彼は、大学からの帰り道に
偶然、”あるもの”を拾ってしまったー。
その拾ってしまったものとはー、
”憑依薬”ー。
それが原因で、彼は命を狙われることにー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”今日は帰ったら、何するかなぁ”
マイペースな男子大学生、渡部 俊太(わたべ しゅんた)は
そんなことを思いながら、大学での1日を終えて
家に向かって歩いていたー。
彼はー、あまり人付き合いが好きではなく、
友達もそれほど多くないタイプー。
かと言って、いじめられたりしているわけではなく
普通に話せる相手もいるものの
とにかくマイペースで、必要以上に人と
群れようとしないー、
そんな人間だったー。
”そうだーあれの続きをやるかー”
少し前に買った500ピースぐらいの夜景のジグソーパズルが
途中だったことを思い出した俊太はー、
”あれ、クッソ難しいんだよなー”などと思いながら、
裏路地へと入っていくー。
ほとんど人が通らないその裏路地ー。
しかし、ここを通ると5分ぶんぐらい近道になることもあって、
俊太はいつも、この場所を通って大学から家に帰宅していたー。
”ーあ、やべっ!そういえばこの前、実家に行った時
俺の部屋から、アレ持ってくるの忘れてたー”
そんな、日常的なことを考えながら
いつものように裏路地を歩く俊太ー。
がーーー
「ーーん?」
ちょうど、目の前のマンホールの上に
紙袋が置かれているのに気づいた俊太は足を止めたー。
「ーなんだこれ?落とし物?」
マンホールの上に、堂々と置かれているその紙袋を見て、
俊太は首を傾げるー。
周囲をキョロキョロと見つめるも、特に人の気配はないー。
俊太は、”忘れ物か落とし物か知らないけど、こんなところに置いていくなんて”
と、そう思いながらその紙袋を手にするー。
得体の知れない紙袋ー。
それをいきなり触ってしまう俊太ー。
俊太はマイペースなだけではなく、
どこか無警戒な男子大学生で、
数少ない友達からも”お前なぁ、もうちょっと慎重になれよ”
などと、いつも言われてしまっているー。
「ーーーー”憑依薬”ー?」
紙袋を手に、中身を確認した俊太が首を傾げるー。
紙袋の中には”憑依薬”と書かれた薬のようなものが
入っていたのだー
”先日のご依頼通り、”憑依薬”を準備しました。
1錠服用するごとに1回、憑依することができるタイプですー。
お役立てください”
そう、書かれた紙も同封されているー。
「ーーーーな、なんだ”憑依薬”ってー?」
戸惑いの表情を浮かべながら、俊太がさらに紙に書かれている
内容を確認すると、
”憑依したあとは、その相手の身体を自由に動かすことができます”
”憑依している状態のままその身体が死亡すると、強制的に
憑依が解除されます(遺体に憑依することはできません)”
”憑依されている状態の人間には記憶は残りません
安心してお使いください”
そんな、文言が並んでいるー。
「ーーーーー誰!?」
ふと、そんな声が聞こえたー
ビクッとして俊太が振り返ると、
そこには、サングラスの女がいたー。
「ーー”アビス”の人?」
サングラスの女の言葉に、俊太は「えっ!?えっ!?」と、困惑するー。
”アビス”とは何かー。
まるで意味が分からないー。
「ーーえ…い、いえ、玄武大学の法学部に通っている
わ、渡部ですけどー」
俊太は何故か自己紹介をしてしまうー。
「ーー…学生ー?アビスじゃないの?」
サングラスの女が不満そうに言うと、
俊太は「ーーえ…あ、はいー」と、戸惑いながら答えるー。
その上で、こう質問したー
「あの…”憑依薬”って何ですか?」
とー。
「ーーー…!」
サングラスの女は表情を歪めると、
舌打ちしてから、
俊太を見つめたー。
「ーーーー見たのね?」
とー、そう言葉を口にしながらー。
「ーえ、あ、はいー」
正直に答えてしまった俊太ー。
すると、サングラスの女は、突然、”銃”のようなものを取り出したー。
「ーひっ!?!?えっ!?」
驚く俊太ー。
「ーその憑依薬はね、
わたしたち”姫百合会(ひめゆりかい)”が、”アビス”から購入したものなのー。
さ、早くそれを手渡しなさいー」
サングラスの女はそう言葉を口にするー。
「ひ、姫百合会ー?」
困惑する俊太ー。
「ーーこ、こ、こ、これって、他の人に憑依できる薬なんですよねー?
こ、こんなもの、何に使うつもりなんですかー?」
マイペースな俊太は、思ったことを素直に聞いてしまうと、
サングラスの女は、
「それは言えないわー。さぁ、それを渡しなさいー。
そうしたら、楽に殺してあげるー」と、そう言葉を口にするー
「こ、こ、殺す!?
お、俺ー…殺されるんですか!?」
”信じられない”と言いたげな表情で俊太がそう言うと、
サングラスの女は、
「だって、”見てはいけないもの”見ちゃったんだものー」と、笑うー。
俊太は、偶然ー
”犯罪組織アビス”と”姫百合会”の”取引現場”を目撃してしまったのだー
この裏路地は、ほとんど人が通らないー。
”近道になるから”といつも通っている俊太ぐらいしか
本当に通らない裏路地で、
犯罪組織アビスと姫百合会はそこで取引を行っていたー。
まず、姫百合会の人間が、大金の入ったアタッシュケースを
マンホールの上に置き、一度立ち去りー、
それを確認した犯罪組織アビスの人間が、
憑依薬の入った紙袋を置いて立ち去るー。
そうして、取引を行っていたのだー。
俊太は偶然、金の入ったアタッシュケースが回収され、
憑依薬の入った紙袋が置かれたあと、
ここに来てしまって、紙袋の中身を見てしまったー。
「ーーさぁ、それを渡してー」
姫百合会に所属するサングラスの女が、そう言葉を口にすると、
俊太は「ま、待ってくださいー俺、まだ死にたくないですー」と、
そう言葉を口にするー。
「ま、まだ、夜景のジグソーパズルが150ピースぐらいまでしか
完成してなくてー」
俊太がそう言うと、サングラスの女は思わず失笑するー。
「ーそうー。運が悪かったわねー」
興味なさそうにサングラスの女が言葉を続けると、
「それを渡して、楽に死ぬかー
渡すのを拒んで、地獄を見て死ぬか。選びなさい」と、
サングラスの女は言ったー。
”し、死にたくないー”
俊太はそう思いながら、どうにか生き延びる方法を
探そうと、頭をフル回転させながら考えるー。
そしてーーー
「ーわ、渡しますー!」
俊太はそう叫ぶと、紙袋を手にしたー。
「ーー!?」
がー、俊太は突然、紙袋の中から憑依薬の錠剤を取り出すと、
それを自分が飲もうとするー。
「ーー何をしてるの!?」
サングラスの女がそう叫ぶと、銃を放とうとするー。
しかし、俊太は大学帰りの自分のカバンを女に投げつけ、
そのまま憑依薬を飲むとー
”霊体”となったー。
「ーー…し、し、死んでたまるかー!」
霊体になった俊太は、銃を手に困惑した表情を浮かべている女を見て、
その女に自分の霊体を突撃させるー。
「ーーうっ…!?」
ビクッと震える姫百合会の女ー。
「ーーー…ぁ……ぁ…う、嘘ー?マジかー?
ほ、ホントに俺が憑依できてるー!?」
姫百合会の女に憑依した俊太は、
「ーーくそっ…なんなんだよこの女ー」と、
不満そうに呟きながら、銃をすぐに投げ捨てるー。
「ーー…」
ゴクリ、と唾を飲み込むサングラスの女ー
「ーー俺のこと殺そうとしてきた女だし、
ちょっとぐらいいいよなー?」
そう思いながら、女の胸を揉み始める俊太ー。
「ーうわっ!?なんだこれ!?えっ?すげぇ」
ニヤニヤしながら夢中になって胸を揉み続ける
サングラスの女ー。
夢中になりすぎて、サングラスが外れー、
近くの金属に反射して、その顔が見えるー。
「ーーすっげぇ綺麗な人じゃんー」
そう思いながら、女に憑依した俊太は
「ーこんな綺麗な人が犯罪者とか、すげぇ」と、
一人、夢中になって、さらに身体を弄ぶー。
初めての”女”の身体に夢中になって
身体中を弄び尽くすと、はぁはぁ言いながら
「そうだー…この人、どうにかしないとー」と、
そう言葉を口にするー。
この、姫百合会とかいう組織の人は
自分の命を狙ってきたー。
このままにしておけば、殺されるかもしれないー。
「そうだ…」
先程投げ捨てた銃の方を見つめると、
「警察に捕まえてもらおう」と、そう言葉を口にして、
ニヤニヤしながら銃を拾うー。
そして、服も何もかもを脱ぎ捨てると、
銃だけを持った状態で大通りに飛び出して、
笑いながら銃を上空に向けて発砲したー。
「ーあははははは!わたしは拳銃を持ってる変態女で~~~す♡」
姫百合会の女の身体で、狂ったように笑う俊太ー。
これでー、この女の人は逮捕されるはずー。
しかも、もうまともに外を歩くこともできないだろうー。
”ー俺のこと殺そうとした仕返しだ!”
そんなことを思いつつ、パトカーのサイレンが聞こえるまで、
銃を手にゲラゲラと笑うと、
一般人や警察の人が被害を受けないように、
銃の弾がなくなるまで、上空に向けて発砲すると、
弾切れになったのを確認して、その女の身体から抜け出した。
「あぅ…」
憑依から抜け出すと、姫百合会の女は、その場に倒れ込んで
ピクピクと痙攣し始めたー。
そのまま、警察官たちが女に手錠をかけるのが見えるー。
「ーーーよし。これで俺も殺されずに済んだ!」
俊太は霊体に戻った状態で嬉しそうにそう言葉を口にすると、
霊体のまま、元居た裏路地へと戻り、
そのまま”実体”に戻ったー
「ーすごいー…憑依薬ってホントにすごいやー」
俊太はそう思いながら、紙袋を元々置かれていた場所に置いて
立ち去ろうとするー。
だがーーーー
”ーーーー…いや、待てよー?”
俊太は腕組みをしながら考えるー。
あの女を破滅させたとは言え、
”姫百合会”とやらには、まだ構成員がいるはずー。
それに、姫百合会に憑依薬を販売したという”アビス”とかいう
恐らく組織っぽい名前の団体からも命を狙われる可能性があるー。
「ーーー…俺のこと、気付かれてなきゃいいけどー」
憑依薬の入った紙袋をこの場所に放置して
立ち去れば、”後は関係ない”状態になれるなら、それでいいー。
でもー…
憑依薬を1個勝手に使っちゃったし、
姫百合会の回収しに来た女を破滅させちゃったしー、
絶対に、”誰の仕業だ!?”となるはずー。
「ーーーー…や、やっぱ俺、殺されるのかー?」
そう思った俊太は、今一度紙袋の方を見つめるー
「そ、そうだー」
俊太は思うー。
今のように”憑依薬”があれば、無敵だー。
仮に命を狙われたとしても、相手を破滅させてしまえばいいー。
そう思った俊太は、紙袋を手に、周囲をキョロキョロしながら
逃げ出していくー。
恐らく、アビスとかいう組織も
姫百合会という組織もまともな組織じゃないー。
”憑依薬を盗まれました”なんて警察には言えないだろうし、
つまりは、これを持ち去っても罪にはならない、と俊太はそう判断したー。
そしてーーーー
帰宅した俊太はーー
マイペースぶりを発揮して、
のんきにいつも通り、ジグソーパズルを真剣な表情で解き始めていてー、
もう、さっきのことなど忘れてしまっていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー由美(ゆみ)が、警察に捕まった?
それは、本当ですかー?」
眼鏡をかけた生徒会長のような雰囲気の真面目そうな女が言葉を口にするー。
”由美”とは、先ほど俊太に憑依されて、警察に捕まった
サングラスの女のことだー。
「ーーはいー。間違いありません
憑依薬の回収にも失敗しましたー」
部下のポニーテールの女がそう言葉を口にすると、
姫百合会の会長ー、美琴(みこと)は
「そうですかー」と、残念そうにため息をついたー。
「ーーーーーー」
まるで生徒会長のような雰囲気の真面目そうな風貌の美琴ー。
しかし、彼女は”姫百合会”を支配する冷徹で冷たい
危険人物ー。
「ーーー関係者を一人残らずぶち殺してください」
にこっと微笑みながら、由美がそう言うと、
ポニーテールの女は、少し気まずそうにしながら「分かりましたー」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー姫百合に売りつけた憑依薬が、消えた?」
犯罪組織アビスー。
その現首領の男・魔崎(まざき)が不満そうに表情を歪めるー。
「はいー。どうやら姫百合会の回収しに来た女が
ガキに返り討ちにされたようでー」
男が言うと、魔崎は笑みを浮かべるー。
「ガキかー」
魔崎はそれだけ呟くと、静かに立ち上がるー。
「ーー…俺はなー、女、子供、老人ー
誰であろうと容赦はしないー。」
魔崎はそう言葉を口にすると、
「ーそのガキを消して憑依薬を取り戻せ」と、
邪悪な笑みを浮かべながら、命令を下したー。
②へ続く
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変なモノは拾っちゃダメですネ~笑
俊太くんは大ピンチデス…!
改めて、9月もよろしくお願いします~!☆
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