とあるSNS上に徘徊する”インプレゾンビ”
それを見かねた男は
己の憑依能力を使い
”そのツラ、拝んでやるぜ!”と、
行動を起こすのだったー。
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「ーーーケッー邪魔くせぇ奴らだぜー」
パソコンを眺めながら、
細い目つきの男が、舌打ちをしていたー。
彼はー、”闇のプロファイラー”を名乗る男、
黒木 創(くろき はじめ)ー。
彼には”他人に憑依する力”があったー。
SNS上であらゆる情報分析を行い、
”カモ”になりそうな人間を見つけては、
その相手に”ネットワーク”を通じて憑依ー、
その相手の弱味を握ったり、相手の身体で悪事をこなしている、
そんな男だー。
以前、ツイッターを介して他人に憑依する力を持つ
知り合いの憑依人を介して、この力を身に着け、
それ以降は、ネットを介した憑依を続け、
暗躍している。
要するに、悪党と言ってもいいー。
しかし、そんな彼ー、創は最近、あることに
憤りを感じていたー。
それが、”ゾンビ”だー。
世間ではインプレゾンビなどと呼ばれているその存在に
彼は、腹を立てていたー。
インプレゾンビとはー…
あるSNS上に出現した”ゾンビのような”者たちのことを示す言葉ー。
”自分の書き込みが表示された回数だけ”お金を貰うことができるという
システムを逆手に取り、
見境なく、人に対して意味のない返信を送る行為や、
今現在注目を集めている”トレンド”になっている話台と
何も関係ないのに、その言葉を絡めた書き込みなどを繰り返し、
”とにかく、金のためにアクセス数を稼ぐためだけに行動する”
そんな、存在だー。
「ーーくそがー
こいつもゾンビだー こいつも、こいつもー、こいつも!」
創は苛立ちを露わにしながら、SNSの画面を見つめるー。
SNSの書き込みを元に”カモ”を見つけて
暗躍している彼からすれば、
SNSの画面中を埋め尽くすインプレゾンビは邪魔な存在でしかなかったー。
がーー
「ーーん?待てよ?」
ふと、創はあることを思いついてしまったー。
「俺の力は、SNSの画面を介して、そのアカウントの持ち主に
憑依することができる力ー
と、いうことはー…」
創はそう言葉を口にすると、邪悪な笑みを浮かべるー。
「ーーーそうかー。俺の力を使えばー
ゾンビどものツラを拝むことができるってわけだなー」
創は、そう呟くと、しばらく笑みを浮かべていたものの、
「ーそうと決まれば、早速ー」と、言葉を口にしてから
”インプレゾンビ”のアカウントの一つを開きー、
自身の”憑依能力”を発動したー。
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「ーーーーうっーー…」
”インプレゾンビ”への憑依に成功した創は、
早速、”ツラを拝んでやるぜ”と、そう思いながら
鏡を見つめたー。
がー
「ーーあ…???」
思わず、変な声を出してしまうー。
何故ならー、
”想像していたインプレゾンビ”と、全然違ったからだー。
「ーーな…なんだこの子ー…滅茶苦茶可愛いー…」
異国の地の、可愛らしい女性ー。
それが、今回憑依したインプレゾンビの正体だったー。
「ーーう、嘘だろー?
こんな可愛い顔して、意味不明な書き込みしながら
迷惑かけてやがるのかー?」
その女性の身体で、創はそう呟くと、
「なんだか興奮してきたぜー」と、笑みを浮かべるー。
「ーってか、少しなんか活舌が悪いなー…?
…あぁ、あれかー
普段、この身体は日本語話さないから、この身体が
発音に慣れてないのかもなー」
そう呟きながらも「さて、お仕置きをするかー」と、
インプレゾンビの身体で、一人、お楽しみを始めると
「うへへ…ゾンビの癖にいい身体じゃねぇかー」と、
ニヤニヤしながらそう言葉を口にしたー。
一人、お楽しみの時間を終えると、
よろよろと立ち上がって、
このインプレゾンビのアカウントのパスワードを変更した後に削除、
二度と復旧できないようにして、その身体から抜け出したー。
「ーへへ、ゾンビ退治成功だぜー」
自分の身体に戻って来た創は、満足そうにそう言葉を口にすると、
「しかしー、ゾンビどもってあんなかわいい子ばっかりだったりするのか?」と、
そう言葉を口にしながら
「ーー今日は特に予定もないしー、
インプレゾンビ狩りでもするかー」と、笑みを浮かべるー。
他の”インプレゾンビ”のアカウントを見つけては、
”ネット”を通じて憑依する創ー。
がー、次に憑依したのは異国の地の小太りのおじさんだったー。
「ーーーー…ま、そんな立て続けに美人なゾンビが
出てくる分けねぇよなー」
おじさんの身体でそう呟くと、「ゾンビは駆除ぉ~!」と、叫びながら
その場でスマホを叩き割って、憑依から抜け出す直前に、
パソコンを見つめー、パソコンも拳で粉砕したー。
粉砕する直前に、画面を介して自分の身体に戻った創。
「ーーーふ~…爽快だぜ」
そう呟くと、そのおじさんの身体から抜け出し、
再び自分の身体に戻るー。
「ーーさて、次だー」
ネットを介して、どんな離れた相手にでも簡単に憑依することができるー。
さらに”インプレゾンビ”のアカウントの持ち主に憑依していく創ー。
3人目も、また違う国の男だったー。
アカウントを削除し、札束を燃やしてその身体を放棄ー、
4人目は、さらに違う国の男で、
憑依した直後に部屋の中を見回した感じ、
かなり生活に困っている様子が見受けられたー。
が、創にとってそんなことは関係なくー、
”ゾンビ駆除”を、行ったー。
「ーーふぅー」
4人目の男への憑依を終えて、自分の身体に戻った創は
ため息をつくー
「やっぱ、最初みたいな可愛い子がインプレゾンビってのは
レアケースだよな」
そう思いつつも、
何となく”憑依ガチャ”を回しているような気分になり、
楽しくなってきた創は、再び
インプレゾンビのアカウントを一つ、適当に選んで”憑依”したー。
するとー…
「ーーーーー!」
乗っ取った身体ー…今日、5人目の憑依対象の身体で、
創は表情を歪めるー。
思わず、カーテンを開けて外を見るとー
そこはーー
「ーんだよ…国内にもいるのかよ、ゾンビー」
乗っ取った、小太りの男の身体でそう呟く。
どうやら、今回のインプレゾンビは
創と同じ日本国内にいる男のようだったー
「ったく、アカウント名を違う国の言葉にして
カモフラージュしてやがるのかー。
どうせこういうことするなら、
正々堂々とやれよ」
乗っ取った身体で、不満そうにそう呟いた創は、
家の中を探し回って、
今回憑依した”インプレゾンビ”の本名を確認すると、
アカウント名をその名前に変えて
自己紹介を書き込んだー。
「ーへへー
これで正々堂々ゾンビの完成だぜ」
笑みを浮かべながら、その男の身体から抜けると、
さらに、創は憑依を続けたー。
「ーーーー!!!」
今度はー、女子高生だったー。
「ーー…おいおい、滅茶苦茶可愛いじゃんこの子ー…」
そう思いながら、部屋のカバンを明後日
生徒手帳を確認すると、そこには”山中 由紀(やまなか ゆき)”と
そう書かれていたー
しかも、生徒会長のようだー。
「ー名門高校の生徒会長がインプレゾンビかー。マジかー…」
由紀に憑依したまま、雑に座ってそう言葉を口にすると、
「ーー…こりゃすげぇやー」と、ニヤニヤ笑みを浮かべるー。
「ーもっとインプレ稼ぐ方法、教えてやるよ」
そう言葉を口にすると、勝手に自撮りを繰り返して、
由紀の顔写真や、際どいポーズ・服装の写真などを
次々と投稿していくー
「うへへへーすげぇー
お前の大好きな”インプレ”だぜー?
喜べー」
由紀の身体でニヤニヤしながら
自分の投稿のインプレ数が増えていくのを見て、
邪悪な笑みを浮かべるー。
「さ~て、こいつはこれでいいとしてー」
由紀はそう呟くと、その場に突然倒れ込むー。
由紀から抜け出して、自分の身体に戻った創は、
「時々かわいい子とか、とんでもねぇ子も混ざってるってことかー」と、
腕組みをしながら呟くー。
案外、”ゾンビ”は遠い地だけではなく、身近に潜んでいるのかもしれないー。
そんなことを思いつつ、創は
”インプレゾンビのツラを拝むの、楽しくなってきたぜー”と、
心の中で呟くと、そのままさらに憑依を続けたー。
「ーーおい!こいつ、人気イケメン俳優じゃねぇか!」
次の”インプレゾンビ”は、
創自身もよく知っている人気イケメン俳優だったー。
「おいおいおい、金稼げてるはずなのに
何セコイことしてやがるんだー」
そう呟きながら、アカウントのパスワードを変えて、
二度と、本人がログインできないようにしたうえで
アカウントを削除するー。
さらに、次の身体に憑依するー。
がー、そこから先は、
知らないどこかの国の男ばかりで、
創が頭の中にイメージしていた
”インプレゾンビの姿”と一致するような人間が多かったー。
一人一人、憑依する度に
”ちょっとしたお仕置き”をして、
インプレゾンビ退治を続ける創ー。
やがてー、創が自分の身体に戻った頃には
既に”夜”になっていたー。
「ーーおっと、もうこんな時間かー」
パソコンから視線をずらし、すっかり暗くなった外の風景を見つめる創ー。
”インプレゾンビ”は、やはりと言うべきか、
海外に住んでいる人間が多く、
憑依を繰り返していると、
どうしても”時差”があるために今の時間を
忘れてしまいがちだー。
「ーーそろそろ、今日は終わりにするかー」
そう呟きながら、創は
SNSの画面を見つめながら、画面をスクロールさせるー。
「ーーったく、ホントにゾンビだらけだよな」
呆れ顔で呟く創ー。
今日だけで数十名の”ゾンビ”退治を行ったものの
やはりと言うべきか、
その程度の数のゾンビを駆除したところで、
何も状況は変わっておらず、
SNS上の画面はゾンビたちでにぎわっているー。
「ーーいっそのこと、会社の人間に憑依して
ゾンビのアカウントを全部凍結してやるかー」
そんなことを思いながらも、創は
”でも、なんか面倒くせぇし、俺がわざわざやってやることじゃねぇな”と、
内心で考え直すと、
今一度、時計を見つめてから「もう一人だけ、ゾンビ退治するかー」と、
パソコンの画面に再び視線を向けて
適当な”インプレゾンビ”のアカウントを見つけ出したー。
「ーーあ~あ~あ…
同じ書き込みに何十個も返信送ってやがるー」
呆れ顔の創ー。
「よく、こんな意味不明な返信を繰り返し
送ることができるよなー」
そう呟く創は
「まぁー…金のために”憑依”してる俺も同じようなもんかー」と、
自虐的に笑うと、
「さて、今日最後のゾンビはどんな奴かなー」と、
そう言葉を口にしながら、
”憑依”したー。
「ーーーっ!?」
ビクッと震える身体ー。
今日最後の”インプレゾンビ”の身体はー
「ーーーー…は…!?!?」
思わず、表情を歪める創ー。
憑依した相手は
全身が氷で出来ているような、
謎の身体を持つ女だったー。
「ーーー…な、なんだー…!?え!?」
よく見ると、部屋の中に見たことのないようなものが
たくさん置かれていてー、
辺り一面、クリスタルに囲まれているかのような
幻想的な風景が広がっていたー。
「ーーー…!?!?!?!?」
窓の外を見つめるー。
すると、”結晶だらけ”の意味不明な世界が広がっていたー。
「ーーな、何か分かんねぇけど、やべぇ」
創は、”氷の女”の身体でそう言葉を口にすると、
慌てて、”パソコン”の画面を通して、自分の身体に戻ろうとしたー。
がーーー
「ーーぐっ…な、なんだこれはー」
”氷のタブレット”のような謎の端末ー。
それを見つめながら、何とか元の身体に戻ろうとするがー、
パソコンでも、スマホでも、タブレットでも
ないからだろうかー。
元の身体に戻ることができないー。
「ーーーー!」
突然、背後に気配がするー。
そこには、氷の大男のような人物が3人立っていたー。
「ーー&#%($’###=$$ー」
何か言っているー。
しかし、何を言っているのか分からないー
「あ?なんだってー?こ、ここはどこだー…!?」
氷の女の身体で、創が叫ぶも、
創は意味不明なまま、氷の男三人に拘束されて、
そのまま引きずられていくー。
「ーな、な、な、なんだこれは!?!?」
ここは、地球から遠く離れた惑星、
結晶惑星クリシアー。
その惑星に住む女が、地球のSNSにアクセス
”インプレゾンビ”をしていたのだー。
そしてー、そうとは知らずに創は、
地球から遠い遠いこの星の生命体に憑依してしまったのだったー
おわり
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コメント
ツイッターに大量発生しているゾンビさん…!
いつか問題が解決するといいですネ~!
ちなみに、最後の連行は、
”他の惑星のネットワークにアクセスしてはいけない”という
法律が惑星クリシアにあって、
創が憑依した氷の女がその法律を破ったため、
惑星クリシアの警察に連行された…ということデス~★!
お読み下さりありがとうございました~!
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