<憑依>人間として生きたくなった悪の怪人さん③~未来~(完)

人間に憑依して、
使命を果たそうとするうちに、
人間として生きたくなってしまった悪の怪人ー。

彼が選ぶ道はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーえ?ちょっとちょっとー、その傷、大丈夫ー?」

怪人・イフリートを葬った翌日ー
大学にやってきていた由梨花は、
親友の真桜から、心配そうにそう言葉を掛けられていたー。

昨日のイフリートとの戦いで、首筋に少しだけ傷を
負ってしまったのだー。

髪で隠してはいたものの、
平気で髪を触ったり、スキンシップの激しい真桜には
気付かれてしまったのだー。

「ーあ、あははー大丈夫大丈夫ーちょっとドジしちゃっただけだからー」
由梨花がそう言葉を口にすると、
真桜は「も~~~」と、笑いながら、
「ーーそういえば、大原くんから告白されたんだって?」と、
楽しそうに言葉を口にするー。

「ーえぇっ…!?
 真桜ってば、どこからそんな情報仕入れて来るのー?」
恥ずかしそうに苦笑いする由梨花ー。

「ーえへへー。それでそれで??
 告白OKしちゃうの?ねぇねぇ教えて!」

いつものようにぐいぐい来る真桜ー。

そんな真桜を由梨花に憑依しているガイラスは
”うるさい小娘だな”と、いつものように思いつつもー

この”うるさい小娘”と一緒にいると”楽しい”と
感じている自分にも気づくー。

「ーーー」
由梨花は少しだけ寂しそうに笑うと、
”俺ー…人間として生きたくなっちまった”と、
自虐的な笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー…!」

帰宅した由梨花は気配を感じて振り返るー。

そこにはー、怪人・クロノスの姿があったー。

魔帝国デビルピアの怪人の一人で、
何かとガイラスに絡んでくる”友人であり、ライバル”のような存在だー。

先日も、イフリートに尾行されていることを
こっそり忠告してくれたー。

「ガイラスちゃんよー。
 やっぱお前ー、”使命”を忘れちゃいねぇか?」

クロノスのその言葉に、由梨花は
「言ったろ?俺は”慎重”にやるんだー。
 大原博士の情報を引き出すために、息子の大原敬之とは
 もっともっと親しくならないとー…」と、そう言葉を口にするー。

がーー
クロノスは鎌を由梨花に向けたー。

由梨花は鋭い目でクロノスを睨むー。

「ホント、昔からお前は生意気だよなぁ
 ガイラスちゃんよー」

クロノスはそう言うと、
「ーーお前が”魔帝国デビルピア”からいなくなればー
 せいせいするぜ」と、そう言葉を口にしたー。

「ーーーー」
由梨花は、イフリートに続き、
このクロノスとも戦わなければならないと覚悟を決めるー。

がーーー

「ーーお前なんて、人間になっちまえよ」
クロノスは鎌を下ろして、そう言葉を吐き捨てたー。

「え…?」
由梨花が表情を歪めると、
クロノスは言うー。

「ーー魔皇様には、お前を処刑したと報告するー。
 なぁにー…”俺の力”があれば、簡単なことだー。

 お前は、その小娘として好きに生きればいい」

クロノスはそれだけ言うと、
自身の能力で”ガイラスの遺体”を作り出して、
それを手土産に、”お前は死んだことにする”と、
そう宣言したー。

「ーーー…な、なんで?」
由梨花は呆然としながら言うー。

すると、クロノスは少しだけ笑みを浮かべながら言葉を口にしたー。

「ーーただの気まぐれだよー。ガイラスちゃんー

 いいやー、”由梨花”ちゃんー」

ふざけた口調でそう言うと、クロノスは
そのまま手を挙げて、ワームホールの中へと姿を消したー。

「ーークロノスー」

クロノスが、”ガイラスは死んだ”と報告してくれればー、
由梨花に憑依しているガイラスはもう狙われることもないだろうー。

大原博士の息子である大原敬之は狙われるかもしれないがー、
それはーー

”「ーー宮川さんのことが、好きなんだー」”

告白してくれた敬之のことを思い出すー。

「ーー俺が…
 いやー…

 わたしが彼女として大原くんを絶対に守るー」

怪人・ガイラスは、
由梨花の身体に憑依したまま
”人間”として生きる道を決意しー、
鏡を見つめながら言葉を口にしたーー

「ーーごめんなさいー」

この、”宮川 由梨花”の身体と人生を奪ったー。
いずれにせよ、自分は極悪人ー。
しかも、この身体でのうのうと幸せを手にしようとしているー。

「ーー…ーーー」
”俺は一人の人生を奪った”

戒めのために
そのことを永遠に忘れないことを誓いー、
静かにそう言葉を口にするとー
由梨花に憑依したガイラスは”人間として生きること”を決めたー。

ただー、
それは、憑依されている由梨花にとっては
”死”に等しい最悪の決断でもあったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー宜しくお願いします」
由梨花が、敬之を呼び出して
告白の返事をするー。

「ーえっ!?ホントに!?」
敬之は振られると思っていたのだろうかー。
心底嬉しそうな表情を浮かべると、
「よかった~…本当によかった~」と、嬉しそうにしながら
「俺の方こそ、よろしくー」と、そう言葉を口にしたー。

由梨花はこの日、正式に敬之の告白にOKを出してー、
敬之の”彼女”になったー。

昼休みー。
そのことを親友の真桜にも報告するー。

「え~~~!すごい~!おめでとう!
 てっきり断るかと思ってたから意外!びっくり!」

真桜がいつものようにハイテンションでそう言葉を口にすると、
由梨花は照れ臭そうに苦笑いしたー。

「ーーえへへへー
 彼氏ができた感想を、一言!」

真桜が嬉しそうに茶化すような口調で言うー。

由梨花は笑いながら
「え~…え~っと、う、嬉しいー」と、恥ずかしそうに
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。

帰宅した由梨花は、敬之と電話で雑談していたー。

”ははー、じゃあ今度の休みに一緒に見に行こうか?”

敬之がそう言葉を口にするー。

敬之と由梨花は共通の趣味となった”映画”の話で
盛り上がっていたー。

しかしー…
その時だったー。

♪~~~

電話の向こうからインターホンの音が聞こえたー。

「あれ?誰か来た?」
由梨花がそう言葉を口にすると、
”ーあぁ、ちょっと一回ごめん”と、敬之は
スマホを切らずに、そのままにして
来客の対応に向かうー。

そしてー
声が聞こえたー

”あれー?真桜ちゃんー”

そんな声がー。

「真桜?」
由梨花は少し表情を歪めるー。

親友の真桜が、どうして由梨花の彼氏となった敬之の家を
直接訪れたのだろうかー。

一瞬、”浮気”を疑う由梨花ー。

すぐに彼氏の浮気を疑い、悲しくなるなんてー、
自分もすっかり女になったもんだー
と、ガイラスは自虐的に笑うー。

がー

”どうして、俺の家を知ってるんだー?”
敬之の声が電話の向こうから聞えたー。

話の内容から、浮気ではなさそうだー。

”ーーさっさと開けてよ~~~
 わたし、忙しいんだからさァ~”

真桜の声が電話の向こうから聞えるー。

「ーーー!!」
由梨花は、ハッとしたー。

”「ーー”サリー”も”イフリート”も、成果を挙げているー
 そのことを忘れるなー」”

以前、魔皇からそう言われたー。

倒したイフリートとーーー
もう一人”サリー”という怪人が、人間界に潜り込んでいるとー。

そしてーーー

”サリー”は、
小悪魔のような女の怪人であることを、
由梨花は思い出したー。

「ーーー…」

真桜の振る舞いと、よく似たーーー

由梨花は、そう思うと同時に、
慌てて家を飛び出したーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー大原くん!」

敬之の家に到着すると、
”拷問”された敬之の姿がそこにはあったー。

血をペロリと舐める真桜ー。

「ーーあっれぇ~~~由梨花じゃんー」
真桜は振り返りながら笑うとー、
「ーーううんー 裏切者のガイラスさん♡」と、
いつものようなテンションでそう言葉を口にしたー。

「ーーー…”サリー”…」
由梨花が言うと、真桜は「ピンポーン!」と、嬉しそうに笑うー。

「ーわたし、この真桜って女にもう5年以上憑依してて~~~!
 うふふっー
 ぜ~んぜん気付かなかったでしょ?」

真桜はそう言いながら、
「由梨花との”友達ごっこ”楽しかったよ♡」と、笑いながら言い放ったー。

そして、ボロボロになった敬之の方を見ると、
真桜は笑みを浮かべるー。

「ーあんた、コイツのことホントに好きになっちゃったみたいだからさぁ~…
 わたしが代わりにコイツから”力づく”で、父親の大原博士の隠れ家を
 聞き出そうと思ってね~ ふふっー」

真桜に憑依している怪人・サリーは言うー。

元々は”別の任務”でずっと、真桜の身体に憑依していて、
”ついでに”由梨花に憑依したガイラスに接近して、友達として振る舞っていた、とー。

ただ、由梨花に憑依したガイラスが”人間として生きたい”と
思い始めたのを察知して、監視していたのだとー。

「ーーわたしが”サリー”だってことは魔皇様しか知らないからねー
 気付かなかったのも無理ないよ」

真桜はそう言うと、
「ーーさぁ…大原くんー。お父さんはどこで研究を続けているのー?
 まさか、父親の居場所を知らないとか、ないよね?」
と、敬之の腕を掴みながら言い放つー。

「ーーー…い…言えないー」
敬之がそう言うと、真桜は容赦なく敬之を蹴りつけるー。

「ーーわたしを怒らせないほうがいいよー?
 ニコニコしてるうちに、ほら、言って言って」

そんな真桜の言葉に、由梨花が叫ぶー

「ーや、やめて!大原くんに手を出さないで!」
敬之の前だからか、由梨花として叫ぶガイラスー。

「ーーーー…」
真桜の表情から笑顔が消えるー。

「ーーそれ以上、大原くんに手を出したら、
 わたしが許さない!」

その言葉に、真桜が振り返ると、
「ーーちょっとさ~~~…女子大生のフリ、もうやめない?」と、
不愉快そうに言葉を口にするー。

「ーーーー…」
由梨花が表情を歪めると、真桜は笑いながら語り出したー。

「ーねぇねぇ、大原くんー
 あんたの彼女ー…

 本当は中身は”怪人”さんなんだよー?

 わたしと同じー。
 人間の身体に憑依して乗っ取ってるのー」

その言葉に、敬之は表情を変えるー。

「ふふふふふふっ!
 知らなかったでしょ?

 あいつは、アンタから父親の情報を聞き出そうと、
 アンタに近付いたわる~い、わるい怪人さんなのー」

真桜は、由梨花の方をチラッと見ながら笑うー。

「ーーーー」
由梨花に憑依しているガイラスも、
敬之も絶望の表情を浮かべているー。

そんな様子を見て、真桜は満足そうに頷くと、
「えへへー。じゃあ、裏切者のアンタをぶっ殺してー、
 そのあと、大原くんをた~っぷり拷問してー、
 あとはー…そうだー」
と、真桜は続けるー。

「ーーー…?」
由梨花が表情を歪めると、
「ー裏切者のアンタを始末したって、偽物の死体まで用意して
 魔皇様に嘘の報告をしたクロノスも殺してやらなくちゃねー」
と、真桜は邪悪な笑みを浮かべたー。

「ーーー…!」
由梨花が険しい表情で真桜を睨むー。

「ーーわ~~わ~~~!
 親友をそんな顔で睨んじゃダメだよ~?由梨花ァ~?」
真桜がクスクスと笑うー。

「ーーそうそう、アンタを殺す前にー、
 ”アンタが好きになっちゃったこの男”が、
 悲鳴を上げて泣き叫ぶ様子を見せてあげるねー」

真桜はそう言うと、敬之の方を振り返って、
”拷問”を始めたー。

”拷問天使”・サリーの異名を持つ怪人・サリー。
真桜に憑依しているサリーは嬉々として
敬之の悲鳴を聞いているーーー。

そんな光景を見てーー、
由梨花に憑依しているガイラスは叫んだー

「ーやめろって言ってるだろ!!」
とー。

「ーーー」
ニヤァ、と笑う真桜ー。

「ようやく本気を出す気になったのかなぁ!?」
突進してくる由梨花の攻撃を避けると、
真桜は身軽に攻撃を回避しながら、
「ーその身体じゃ、わたしには勝てないよ!」と、
身軽にジャンプしながら、由梨花に蹴りを加えて来るー。

「ーー…っっ」

「ーさぁ、彼氏の前で見せてあげなよー!
 邪悪な邪悪な怪人の姿を!」
真桜がクスクスと笑うー。

由梨花はなんとか反撃しようとするも、
何年も真桜に憑依しているというサリーは
”真桜の身体を使った戦い方”も熟知していたー。

「ーあはっ!親友ごっこしてた相手を蹴るのって
 楽しいねぇ!由梨花!」

真桜が笑うー。
必死にガードする由梨花ー。

けれどー、反撃は出来ないままだったー。

「ーーー…あくまでも、本当の姿を見せないつもりー、ね」
真桜は笑みを浮かべると、
スカートの中に隠していたナイフを取り出して、
敬之の方に向けたー。

「ーじゃあまずは、こいつの目を潰しちゃえ!」
真桜が敬之の方に向かうー。

「ーーや…やめっーー」
由梨花の目から自然と涙が溢れるーーー

「ーやめろおおおおおお!」
由梨花はそう叫ぶと同時に、その身体から
憑依している怪人・ガイラスが飛び出したー。

真桜の腕を掴み、真桜を壁に叩きつけるー。

無我夢中になって真桜に攻撃を続けるー。

真桜はボロボロになりながら、ゲラゲラと笑うとー、
その中から”拷問天使”・サリーが飛び出して来たー。

真桜よりも小柄で、小悪魔のような風貌の怪人ーー

「あははっ!あはははっ!
 あはははっ!

 大原くんに見せちゃったね!
 邪悪な姿!
 
 あはははっ!」

サリーはケラケラと笑いながら、
倒れ込んだ真桜の身体をゴミのように蹴り飛ばすと、
「ーーあんたをぶっ殺してあげるぅ♡」と、
毒針を手に、ガイラスの方に襲い掛かって来たー。

「ーーー…何年も使っていた身体にそんな扱いをー…!」
真桜の身体を蹴り飛ばしたサリーに怒りの形相を浮かべるガイラスー。

「ーあはっ!人間なんて”入れ物”じゃん?
 あんた、入れ物に愛着なんて抱いてるの???

 あはっ!あははははっ!」

サリーが毒針攻撃を繰り出すー。

この狭い室内ー。
ガイラスに逃げ場はないー。

がーー

「ーーえっ!?」
サリーが表情を歪めるーーー

ガイラスが、毒針の中、サリーに向かって突進してきたのだー

「ーーーはっ!? えっ!?」
一発で怪人さえも行動不能にする毒のはずーーー

しかしーー
ガイラスのあまりにも強い怒りが、その毒にも耐えるほどの
底力をガイラスに与えたーーー

「ーーーいっ…」
目の前にやってきたガイラスを見て、サリーは慌てて
倒れている真桜に憑依すると、
「ーーゆ…由梨花ー、友達、でしょ?」と、
苦笑いしながら、ガイラスの方を見たー。

「ーーーそうだなー
 ”由梨花”はー友達だよなー」

ガイラスは”今の俺は由梨花じゃない”と、だけ言うと
”真桜の中”にいるサリーを引っ張り出して、
強烈な一撃を加えたーーー

サリーが悲鳴を上げて、その場に倒れ込みー、
そのまま溶けるように消えていくー。

サリーを倒したガイラスは、
気絶している敬之の方を見つめるとー、由梨花に憑依して
すぐに救急車を呼ぶのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーー」

敬之は救急搬送されて、無事だったー。

だがーー

「ーーー…俺がやったことだー」
ガイラスは、警察の前に”怪人”としての姿を晒して投降していたー。

そうするしかなかったー…

敬之を助けるには救急車を呼ぶしかなかったー。
しかし、救急車を呼べば”どうしてこうなったのか?”ということを
当然、誰もが疑問に思うー。

しかし、サリーが消滅したあの場には、
サリーに憑依されていた真桜と、ガイラスが憑依していた由梨花、
そしてガイラス自身しかいなかったー。

由梨花に憑依したままやり過ごすことはできたー

けれどー
あの場に落ちていたナイフや凶器には”真桜”の指紋がついているー。

何年も憑依されていた”真桜”という哀れな子を助けるには
こうするしかなかったー

”俺が、この女に憑依してこの男を襲ったー”

そう自白し、”憑依能力”を目の前で証明するー…

それしか、道はなかったー。

もちろん、怪人の存在は公にはできないだろうしー、
憑依のことも人間は公にはできないだろうー。
そう思い、ガイラスは敬之の無事を見届けたあとに
自ら警察に接触し、全てを話したー。

”ーーーー”
敬之と、”由梨花”として一緒にいたかったー。

でもー、それはもう叶わないー

人間として生きたかったー。
けれどー

それもーーー

”怪人”として特殊な施設に拘束されたガイラスー。

が、1か月が経過したある日ーー
”彼”はやってきたー。

「ーーー…!」
ガイラスが顔を上げると、
そこには敬之がいたー。

魔帝国デビルピアと戦う大原博士の息子だからこそ、
こういう場所にも来れるのかもしれないー。

「やっと会えたよー」
敬之がそう言うと、
ガイラスは表情を歪めたー。

「ーーー…騙していて…ごめんなさいー」
ガイラスはどう話していいのか分からずそう言うと、
敬之は苦笑いしたー。

「ーあの時、俺を助けてくれてありがとう」
敬之がそう言うと、ガイラスは少しだけ驚くー。

まさか、感謝されるとは思っていなかったからだー。

「ーーー……
 ”由梨花”は、今は元気になって大学に復帰しているよー
 
 まぁーーー俺のことはそもそも知らないみたいだったけどー」

少し寂しそうに言う敬之ー。

由梨花が敬之と親しくなったのは”ガイラスに憑依されてから”ー
元々の由梨花は敬之と接点がほとんどなく”同じ大学にいる知らない人”
状態だったー。

「ーーー”真桜”って子は、
 今は入院してるけどー、命に別状はないー」

敬之はそこまで言うと、ガイラスに対してこう言ったー。

「ーーあの子たちのために、自分が罪を被るなんてー

 そういう感情ってさー…
 ……”人間”そのものだと思うよー」

敬之がそう言うと、
「ーー君は、人間の心を持ってるー」
と、笑いながらそう言ったー。

ガイラスは敬之の方を見つめながら
寂しそうに頷くとー、
「でも、俺は怪人だからー」と、
そう言い放ったー。

がーーー
敬之は、ガイラスの方を見ると、
「父さんにも全て話したらーーー
 父さんも力を貸してくれたよ」と、そう言葉を口にしーー…

”あること”をガイラスに提案したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー今日から、君は”人間”だー」
敬之の父親、大原博士が言うー。

「ーーーー…」
驚いた様子で、自分の手を見つめる”人間に憑依した”ガイラスー。

由梨花とは違うー、
けれども、同年代の女子大生の身体に憑依したガイラスは、
「ーーほ、本当に、いいんですかー?」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーあぁ、問題ないー」
大原博士が頷くー。

ガイラスの話を聞かされた大原博士は、
”ガイラスが人間として生きられるように”手回ししてくれたー。

その方法とはーー
”自殺未遂で昏睡状態に陥っていた子に憑依すること”だったー。

親族も疎遠の人間しかおらず、
本人自身も遺書に”治療不要”と書き残していてー、
一度助かったものの、また自殺未遂を起こした子の身体だー。

この子の身体ならーー、と、
大原博士がガイラスがこの、莉愛(りあ)という子の身体に
憑依できるように手配してくれたのだー。

「ーーー……ありがとうございますー」
莉愛に憑依したガイラスは心からの感謝の言葉を口にするー。

「ーーだが、一つ条件があるー」
大原博士はそう言い放つー。

「条件?」
莉愛になったガイラスがそう言うと、
大原博士は笑みを浮かべたー。

「ー君のことを信用していないわけじゃないー。
 だが、君は”怪人”だった人間だからなー…

 ”監視”が必要だー」

その言葉に、莉愛になったガイラスは少しだけ
表情を曇らせるー

がーーー

「ーー”私の息子”が君を監視するよー」
大原博士はそう言ったー。

”監視”とは名目上で、
大原博士は、”ガイラス”がまた、息子の敬之と一緒にいられるように
手配してくれたのだー。

「ーー敬之も、それを望んでる」
大原博士の言葉に、莉愛は目に涙を浮かべながら「はいっー」と、
そう言葉を口にしたー。

人間として生きたい怪人はーー
今日、この日、”人間”になったのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」

何年も”サリー”に憑依されていた真桜は、
虚ろな目で病室の外を見つめていたー。

憑依される前の真桜はネガティブで暗い性格ー。

意識を取り戻したあとも、真桜は
なかなか日常生活に復帰できずにいたーーー

そんな、真桜の病室に”液体”が零れ落ちるー。

「ーーー…だれ…?」
真桜が、そう呟くと、
液体が”形”になっていくーーー

そこにはーーー
”サリー”の姿があったー。

ガイラスに倒されたサリーは、
”自分を液体にする力”で、死んだふりをして、
そのまま瀕死の状態で逃亡していたのだー。

そしてーー
ある程度回復した今ー、戻って来たー。

「ーー”使いやすい入れ物”ってー、
 なかなか捨てられないもんね?」

クスッと笑うサリー。

驚く真桜ー。

サリーは真桜にキスをするとー、
そのまま真桜の身体の中に吸い込まれてーーー

真桜は、ベッドの上で邪悪な笑みを浮かべたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

最終回でした~!☆

物語を描き切るために、
いつもより少し文章量UPデス…★!笑

ここまでお読み下さりありがとうございました~!☆

コメント

  1. TSマニア より:

    途中でサリーが真桜に憑依してるのに気付きました!

    終わりの方は…さすが無名さんって感じですネ!☆

    サリーの方が1枚上手ですネっ

    続編あるかも…ですネ~!★ 

    自分が無名さんのカラダになってる時に告白されたら

    勝手に自分の判断で告白の返事しないように気を付けますっ(*´艸`)笑

    • 無名 より:

      わわっ!☆気付かれちゃいました~!☆
      私の作品の傾向が、だんだん読めるように…☆☆!

      続編…☆!
      書けちゃうかもですネ~笑

      入れ替わり中の告白は…保留一択なのデス!!

  2. TSマニア より:

    今回の作品の最後の展開は読めないですよ笑

    サリーが生きていたりガイラスが人間として生きることになったり…続編あるかも的な終わり方も無名さん上手ですよネ!☆

    クロノスも助けてくれるかもですネ…

    無名さんのカラダから自分のカラダに戻って

    無名さんの入れ替わり中の告白はもちろん保留ですが…

    保留が3件くらいあるように…頑張りまぁす\(^o^)/笑

    無名さんのカラダでオシャレしてバッチリ決めてナンパされてみたいのデス(*´艸`)笑

    全部、丁重にお断りしますけど…笑

    • 無名 より:

      笑~★

      元に戻った時に突然の保留3件…!
      ぶるぶるなのデス…!

      最後の展開まで読めるようになったら…
      憑依空間マスターですネ~笑

      • TSマニア より:

        無名さんは発想や文才も天才的なので展開までは読めないですよ\(^o^)/笑

        これからも…300年後も応援してますネ笑

        告白、3件保留…あとは無名さんに任せますっ(^o^ゞ笑

        個室では楽しみ過ぎますが

        自分が無名さんのカラダでお出かけした場合はしっかり女の子してますよ☆♪

        服装、髪型、メイクなど見た目はもちろん!

        歩き方や姿勢とか仕草とか大事ですよネ!

        無名さんのカラダでオシャレしてお出かけもしてみたいのデス(*´艸`)笑

        • 無名 より:

          身体を次々と乗り換えれば
          300年執筆できる…のデス~笑

          ちゃんとお出かけできるかどうか
          テストします~!☆笑

          • TSマニア より:

            はいっ!!

            お互いに乗り換え続ける前提なのデス\(^o^)/笑

            無名さんのカラダで女の子テストいいですネ笑

            年内に女の子検定3級合格目指して頑張ります笑

            無名さんのカラダと自分のカラダを交換してテスト勉強付き合ってくださいネ( *´艸`)笑

          • 無名 より:

            3級…★笑

            入れ替わった後にお互いの身体を使い方を教える時間は、
            実際に体験できたらなかなか楽しそうですネ~!

  3. TSマニア より:

    はいっ!

    まずは無理せず3級目指しますデスっ(^o^ゞ笑 

    入れ替わった後にお互いのカラダの使い方を教え合う時間も楽しいですし♪♪

    少しずつ入れ替わった相手のカラダに慣れていったり楽しいですよ(*´艸`)笑

    最初はお互いにおトイレも…(*´艸`)笑

    • 無名 より:

      私の場合、男の人の身体でも
      座ってすれば、
      なんとかなる…………かもですネ~笑
      (ならないかもですケド…)

      • TSマニア より:

        座って終わった後にブルブルしたら大丈夫だと思います笑

        慣れたら立ってするのに挑戦ですネ(*´艸`)笑 

        自分は女の子のトイレの済ませ方、知ってるし丁寧にしますのでご安心を…☆笑

        女の子の服で着かた分からない服とかあるのでスムーズに着れるようになりたいですネ笑

        その時は教えてくださいネ(小悪魔風)笑

        • 無名 より:

          既に済ませ方を知っている…!?
          やっぱり、憑依入れ替わりの経験者様なのデス…!笑

          立ってしたら失敗しちゃいそうデス~!笑

          • TSマニア より:

            まずは座って慣れたら立って練習なのデス(*´・ω・`)b笑

            その為の個室で入れ替わり練習なのデス~☆

            無名さんのカラダになった自分が丁寧に指導します笑

            自分のカラダと入れ替わったら無名さんもハマりますよ笑

            無名さんのカラダで小悪魔誘導しちゃいます\(^o^)/笑

            無名さんの声で甘い囁きしてみたいのデス(*´艸`)笑

            自分も無名さんのカラダで練習して余裕ないですが笑

          • 無名 より:

            色々教えながら、
            私も練習~☆

            最初はとっても大変そうですネ~!☆!