憑依された娘から突き付けられた
”人質交換”ー。
娘が憑依されていることを知らないまま、
彼は、その要求に応じることにー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーよかったー。本当によかったー」
父・竜平が、娘・亜香里の無事を確認して
嬉しそうにそう言葉を口にすると、
亜香里は穏やかな表情で微笑んだー。
「ーーさぁ…亜香里は逃げるんだー」
竜平が言うと、亜香里は「お、お父さんはー?」と、
表情を歪めるー。
「俺は、ここに残るー」
竜平はそう言うと、「ここで一緒に逃げたら、
きっと”また”亜香里が狙われるー。
だからちゃんと犯人と話をつけなくちゃいけない」
と、言葉を付け加えるー。
「お、お父さんー」
亜香里のそんな反応を見て、竜平は
「明日の朝までに俺から連絡がなかったらー…
警察に連絡してほしい」と、そう言葉を口にすると、
亜香里は静かに頷いて、そのままゆっくりと外に向かって歩き始めたー。
「ククククー」
しかしー
竜平は知らないー。
娘の亜香里は、”憑依”されていて、
犯人は、亜香里の中にいることをー。
「ーーー……俺はここにいるぞ
このあと、どうすればいい!?」
竜平がそう叫ぶー。
だが”犯人”から返事はないー。
竜平は緊張からか、汗をかきながら
険しい表情を浮かべるー。
亜香里の”人質交換”を要求してきたのは”女の声”だったー。
犯人は、女なのだろうかー。
もし、単独犯だとすれば姿を現した瞬間に、
確保することもできるかもしれないー。
だが、単独犯とも限らないー。
”犯人”としっかり話をしなくてはー。
♪~~~~
竜平が手にしていたスマホが鳴るー。
”ーククククー
ちゃんと、その場に残るとは、律儀だなー
そんなに娘が大事か?”
犯人の女の声だー。
「ーー…そんなことはいい!
俺はちゃんと残ったぞー?
お前の目的は俺なんだろうー?
だったら、直接話をしようじゃないか」
竜平がそう言うと、相手の女ーーーー
”憑依された亜香里”は笑うー。
もちろん、竜平は電話の相手も亜香里自身だとは
夢にも思っていないー。
たった今、立ち去った亜香里が倉庫の外から、
ハンカチで口元を覆い、別人を装い電話してきているなどとは、
夢にもー。
”ーいいだろうー。
でも、話をする前にお前にはその椅子に座って
紙に書かれている通りの操作をしてもらうー。
こっちは”女”だからなー
力づくで反撃されてはたまらないー”
その言葉に、竜平は表情を歪めるー。
できれば、”自由な状態”で相手と話し合いをしたかったが
この様子だと、要求に応じなければ、
相手が姿を現すことは無さそうだし、
たった今、逃がした亜香里が”また”狙われる可能性もあるー。
そう考えた竜平は「分かったー。」と、そう返事をしつつ、
「ー俺がここに座ったら、”直接”話をしよう」と、
言葉を口にしたー。
”ふんーまぁいいだろうー”
相手の女ー…”憑依された亜香里”がそう言葉を口にするー。
竜平は少しだけ不安そうな表情を浮かべつつも、
”娘のためだ”と、用意された椅子に座り、
備え付けられているボタンを指示通りに操作するー。
そしてーー…
竜平は椅子に”拘束”されたー。
解除するためには、ある操作をする必要がありー…
先程、憑依されている亜香里は、”自ら”その操作をして
脱出したものの、そのようなことを竜平が知る由もなかったー。
「ーーーーさぁ、出てきてくれー。
俺にいったい、何の恨みがあるんだー?」
竜平がそう言い放つと、足音が背後から聞えて来たー。
「ーーーークククククー無様な姿だなー」
その言葉に、竜平は少しだけ表情を歪めるー。
女の声ー。
やはり、犯人は女なのだろうかー。
いや、それ以上にー…
”この声”はーー
「どうした?この声に聞き覚えがあるのか?」
女が笑うー。
竜平が拘束されている椅子の背後には、
”娘の亜香里”が立っているー。
だが、背後を確認することができない竜平は、
”嫌な予感”を覚えながらも、
”いや、そんなはずはないー”と、そんなことを考えるー。
「ーーーふふふふふふーまぁいいー
姿を見せてあげようー」
そんな、女の声が聞えて来てー、
背後から、前の方に回って来た女ー
その相手はー
紛れもなく、さっき、竜平が逃がしたはずの娘ー・
亜香里だったー。
制服姿の亜香里を見て、竜平は
「ど、どうしてーー…?」と、そう言葉を口にするー。
「どうしてって?
お父さんが”ウザい”からー」
ニヤッと笑う亜香里ー。
その言葉に、竜平は強いショックを受けるー。
だがー、
それを見て笑った亜香里は”種明かし”をしたー。
「ーーー…と、言いたいところだがー、
この娘は、”被害者”だー」
亜香里はニヤニヤしながら、そう言葉を口にすると、
突然、苦しそうに「ぁ…」と、うめき声を出してー、
その場に膝をついて、ガクッと項垂れるー。
「ーー…あ、亜香里ー?」
そして、信じられないことに亜香里の身体から
煙のようなものが出て来ると、
その煙が集まりー、
白髪まじりの男の姿になったー
「ーー久しぶりだなー…社長ー」
その男ー…亜香里に憑依していた笹原 浩司が姿を現すと、
竜平は「お…お前…笹原!」と、声を上げたー。
「ーーククー覚えていたかー。
私はお前のことを絶対に許さないー。絶対にー」
浩司の言葉に、竜平は表情を歪めるー。
そんな様子に浩司は笑みを浮かべるー。
「お前は、私から娘を奪ったー。
だから、私もお前から奪ったのだー。娘をー」
そう言い放つと、膝をついたまま
意識を失っている亜香里の方を見つめるー。
「あ、亜香里に何をした!?」
竜平がそう叫ぶと、浩司はニヤリと笑みを浮かべるー。
「ーーー”憑依”したのさー
こういう風になー」
浩司はそう言うと、意識を失ったままの亜香里に”キス”をして、
そのまま亜香里の中に吸い込まれていくー。
意識を失っていた亜香里がククク…と笑いながら立ち上がるとー、
「ーお前の娘は、私が電話した時点で既に私に憑依されていたんだよー」
と、そう言葉を口にしたー。
「ひ…憑依…そんな馬鹿な!?」
竜平が、信じられない、と言いたげな表情でそう叫ぶと、
「ー信じられない~?」と、亜香里はクスクス笑いながら、
目の前で自分の胸を揉み始めたー。
「ーなっ…」
竜平は戸惑うー。
「ーふふー
”わたし”がこんなこと、自分の意思ですると思う~?
お父さんの前で、こんな風に揉んじゃう娘だと思われてるの~?」
ニヤニヤしながら言う亜香里ー。
「ーや…やめろ!亜香里に触れるな!」
カッとなって、竜平がそう叫ぶと、
亜香里は邪悪な笑みを浮かべながら、
竜平の方を見つめたー。
「ーーそうそうー
お前が来る前に、お前の娘の身体ー
色々”試させて”貰ったけどなー
なかなか”イイ”感度だったよー」
そんな亜香里の言葉に
「お…お前…!」と怒りに震える竜平ー。
「娘の喘ぐ声ー聴いたことあるか?
なかなかエロイ声だったぞ?
何ならお前にも聞かせてやろうか?」
亜香里のそんな言葉に、
「ー亜香里の口で、そんなことを言うんじゃない!」と、
怒りの形相で叫んだー。
「ーークククー…
お前は自分の立場が分かってないようだなー」
亜香里がそう言いながら竜平を見つめるー。
「ー私はお前に”復讐”するためにお前を呼び寄せたんだー。
娘を奪ったお前に、復讐するためにー」
亜香里の言葉に、竜平は叫ぶー。
「ーーや、約束が違うぞ!」
とー。
「約束?」
亜香里が冷たい目で竜平を見つめるー。
「ーー俺が来れば、亜香里は解放するはずだったはずだ!」
竜平のその指摘に、亜香里は「あ~~~」と、笑いながら
頷くと、言葉を続けたー。
「ー”解放”はされたでしょ?
でも、”わたし”が自分の意思で戻って来ちゃったんだからー
仕方ないよね?おとうさんー」
クスクスと笑う亜香里ー。
竜平は怒りの形相で「騙したなー…!」と、そう言葉を口にするー。
「ーーふふふふ…はははははははっ!
いい!いいよ”お父さん”その顔ー」
亜香里が竜平の顔を手で掴みながら、ゲラゲラと笑うー。
「ーもっと見せてくれよー。お前の苦しむ姿をー。」
亜香里に睨まれながら、竜平は「亜香里を解放しろー」と、
それだけを願うー。
「ー何のために…何のためにこんなことをする…!?」
竜平が困惑の表情で叫ぶー。
すると、亜香里は拘束されている竜平に顔を近づけてきて、
竜平を睨んだー。
娘に眼前で睨まれる状況に竜平は心底動揺するー。
「ー俺はお前に娘を奪われたー。
だからお前に復讐して、お前から娘を奪ってやるんだー」
その言葉に、竜平は「な、何を言っている…!」と、
表情を歪めるー。
「ーーー覚えているかー?」
亜香里の身体のまま、竜平を睨みつける浩司ー。
現在、全国に4つの拠点を持つ竜平の会社ー。
そのうちの、2つ目の拠点を立ち上げる際に、
竜平は、当時、信頼している部下だった浩司に、
2つ目の拠点となる近畿地方の支社の立ち上げの責任者として指名したー。
妻と娘がいた浩司は、難色を示したー。
しかし、”半年で戻れるようにする”と、竜平はそう約束したー。
だが、その頃、ちょうど”浩司”の娘・梨々花(りりか)は、
学校でいじめを受けていて、悩んでいたー。
そんな梨々花からのSOSを受け取った浩司は、
何とか梨々花を遠距離から励まそうとしたー。
しかし、日に日に梨々花は塞ぎ込んでいき、浩司は
ついに単身赴任3か月目にして、約束より早く戻りたいと申し出た。
がー、事情を知らない竜平は”あと3か月…約束通り半年で戻れるように
しているから、もう少しだけお前の力が必要なんだ”と、
そう答えたー。
そしてー…
半年後、竜平は約束通り、浩司を半年で本社に戻したー。
けれどー…その時にはもうー…
浩司の娘・梨々花は自殺してしまっていたー。
「ーーー…お前のせいだー。俺はお前に娘を奪われたー」
亜香里が怒りの形相で言うー。
「ーーーそ…そんなことがー…
お、お前は俺にそんなこと、一言も!」
竜平が言うと、亜香里は「うるさい!言ったらお前は
俺をすぐに戻してくれたのか?」と、不満そうに言いながら
竜平から離れたー。
「だから俺はお前から娘を奪うー。
俺から娘を奪ったお前からー、娘を取り返すー」
亜香里が笑みを浮かべながら宣言するー。
竜平は一瞬、”笹原浩司は、亜香里を殺すつもりなのではないか”と、
青ざめるー。
しかしー…
亜香里はニヤリと笑いながら、
倉庫の中に事前に用意していた”浩司”の写真を手にしたー。
「ーーこれは、俺の写真だー」
亜香里がそう言うと、
その写真を見つめながら、
呟き始めたー。
「ーーこの人は、わたしのお父さんー」
とー。
「ーー?」
竜平は意味が分からず、困惑するー。
亜香里に憑依した浩司が、憑依している浩司自身の写真を見つめながら
そう呟いたのだー。
「この人は、わたしのお父さんー」
「この人が、わたしのお父さんー」
「わたしのお父さんーわたしのお父さんー」
亜香里が、浩司の写真を見つめながら呟きを繰り返すー。
「ーーな、なにをー…」
竜平がさらに戸惑うー。
「ーふふー
望み通り、”娘”は解放してやるー。
まぁーーー
”どっちについてくるか”は分からないがなー」
亜香里はニヤッと笑みを浮かべるー。
「ーー”憑依された人間”はなー、
”脳”が無防備な状態になるんだー。
その状況では、憑依してる人間の思想に強く脳が影響を受けるー。
こうしてー、
強く強く強くー、特定のことを念じることでー…
その人間そのものを変えてしまうことだって、できるー」
亜香里の言葉に、竜平は表情を歪めるー。
「つまりー」
亜香里はクスクス笑いながら、竜平に近づいて来ると、
「ーこの人はわたしのお父さんじゃないー」と、
呟き始めるー。
「こいつは、わたしのお父さんなんかじゃないー」
「こいつは、わたしのお父さんなんかじゃないー」
「ーー…な…何のつもりだー…!」
竜平がそう叫ぶー。
亜香里は笑みを浮かべたー。
「これを繰り返すとーーー
お前の娘はーー
俺の娘になっちまうってことだよー」
亜香里はゲラゲラ笑いながら、
また浩司の写真を手に「この人が、わたしのお父さんー」と
嬉しそうに呟き始めるー。
ようやく、”何をしようとしているのか”理解した竜平は
青ざめながら「そ、それ以上はやめろ!やめてくれ!」と、叫ぶー。
「ーーククー…
お前の娘を、お前に殺された”梨々花”にするんだー」
ニヤリと笑う亜香里ー。
「ーーふ、ふざけるな!!
亜香里を巻き込むな!
俺を恨むなら、俺を直接痛めつけろ!
亜香里を巻き込むなんて間違ってる!」
竜平がなおも必死に叫ぶー。
だがー、
亜香里は邪悪な笑みを浮かべながらー
「この人はわたしのお父さんー」
「お前はお父さんなんかじゃないー」
と、繰り返した上でー、
「わたしは、亜香里じゃなくて、梨々花ー」と、
ニヤニヤしながらそう言葉を口にしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー……」
倉庫の側に、ある人影がやってきていたー。
その人影は表情を曇らせると、
倉庫の中を、静かに見つめ始めたー…。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
次回が最終回デス~!☆
救出エンド…
それともバッドエンド…?
それは、明日のお楽しみデス…★!
今日もありがとうございました~~!
コメント
リブート的な作品で無名さんもパワーアップしてるしスゴい展開になってきましたネ!
竜平…亜香里の運命は…
自分もこっそり無名さんに短時間、憑依しちゃうのデス\(^o^)/笑
ありがとうございます~~!☆!
時の流れを感じちゃうのデス~!
短時間なら…バレずに…★!