<憑依>人間として生きたくなった悪の怪人さん②~警告~

人間に憑依したものの、
人間界での生活が楽しくなってきてしまった怪人ー。

彼はやがて、憑依した彼女の身体で生きようと考え始めるー。

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「ーーーー…」

休日ー。
おしゃれな格好して、由梨花は嬉しそうに
自分を見つめるー。

「ーーククー
 人間のおしゃれって楽しいよなー」

可愛くなった自分を見つめながら、由梨花は嬉しそうに微笑むと、
「ーーうん!わたし、かわいい! ーーなんてな」と、
笑みを浮かべながら家の外に出かけるー。

今日は、”大原 敬之”と一緒に映画を見に行く
約束をしているー。

由梨花に憑依している怪人・ガイラスの所属する
魔帝国デビルピアに逆らう”大原博士”の息子である大原 敬之ー。

彼は映画好きで、由梨花は”話を合わせるために”共通の趣味を
作ろうと、多数の映画を見て勉強しー
今では定期的に映画館に一緒に遊びに行く間柄となったー。

「ーー!」
家から出ようとした由梨花の前に、
”怪人”・クロノスが姿を現すー。

異形の怪人を前にしても動じない女子大生ー…
本来の由梨花であれば確実に悲鳴を上げるであろうその状況にも、
今の憑依された由梨花は動じないー。

「ーー女子大生の部屋に侵入とは、感心しないな」
呆れ顔でそう言葉を口にすると、
クロノスは、突然由梨花の胸倉を掴むかのようにして、
由梨花を壁際に叩きつけたー。

「ーガイラスちゃんよぉー
 お前、”使命”を忘れちゃいねぇか?」
クロノスが不満そうに呟くー。

「ーーー何のことだ」
由梨花は動じずにクロノスを睨み返すー。

「ーー大原の息子から、さっさと情報を引き出せよー。
 何なら俺がその小娘の身体を乗っ取って
 聞き出してやろうかー?」

クロノスは苛立ちを露わにするー。

由梨花に憑依したガイラスが”大原敬之からなかなか情報を引き出さない”ことに
苛立っているようだー。

「俺には俺なりのやり方があるー
 確実に情報を引き出すために時間をかけているだけだ」
由梨花がそう言い放つー。

半分本当で、半分嘘だー。
人間として生きたい、という想いがガイラスの中では強まっているー。

だが、それを言えば”怪人こそ至高の存在”だと信じて疑わない
クロノスはぶち切れるだろうー。

「ーーーーこんな可愛い格好してーーー
 ーまさか人間として過ごすことが楽しくなったとか言わねぇよなぁ?」

クロノスは由梨花の胸を触りながら、
邪悪な笑みを浮かべるー。

「ー触るな」
由梨花が怒りの形相でクロノスを睨みつけると、
クロノスは「へへー冗談だよー」と、ニヤニヤしながら引き下がるー。

「ーーー…俺が慎重なのは知ってるだろ?
 いつも通りだー。この女の身体も俺にとってはただの道具ー
 情など沸きはしないー」

由梨花のその言葉に、クロノスは「へへー安心したぜ」と、
呟くと、そのまま禍々しい鎌を手に、笑みを浮かべたー。

「ーーガイラスちゃんよー。
 ひとつだけ”アドバイス”してやる」

クロノスは、由梨花の前から立ち去ろうと
背を向けたところで、そんな言葉を口にするー。

「ーなんだ?」
由梨花が腕組みしながら言うと、
クロノスは言葉を続けたー。

「ーーお前、”監視”されてるぜー
 イフリートのやつにー」

その言葉に、由梨花は表情を歪めるー。

「魔皇様が、お前の任務がなかなか進まないことに
 違和感を抱いていてなー。

 ”イフリート”の奴にお前を監視させてるのさー」

クロノスはそう言うと、笑みを浮かべながら
由梨花の方を見たー。

「ーあいつは融通が利かねぇし、
 俺と違ってお前が慎重なやつだってこともあまり知らねぇ

 ーー気を付けるんだな」

クロノスはそう呟くと、
そのまま鎌で”ワープホール”のようなものを作り、
怪人の本拠地へと戻ろうとするー。

「わざわざ、それを俺に言いに来たのか?」
由梨花がそう言うと、
クロノスは「あぁー俺はこう見えてもダチ想いだからなー」と、
揶揄うようにして言いながら、そのまま姿を消したー。

「ーーーーーイフリート」
由梨花はそう言葉を口にしながら、表情を歪めるー。

”「ーー”サリー”も”イフリート”も、成果を挙げているー
 そのことを忘れるなー」”

この前、魔皇から言われた言葉を思い出すー。

人間界で先に人間に憑依して諜報活動を行っている怪人二人ー。

そのうちの”イフリート”が、由梨花に憑依しているガイラスの見張りに
配置されたー。

「ーーーーーー…」
わざわざ”見張り”を立てるということは魔皇から
強く警戒されている証ー。

「ーーー…」
由梨花は険しい表情を浮かべながら、
今後のことを考え始めたー。

「ーーーーーーーーー」
そんなーー
由梨花が暮らすアパートの外では、
サングラスをかけた男ーー…
”イフリート”が、その様子を見張っていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーねぇねぇ、大原くんのお父さんってどんな仕事してるの?」

翌日ー。
由梨花は、いつも以上に可愛らしい雰囲気でー、
大原 敬之にそう言葉を口にしたー。

「ーえ?俺の父さんー?」
敬之がそう言うと、
由梨花は「うん!何してるのかな~って」と、
笑いながら言葉を口にするー。

由梨花に憑依しているガイラスは
”イフリート”に見張られていると知り、危機感を抱いたのか、
敬之の父親のことを探るような言葉を口にしたー。

「ーーあははー、大した仕事じゃないよー
 普通の仕事さー」
敬之は、そう言葉を口にしながら誤魔化すー。

「ーーー…え~?教えてよ~」
甘い声を出しながら由梨花が残念そうに微笑むー。

「はははー…ホントに普通なんだってー」
敬之はなおも誤魔化すー。

それでも、食い下がろうとしない由梨花ー。

がーー

「ーーごめんー。
 あまり、父さんのことは話したくないんだー」
いつも優しい敬之は、険しい表情でそう言葉を口にするー。

「ーーっ… ご、ごめんー」
由梨花は”ここで信頼関係を崩すわけにはいかない”と
慌てて謝罪すると、
「いや、いいんだー。こっちこそごめんー」と、
敬之は悲しそうな目をしながら立ち去っていくー。

「ーーー…」
一人残された由梨花は、困惑した表情を浮かべながら
その場に立ち尽くしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー何か今日暗くない~??
 何かあったの~~~?」

親友の真桜がいつものように、明るさ全開で
言葉を口にするー。

「ーーえ…あははー…別にー」
由梨花が誤魔化すと、
「ふふふ~”なにかあった”って顔に書いてあるよ~?
 ほらほら教えて教えて!」
と、由梨花の頬をつんつんしながら、真桜は言葉を口にしたー。

「ーあははー…」
由梨花に憑依しているガイラスは
”うるさい小娘だなぁ”と、思いつつも、
目をキラキラさせている真桜を見て
”な~んか憎めないんだよな”と、ため息をつきながら
”父親のことを大原くんに聞いたら、嫌な思いをさせちゃったみたい”と、
そう説明したー。

「ふ~ん…なんか、お父さんとの間にイヤなことでもあったのかな~?」
真桜は意外そうにそう言葉を口にすると、
「ーでもでも、由梨花、大原くんのこと好きなんでしょ?
 だったら、早く謝ったほうがいいよ!ね?ね?」
と、笑いながら言葉を口にしたー。

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大学での1日が終わりー、
由梨花は敬之の姿を探したー。

「さっきは、お父さんのこと無理に
 聞こうとしてごめんなさいー」

そう言葉を口にすると、
敬之は苦笑いしながら、
「ーあははー…宮川さんは悪くないよー」
と、そう言葉を口にしたー。

そしてーーー…

「ーーーーー”父さん”さーーー
 ちょっと危険な仕事をしてるんだー」

と、そう言葉を口にしたー。

危険な仕事とは
”魔帝国デビルピア”の対策チームの研究者としてー、
対策班の第1人者として働いていることを言っているのだろうー。

「そうなんだー」
由梨花に憑依しているガイラスは何食わぬ顔でそう言葉を口にするー。

「ーー悪いことしてるんじゃなくて、いいことしてるんだけどー
 ただーーー…

 宮川さんに危険が及んだら嫌だなってーー…
 それで、話したくなかったんだー

 ごめんー」

敬之はそう言葉を口にしたー。

由梨花に憑依しているガイラスは「わ…わたしのためー?」と、
驚くー。

「ーー…ははー言い訳に聞こえるかもだけどー」
苦笑いする敬之ー。

「ーーーー……あのさー
 俺ーーー…」

敬之は少し考え込むような仕草をしてから
そう言葉を口にすると、

「ーー宮川さんのことが、好きなんだー」
と、”告白”をしてきたー

「ーえっ!?!?えっ!?!?!?」
由梨花に憑依しているガイラスは衝撃を受けるー。

が、女としてしばらく過ごしたからだろうかー。
ドキッとしてしまうと同時に、
嬉しいという感情が沸きあがって来てしまうー…。

がーー…
すぐに”自分は怪人”であるということを思い出して、
喜びの表情から、悲しそうな表情へと変わっていくー。

「ーーー…あ、ごめんー
 急にこんなこと言われても、困っちゃうよなー」

敬之は苦笑いしながらそう言うと、
「ーーこ、困るなんてことないよ」と、由梨花は
すぐに言葉を口にしたー。

「ーーただ……」
由梨花は少しだけ躊躇うと、
「ー少しの間、考えさせてー」と、そう言葉を口にしたー。

「ーはは、もちろんー
 いくらでも待つし、
 どんな返事だったとしても受け入れるから、遠慮はいらないよ」

敬之はそれだけ言うと、
そのまま静かに微笑んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

敬之と別れー、
帰宅しようと道を歩く由梨花ー。

”俺は、そもそも人間じゃなくて怪人ー”
”それに、女でもないー”

そんなことを思うー。

けれど、由梨花として生きるうちに、
人間として生きる楽しさー、
そして、女として振る舞ううちに、
心までいつの間にかー。

「ーーチッー」
由梨花が苛立ちを露わにするー

そしてーーー

「ーーーー」
”尾行”されていることに由梨花は気づいたー。

クロノスが言っていた通り、
魔皇から疑われているのであればー、
”イフリート”が尾行してきているのだろうー。

「ーーーー」
由梨花は今一度舌打ちをするとー、
「ーーー俺はー」と、そう言葉を口にしながら、
人通りの少ない方に向かって歩いて行ったー。

夜の闇に照らされた墓地ー。

そこにやってきた由梨花は立ち止まるー。
本来の由梨花なら、夜にこんな場所にいたら
悲鳴をあげそうなぐらいに、物騒な雰囲気が
漂っているー。

「ーーー」
そこで、立ち止まった由梨花は、
「ー人間界じゃ、お前のやってることは女子大生へのストーカーだぞ」
と、そう言葉を口にするー。

「ーーーガイラスよー」
由梨花を尾行していたサングラスの男は、その言葉を無視して呟くー。

「ー人間に、情が移ったのではあるまいな?」
その言葉に、由梨花は「俺にも分からないんだー」と、そう答えると、
「ただー」と、言葉を口にしたー。

「ただ?」
イフリートが憑依しているサングラスの男が表情を歪めるー。

破産して、自暴自棄になっていた男を乗っ取り、
その身体を活用しているイフリートは、
ここ最近はずっと、由梨花に憑依したガイラスを監視していたー。

「ーーー…ただ、お前に監視されているのは、気に入らねぇなー」
由梨花が怒りを露わにするー。

「ーーーふんー反逆者めー」
サングラスの男は、そう言葉を口にすると、
炎のオーラのようなものを放ちー、由梨花を睨みつけたー。

「ーー何とでも言えー」
由梨花はそう言い放つと、サングラスの男と夜の墓地で
戦い始めるー。

”由梨花”の身体の身軽さを生かして、
サングラスの男を圧倒していくガイラスー。

やがてー、イフリートはサングラスの男の身体を捨てると、
炎を身に纏った怪人としての姿を露わにしたー。

「ーーこの場所はちょうどいいー。
 お前の灰をここに埋葬してやるー」

イフリートは笑みを浮かべながら、
由梨花に炎を放ち始めるー。

それを素早い身のこなしでよけていく由梨花ー。

「ーはぁ…はぁー…チッー」
しかし、由梨花の身体は元々、スポーツ万能でもなんでもなく、
どちらかと言うと華奢な感じでー、
身体が悲鳴を上げ始めていたー。

「ーーーぐっ」
追いつめられて、息をあげる由梨花ー。

イフリートは笑みを浮かべながらトドメを刺そうと
近付いて来るー。

「最後に何か言い残すことはあるか?」
イフリートが炎に包まれた剣を手に、由梨花にトドメを刺そうとするー。

「ーーーそれはーー」
由梨花がボソッと呟くー。

「?」
イフリートが表情を歪めるー。

「それは、俺のセリフだー」
そう言葉を口にした直後ー、
由梨花の身体から、憑依していたガイラスが飛び出すーー

突然、ガイラスが飛び出してきたことで、イフリートは目を見開くと、
そのまま、ガイラスは腕をブレード状に変形させて、
イフリートの首を突き刺したー

「ぐがっ…」
苦しそうに声を上げるイフリート。

「ーーーーー何か言い残すことはあるか?」
イフリートの言葉を、そのまま返すガイラスー。

イフリートは邪悪な笑みを浮かべると、
「魔皇様を裏切ってー、無事で済むと思うなよー」と、
そう言い残してーー、
炎に包まれながらその場で絶命したー。

「ーーーー」
倒れている由梨花を見つめると、
再び由梨花に憑依したガイラスは、
「ーここがお前の墓場だー」
イフリートの亡骸を見つめながら、そう言葉を呟いたー。

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!

人間として生きたくなってしまった悪の怪人が、
どんな結末を迎えるのか
見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!☆!

コメント

  1. TSマニア より:

    怪人さんにどんな結末が待ってるのか…!?

    告白の結末は…!?

    自分も無名さんのカラダになる度に乙女に…(*´艸`)笑