬉しそうに頷くー。

「ーじゃ、そろそろ俺は行くぜー!
 へへへへー秋月さんに憑依なんて、たまらねぇー ふへへへへ」

秀和の分身体はそれだけ言うと、天井をすり抜けて
そのまま由香里の家へと向かって行くー。

一人になった秀和は、ふぅ、とため息をつくとー、
「ーーー…でも、どうせなら俺自身が憑依したかったなー」と、
少しだけ嫉妬のような感情を覚えたー。

”分身体”だけがいい思いをして、
本体である自分は”憑依された秋月さん”と楽しむことしかできないー。

「いやー、まぁ、でもいいかー。
 明日からは秋月さんが俺の彼女になるんだしー、
 それにーー…秋月さんとーーえへへへー」

”分身体”に憑依された由香里とあんなことやこんなことができる、と
想像しただけでゾクゾクするー。

秀和はそんなことを思いながら、静かに笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーへへ…ここが秋月さんの家だったなー」

秀和の分身体はそう言葉を口にしながら、
由香里の家にやってきていたー。

早速、透明な自分の霊体を移動させて、
由香里の部屋を探すと、
由香里は自分の部屋で、スマホを手に、
友達とメッセージのやり取りをしている最中だったー。

「ーーへへへー
 あぁ~~綺麗な髪ー」

霊体の状態のまま、秀和の分身体は、由香里に近付くと
その髪を見つめるー。

「この顔も可愛すぎるだろー」
顔を目の前で凝視するー。

しかし、秀和の分身体は霊体の状態ー。
秀和本人以外には、その姿を目視することはできないし、
その声が聞こえてしまうこともないー。

顔をじ~っと見つめる秀和の分身ー

「ーしかもこの足、エロっ」
由香里の生足をじ~っと見つめながら
そう言葉を口にするも、由香里は全くそれに気づく様子もないー。

「ーーへへー眺めてないで、俺のものにしちゃおっと」
秀和の分身体はついにそう言葉を口にすると、
そのまま由香里の身体に飛び込みーー
由香里に憑依したーー

「ーーひっ!?!?」
由香里がビクッと震えて、声を漏らすー。

「ーーーー……」
しばらく口を半開きにしたまま、固まっていた由香里ー。

しかしー、やがてニヤッと笑うと
由香里は嬉しそうにスマホを落としたまま
自分の胸を揉み始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

秀和は「ーったくー」と、呟きながら、
約束した部室にやってきていたー。

昨日の夜ー、
てっきり”由香里に憑依した俺”から、
何か連絡があるかと期待していたものの、
結局、何の連絡もなかったことで、
秀和は少し拗ねていたー。

「憑依完了したぜ~!とか、そんぐらい連絡くれてもいいのになー」
不満を口にする秀和ー。

しかし、こっちから由香里に”憑依できたか?”などと
連絡を送ることはできないー

そもそも連絡先を知らないし、
仮に知っていたとしても、
万が一、分身体が憑依に失敗していたりした場合、
正気の由香里に対して”憑依できたか?”というメッセージを
送りつけてしまうことになるー。

流石にそれは、あまりにもリスクが高すぎるし、
することはできないー。

だから、今日まで我慢したー。

がー、それももうすぐ終わりだー。

「ーへへへーいきなりキスとかしちゃったりしてなー」
秀和がニヤニヤしながら、
憑依された由香里の到着を待つー。

しかしー、”登校時間の30分前”ー
昨日、分身体と約束した時間になっても、憑依された由香里は
到着せずに、秀和は困惑の表情を浮かべるー。

”ーーったくー”
イライラしながら立ったまま足をトントンとし始める秀和ー。

「ーまぁ…確かに俺も時間にルーズだからーーー
 俺らしいっちゃ、俺らしいけど」
秀和は時計を見つめてソワソワとし始めるー。

確かに、秀和自身、よく待ち合わせに遅刻することもあるし、
いい加減な性格だー。

”俺の分身体”であれば、
約束の時間に遅れることはよく分かる。

それにー、由香里に憑依できたとすれば
どうせ、昨日は一晩中、由香里の身体を楽しんでいたに違いないー。
ヘタをすれば寝坊している可能性だってあるー。

秀和自身が由香里に憑依したら
確実に由香里の身体で、欲望の限りを尽くすだろうし、
夢中になって色々なことをするだろうー。

だから、分身体も昨日の夜、きっとそうしたに違いないー。

「ーーー…でも、分かっててもモヤモヤするなぁ」

約束は30分前だったにも関わらず、
”俺の分身体”に憑依された由香里と会えるとワクワクして、
45分前にはここに到着してしまった秀和は
なかなか由香里がやってこないことに、次第にイライラし始めたー。

「ーくそっ!分身のやつばっかり楽しみやがって!」
そんな不満を吐露し始める秀和ー。

がー、それでも由香里は到着せずに、
やがて、普通の登校時間が近付いてきてしまったために
秀和は”期待させられて放置された”ような気分になりながら
教室へと向かうー。

”あ~くそっ!俺の分身、絶対、秋月さんに憑依して
 色々しまくって、寝坊してやがるー!”

そんな風に思いながら教室にたどり着いたその時だったー。

「ーーーは…?」
秀和は表情を歪めるー。

それもそのはずー。
”由香里”が教室にいたからだー。

「ーーーっ…」
秀和は”ど、どういうことだー?”と思いながら、
由香里の方を見つめるー。

「え~?ホントに~?でも、それって美也子(みやこ)ちゃんは
 何も悪くないよね~?」

由香里はいつものように、友達の美也子や、
他のクラスメイトたちと楽しそうに談笑しているー。

「ーーー……え……」
秀和は戸惑うー。

由香里の振る舞いは”いつも通り”ー
分身体が、昨日、由香里に憑依したはずなのにも関わらず、
由香里は”いつも通り”振る舞っているのだー。

”ど、どういうことだー?どうなってるー?”
秀和はそう思いながら、さりげなく由香里の近くまで行き、
由香里の反応を伺うー。

だが、由香里は秀和が近くにいても、
特に気にする様子はなく、美也子たちと話を続けているー。

やがてー、先生が来る時間が近くなると、
美也子たちは座席へと戻っていき、由香里も荷物を机の中に入れたり、
準備を始めるー。

「ーーーあれー?田宮くんーどうかしたの?」
由香里がふと、近くにいた秀和に気付いてそんな言葉を口にするー。

「ーーえ…?あっ… え、えっとー…あ、秋月さんー…」
急に声を掛けられて秀和は戸惑いながら言葉を口にするー。

去年、告白して振られたあとも由香里は
特に変わらず、今まで通り”他のクラスメイトと同じように”
接してくれているー。

特別扱いしてくることもないし、
逆に無視をしたり、避けたりするようなこともなく、
本当に”ふつう”の扱いだー。

「ーーえ?なになに?何かあったの?」
由香里が少し笑いながら言うー。

そんな由香里に対して、秀和は
「あ、いやー、その、秋月さんー、どこか”体調とか”悪くないかなぁってー」
とー、”遠回し”に、分身体の憑依を確認しようとするー。

「ーえぇ?急にどうしたのー?別に何もないよー
 いつも通りだよ」

由香里が笑いながら、元気であることを示すためか、
腕を少し動かして見せるー。

「は、はははー、そ、そっかー。それならよかったー」
秀和はそう言いながらも、少しその顔色は青ざめていたー

”ど、どうなってんだよー!?俺の分身はどうしたんだー!?”
秀和は戸惑うー

昨日、”分身体”は、確かに由香里に憑依するために、
由香里の家に向かったはずー。

今の由香里は、たしかに”俺”であるはずー。

しかし、当の本人は”完全にいつも通り”の振る舞いをしていて
憑依されているような様子はないー

”まさか、俺の分身ー、憑依に失敗したのかー?”
秀和はイヤな予感を覚えるー。
それと同時に、
”いや、待てよー?秋月さんの家に行く途中にもっと可愛い子を見つけて
 そっちに憑依したとかー?”
と、”自分ならそれもあり得るかもしれない”と、そんなことを思い始めるー。

それでもー、答えは見つからずに一人でモヤモヤしてしまう秀和ー。

”由香里との楽しい日々が始まる”
そう思っていたのに、裏切られた気分になってしまった秀和は
「なんだよー」と、少し不満そうにそう言葉を口にしたー。

「ーーーーーー」
そんな秀和をチラッと横目で確認した由香里は
一人、誰にも気付かれないようにニヤリと笑みを浮かべたー…。

②へ続く

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自分の分身を憑依させるタイプのお話デス~!☆

分身が憑依したはずなのに、振る舞いがいつも通り…!

どうなっているのかは、明日のお楽しみデス~!

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