<憑依>喜びを隠せない③~喜びの果て~(完)

憑依に成功して
喜びを隠しきれない男…。

そんな彼は、”先輩”から呼び出されてしまいー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ー先輩!お話ってなんですか~~?」
彩夢が明るく、そんな言葉を口にしながら
先輩の麗奈に呼び出された部屋へと入るー。

すると、麗奈は彩夢の方をしばらく見つめてから
言葉を口にしたー。

「あなたーー…」

その言葉を遮るようにしてー、
彩夢は言葉を口にするー

「え~~~?憑依~~?な、なんのことですかぁ~~~?」
とー。

「ーーーーー…」
麗奈は、表情を歪めながら彩夢の方を見つめるー。

”ーーや、やべっ…や、やっぱり動揺が顔にー!?”
彩夢に憑依している研吾はそう思いながら、
露骨に挙動不審な行動を彩夢の身体で取り始めるー。

さっき、女子トイレの中で練習したはずなのに、
結局、挙動不審な動作を見せてしまったー…!

そんなことを思いながら、麗奈の方を見ると、
「ーーー何のこと?」と、
逆に聞かれたー。

「ーはい?」
彩夢が変な声を出すー。

「ーーーー…ひょう……???」
麗奈が、そう言葉を口にしながら表情を曇らせているー。

「ーーえ…?え? ”憑依”?」
彩夢がそう言い返すと、
麗奈は「ーー…わたし、まだ何も言ってないけど」
と、困惑した様子で表情を歪めたー。

「ーーーえ…?」
彩夢に憑依している研吾は、この部屋に入ってからの
会話を思い出すー。

てっきり”憑依のことを聞かれる”とばかり思い込んで、
麗奈が「あなたー…」と、しか言っていないのに、
いきなり「え~~~?憑依~~?な、なんのことですかぁ~~~?」と
返事をしてしまったー。

あまりに脳内練習しすぎて、
何も聞かれてないのに、麗奈からすれば意味不明な言葉を
口走ってしまったー。

「ーーーえ…あ、あはっ…あははははー
 そ、それでお話ってなんですか?」

誤魔化すようにして笑顔を振りまく彩夢ー。

”ーーそもそも俺…、憑依なんてバレるはずがないって
 さっき自分で思ってたのにー”
自虐的に心の中でそう呟く彩夢に憑依した研吾ー。

するとー…
麗奈が今度こそ”本題”を口にしたー。

「ーーあなたーー
 彼氏でもできたんでしょ?」
とー。

「ーーはい???」
彩夢は再び変な声を出してしまうー。

「ーーだって、昨日から滅茶苦茶浮かれてるしー」
麗奈の言葉に、彩夢は少し驚きながらも
”ほぉ~…なるほどなるほど そうきたか
 昨日から俺が彩夢ちゃんの身体で喜びまくってるから
 周囲からはそう見えるのか。なるほどー”
と、そんな風に心の中で思うー。

どうやら、”憑依してるでしょ?”という話ではなかったようだー。

「ーーえ、えへへへー
 そうそう!そうなんですよぉ~!
 大好きな人ができちゃって~~!」
咄嗟に誤魔化す彩夢ー。

「ーーそっかそっかー
 だから昨日から、浮かれてるんだねー」
麗奈はそう言うと、彩夢の肩をポンポン叩きながら
「ー相手は誰だか分からないけど、わたし、全力で応援するから」と、
珍しく、いつもは無表情のその表情に笑顔を浮かべながら
そう言葉を口にしたー。

どうやら、麗奈は他人の恋愛話を聞くのが好きなようで、
彩夢から恋愛の気配を感じ取って、今日、話しかけてきたようだー。
恋愛の話が絡むと、いつもは無口なのにテンションも高くなるらしいー。

やがて、話が終わって麗奈が先に立ち去って行くと、
一人残された彩夢は
「へへー…やっぱ憑依なんてバレるわけないんだー!」と、
改めてそう言葉を口にすると、
「ーよっしゃあああああああああああああああ!」と
嬉しそうに叫んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー最近、お姉ちゃん機嫌いいけど、何かあったの?」
帰宅すると妹の萌奈から、
そんなことを聞かれたー。

彩夢はニコニコしながら「うん!いいことがあったの!
新しい人生を手に入れたっていうか、
人生大逆転っていうか!」と、そう言葉を口にするー。

彩夢に憑依している研吾は、
とことん悪い計算が出来ないのか、
墓穴を掘りそうなことばかり口をするー。

「ー人生大逆転?」
萌奈は戸惑いの表情を浮かべるー。

「うんうん!どん底から天国に来たっていうか、そんな感じ!」
ハイテンションに答える彩夢ー。

「ーーーへ~~~~…何があったか知らないけど、
 よかったねー」
妹の萌奈は、姉の彩夢が何を言っているのか
分からず、混乱した様子でそんな言葉を口にするー。

「ーーーーー」
彩夢は、そんな萌奈の方を見つめながら思うー。

”この子も可愛いよなぁ……
 そ、そうだー今は女の子同士なんだしー
 もしかしたら、あんなことやこんなことできちゃったりしてー”

彩夢に憑依している研吾は、
また、そんなことを考えながら一人でニヤニヤと笑みを
浮かべ始めるー

「ーえへへへへ…えへへへへへへへへー
 そっかぁ…女の子同士かぁ…」

彩夢が一人でブツブツ言いながら笑みを浮かべているー。

そんな様子を見ながら、萌奈は
少し引いたような表情を浮かべつつ、
「ーお姉ちゃんー”気持ち悪いおっさん”みたいな顔してるよー?」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーえっ…!?ええええっ!?」
その言葉に、激しく動揺する彩夢ー。

そのまま青ざめて、彩夢は鏡の方に走っていくー。

「ーーーえっ!?!?」
姉・彩夢のそんな反応に妹の萌奈も逆に驚くような
表情を浮かべてしまうー。

洗面台の前に駆け付けた彩夢は
鏡に映る自分の顔を見つめるー。

だが、そこにあるのは”彩夢”の可愛らしい雰囲気の顔ー。
”研吾”の顔などではなかったー

「ーはぁ…はぁ…はぁ…
 な、なんだ、気持ち悪いおっさんになってないじゃんー」
彩夢が安堵の表情を浮かべながら、
そう言葉を口にしつつ部屋の方に戻ると、
妹の萌奈はぽかんと口を開けたまま困惑の表情を浮かべていたー。

「ーーー…”おっさんみたい”って言っただけだよー…?」
萌奈は、姉の大げさすぎる行動に困惑の表情を浮かべているー。

彩夢は「ーーあ…あぁ、そ、そういうことねーあははー」と、
誤魔化すー。

”憑依している自分”が”おっさん”である故に、
”顔だけ自分の顔に戻ってしまっているのではないか”と
そんな風に思って、慌てて洗面台の方に駆け込んだのだったー。

「ーー最近、お姉ちゃん、変じゃない?」
萌奈が心配そうにそう言葉を口にするー

「ーーーえっ…あ、いやっ…その…
 わ、わたしは正気だよー!
 わたしはあ、彩夢だよ!」

そんなことを慌てて言うと、
萌奈は「疲れてない?無理しちゃだめだよ?」と
心配そうにそう言葉を口にしたー。

「ーーえっ!?あっ!?うんー
 わ、分かったー
 あ、ありがとうー」

すぐにボロを出しそうになってしまう
彩夢に憑依している研吾ー。

しかしー…

会社の先輩である麗奈からは”好きな人できたでしょ?”と思われー、
妹の萌奈からは”疲れてるんじゃないの?”と心配されー…

”想像以上に憑依ってバレないー”
ということを実感した研吾は、
嬉しそうに「やっぱ憑依ってすごいやー」と、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーよしっ… よしっ… よしっ… えへへへへへへっ!」

憑依してから1週間以上が経過したー。
先日、ネットで注文した、”バニーガールのコスプレ”が届いて
早速それを身に着けた彩夢は、
”あの彩夢ちゃんにこんな格好をさせているー”と、いう感動を
噛みしめながら、何度も何度も「よしっ!」と言葉を繰り返していたー。

「ーえへへへへ…
 あ~~~~…美脚ぅ」

興奮した様子で自分の足を撫でまわす彩夢ー。

憑依しなければ、絶対に彩夢のバニーガール姿など
見ることはできなかっただろうー。

あまりの感動に、ヘラヘラと笑いながら、
色々なポーズを繰り返していくー。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「すげぇぇええええ!」
「よっしゃあああああああああああああ!」

自分でポーズを決めながら、
まるで”彩夢オタク”とも言わんばかりの反応を
彩夢の身体でしていく研吾ー。

「ーはぁ…はぁ…興奮しすぎて疲れたー」
バニーガールの姿をしたまま疲れ果てた様子の彩夢ー。

がー、今一度自分の身体に視線を落とすと、
「凄すぎるだろー…これ」と、
ニヤニヤと笑みを浮かべるー。

妹の萌奈は実家のリフォームが終われば
実家に戻るみたいだし、その後は
今以上に色々なことを楽しむことができるー。

「へへへへ…バニー以外にも色々着てみたいなー」
そんなことを呟きつつ、
彩夢の色々なコスプレ姿を妄想しては、
彩夢の身体で一人、ニヤニヤしていくー。

「ーーー…!」
ふと、夢中になりすぎていたことを思い出し、
時計を見つめる彩夢ー。

今日は妹の萌奈の帰りが遅いー、ということで
存分にバニーガール姿の彩夢を堪能できたものの、
そろそろ帰って来る可能性が出て来る時間に突入してきたー。

「ーー妹が帰って来る前に”いつものお姉ちゃん”に
 戻っておかないとなー」
彩夢はニヤニヤしながらそう言葉を口にすると
名残惜しそうに自分の姿を見つめつつ、
いつもの格好に着替え始めるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その後ー、妹の萌奈は
実家のリフォームが終わり実家に戻り、
彩夢に憑依した研吾は、複数のコスプレ衣装を
ネットで注文ー
明後日には到着する予定になっていたー。

そして、今日はー。

”あ~~~~…飲み会ってのは、女になってもダルいな~”
彩夢は、表情を曇らせながら心の中でそう呟いたー。

今日は、送別会ー。
同じ部署で働く40代の男が転勤になり、
別の地方に行くことになったために、
その送別会が行われているのだー。

「ーーー…~~」
”しかも、意外となんか酔ったおじさんの視線を感じるなー”
彩夢はそんなことを思いながら、
周囲を見渡すー。

「ーーー……ま、羨ましいのは分かるけどさー この身体がー」
彩夢は、自分もついこの間までおっさんだったことを
噛みしめながら、お酒を口にしていくー。

「ーーーーー」
先輩女性社員の麗奈は、いつものように無口でお酒を飲んでいるー。

がー…しばらくすると、麗奈は突然、
彩夢に絡み始めたー。

「ね~ね~、それで好きな人って誰なの?」
「どんな人?イケメン?」

麗奈の質問攻めに彩夢は「え…?あははー」と苦笑いするー。

どうやら、お酒を飲むと豹変するタイプのようだー。

「ーーほらほら、彩夢ちゃんももっと飲みなよ」
「ーわたしもね~大学生のころは彼氏いたんだけどさ~」

麗奈の酔いっぷりはどんどんエスカレートしていくー。

それにつられて、彩夢もどんどんお酒の量が増えて行ったー。

そしてーー

「ーーこいつの身体を乗っ取って、俺は人生逆転したんだ!」
彩夢は、そう叫んだー。

顔を赤くして、すっかり酔っ払ってしまった彩夢の言葉に、
周囲は戸惑うー。

「ー憑依薬ってのがあってさ~~
 彩夢ちゃんにキスをしたら、ほら、この通りー
 彩夢ちゃんの身体も心も俺の意のままー
 はははははっ!」

ご機嫌そうに自分の”明かしてはならない秘密”を
武勇伝のように語る彩夢ー。

「ーーこの前もさ~、バニーガールの格好させたりして、
 マジでもう、
 よっしゃあああああああああああって感じだったしー
 えへへへ」

下品な笑みを浮かべる彩夢ー。

「ーー…な…何言ってんの?は?」
先程まで酔っていた先輩の麗奈も困惑の表情を浮かべているー。

しかし、お構いなしで彩夢は
ベラベラと全てを語り始めるー。

「ーどいつもこいつも、俺のこと見下してやがったのに
 今じゃ、ちやほやされる立場になったんだからー
 へへっ…最高だよー」

彩夢はそう言いながら酒を飲み干すー。

「ーーー…じ、じゃあ、君は一体ー?」
上司の男がそう言葉を口にすると、
彩夢は「へへー、俺は清掃業者として出入りしてた佐山 研吾ですよー」
と、ニヤニヤしながら呟くー。

「まぁ、今の俺、いいや、わたしは白井 彩夢なんですけどね!
 へへへっ!えへへへへへへへっ!
 最高ぉぉぉぉぉぉぉ!」

嬉しそうにバンザイする彩夢ー。

周囲は、その言葉に困惑の表情を浮かべることしかできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌朝ー

「ーーーーふぁ~~……」
彩夢があくびをしながら起き上がるー。

「ーーーーーねむ…」
ボソッと呟く彩夢ー。
その髪はボサボサだー。

「ーー昨日は……飲みすぎたな」
彩夢がそう呟きながら、スマホの方に視線を移すとー…

彩夢は驚いたような表情を浮かべたー。

「ーーーえ……」

そこには、”昨日の発言”のことを心配するメッセージが
同僚や上司、先輩、さらには誰から聞いたのか妹の萌奈からー…
大量に届いていたー。

「え……」
青ざめる彩夢ー。

「ーー……や…やべぇ…」
呆然とする彩夢ー。

喜びを隠しきれない男・研吾ー。

彼は、”憑依で他人の人生を奪う”ことには
向いていなかったのかもしれないー。

「ーーよ、酔っ払ってたので、で、誤魔化せるかなぁ…?」
彩夢は、無理だと半分諦めながらもそんな言葉を口にしたー…

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

最終回でした~!☆

お酒を飲む人は、
憑依や入れ替わりで他人の人生を奪って、
本人に成りすまして過ごしているときは…
飲みすぎてボロを出さないように注意しないとですネ~!

お読み下さりありがとうございました~!☆

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憑依<喜びを隠せない>

コメント

  1. TSマニア より:

    まさかの結末でしたネ…笑

    乗っ取ったカラダがお酒強いのか弱いのか…

    酒癖ワルいのか…

    少量なら大丈夫なのか…大事ですネ~☆

    無名さんのカラダの時はオレンジ系のカクテル少量にしておきます笑

    無名さん、よっしゃあああ試したんですネ\(^o^)/笑笑

    ギャップがカワイイ場合もありますよ(*´艸`)笑

    無名さんのカラダでOLスーツ着て派手というか、ちょいギャル系のメイクしてヘアアレンジしてスカート短くしてエチエチなデニールのタイツ合わせたいのデス(*´・ω・`)b笑

    無名さんのカラダでちょいギャルOLになりたいのです\(^o^)/笑

    無名さんのカラダで喜ぶ時はギャルピースアレンジしながらウィンクしますネ(^_-)☆

    どうですか!?笑

    • 無名 より:

      創作時によく自分の身体で試すのデス~笑

      わわ~!ギャルピースアレンジ~!☆
      どんな風になるのかワクワクデス~笑

      お酒は…注意しましょうネ~!

  2. 匿名 より:

    飲酒だけではなく、寝言とかも危険ですよね。
    前に確か、意識のない状態のうわ言でバレそうになってる話もありましたし。

    下手に誰かと関わると、その分、バレる危険が高まるので、完全に誰からも孤立した状態で生活するというのも、憑依生活を成功させるための一つの方法かもしれませんね。

    • 無名 より:

      憑依生活中は
      寝言とかには気を付けないとですネ~…!

      酔っ払うのは飲まなければ大丈夫ですケド、
      寝言はどうにもならないので危険なのデス…!