ゲームの世界で、世界を支配することに成功した魔王。
しかし、魔王はそれだけでは飽き足らず
現実世界をも憑依するため、人間の身体を乗っ取り、
現実世界への進行を開始したー。
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「ーー雅人(まさと)まだアレやってるの~?」
同じ高校に通う彼女・山内 明美(やまうち あけみ)に
そんな言葉を掛けられた彼氏の龍山 雅人(たつやま まさと)は、
「ん?リアルファンタジーオンラインのこと?」
と、そう言葉を口にするー。
「そうそう それー」
明美がそう言葉を口にすると、雅人は「うんーまだやってるよー」と、
そう言葉を口にするー。
スマホを手に、最近話題のRPGゲーム
”リアルファンタジーオンライン”の画面を見せる雅人ー。
「ー最近、”どう”なの?」
明美のそんな言葉に、雅人は苦笑いしながら
「”魔王”に世界征服されちゃってー」と、そう呟くー。
「えぇ~~…ホントに?
それで、どうなっちゃったのー?」
明美が笑いながら言うと、
雅人は「もう滅茶苦茶だよー。僕がいた街とか破壊されつくしちゃって」と、
そう言葉を口にするー。
”リアルファンタジーオンライン”ー。
”その世界はリアルに生き、動いているー”
そんなキャッチコピーと共に展開されているオンラインRPGゲームだ。
とある企業が開発した最新鋭の人工知能が使われており、
ゲーム内のキャラクター一人一人が、まるで人間のように思考し、
行動するー。
ゲーム内の世界の情勢は刻一刻と変わり、
プレイヤーたちの活躍次第では魔王を倒し、平和な世界を作り上げることもできるし、
逆にプレイヤーたちが敗北を続けたりすれば、
魔王によって世界征服されてしまうー。
”正義は必ず勝つ”なんて物語はそこには存在せず、
最終的にゲームの世界自体が滅亡することもある、
そんな”リアル”を追求したRPGゲームだったー。
そんな内容から、リアルファンタジーオンラインは多くのプレイヤーが
プレイしていて、今では大ヒット作品にまで成長したー。
しかし、プレイヤーたちの中には魔王に味方したり、
”ゲームの世界が魔王に世界征服されたらどうなるんだろう”という
好奇心から、他のプレイヤーを狩ったり、ゲーム内の村人を殺害したりする
”悪徳プレイ”をするプレイヤーも増えた結果ー、
”リアルファンタジーオンライン”の世界は魔王に掌握されてしまったのだったー。
ゲーム内の人々は弾圧され、プレイヤーたちも
かなり苦しい行動を強いられていたー。
「魔物のレベルが高くなりすぎてさー。全然敵わなくなっちゃってー」
雅人が苦笑いすると、
「ーそのままだと、どうなっちゃうのー?」と、
彼女の明美が、雅人のスマホを覗き込みながら言うー。
雅人は、近くにいる明美にドキドキしながら
「さ…さぁ…こうなったのは初めてだしー…
AIで制御されているみたいだから、最終的にどうなるかは
開発者にも分からないんじゃないかなー」と、
そう言葉を口にしたー。
雅人は、ゲームが好きで、
どちらかと言うと恋愛とは縁のないタイプだったー。
が、生徒会選挙の実行委員をやった際に、
生徒会書記に立候補した明美と喋る機会が増えて
そのまま意気投合ー、
自分でも”予想外”に、彼女が出来たのだったー。
そんな明美は、元々はゲームは
人気の可愛らしいパズルゲームをちょっと遊ぶ程度だったものの、
彼氏である雅人の遊んでいるゲームには
興味を示したり、こうして話に乗ったりしてくれているー。
気を遣われているのかな?と、思うこともあるものの
明美は本当に興味深そうに話を聞いてくれて、
一度話したこともよく覚えてくれているしー、
雅人からすれば、仮に明美が”本当は興味ないけど、聞いてくれている”のだとしても、
それが嬉しかったー。
「ーーちょっとわたしもやってみようかな~!
世界征服されちゃってるゲームなんて、
なんだか面白そう!」
ふと、明美がそんな言葉を口にするー。
「ーえっ!?!?ほ、ホントに!?」
雅人がそう言うと、明美は「うん!確か無料でできるんだよね?」と、
そう確認しながら、優しく微笑んだー。
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”クククククー雑魚どもめー…”
リアルファンタジーオンラインー。
その世界の中の”魔王”は、笑みを浮かべたー。
このゲームのキャラクターは”AI”によって制御されているー。
がー
魔王は”自我”に目覚めてしまったー。
”ーそうかーここはゲームの世界ー。
我は所詮、ゲームの世界を掌握したに過ぎないということかー”
少し前に”自我”に目覚めた魔王は、
ここがゲームの世界であることを理解し、
自分の置かれた立場を理解するー。
「ーークククー我に歯向かうなど愚かなー」
既にレベル98に達した魔王は、
レベル52のプレイヤーが向かってくるのに気付いて、
思わず笑うー。
レベル52の勇者の攻撃を喰らう魔王ー。
しかし、レベル98の魔王にはほとんどダメージはなく、
魔王は特別な技も、魔力も使わずに
ただ、雑にレベル52の勇者を蹴り飛ばしたー。
”GAME OVER”
この世界での”死”を迎えると
再び1からのプレイとなるー。
それもまた、”リアル”を追求した結果だー。
「ーーークククー
この世界はもう我のモノー
しかしー…」
魔王はそう呟くと、空を見上げるー。
「ー我の野望はこんな小さな箱庭だけには留まらぬー
この”外の世界”ー
人間どもの”現実世界”も我が手中に収めてくれようー」
魔王は、そう言葉を口にすると、
”現実世界”の征服を夢見始めるー。
それぞれのキャラが知能を持ったこの世界ー
ゲーム内の”魔王”は、自我を持ち
今、開発者も予測できない”暴走”をしようとしていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
帰宅した明美は、スマホで”リアルファンタジーオンライン”を
起動していたー。
”キャラクターはどんな風に作ればいいのー?”
明美は、彼氏である雅人とメッセージのやり取りをしながら
ゲームを進めていくー。
”後から姿も変えられるし、武器も初期装備が微妙だったら
後でゲーム内のお金で買えるから、あまり難しく考えなくても
大丈夫だよ”
雅人からそんな返事が届き、明美は”わかった!ありがとう”と、
そう返事を送ると、ゲーム内のキャラクターを完成させるー。
「ーーうんうん!魔法使いって感じ!
雅人のこと、回復させてあげよっと!」
この先、雅人と一緒にプレイすることになった時のために、
回復魔法を使うことができる職業を選ぶと、
明美はそのままゲームを開始したー。
「ってーーー…なんか、草花が枯れてるー」
明美は少しだけ表情を曇らせるー。
ゲーム内の世界の状況はリアルタイムで変わっているー。
雅人の言っていた通り、魔王に征服されてしまったらしく、
禍々しい風景が広がっていたー。
そしてーー
”見つけたぞー”
キャラクターの背後から、そんな声が聞こえたー。
「ーー!」
明美は、ゲームの中に”魔王”が出現したのを見て驚くー
「えっ!?こ、これってー…”ラスボス”みたいなキャラ…!?
い、いきなり遭遇しちゃったの!?」
戸惑いながら、スマホを操作する明美ー。
ゲーム開始直後の明美のキャラクターはレベル1ー。
レベル98の魔王になんか、勝てるわけがないー。
”ククククー人間よー。
これから我は、”お前たちの世界”も支配する”
ゲーム内の魔王がそんな言葉を口にするー。
「ーー…あははー、何これー」
明美は思わず笑うと、
ゲーム内に表示されていた、魔王の姿が煙になっていくのを確認するー。
「ーーあれ?魔王がいなくなったー
助かったのかなー?」
ゲームの画面から魔王が消えたのを見て、明美がそんな言葉を口にした
次の瞬間だったー。
”そのためにー、現実世界で行動するための”器”が必要だー”
そんな声が聞こえたー。
スマホからではなくーーー
”すぐ近く”でー。
「ーえっ!?」
”クククー
なかなかいい女ではないかー
気に入ったー
お前の身体を、そちらの世界で行動するための”器”とすることにしようー”
そんな言葉に、明美は
戸惑いの表情を浮かべながら周囲を見渡す。
「ーー…え……えっと…
ど、どういうことー?」
セリフも、ゲームに搭載された人工知能によって、
普通のゲームのように”決まったセリフ”を吐き出すのではなく、
その時その時によって違うセリフを吐き出す、というのは聞いているー。
しかし、”魔王”の少し気味の悪いセリフにー、
そして、”すぐ近く”で聞こえたような感じがしたこの状況に
明美は戸惑っていたー。
そしてー、その直後だったー
”クククー
お前は”魔王”となるのだー”
その言葉と同時に、スマホから突然電流のようなものが
流れ始めるー
「ーひっ!?」
痛みはないー。
その電流のようなものが、明美の身体に纏わりつくようにして、
離れないー。
「な…何これ…!?ど、どうなって…」
明美がすぐにスマホを手放そうとするも、
スマホの周囲に紫色の煙のようなものが噴き出しているー。
”ーー次はお前たち人間の世界を征服させてもらうぞー”
魔王の声が聞こえるー
スマホに”魔王の顔”が映し出されているー。
明美が怯えた表情を浮かべながら
「た…助けてー」と、そう言葉を口にすると同時に、
明美の身体に纏わりついていた電流のようなものが、
”中”に吸い込まれるようにして入っていきー、
最後に紫色の煙が明美の口へと飛び込んだー
「がっー…」
ビクンと震えた明美の目が真っ赤に光るーー
スマホから手を放して苦しそうにもがき始める明美ー。
床を転がり回って、身体を丸めたり、伸ばしたりー、
もがき苦しんでいた明美はやがて動きを止めるとー、
数秒後ー、ゆっくりと起き上がり始めたー。
「ーーーーーー」
自分の身体を見つめる明美ー。
やがて、その明美の表情に不気味な笑みが浮かんでいくー
「ククククーーーー…
これが”ゲームの外の世界”かー」
明美は外を見つめると、ニヤリと笑みを浮かべながら
言葉を口にするー。
「ーーーゲームの世界よりもはるかに広いこの世界ー…
我が征服する世界にふさわしいー」
明美はそう言葉を口にすると、
「さてー…この人間の”データ”を読み取らないとなー」と、
そう言葉を口にすると、
明美は突然、その場に膝をついて、
白目を剥いて、激しく痙攣し始めるー
苦しそうにうめき声を漏らしながら、
口元からは泡のようなものを吹き出す明美ー。
やがてー、しばらくすると
「ーーなるほどー…」と、目の輝きを取り戻して
よろよろと立ち上がるー。
”明美”の記憶を全て読み取った魔王は
この世界のことを理解して、笑みを浮かべるー。
「まずはこの女の身体に我が魔力を引き継ぐ必要があるなー」
明美がそう言葉を口にするー。
すると、ちょうどそのタイミングでスマホが鳴ったー。
”例のゲーム、どうだったー?”
彼氏の雅人からのメッセージー。
明美はそれを見つめると、ニヤリと笑みを浮かべながら
返信を入力し始めるー
”とっても楽しかったよ”
とー。
そしてー、
続けてこうメッセージを入力したー
”雅人のおかげで、”いいもの”が手に入ったよー
本当に、ありがとう”
とー。
「ーークククー
感謝するぞー人間。
お前のおかげで、我は世界征服のための最高の器を
手に入れることができたー」
明美は自分の身体を触りながらそう言葉を口にすると、
「ーさて…”魔力”をこの女の身体に移すかー」と、
スマホを手にして不気味な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
「ーーーあれ?明美はー?」
雅人が、明美の親友である恵麻(えま)に、声をかけると、
恵麻は「あ、龍山くんー」と、雅人の方を見つめるー。
「ーー今日はーーーーまだ来てないねー」
恵麻がそう言うと、
雅人は「え…なんかあったのかなー」と、少し心配そうに呟くー。
明美はいつも比較的早く学校に来ていて、
雅人と別々に登校するときは、いつも先に到着しているー。
「ーーーまだ10分あるしー、このあと来るんじゃない?」
恵麻がそう言うと、
雅人は「ーーあ、うんー。でも、昨日の夜から返信がなくてー」と、
スマホを手にしながら言うー。
「あ~…確かにー…」
少しいい加減な性格の恵麻は、昨日の夜、明美に送ったメッセージを
確認しながら「返事来てないことに気付いてなかったー」と、そう笑うと、
「ーー…確かに少し心配だね」と、そう呟くー。
話はそこで終わりー、雅人が座席につくー。
しかし、結局明美は姿を現さずー、
”欠席”の連絡もない様子だったー。
「ーーーー」
心配になった雅人は、昼休みにも連絡したものの、
電話は繋がらず、メッセージの返信もないー。
”やっぱり、何かあったのかもー”
そんな風に思いながら、雅人は放課後に明美の家に
様子を見に行くことを決意するー。
そんな中ーーー
雅人は、スマホを見つめながら表情を歪めるー
”リアルファンタジーオンライン”ー
その世界の中から突然、魔王が姿を消し、
世界征服されていた”ゲーム内の世界”では
急速に人間たちが勢力を巻き返し始めていたのだー。
「ーどうして、急に魔王が消えたんだろうー」
雅人はそんなことを呟くー。
この時の雅人はまだ、
”彼女の明美が学校に来ずに、連絡もつかない”ことと、
”ゲームの世界から魔王が消えた”ことに
関係があるとは夢にも思っていなかったー…。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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ゲームの世界の魔王に憑依されてしまった彼女…★!
大変なことになりそうですネ~!
続きはまた明日デス!
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