”殿”のためにと、敵対する勢力との戦いに
幾度も赴いていた彼ー。
しかし、彼は敵の術によって女体化してしまいー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーー…」
女体化した源左衛門は、自分の屋敷で
休養を続けていたー。
”殿”である三浦 勇之進から
”お前の身を案じてのことだー”と、言われて、
休養を続けている源左衛門ー。
だがー、女体化した自分の身体を見るたびに、
焦りばかりが膨らんでいくー。
このまま”殿”から見捨てられてしまうのではないかと、
そんなことを恐れていたー。
”療養”を名目に自分の屋敷で待機を始めてから5日目ー。
「ーーお客様がいらっしゃいましたー」
屋敷の使用人の女が、そう言葉を口にするー。
「ーー…客?」
女体化した源左衛門が少し表情を歪めながら、
屋敷の入口まで向かうと、先日、盗賊三人組に絡まれていた
”なつ”という女が入口に立っていたー。
ぺこりと頭を下げるなつー。
女体化した源左衛門も頭を下げると、
なつは「ーまさか、こんな立派なお屋敷の方だなんてー、驚きました」と、
そう言葉を口にするー。
源左衛門「あ、いやー」と、そう言葉を口にしてから、
”伊武 源左衛門が女になった”という噂が流れれば、
”敵勢力”に付け込まれることにもなりかねない、と考え、
「ー源左衛門様の元で働かせてもらっていてー」と、
”伊武 源左衛門”とは別人のフリをしたー。
「ーふふ、そうなのですねー」
”なつ”は、そう言うと「前日のお礼にー」と、
野菜を手にしながら、そう言葉を口にしたー。
「ーわたしの家で取れたものですー。
ぜひ、皆さんに召し上がっていただければとー」
”なつ”の言葉に、女体化した源左衛門は
「わざわざ申し訳ない」と、言葉を口にすると、
そのまま”なつ”と、少し雑談を交わすのだったー。
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女体化してから7日ー
このまま自分は”放置”されるのではないかと
不安に思い始めていたその日ー、
同じく三浦 勇之進の家臣で、
源左衛門に憧れを抱いている勝久がやってきたー。
「ーーー伊武殿ー。
”殿”がお呼びですー」
その言葉に、女体化した源左衛門は「分かったー」と、
そう頷くと、自分の屋敷のものたちに、
三浦家の城に向かうことを告げるー。
やがて、準備を終えると勝久と共に移動を始める源左衛門ー。
「ーーー…」
しばらく沈黙していた勝久だったが、
やがて、静かに口を開いたー。
「城では、伊武殿の地位を剥奪する動きと、
今まで通り働いてもらおうとする動きが出ていますー」
とー。
「ーーー…そうか」
源左衛門は、少し悔しそうにそう言葉を口にするー。
「ーーー男に戻ることさえできればなー」
源左衛門がそう呟くと、勝久は表情を曇らせるー。
「”殿”は、伊武殿を引き続き重用するおつもりのようですがー、
どうか、お気を付けくださいー」
勝久のその言葉に、源左衛門は「忠告、感謝するー」と、
そう言葉を口にすると、
やがて、城の前へとたどり着いたー。
「ーーー源左衛門ー。体調に変わりないか?」
”殿”である三浦 勇之進が、女体化した源左衛門に対して
そう言葉を口にすると、
「ーはいー。残念ながら、男に戻ることはできていませんが、
それ以外は問題ありません」と、そう返事をしたー。
「ーそうかー」
三浦 勇之進はそう言葉を口にすると
立ち上がって城の外を見つめるー。
「ーーー…私はなー…源左衛門ー
これまでのそなたの忠義に感謝しているー。
そなたが男であろうと、女であろうと、
私からそなたへの信頼は変わらないー」
三浦 勇之進の言葉に、源左衛門は「ありがとうございますー」と、
そう頭を下げるー。
「ーが、他の家臣たちの中には反発するものもいてなー。
このあと、ちょうど、稽古が行われるー。
そこで、”伊武 源左衛門”は健在だということを
他の家臣たちにも見せ付けてやってくれー」
三浦 勇之進の言葉に女体化した源左衛門は「そういうことであればー」と、
頭を下げながらそう呟くー。
”女子になった源左衛門は、今まで通り戦えるのか?”
などと言う者や、
”あの姿で引き続き活躍できるとは思えませんなー。むしろ足手まといになるのでは”
などと言う者ー、色々な者がいるのだー。
稽古場に移動した女体化した源左衛門ー。
三浦家が定期的に開催している”公開稽古の日”ー。
”試合も行われて、殿である三浦 勇之進もその行方を見守る
本格的な稽古だー。
「ーークククーーー」
稽古場にやってくると、家臣の一人で源左衛門をライバル視する
十郎が笑みを浮かべて待っていたー。
「源左衛門ーいや、”お源”よー。
女子になった貴様は、殿をお守りするには不足だー」
十郎の言葉に、女体化した源左衛門は、
「ー…米倉殿ー…
俺はどんな姿になっても、殿のために尽くすー
そのことに変わりはない」と、言い返すー。
「ほざけ!」
はじめの合図と共に十郎が木刀を手に襲い掛かって来るー。
それを回避して、一撃を叩きこむ源左衛門ー。
がー、十郎は倒れなかったー。
「ーなんだァ!?その程度の一撃ー
儂は倒せんぞ!」
十郎はそう叫ぶと、女体化した源左衛門の腕を引っ張り上げたー。
悲鳴を上げる女体化した源左衛門ー。
十郎の腕を振りほどくことができないー。
”ぐー…”
源左衛門は、それでももう片方の手で木刀を振るうー。
しかしー
「鈍くなったなー…やはり貴様は力不足よー」
と、十郎はそう言うと、源左衛門の木刀を弾き飛ばしー、
そのまま源左衛門を床に押し飛ばしたー。
「ーーーー!」
”殿”である三浦 勇之進や、
参謀の正蔵、源左衛門に憧れる武士・勝久も表情を歪めるー。
「ーへへへへへー
殿ーご覧くださいー
こやつはもう、源左衛門ではございません」
ニヤニヤしながら十郎は座り込んだ源左衛門の背後に回ると、
その両胸を無理やり揉み始めるー。
振りほどこうとする女体化した源左衛門を力で抑え込み、
胸を激しく触ると、
源左衛門は、悔しそうな表情を浮かべながら”女”の声を出すー。
「こやつは、もう源左衛門ではなく、”お源”なのですー
殿ー…こやつを今まで通り重用するのは、無理ですぞ?
我らが三浦家にまで危険な目に遭うことになるー」
十郎がそう言うと、
胸を揉まれた源左衛門は悔しそうに涙を流すー。
「ーーー…伊武殿ー」
源左衛門に憧れていた勝久も、その姿を
震えながら見つめると、
”憧れ”が自分の中で崩れていくのを感じたー。
「ーー殿ー…米倉殿の言う通りですー。
正しいご判断をー」
参謀の正蔵が、”殿”である三浦勇之進にそう小声で
言葉を口にすると、勇之進は申し訳なさそうにしながら、
「ーーー…源左衛門ー」と、そう言葉を口にしたー。
源左衛門は、役職を解かれて、
屋敷に待機することになったー。
”三浦 勇之進”は、”悪いようにはしないー。後日必ず話をする機会を設ける”とだけ
言っていたものの、事実上の”クビ”でもあったー。
しかしー、自分の剣術が衰えたのは事実ー。
女体化した自分の身体ではこれまでのように剣を振るうことが
出来ず、”力”のぶつかり合いにも勝てないー、
それが、分かってしまったー。
暗い表情を浮かべる女体化した源左衛門ー。
がー…その数日後ー
”殿”である三浦 勇之進から内密に城に招かれたー
「殿ー…」
表情を曇らせながら、女体化した源左衛門が言うと、
三浦 勇之進は、剣を手にして源左衛門の方を向いたー。
「ーーーー源左衛門ー。
そなたは今までよく、私に仕えてくれた」
それだけ言うと、三浦 勇之進は剣を構えるー。
源左衛門は悟ったー
”女体化”して用済みの自分は処分されるのだとー。
三浦家の細かいことまで知り尽くしている自分のような人間を
生かしておけば、三浦家にとって災いとなるかもしれないー。
「ーーそれが、殿の望みであれば」
女体化した源左衛門が覚悟して目を閉じると、
三浦 勇之進は剣を振るったー。
ふわっと風圧を感じーー、
源左衛門のすぐ真横に剣が振り下ろされたー。
がー、その剣は源左衛門に当たることはなかったー。
「ーー伊武 源左衛門は今日、死んだー」
三浦 勇之進はそう言葉を口にすると、
源左衛門の方を見つめながら言ったー。
「ー私としては、そなたのことを今までも、これからも信頼しているー。
だがー、先日の稽古の場を見て、
今ままでのようにとはいかないと思い知らされたー。
他の家臣たちも、そなたのことを認めようとしないだろうし、
それを私が無理に重用しようとすれば、
必ず火種となるであろう」
三浦 勇之進はそれだけ言うと、
「ーだがー、今のおぬしに適した活躍の場はあるー」
と、そう続けたー。
三浦 勇之進はこの数日ー、
”今の源左衛門”が活躍できる場を探っていたー。
そしてー…
「ーわが三浦家には私直属の”忍”がいるー。
今も5名ほど、他の家臣たちにも存在を知られていない忍がいてなー…
源左衛門ー。前のように剣を振るうことはできなくても、
その身体なら隠密活動や暗殺稼業であれば、今までよりやりやすいと思うのだー」
と、三浦 勇之進は続けたー。
「ーつまり、俺に忍になれと、そういうことですか?」
源左衛門はそう言葉を口にするー。
「ーもちろん強制はしないー。
城を去る場合は、源左衛門、そなたにはこの先、しっかり暮らしていける場所を
用意するつもりだー」
勇之進のその言葉に、
女体化した源左衛門は”まさか、俺がくノ一になることになるとなはー”と、
心の中で思いながらも
「殿のために、お役に立てるのであればどんなことでも、喜んでー」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーーありがとうー。源左衛門」
三浦 勇之進のその言葉に、新たな道を与えられた源左衛門は
嬉しそうに頷いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー。
”表向き”は源左衛門が死亡したことにするため、
自らが住んでいた屋敷を取り払い、
場所を移動することになったー。
「ーーー」
そんな、屋敷の後片付けや、必要な荷物の移動を行うために
今まで自分が住んでいた屋敷を訪れていた
女体化した源左衛門ー。
”ーーしかし、浦部家は呪怨衆と組んで、
死んだ権兵衛を復活させようとしていたー。
死者を蘇らせる術を使うことができるとなれば、
厄介だなー”
新しい道を三浦 勇之進から示された
源左衛門は、早速、”この先のこと”を考えていたー。
今度は忍として、浦部家との戦いを続けて行かなくてはならないー。
「こんにちはー」
そんなことを考えていると、背後から声が聞こえて振り返ったー
そこには、先日、盗賊たちに襲われているところを助けー、
そのお礼に野菜もくれた”なつ”の姿があったー。
「ーーーあぁ、なつ殿ー」
女体化した源左衛門がそう応じると
なつは笑いながら源左衛門の方を見たー
「ここ、引っ越しされるんですね」
とー。
「ーーーえぇ。別のところに移動することになって」
女体化した源左衛門がそう答えると、
突然、なつが笑みを浮かべたー。
「ー!?」
殺気を感じて、すぐに身構える源左衛門ー。
が、なつの不意打ちの方が早かったー。
隠し持っていた短刀が、ぐさりと突き刺さるー
「ーーぐっ……」
源左衛門が表情を歪めると、
”なつ”は笑みを浮かべたー。
「ーークククーバカなやつめー」
”なつ”が邪悪な笑みを浮かべるー
「ーな…なにもの…?」
源左衛門がそう言葉を口にすると、
なつは言ったー。
「ーー”権兵衛”だよー」
とー。
「ーーー!」
源左衛門は表情を歪めるー
女体化した原因となったあの祭壇のあった場所ー。
そこでは、浦部家と呪怨衆が、浦部家の重鎮・権兵衛を蘇生する儀式を行っていたー。
が、そこに源左衛門が乱入し、儀式を途中で妨害ー、
その結果異常反応が起きて、源左衛門は女体化してしまったー。
そして、そのあと、祭壇に設置されていた権兵衛の遺体が消えていたー。
そうー、権兵衛の蘇生は成功したものの、
源左衛門と同じように女体化してしまっていて、
源左衛門に近付くために金で盗賊を雇い、源左衛門に近付き、
女体化した源左衛門が苦しむ様を見て楽しんでいたのだー。
がー、今日、源左衛門が”引っ越し”をすると聞き、
行方が分からなくなる前にと、こうして行動を起こしたー。
「ーーー言ったであろうー?
貴様もいつか必ず殺す、と」
”なつ”を名乗る女体化した権兵衛が笑うー。
「ーーーー…く… ぬぅぅぅぅぅぅぅ」
源左衛門は力を振り絞ると、”なつ”の頭を掴んで
そのまま壁に叩きつけると、
刀を抜いて、そのまま”なつ”を斬り捨てたー。
「ーーはぁ…はぁ…はぁーーー」
血を流しながら、屋敷の壁に寄りかかる女体化した源左衛門ー。
「ーーーーーー」
源左衛門は、少しだけ笑うー。
まさか、こんな最期を迎えることになるとは、とー。
「ーーー殿ー…申し訳ございませんー」
せっかく、新たな道を示してもらったのにー。
期待に応えることができなかったー。
そんな悔しさを噛みしめながら、女体化した源左衛門は
自虐的に笑うと、そのまま息を引き取ったー。
過酷な時代ー、
いつ死ぬかも分からないその時代を
自分なりに生き抜いた源左衛門は、
悔しそうにしながらも、どこか少しだけ満足そうな笑みを浮かべていたー。
おわり
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コメント
最後は命を落としてしまう結末でした~…!
もし、女体化することがなければ
こんなことにもならなかったはずなので災難ですネ~…!
お読み下さりありがとうございました~~!

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